万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ウクライナが問うIT兵器の問題-新たな対立とグローバルな戦争利権の誕生?

2022年11月22日 13時10分11秒 | 国際政治
日本国をはじめとした自由主義国におけるITに対するイメージは、中国というディストピアが隣にありながら、これまでのところ至って良好です。IT化された近未来はユートピアの如くに描かれていますし、その未来図には、戦争の影は一切見えません。誰もが先端的なITによって平和で快適な生活を享受している世界こそ、ITが約束する人類の未来なのです。ところが、ロシアが軍事介入したウクライナ紛争は、この未来像を打ち壊してしまいそうなのです。

その理由は、軍事大国ロシアに対する小国ウクライナの善戦は、ITによってもたらされていると説明されているからです。イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙が2022年11月18日に掲載した記事に依りますと、「ウクライナの大義に共感する才能豊かな技術者のグローバルネットワークが誕生した」そうです。「戦場で花開く草の根イノベーション」とする見出しも付されており、民間レベルにおけるITの軍用化を礼賛しているのです。そこには懐疑心は微塵も見られないのですが、民間企業におけるITの軍用化は、果たして手放しで褒められるべきことなのでしょうか。

ゼレンスキー大統領をはじめユダヤ系の人口が多いウクライナという国の国柄を考慮しますと、‘技術者のグローバルなネットワーク’とは、取りも直さずアメリカのIT産業を支えると共に全世界に張り巡らされたユダヤ系ネットワークと言うことなのでしょう。同記事では、‘草の根’と称し、軍用技術を開発するスタートアップスに注目する一方で、グーグル社やマイクロソフト社といった大手ITが公然とウクライナを支援し、協力している事実を明かしています。表だった支援だけでも、前者はGoogleマップの一部を適宜に無効とし、後者はサイバーセキュリティー面で協力しているそうです。それでは、どのような点において、民間企業の戦争当事国支援は問題となるのでしょうか。

第一に、これらの民間企業のユーザーは、知らず知らずのうちに間接的に軍資金を提供していることになります。今日、脱炭素やSDGsに関しては、企業倫理が厳しく問われていますが、民間企業による軍用技術の開発やその開発部門への投資については、‘ウクライナの正義’の名の下であたかも‘良い行い’のようにプラスに評価されています。日本国内を見ても、日頃は技術の軍事利用に目くじらを立ててきた左派の人々も、この件については口をつぐんでいます。このため、自らが利用している企業の利益が戦争に‘投資’されたとしても、ユーザーは無自覚なのです。全てのユーザーがウクライナを応援しているわけではありませんので(ユーザーの大半が中立的あるいは無関心なのでは・・・)、企業とユーザーとの間に‘ねじれ現象’が生じることもあり得ます。

第二に、特定の戦争当事国への支援が、企業のトップの判断であるとしますと、国家の政府と企業との間にも‘ねじれ現象’が起きる可能性があります。今般の中間選挙により、議会下院で共和党が優勢となったことから、ウクライナ支援に対して懐疑的な意見も聞かれるようになりました。このことは、政府と民間企業との間で戦争当事国に対する方針が食い違ってしまう可能性を示しています。最悪の場合には、両者の支援先が敵味方に分かれてしまうリスクもありましょう。

第三に、民間企業同士の間で支援先国が分かれるかもしれません。今般、グーグル社とマイクロソフト社はウクライナを支援していますが、今般、ツイッター社を買収したイーロン・マスク氏はロシアよりとの見方があります。企業のCEOといったトップの私的な人脈や個人的な判断によって支援対象が決定されるともなれば、民間企業間は、各自ばらばらな‘対外政策’を遂行することとなりましょう。また、IT関連企業以外にもロシア利権を有する米企業が存在していますので、民間企業間の対立が経済活動にもマイナス影響を与えるかもしれません(双方とも相手陣営の企業に対して制裁や取引自粛を行なうかもしれない・・・)。

かくして、民間企業による戦争当事国支援は、外部で起きているはずの戦争を内部に持ち込むリスクを高めてしまうのですが、その他にも、以下のような問題点があります。

第4として指摘されるのは、民間企業である限り、軍用に開発された技術は、全世界に拡散される点です。現在、ロシアはイラン製のドローンを大量に投入しており、同記事も、「イスラム教シーア派の武装組織「フーシ派」はイエメンで3Dプリンターを使ってドローンを製造」している実態を紹介しています。ドローン技術は自由主義国のIT企業の独占ではありませんので、双方による技術開発競争はエスカレートの一途を辿ることでしょう。そして、いち早く優位性の高い技術を開発した企業は、それを、敵味方に拘わらず、全ての諸国に販売しようとするものと推測されるのです。同記事では、軍用に開発された技術が戦後の経済復興の牽引役となることを期待していますが、その一方で、戦争が起これば起こるほどに利益を得ることができる、グローバルIT軍需産業が新たに生まれるリスクも否定はできません(戦争を渇望する戦争利権団体となる・・・)。

そして、第5の問題となるのは、もはや何れの国も、ユダヤ系ネットワークの協力なくして戦争を闘うことが困難となる点です。ウクライナの善戦は、同国がユダヤ系ネットワークの重要拠点の一つであったことによります。ユダヤ系の支援を受けることができない‘普通の国家’であれば、軍事大国であるロシアと互角に闘えるはずもありません。非ユダヤ系の国同士の戦争にあっては、何れの戦争当事国も、ユダヤ勢力に対して三顧の礼で協力を求めることでしょう(悪名高きイエズス会や武器商人が行なってきたような両者への武器供与・・・)。むしろ、今般のIT企業のウクライナ支援は、ユダヤ勢力のパワーを全世界にアピールしているようにも見えるのです(三次元戦争・・・)。

以上に主要な問題点を挙げてきましたが、大手並びに新興企業の両者含めて民間のIT企業による戦争当事国支援については、批判的な見方あって然るべきように思えます。戦争というものをなくそうとするならば、あらゆる危険な兆候を見逃してはならず、今般の民間IT企業による軍事技術の開発も、その一つではないかと思うのです。

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