万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

菅政権が目指すデジタル化とは?

2020年09月16日 11時26分01秒 | 日本政治

 国民の最も懸念していた事態は現実となり、自民党の幹事長のポストは二階俊博氏の再任という結果に終わりました。アメリカの報告書が名指しで親中派議員として名を挙げていただけに、同氏の去就が注目されてきたのですが、日本国政府の中国接近を警戒する国民にとりましては、失望を禁じざるを得ない‘悪いニュース’であったのです。

 

 ‘人事は政権のメッセージ’が菅新首相の口癖であったそうですので、これでは、アメリカに対しては二階氏排除の要請を暗に拒絶したことになりますし、中国に対しては、中国重視の姿勢を鮮明にしたこととなります。好意的、否、忠誠を誓ったかのようなメッセージを受け取った中国は、新政権の発足に日本取り込みの(属国化の)チャンス到来と見るでしょうし、否定的なメッセージを読み取ったアメリカは、日本国に対する警戒感を強めることでしょう(もっとも、アメリカ民主党は歓迎しているかもしれませんが…)。そして、二階幹事留任という新首相からのメッセージに対して最も危機感を募らせているのが、他ならぬ日本国民なのです。

 

 新政権が親中派によって凡そ固められたとしますと、その掲げる政策につきましても、懐疑的にならざるを得ません。例えば、デジタル庁の新設につきましても、中国式の全国民監視システムの導入が目的なのでないかと疑ってしまいます。マイナンバーとの‘紐付け’も目的の一つとされておりますので、デジタル化による行政サービスの向上は表向きの説明に過ぎないのかもしれません。そして、一旦、全国レベルで国民監視システムを敷いてしまえば、中国は、外部からであれ、内部からであれ、直接的であれ、間接的であれ、そして、合法的であれ、非合法的であれ、易々と全日本国民を監視することができるようになりましょう。

 

 また、全省庁のデータをデジタル庁が一元的に管理する体制の構築を目指しているとするならば、日本国の国家機密を含めた全ての行政上のデータは、中国に筒抜けということにもなりかねません。今年の2月には、日本国政府が、各省庁に共通する基盤システムにおいて、アマゾン・ウェブ・サービスのクラウドを使用する方針を示しましたが、新政権にあっては、デジタル庁の新設に際して中国IT大手への発注をも視野に入れているかもしれません(仮にこうした事態が発生すれば、日米離反は決定的に…)。政府による行政データの一元管理は、むしろ、盗取しようとする側にとりましては好都合でもあります。

 

古来、他国への戸籍簿の提出はその国への服属を意味しましたが、現代にあっては、個人情報を含む全国民のデータ、あるいは、データシステムそのものの提供こそ、降伏、あるいは、属国化を意味するのかもしれません。政府に対する国民の信頼が欠如しており、かつ、技術面でも安全性が確保されていない現段階にあっては、デジタル化の推進は、むしろ、日本国の防衛や安全保障を脅かしかねないリスクの拡大を意味することとなりましょう。

 

こうした諸点を考慮しますと、行政文書や各種データについては分散管理体制の方が望ましく、とりわけ国家の最高機密については敢えてデジタル化せずに文書で保管した方が安全であるのかもしれません。デジタル化に邁進する新政権の姿勢に不安を覚える国民も少なくなく、日本国政府は、自国の独立を維持し、かつ、国民の情報を護るためにも、‘デジタル’と‘アナログ’との適切な使い分けこそ目指すべきではないかと思うのです。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする