万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

G7南シナ海埋め立て反対-国際社会全体の問題

2015年06月08日 14時35分57秒 | 国際政治
G7首脳、南シナ海埋め立て反対=停戦なければ対ロ制裁強化も―外交政策討議
 中国は、埋め立てを強行している南シナ海の問題について、”域外国”が口を挟む問題ではないとして、アメリカの介入を退けて、あくまでもアジア域内の問題として扱う方針を示しております。アジア域内の問題に限定化すれば、軍事力を背景に南シナ海一帯を支配できると考えているのでしょう。

 しかしながら、中国のこの見解は甘すぎます。そもそも、紛争地域における中国による一方的な埋め立て強行や領域化は、国際社会における一般ルールである国際法に違反しているからです。国際法上の違法行為への対処は、当然に、国際社会全体で取り組むべき問題となります。中国には、アジアを国際社会から切り離し、国際法の非適用地帯とする資格も権限もありません。言い換えますと、国際社会は、全世界を包摂する法秩序を維持するために違法行為を取り締まる責務を負う一方で、中国は、違法行為を実行している国として取締のターゲットとなるのです。もはや、南シナ海の問題を”アジア域内の問題”とする中国の抗弁は通用せず、この問題は、国際レベルにおける平和に対する脅威と認識されます。

 もっとも、中国は拒否権を持つ常任理事国であるため、国連の安保理にこの問題の解決求めることは不可能です。そうであればこそ、G7の枠組みは、国連に代替する問題解決の重要な機関とし位置付けられるのではないでしょうか(常設仲裁裁判所等の判決も、中国は、無視するかもしれない…)。中国の拡張主義が顕わとなる今日、安保理の機能不全に備えた受け皿となる体制作りは、国際社会の急務なのではないかと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 安保法制違憲論-立憲主義は本... | トップ | 矛盾に満ちた安保法案違憲論... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ねむ太)
2015-06-08 17:42:23
こんにちは。国連を有難がっているのは我が国だけです。
国連は先の大戦の戦後処理のために戦勝国が中心となって発足した組織であり常任理事国の全会一致でなければ何も決議できない・・
戦後の国際社会で混乱や問題を引き起こしてきたのは常任理事国であった為に、常任理事国の利害が絡む問題は何一つ解決できないのです。
ニューヨークで国連と言えば「アホの集まり」此の程度の認識なのです。
国連で結論の出ない議論を繰り返すより、G7で首脳が直接話したほうが早い、常任理事国の拒否権などありませんので公平であり迅速に物事を決定できる利点があります。
本当はロシアを加えG8にするべきなのでしょうが。
中国の南沙諸島の埋め立て問題は、国際公共財である南シナ海を自国の領海とする暴挙であり、周辺諸国への侵略の足がかりなのです。
安倍首相の言う「法の支配による自由の海」これが国際社会では常識なのです。
社民・共産・民主・生活・維新が口をそろえて言う「自衛隊の海外派遣は戦争につながる」シーンは我が国の生命線であり、先の大戦もシーレーンの封鎖によって引き起こされた現実を無視しています。
ペルシャ湾から我が国までのシーレーンを守る事は自衛権の正当な行使にほかなりません。
自衛権の正当な行使や海外で紛争・クーデターなどにより取り残された邦人を自衛隊が救出する事に何か問題でもあるのでしょうか。
国際公共財としての法が支配する自由の海、これは国際社会全体の利益に繋がります。
G7加盟国が南シナ海の埋め立てに反対するのは当然のことです。
中国の暴走は止めなければなりません。
未だに中華思想そのままに世界は中華の皇帝の持ち物とするカビの生えた古代の思想が間違いである事を悟らせなければなりません。
対中包囲網を強化するとともに経済的に破綻に追い込み内部分裂を誘い崩壊させるより他にないのかもしれませんが、中国が現在の版図を維持し続けようとする限り軍事独裁政権が誕生するだけでしょうから、幾つかの国に分割し民主化させる以外にないのでしょう。
仁徳天皇の故事、民の竈・・支那の皇帝に此のような徳を持った人物が居たのならば民衆の民度はもっと高くなっていたのではないかと思います。
返信する
ねむ太さま (kuranishi masako)
2015-06-08 20:52:19
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 中国に徳の高い為政者が存在したのは、堯舜の時代のみなのかもしれません…(もっとも、史実ではない可能性もありますが…)。中国史の現実とは、無頼漢や異民族などが武力で帝位を奪い、新たな王朝を開くパターンの繰り返しですので、徳による統治など、夢のまた夢であったのでしょう。この歴史は、共産革命を経た現在の共産党一党独裁体制まで継承されているようです。国際社会は、古代帝国の幻影に惑わされてはならず、現実こそ、直視すべきです。そして、その中国が常任理事国である国連が、如何に無力であるかについても自覚すべきではないかと思うのです。G7におきましては、チャイナ・リスクへの対応についても、率直に議論していただきたいと思うのです。
返信する

国際政治」カテゴリの最新記事