今日、最も恐れられている新型コロナウイルスの変異株、オミクロン株は、日本国内では感染者の2例目が報告される一方で、アメリカへの上陸も確認されたそうです。オミクロン株の出現は第六波の到来を予感させるのですが、同株の性質次第では、全く別の展開もあり得るように思えます。
オミクロン株もまた、全世界にコロナ禍をもたらした新型コロナウイルスの変異株ですので、誰もが悪玉と決めつけがちです。各国政府とも水際対策の徹底を急ぎ、日本国政府も、オミクロン株出現の一報を受けて、即、入国禁止措置を採っております。特に日本国内では、一先ずコロナ禍が収束している状況にあり、新たな変異株の流入を何としても阻止しようとする政府の姿勢も理解に難くはありません。
こうした国境における規制強化の流れは、各国政府とも、オミクロン株を最大の脅威として捉えている証でもあるのですが、これらの措置には、同ウイルスが、感染力、病毒性、並びに、ワクチンに対する免疫回避能力において全ての従来株を上回るとする前提があります。つまり、オミクロン株の拡大は、ワクチン接種を基盤としたこれまでのコロナ対策を水泡に帰してしまう可能性があるからこそ、最も警戒すべき脅威なのです。
しかも、大手メディアの大半は報じないものの、オミクロン株に見られる32か所以上の変異のうちの3つ(K417N, N439K, E484)は、大阪大学がADEを起こすと予測した変異種の出現に必要とされる4つの変異(K417N, N439K, E484K, N501Y)に当たるそうです。このことから、オミクロン株が流行れば、免疫回避に留まらず、既にワクチン接種した人々の間で爆発的なADE(抗体依存性感染増強)が起きる可能性も指摘されているのです。
仮に、オミクロン株が極めて強い感染力を備え、病毒性も高く(致死率も高い…)、かつ、免疫回避に加えてADEを引き起こす変異種でもあるならば、同株は、‘悪玉中の悪玉’と言えましょう。しかしながら、仮に、オミクロン株が弱毒化した病毒性の低いウイルスであった場合はどうでしょうか。このケースでは、必ずしもオミクロン株の蔓延は防ぐべきものとも言えなくなるように思えます。
これまで出現した新型コロナウイルスの変異株の推移を見ますと、新たに出現した感染力の強い変異株が既存の変異株を駆逐して’シェア’を広げてゆくというパターンが観察されます。そして、一時的であれ、勝ち残った感染力の強いウイルスによる独占状態が出現するのです(もっとも、同独占も新たな変異株の出現で破られてしまう…)。こうした変異ウイルス間バトルの勝敗要因が感染力の強弱にあるとしますと、最速の感染力を備えた弱毒化ウイルスが最後の勝利ウイルスとなるシナリオは、人類にとりましては望ましい結末となります。このような展開となれば、オミクロン株は、人類を救う善玉ウイルスということになりましょう。
オミクロン株は空気感染するほどの強い感染力を持つとする指摘がある一方で、南アフリカからの報告によりますと、幸いにして、今のところオミクロン株の感染者には重症者は見られないそうです。同株につきましては不明な点も多く、判断に必要となる十分なデータや情報ない以上、現状では、水際対策の強化が最もリスクを低く抑える対策とは言えましょう(リスク管理の側面からは、WHOや国連事務総長の批判は疑問…)。しかしながら、その一方で、オミクロン株、否、今後にあっても出現するかもしれない感染力の強い弱毒変異株は、コロナ禍を終息させる能力を秘めた善玉ウイルスである可能性も頭の片隅には入れておくべきではないかと思うのです。生物界では人体に無害のウイルスの方が遥かに多く、無害になれば恐れることはなくなるのですから。