万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中立・公平な‘世論調査’を実施する方法とは?

2020年09月30日 12時49分00秒 | 日本政治

 メディア各社は、国民世論の動向を伝えるというジャーナリスティックな使命感からか、頻繁に世論調査を実施しています。しかしながら、その実施対象者となる母数は1000人ほどに限られてしまいますし、設問の取捨選択、順序、回答の選択肢などにより、結果を一定の方向、つまり、自社の望む方向に誘導することができます。また、実施者であれば、立場上、結果の数字の改竄も自由自在ので、メディアによる世論調査に対する信頼性は低下する一方なのです。

 

 ネットやSNS上での反応と世論調査の結果が真逆となるケースも散見されます。あまりの不自然さに、今では、メディアによる世論調査の結果が国民世論を正確に反映しているとは言い難く、世論調査とは、情報提供ではなく、情報操作の道具と見なす国民も少なくありません。メディア側が、政府の意向を‘忖度’すれば、中国といった共産主義国家と同様に、国民の自由な意思表明ではなく政府の決定に沿った‘官製世論’となりますし、逆に、政府の意向に反対する場合には、反政府活動の道具に堕してしまいます。何れにいたしましても、世論調査は、‘世論’という名の‘創り物’、‘まがい物’でしかなくなるのです。しかも、さらに悪いことに、一般国民の第三者がメディア各社に立ち入ることはできないのですから、国民自身も世論調査の真偽を確かめことができないのです。

 

 ‘世論’なるものがメディア側の政治色に染まっているとしますと、当然に、民主主義も危機に瀕することとなります。民主主義の理想は、民意に沿った政治が実現することなのですが、現行の制度では、個々の国民が意思表示できるのは、選挙といった数年に一度実施される限られた機会しかないからです。ところが、選挙では、個別に政策を選ぶことができず、しかも、将来に向けた政策綱領を羅列する‘セット・メニュー方式’ですので、日々、行われている政府の政治決定や法制定について、国民が事後的に評価したり、是非を判断することができません。つまり、国民各自が自らの‘意見’を表明することも、国民的な合意として‘世論’を形成することも難しいのです。

 

 不思議なことに、これまで、政治レベルを含め、積極的に国民世論の調査方法について改善を促そうとする動きは見られませんでした。その一方で、近年のデジタル化によって明らかとなったのは、不特定多数の国民を対象にオープンに調査を実施しているネット上の世論調査やSNSの方が、100%とは言わないまでも、比較的、国民の一般的な意向を現わしている点です。先述したように、メディアとネット上では結果がしばしば逆となるのも、調査方法が異なるからに他なりません。仮に、政府に民意に沿った政治を実現しようとする意志があるならば、政府こそ、積極的に新たな世論調査の方法を考案すべきなのです。今日の技術力をもってすれば、一億を超える国民を参加者とするオンライン民主主義は可能なはずです。

 

 幸いにして、新政権下ではデジタル庁も設置されることですので、昨日も本ブログにて提案いたしましたように、同技術を民主主義の進化に生かすのは重要な政治課題のように思えます。もっとも、国が世論調査を実施することに対しては、ITを徹底した国民監視、並びに、言論弾圧の手段として利用している中国の現状に鑑みて、危険視する声も聴かれるかもしれません。今般、政治不信が深刻化している日本国でも、この懸念の払拭は簡単ではなさそうです。

 

しかしながら、公平性と中立性を確保するために、権力分立、並びに、チェックアンドバランスの原則に基づいて世論調査機関を政府から分離し(司法機関に準じる…)、改竄を防ぐためにリアルタイムでの公開をシステム化した上で、政府や国会に世論調査の結果を反映させることを義務付ければ、比較的信頼性の高いフィードバック・システムを構築することができるかもしれません。つまり、緊急を要する事案を除いて、政府、並びに、国会は、事前に政策案や法案の概要を国民に対して公表し、世論に賛否や是非を問うと共に、事後的には、これらについて国民から評価を受けることとなります。

 

 こうした進化型のシステムが導入されれば、習近平国家主席の国賓来日や10月1日からの入国規制の緩和といった大半の国民が反対している政策は、真の世論の反対を受けてその実現は阻まれることでしょう。今日、日本国政府は国際金融勢力の‘悪代官’と化しているとの指摘もありますが(明治以降かもしれない…)、政府による国民に対する一方的な政策の押し付けを防ぐ手段を、国民は手にすべきなのではないでしょうか。日本国民が‘家畜化’されないように…。


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