万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

‘二階外し’は‘菅政権’のリトマス試験紙?-国民の最大の関心事

2020年09月05日 12時32分49秒 | 日本政治

 民主主義国家でありながら、日本国では、国民は蚊帳の外に置かれ、あれよあれよという間に首相が自民党内の派閥力学で決まってしまった感があります。党総裁選挙では、菅義偉官房長官の圧勝が予測されており、この流れは、同官房長官に関わる何か重大事件でも発生しない限り、変わりそうにもありません。

 

 民主主義という価値において中国と対峙しながら、日本国では、首相の事実上の選出手続きが非民主的な手法が選択されたため、国民の不安は高まるばかりなのですが、米中対立が深刻化する中、次期政権の政策決定次第では、日本国が中国陣営に絡めとられるリスクがあります。‘プレ有事’とも言える状況にあって、安倍政権の政策を継承すると宣言しつつも、‘菅政権’が民主主義、自由、法の支配といった人類普遍の諸価値の擁護を掲げ、無法国家化した中国を批判し、いざという時にはきっぱりと袂を分かつ精神的な強靭さや健全な倫理観を備えているのか、はなはだ怪しい限りです。

 

尖閣諸島等に対する軍事的脅威のみならず、今や、中国製品に加えて中国IT大手をはじめとした多くの中国企業が日本市場でシェアを広げ、新型コロナ禍で中国人観光客は激減したものの、在日中国人の数も200万人を超えるほどに増加しています。今日、中国問題は、一般の日本国民にとりましては身近な問題となっています。しかも、時の政権が、突如として中国という全体主義国と手を結べば、第二次世界大戦における日独伊三国同盟結成の過ちを繰り返すことにもなりましょう。これまで、選挙あって対外政策は票にならない、と評されてきましたが、世論調査の結果を見ましても、対外政策への国民の関心はランキングの上位に浮上してきています。

 

 そこで、‘菅政権’誕生に際しての日本国民の最大の関心事は、否が応でも次期政権の対中政策に移るのですが、‘菅政権’の親中度を測るリトマス試験紙となるのは、やはり、二階幹事長の去就なのではないかと思うのです。菅官房長官の総裁選立候補に際して、真っ先に支持を表明したのは二階幹事長であり、次期首相に‘恩を売る’ための行為として解されています。二階幹事長としては、安倍政権末期において築いた親中路線を‘菅政権’にも継承させ、あわよくば、人事と資金配分の要となる幹事長職を堅持したいのでしょう。このポストを維持できれば、党内の国民本位を目指す保守派や親米派を冷遇すると共に、親中派勢力を拡大することができます。つまり、自民党を親中政党に衣替えすることも夢ではないのですから、中国の‘代理人’とも言えるポジションにある二階幹事長としては、絶対に手放したくない役職なのでしょう。菅官房長官が誓った‘安倍政権の継承’とは、あるいは、習近平国家主席の国賓訪日の実現を含む安倍政権末期、否、令和時代に頓に顕著化した親中路線であるかもしれないのです。

 

 日本国の政治家が、国民の大半が対外政策に無関心であると見なしているとしますと、それは、時代遅れの認識ということにもなりましょう。政府は自らグローバル化を推進してきましたが、国民もまた地球儀を俯瞰し、海外に目を向ければ向ける程、そして、経済あっても他国との取引が増すほどに、対外政策は自らとも直接に関係する一大事ともなるのです。次期‘菅政権’が、二階幹事長をどのように処遇するのか、国民の多くは、固唾を飲んで見守っています。仮に、親中路線の継承を以って新政権が発足するならば、支持率が上昇したとはいえ、自民党は、次期総選挙において苦戦を強いられることでしょう(但し、現在の野党も、政権政党となった場合、親中勢力となる可能性がある)。

 

 果たして、菅新首相は、二階幹事長を外すことができるのでしょうか。しかも、中国は、‘第二の二階’を既に密かに準備しているかもしれません。日本国が中国陣営に与することがないよう、そして、自由で民主的体制が壊されることがないように、国民も政界の観察と警戒を怠ってはならないと思うのです。


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