万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ムバラク前大統領―独裁者は自分の命だけは惜しい

2012年06月12日 17時51分28秒 | 中近東
「獄中で殺される」と訴え=ムバラク前大統領が弁護士に―エジプト(時事通信) - goo ニュース
 先日、裁判所から終身刑を言い渡されたエジプトのムバラク大統領。国民の多くが死刑を期待しており、この判決には不満があるとも報じられていますが、報道によりますと、”獄中で殺される”と訴えて、助けを求めているそうです。

 自らの命が風前の灯となる至って、ようやくムバラク前大統領は、”命”の尊さに気が付いたようです。独裁的な権力をふるっていた頃は、国民を虫けらのように扱い、抵抗する者の命は容赦なく奪ってきました。権力を独占し、大統領職という絶対的な安全地帯に身を置いていたからこそ、同氏は、他者の命を粗末にできたのです。当時からしますと、現在の元大統領の立場は逆転しており、裁かれる場にある今や、助命に必至であり、死の恐怖に青ざめているのです。自らが奪った命を忘れて・・・。

 ムバラク前大統領が気付いた命の尊さとは、”自分の命”という限定つきです。独裁者は、自分の命だけは惜しいのです。その一方で、エジプトの民主化に参加した多くの国民は、死を恐れずに、自らの命を独裁体制の打倒に捧げました。両者のコントラストは、独裁体制が、滅びるべくして滅びたことを示しているように思えるのです。

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