アメリカのペロシ下院議長の訪台により、米中両国が双方とも台湾周辺海域に空母を派遣するという事態が発生しています。同議員の訪台については、米国内外を取り巻く政治事情を見据えた英断であるとする評価が見受けられる一方で、中国の過剰とも言える反応を考え合わせますと、いたずらに軍事的緊張を高めたとする批判もあります。仮に、両国間において軍事衝突が起きれば、第三次世界大戦への道も絵空事ではなくなります。しかも、今般の米中両国による一触即発の状況は、世界支配のためのシナリオの一環である可能性もあり、何としても、米中開戦は回避しなければならない重要課題となりましょう。
日本国にとりましても、米中戦争は他人事ではありません。先ずもって、開戦と同時に米軍の前線基地を叩くべく、人民解放軍が既に照準を合わせて準備してきたミサイルが在日米軍基地に向けて一斉に発射される可能性も否定できないからです。在日米軍基地は、「日本国の施政下にある領域」にありますので、日米安保条約の第5条が発動されることでしょう。言い換えますと、米中開戦は、日中開戦をも意味しかねないのです。
ここで注目すべきは、台湾有事に端を発する中国による日本列島への最初の攻撃は、米軍基地が対象となると想定される点です。仮に在日米軍基地を狙うならば、人民解放軍の攻撃手段は、上述したようにミサイルを用いざるを得ないこととなりましょう。米中戦争の段階では、中国には、日本国に対して攻撃を加える正当な口実はありません(もっとも、人民解放軍が、台湾と同時に尖閣諸島を侵略する可能性もありますが・・・)。日本国の領海や領空で自衛隊並びに米軍と闘い、日本国の制海権や制空権を奪うには相当の戦力の消耗を要しますし、否、返り討ちに遭うリスクもあります。中国にとりましては、人民解放軍を無傷なままで温存させ、在日米軍基地を含む日本国を壊滅させる最も効率的で効果的な手段はミサイルなのです。
中国による軍事行動にあって、最も恐れるべきはミサイル攻撃となりますと、日本国の防衛はあまりにも脆弱です。ミサイル防衛システムの開発は遅々として進まず、ミサイル攻撃に対してはいわば丸腰の状態にあります。日本国政府は、ウクライナ危機を目の当たりにして、防衛費の増額を伴う防衛力の増強を約束していますが、中国によるミサイル攻撃を防御できないのであればば意味はありません。現時点で米中戦争が起きれば、座して死を待つ状況となりかねないのです。
もっとも、最初の在日米軍基地に対する攻撃に際しては、中国は、核ミサイルの使用は控えることでしょう。即、アメリカによる核による報復を受けるからです(核大国間における相互確証破壊の作用・・・)。もっとも、米中戦争から日中戦争へと拡大した場合には、中国は、小型核兵器を含めて日本国に対してのみ核兵器を使用する可能性は相当に高いと言わざるを得ません。ウクライナ危機で明らかとなったように、アメリカが自国に対する核攻撃のリスクを負ってまで同盟国のために核の報復を決断するとは思えないからです(もっとも、対日核使用の報復として、米国が中国に対してミサイル発射基地、並びに、SLBM搭載の中国軍潜水艦の全てを壊滅するような一斉核攻撃を行う場合に限り、中国から米国本土への核による反撃は封じられる・・・)。
将来的には、ミサイル攻撃を完全に防御する、あるいは、無力化する軍事システムが確立するのでしょうが、それまでに間、ミサイル攻撃に対して無防備、あるいは、防御力不足の状態は続くこととなります。となりますと、完全ではないにせよ、唯一の防御手段は、核の抑止力に、核保有国に対する軍事行動のハードルを飛躍的に高める戦争抑止力をも期待する、核保有と言うことになりましょう。年初にあって、核の不使用は、安保理常任理事国でもある核保有5カ国が合意し、かつ、岸田首相も、今般のNPT再検討会議において公表した「ヒロシマ・アクション・プラン」の一つに挙げていましたが、戦時にあっては、如何なる局面にあっても核が使用され得る可能性があります。否、核の不使用は、むしろ、核の抑止力までも弱めてしまうのです(抑止力の源泉は、核使用の可能性に対する恐怖心にある・・・)。
このように考えますと、台湾海峡における米中間の緊張の高まりにより、日本国は、核武装の必要性に迫られているように思えます。この必要性は、中国による軍事侵攻の危機に直面している台湾にも認められましょう。そして、各国による核武装が第三次世界大戦への発展を防ぐ効果もあるとしますと、人類が、三次元戦争において勝利を収める未来も見えてくるのではないかと思うのです。