今朝、突然燃えないゴミの日なのだと知りました。そんなんじゃぁ、まともに準備できてないから、うちの中にあるたくさんの燃えないゴミは出すわけにはいきません。
私だけの生活なら、もっとゴミを減らせているでしょうか? いや、もっとゴミ屋敷みたいになっているかな。とにかく、うちの中に燃えないゴミはたくさんあるのです。それを余裕というのか、片づけられないというのか、ずっと抱えたままに暮らしています。
「そうだ、使えないプリンターを捨てよう」
といいことを思いついた私でした。ずっと未練タラタラで家の中に死蔵していたプリンター。いつか突然機能を回復して、バンバン印刷できる、ということはないですね。早く捨てたいです。急に思いついたので、奥さんには否定されました。思いつきで私が何かすると、とんでもないことが起きる、という感覚があるようです。だから、私は強行せずに、今回は諦めて、サッサとお仕事に行くことにしました。
「行ってきまーす」と声をかけて出かけました。
彼女もトコトコ出てきて、ほんの少しのカンカンを捨てに行くようでした。ゴミを捨てるところに彼女が持っていったところでした。
そこをゆっくり通り抜ける私、いつの間に奥さんに追い抜かれたのか、とにかくモタモタと彼女の横を抜けました。
「行ってきまーす」はさっき言ったし、だもんだから、お互い見合って黙って手を振りました。小さく。それで、自分がものすごく笑ってる顔をしているというのに気づきました。ひとりだから、マスクもしてないし、思い切り声も出さず、顔だけものすごくニタニタしていた。
何がおもしろいというわけではなくて、何となく顔を見つめてバイバイする、そういうのをやってきて、まあ、私はニタニタした顔で去っていく。そういう朝でした。たぶん、何度もこんなことをしているんでしょう。
どうして、もっと普通に「行ってきます」「行ってらっしゃい」じゃなかったのか。まあ、その言葉の掛け合いはさっきしたし、繰り返すのも変だったから、なんでしょうか。どうして私は笑ってたんだろう。
今日、家に帰ってテレビを見ていたら、2011年秋に火野正平さんが鹿児島の知覧を走った時の、「クラシック こころ旅」というのをやっていました。
鹿児島市内の城山という、桜島に向き合う展望台のようなところから、市内を少しだけ走り、西郷さんを横目に見て、バスセンターから知覧へと輪行していました。
バス停からは、山の上の茶畑のてっぺんにあるデコレーションケーキみたいになった、山全体が茶畑の小高い丘に、本人が小さい時はケンカばかりしていた父母を、90年代に連れ出して、デコレーションケーキの山を見ながら、昔はケンカばかりしていた父母が何も言えずに和んでいて、とても穏やかだったし、記念写真も撮ったところだから、そこを訪ねてください、という手紙でした。
この手紙のご両親はそれからしばらくして相次いで亡くなられ、もう父母がいなくなって十数年経過してしまったけれど、今もそこには行けないけれど(胸が痛くて)、私の心に残る風景で、父母のその時の写真は毎朝拝んでいるということでした。
そして、正平さんは坂道でへばって、茶店のおばさんに無理を言って、適当なところまで送ってくださいと泣きついたら、そのおばさんは、割と心広くこの願いを聞いてあげたのです。
でも、この男の人が、なんというタレントで、どんな番組かはまるで知らないのです。でも、それでは、困っているようだから、載せてあげようと快諾した。
そして、適当なところまで連れてきたら、番組の都合上、少しは坂道も上らねばならないので、クルマを降りて、おばさんとお別れすることになった。最後に、何という名前の人だったと改めて訊くのです。
いつもだったらオチャラケてる正平さんだけど、この時は殊勝な気持ちになっているし、自分は60オヤジ、相手は80のおねえさんだし、何しろ載せてもらったという恩義があるので、ものすごく素直に「火野正平といいます」と答えます。
すると、おばさんは、「じゃった、じゃった(そうだった、そうだった)」と言い、握手じゃなくって、二人で両手でハイタッチする形になりました。ものすごく自然に、気づいたうれしさ、少しここでお別れするのが名残り惜しいような、そんな気持ちを感じさせてくれました。
でも、おばさんは、その後は、ものすごい勢いで、後ろも振り返らず、愛想笑いもせず、颯爽と去っていかれました。
どんなに名残り惜しかろうが、どんなに心惹かれようが、照れくさかろうが、モタモタしないで、サラリと去っていく姿。
今は91歳くらいになられたんだろうか。だとしたら、うちの父と同じくらいの年齢だったはず。うちの父なら会釈をしたろうか。私なら、ペコペコとカメラの前で照れくさがって去っていったろうか。
人の潔さが何の気なしに出てしまうことって、あるんですね。私なら、潔くなくて、モタモタしているでしょう。生き方は簡単には変えられないな。