取り出したのは石坂洋次郎さんの「何処(いずこ)へ」1939 角川文庫 でした。なんと51年前に買った本だったようです。それを今さらながら読もうとしているんだから、長生きはしてみるもんです。そんな風に何でも古いものを復活させられたらいいんだけど、すぐに忘れてしまうし、果たして今の時代に読んでみる価値はあるのか、ただの復古趣味じゃないの? という気もします。
でも、近いうちに読んでみようと思っています。石坂洋次郎さんといえば、「青い山脈」やら、そういう青春学園ドラマの原作の人でしたね。この文庫の帯には、当時NHKの銀河ドラマの写真が載っています。左は津坂匡章さん、右は吉田日出子さんなんだろうか、全く印象がありません。津坂さんは「天下御免」というドラマからずっと支持してたから、彼が主演なら見てみよう、なんていう感じでテレビを見て、ついでに原作も買って読んでしまった。
ものすごく行動的でしたね。何でもいいから吸収したかったし、目に着いたものは知っておくという好奇心もあったのかもしれないな。
この本が私の初めての石坂洋次郎さんの本でした。そこから、「陽の当たる坂道」(裕次郎さんの映画を後々に見ましたし、原作は読んでしまっていた)とか、何となく新潮文庫の解説を読んで、次はこれにしようなんて、意欲的でした。「ある日わたしは」というタイトルが気になる本は、図書館で借りたかもしれない。
そんな、思い出はいいから、どうして今さら石坂洋次郎なのか、というところでしたね。
朝の散歩で、奥さんに「これはザクロの花。この赤く膨らんだのは実じゃなくて花なの。実は女性にはいいらしいよ。」「売ってるの?」「見たことない」
ということでインプットされた「ざくろ」、実がなるらしいけど、どこかで聞いたなあと思ったら、石坂洋次郎の作品に「颱風とざくろ」という上下2巻の小説があったけど、全く縁がなくて、見たこともなかった。
あのお話は、どんな話だったんだろうと、ネットの世界であらすじを探してみました。すると、山の事故で愛していた男の人が亡くなり、そのショックから抜けていくのか、明るく元気になるか、そんなことが書いてありました。そうか、あの本は山の事故が問題だったのか。1969年だったのか。
あれ、井上靖の「氷壁」ってあったけど、自分は読んでないけど、映画はチラッと見たけど、あれも山の事故が核としてあった。あれはいつ? と、調べてみると、石坂さんより七つ下の井上さんが1956~57年に書いていたらしいのです。それでヒットして、いつか自分も描いてみようとしてみたんでしょうか。
そう、昔読んだ新田次郎さんの「孤高の人」、あれも単独登山の加藤文太郎という人を描いていたけれど、あれは? 1969年だから、「颱風とざくろ」と同じ頃に書かれています。
昔の作家たちは、山に挑んだ人たちとその陰で泣いた人、悲しんだ人たちを描くことをしたようでした。今も山岳小説というのは書かれているんだろうけど、もう私には関係がなくなりました。
山に憧れていたのに、山は遠くから見るものになりました。体力もないし、山の形をカメラで写しとって、それで終わりになりましたか。
深田久弥やさんの「日本百名山」も同じ頃に書かれたんでしょうね。昔の文人たちは、山で自分を磨くところがあったようです。今はどこで自分を磨いたらいいんだろうね。
「何処(いずこ)へ」を近いうちに読んでみますね。どんなことが書いてあったか、全く記憶にはありません。何ということでしょうね。