うちに近所の図書館で除籍図書になったボロボロの「しろいうさぎとくろいうさぎ」という本をずっと前にもらってきました。
1958年に初版が出て、この本は1983年の51刷なんだそうです。1983年といえば、ついこの間という気もしますが、考えてみれば私は二十代でしたか、それなりに若かったんだ。ということは、もう本そのものも39年くらい経ってるから、除籍図書になったんですね。
よく頑張ったなあ。いろんな人たちに見てもらって来たでしょう。そして、小さな子どもは、いつまでも仲良くするって大事だなって思ったかなあ。好きな人といつまでも一緒にいられるということは、とても幸せなんだなと思えたでしょうか。
二匹のうさぎが、一緒に遊んでいたら、くろいうさぎが何度も何度も考えごとをしたようです。そして、「どうしてそんなに考えごとしているの?」としろいうさぎが訊ねるんです。
くろいうさぎば、「君といつまでも一緒に遊べたらいいんだけどなあ」と悩んでたみたいでした。
確かに、楽しいと思ったとたんに、この楽しい瞬間なんて、すぐに終わるし、時間なんて待ってくれないよと思ってしまうものですよね。とても素直な疑問ではありました。
そして、二匹のうさぎはいつまでも一緒にいられるように決意するんです。それでおしまいなんです。とてもシンプルです。でも、この単純な気持ちは大事にしたいところなんです。すぐに楽しいことなんて、消えてしまうのは確かなんですから。
みんなにお祝いしてもらって、それでおしまいです。「良かったね」という感想まで聞こえてきそうです。
それで、最近の朝日の投稿欄にこんなのを見つけました。
小学校の低学年のとき、学校からの帰り道、図書室で借りたばかりの本を読みながら歩いていると、品のいいご婦人に「本、好きなの?」と声をかけられた
そうなんです。「うちで図書館を開いているから遊びにいらっしゃい」と提案されたそうです。そこから二十年以上経過して……、
本の著者紹介に載っていた写真を見て、あのときの「本のおばさん」が、松岡享子さんだと気づいた
ということでした。
そして、この58歳の東京の女性は、
私の娘は幼いころ、松岡享子さんが訳した「うさこちゃん」の絵本が大好きだった。娘に「読んで」と頼むと、私がしていたように一文字ずつ指で追いながら、たどたどしく声を出して読んだ。
と振り返っておられました。
そんな母娘関係もあったんですね。うちの奥さんちにもこの本はあったそうです。彼女もどこかでそういうことを書いてるのかな。
私は、まるっきり読んだことがなくて、この年になって初めて読ませてもらいました。くろいうさぎがかわいそうでならないです。どうして、そんな楽しい時に悲しいこと考えるんだよ! と、励ましてあげたくなります。
まあ、私が何を言っても、くろいうさぎさんを元気づけることはできないな。まあ、私は一緒になって踊ってあげるくらいかな。そういうのが私の役どころでしょうか。