万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

感染症対策のイノベーションは人工無毒化・自滅化ウイルスの開発では?その2

2021年12月23日 10時02分27秒 | 国際政治

 感染症対策としての人工無毒化・自滅化ウイルスの散布は、ワクチン接種と比較しますと、(1)安全性のみならず、(2)迅速性、(3)低コスト、(4)経済活動の維持、(5)人権尊重の凡そ4点において優れているように思えます。言い換えますと、同技術が開発・実用化されれば、少なくとも一本鎖のRNAウイルスによる感染症の恐怖から人類は解放されるかもしれません。しかしながら、良いこと尽くめの利点がある一方で、幾つかの問題点があることも認めざるを得ない事実です。

 

 第1の問題点は、これらのウイルスの安全性です。遺伝子ワクチンにつきましても、当初にあっては安全性が強調されたものの、実際には、接種後の健康被害が多発しました(もっとも、健康被害は、一部の研究者によって予測されてもいた…)。この結果、ワクチンの接種拒否を招いたのですが、同ウイルスにつきましても、人体に対する安全性が確保されている必要があります(もっとも、今般の遺伝子ワクチンのように緊急性に鑑みて特例で使用が認められる可能性も…)。安全性を確かにするためには、ウイルス自体の毒性に関する十分な研究や分析を要するのですが、おそらく、遺伝子操作としては、感染力をマックスまで高めると同時に、毒性が確認された部分の塩基配列を切除する、あるいは、より無害な配列に置き換えるという方法が考えられます(新型コロナウイルスの場合は、むしろ遺伝子ワクチンで人工mRNAとして用いられながらも、その有害性が報告されているスパイク部分が対象となるのでは?)。この遺伝子操作は、安全性の証明を求める国民に対して全面的に公開されるべき情報とも言えましょう。

 

 第2に指摘すべきは、強制感染に関する国民の合意の問題です。ワクチンについては、今日、接種の義務化が取沙汰されていますが、人工無毒化・自滅化ウイルスの場合にも、自然感染とはいえ、ウイルスという名の異物が人体に入ります。自らの意思に反して人工ウイルスに感染してしまうのですから、ここに、本人の同意の問題が生じることとなりましょう。もちろん、多くの場合、人工ウイルスは人体の自然な免疫反応によって排除されてしまうものと推測されます。しかしながら、一部の人々にあっては、無症状、かつ、無害とはいえ、人工ウイルスの塩基配列が体内に残存してしまう可能性があります。有毒ウイルスの潜伏よりは遥かに’まし’なものの、遺伝子配列の残存リスクを含めて、同方法による感染症対策の実施に際しては、国民的なコンセンサスを形成しておく必要がありましょう。

 

 そして、第2の問題に関連して第3に挙げられるのが、同対策の実施に際して、誰がどのような手続きを経て決定するのか、という政治的な問題です。今般のコロナ禍にあっては、各国とも緊急事態宣言が発せられ、大統領や首相といった政府のトップが率先して指揮をとる方式が多々見受けられましたが、感染症対策の場合、政治家の決断に任せるトップダウン方式が必ずしも適しているとは限りません。人工無毒化・自滅化ウイルス(カウンターウイルス)の手法が、感染症対策のテクノロジーとして確立すれば、敢えて有事型の体制に切り替える必要もなくなることでしょう。そして、同方法の実用化に際しては、速やかなる対応を実現するべく、国民的な議論を経た上で、民主的な立法措置による法整備を行っておけば国民も安心することとなりましょう。例えば、実施の要件や手順などを予め法律として定め、公表しておくのです(人の支配ではなく法の支配…)。

 

 以上に人工無毒化・自滅化ウイルスの問題点について述べてきましたが、私は感染症対策の専門家ではありませんので、もしかしますと、まだまだ見落としている重大な問題点があるようにも思えます。医科学的な見地からは、一笑に付されてしまうかもしれません(お恥ずかしい限りです…)。とは申しますものの、ワクチンや治療薬の開発において出遅れているとの指摘がある日本国であるからこそ、これまでにない全く新しいアプローチを試みることで感染症対策の新境地を開く可能性もありましょう。ワクチンのみを唯一の救済手段として見なすよりも、人工無害化・自滅化ウイルスの他にも、先端技術を様々な形で活かすアイディアがあれば、より安全で低コストな対策方法が見つかるはずです(研究の現場からの政府への政策提言の道もあってもよいのでは…)。先端的な感染症対策の方法を打ち出してこそ、日本国は、人類に貢献したと言えるのではないでしょうか。


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