* 特別に故事成語のようにはなっていませんが、あまり雰囲気の良くないカップルがいたら、こういってみましょう。
「まるで、幽王と褒姒(ほうじ)みたいだよ。」
そんなことを言われた人は、不審に思って、
「だれ、それ?」と訊くでしょう。
そうしたら、
「いや、仲のいいカップルということだよ。昔の中国に、そんな王様と愛された人がいたんだよ。」
と答えてあげましょう。
または、やたら部下たちを招集する上司がいたら、こっそり言いましょう。
「あの人は、まるで幽王みたいだね。」と、
そしたら、まわりの人は訊きます。
「だれ、それ?」と、
「いや、中国にそんなお馬鹿な王様がいたということですよ。」と。
あまり日常会話で使えるコトバではありませんが、人間の歴史にはたくさんのお馬鹿な王様が出てきますが、その先駆者として幽王は存在します。いや、殷(商)に紂王さんもいましたね。あちらの方が古いですね。
紀元前1100年ごろ、武王が即位し、周という国が成立します。それから十二代目の王様が幽王です。幽王が治世を初めて2年目、大きな地震が起きました。伯陽甫(はくようほ)という人が言います。
「周は滅びようとしている。天地の気が正常なら秩序が失われない。秩序の失われるのは人が乱すからである。陽気が下に伏し陰気が迫って上にのぼらないと、地震がおこる。いま地震があったのは、陽気が所を失って陰気にふさがれたからである。陽気が失われて陰気の下にあれば、必ず水源がふさがれ、水源がふさがれれば国は必ず滅びる。
……いま周の徳は夏・商二代の末期に似ており、川原もふさがれた。ふさがれれば必ず水が尽きる。国の存立は必ず山川の力によるもので、山が崩れ川が尽きるのは亡国の徴候である。」
地震が、地の気と、水の気、陰気・陽気、いろいろがからみあって起きるのだと、中国の人は三千年前に解明していました。
自然と人の世は連動するもので、人の世が乱れれば、自然も乱れるのだといいます。とすると、今の世は、人間が自然を乱し、人の世は更に乱れていくのかもしれないです。ということは、人の世が、天地の気を上手にまとめることが必要ですが、それがうまくできているのか、少し不安です。
特に、今の日本は、何よりも先ず景気ということで、自然開発を優先させているような感じですけど、ちゃんと天地の気をうまくコントロールしながらやっているのかどうか……。
シリアの内乱、ウクライナの混乱、アフリカの紛争地帯、タイの政治混乱、チリや南太平洋の地震、カリフォルニアの干ばつなど、もっともっといろいろな人の世の混乱があるような気がします。だから、自然が乱れ、地震が起こり、人々は更に混迷を深めていくというのでしょうか。でも、安定していた江戸時代でも、地震は起こり、富士山も浅間山も噴火したのですから、ちょっとしたことなのかな。ほんの微妙なバランスで自然災害は起きる?
さて、武王から三百年、幽王は1人の女性を愛しました。彼女の名前は褒姒(ほうじ)と言いました。彼女の出自は不思議です。昔、竜の精気を入れた箱があったそうで、長い間開いてなかったのを、たまたま開けてみると、いもりが出てきました。それを見た幼い女の子が、十五歳になり、夫もいないのに女の子を産んでしまいます。不吉な子どもなので捨てようとしたところ、褒(ほう)の国で育てられて、そのまま幽王の後宮に入り、見初められて王の子どもを産むまでになります。そうした伝説的な女性の褒姒さんです。
彼女は全く笑わない人で、王に愛されていても、笑うことがなく、いつもブスッとした表情で王と過ごしていた。男としては、愛する人のにこやかな表情を見ることが幸せなのに、王は何をしても愛する女の笑顔を見ることができませんでした。
ある時、たまたまミスが重なって、北方から異民族が攻めてきたのを知らせる狼煙(のろし)が上がりました。それを見た家来たちが大慌てで王宮に集まり、異民族に備えるためにバタバタした様子でした。そんな人の必死の形相を笑うなんて、とんでもない女だと思うのですが、まあ、不思議な女の人もいるもので、褒姒さんは大笑いしてしまいます。それを見た王様は、大喜びで、彼女がこんなに笑うなんて、今までで初めてだ! と、感動さえしたでしょう。
それから、何度も狼煙は上がるようになり、何度も家来たちは馳せ参じました。そして、なれっこになってしまい、狼煙が上がっても、「どうせ王様の悪ふざけなんだろ」と、集まらなくなっていきます。そして、本当に異民族が攻めてきたときも、だれも王を守る人がおらず、幽王は犬戎(けんじゅう)という異民族に殺されます。それが紀元前771年のことです。
周は一旦滅び、東に移動した後継者の平王がふたたび周を打ち立てます。ここから、各地の大名(地方領主)が、それぞれに群雄割拠する春秋時代が始まります。諸子百家が現れ、秦の始皇帝へとつながっていく中国。様々な価値観を生み出されていく「中国」になるための時代がスタートしました。それまでのおとぎ話のような時代の最後の王様が、幽王さんで、彼が亡くなってからが、本当の中国の歴史なのかもしれません。
★ それで、今の中国はどうなるんでしょう? 私は、デビューする直前の習近平さんは、何だか人の良さそうな、気さくなオッチャンだという印象を持ちました。それから、何年経ったんでしょう。すっかり中国のトップ病になってしまって、蓄財はしたけれど、政治はサッパリという気がします。
サッパリというより、ものすごく硬直化してしまって、柔軟性ないなあとビックリするくらいです。それくらいしないとキビシイのだと思われますが、そんなにまでして守る中国共産党って、いったい何なんだろうと思ってしまいます。
さすがに北朝鮮ほどの硬直化・世襲化・独裁化はないのかもしれませんけど、やはりヒドイのは確かです。はやく辞めればいいのに。そうしたら、ニコニコして世界観光でもできるのにねえ。
引退しても、どこへも行けなくなるでしょうね。というか、国外に出ることを、後継者が許してくれないかもしれないし、組織そのものも硬直化しているんでしょう。アメリカに滞在して、好きなことしたらいいのにね。……2016.5.4 Wed
「まるで、幽王と褒姒(ほうじ)みたいだよ。」
そんなことを言われた人は、不審に思って、
「だれ、それ?」と訊くでしょう。
そうしたら、
「いや、仲のいいカップルということだよ。昔の中国に、そんな王様と愛された人がいたんだよ。」
と答えてあげましょう。
または、やたら部下たちを招集する上司がいたら、こっそり言いましょう。
「あの人は、まるで幽王みたいだね。」と、
そしたら、まわりの人は訊きます。
「だれ、それ?」と、
「いや、中国にそんなお馬鹿な王様がいたということですよ。」と。
あまり日常会話で使えるコトバではありませんが、人間の歴史にはたくさんのお馬鹿な王様が出てきますが、その先駆者として幽王は存在します。いや、殷(商)に紂王さんもいましたね。あちらの方が古いですね。
紀元前1100年ごろ、武王が即位し、周という国が成立します。それから十二代目の王様が幽王です。幽王が治世を初めて2年目、大きな地震が起きました。伯陽甫(はくようほ)という人が言います。
「周は滅びようとしている。天地の気が正常なら秩序が失われない。秩序の失われるのは人が乱すからである。陽気が下に伏し陰気が迫って上にのぼらないと、地震がおこる。いま地震があったのは、陽気が所を失って陰気にふさがれたからである。陽気が失われて陰気の下にあれば、必ず水源がふさがれ、水源がふさがれれば国は必ず滅びる。
……いま周の徳は夏・商二代の末期に似ており、川原もふさがれた。ふさがれれば必ず水が尽きる。国の存立は必ず山川の力によるもので、山が崩れ川が尽きるのは亡国の徴候である。」
地震が、地の気と、水の気、陰気・陽気、いろいろがからみあって起きるのだと、中国の人は三千年前に解明していました。
自然と人の世は連動するもので、人の世が乱れれば、自然も乱れるのだといいます。とすると、今の世は、人間が自然を乱し、人の世は更に乱れていくのかもしれないです。ということは、人の世が、天地の気を上手にまとめることが必要ですが、それがうまくできているのか、少し不安です。
特に、今の日本は、何よりも先ず景気ということで、自然開発を優先させているような感じですけど、ちゃんと天地の気をうまくコントロールしながらやっているのかどうか……。
シリアの内乱、ウクライナの混乱、アフリカの紛争地帯、タイの政治混乱、チリや南太平洋の地震、カリフォルニアの干ばつなど、もっともっといろいろな人の世の混乱があるような気がします。だから、自然が乱れ、地震が起こり、人々は更に混迷を深めていくというのでしょうか。でも、安定していた江戸時代でも、地震は起こり、富士山も浅間山も噴火したのですから、ちょっとしたことなのかな。ほんの微妙なバランスで自然災害は起きる?
さて、武王から三百年、幽王は1人の女性を愛しました。彼女の名前は褒姒(ほうじ)と言いました。彼女の出自は不思議です。昔、竜の精気を入れた箱があったそうで、長い間開いてなかったのを、たまたま開けてみると、いもりが出てきました。それを見た幼い女の子が、十五歳になり、夫もいないのに女の子を産んでしまいます。不吉な子どもなので捨てようとしたところ、褒(ほう)の国で育てられて、そのまま幽王の後宮に入り、見初められて王の子どもを産むまでになります。そうした伝説的な女性の褒姒さんです。
彼女は全く笑わない人で、王に愛されていても、笑うことがなく、いつもブスッとした表情で王と過ごしていた。男としては、愛する人のにこやかな表情を見ることが幸せなのに、王は何をしても愛する女の笑顔を見ることができませんでした。
ある時、たまたまミスが重なって、北方から異民族が攻めてきたのを知らせる狼煙(のろし)が上がりました。それを見た家来たちが大慌てで王宮に集まり、異民族に備えるためにバタバタした様子でした。そんな人の必死の形相を笑うなんて、とんでもない女だと思うのですが、まあ、不思議な女の人もいるもので、褒姒さんは大笑いしてしまいます。それを見た王様は、大喜びで、彼女がこんなに笑うなんて、今までで初めてだ! と、感動さえしたでしょう。
それから、何度も狼煙は上がるようになり、何度も家来たちは馳せ参じました。そして、なれっこになってしまい、狼煙が上がっても、「どうせ王様の悪ふざけなんだろ」と、集まらなくなっていきます。そして、本当に異民族が攻めてきたときも、だれも王を守る人がおらず、幽王は犬戎(けんじゅう)という異民族に殺されます。それが紀元前771年のことです。
周は一旦滅び、東に移動した後継者の平王がふたたび周を打ち立てます。ここから、各地の大名(地方領主)が、それぞれに群雄割拠する春秋時代が始まります。諸子百家が現れ、秦の始皇帝へとつながっていく中国。様々な価値観を生み出されていく「中国」になるための時代がスタートしました。それまでのおとぎ話のような時代の最後の王様が、幽王さんで、彼が亡くなってからが、本当の中国の歴史なのかもしれません。
★ それで、今の中国はどうなるんでしょう? 私は、デビューする直前の習近平さんは、何だか人の良さそうな、気さくなオッチャンだという印象を持ちました。それから、何年経ったんでしょう。すっかり中国のトップ病になってしまって、蓄財はしたけれど、政治はサッパリという気がします。
サッパリというより、ものすごく硬直化してしまって、柔軟性ないなあとビックリするくらいです。それくらいしないとキビシイのだと思われますが、そんなにまでして守る中国共産党って、いったい何なんだろうと思ってしまいます。
さすがに北朝鮮ほどの硬直化・世襲化・独裁化はないのかもしれませんけど、やはりヒドイのは確かです。はやく辞めればいいのに。そうしたら、ニコニコして世界観光でもできるのにねえ。
引退しても、どこへも行けなくなるでしょうね。というか、国外に出ることを、後継者が許してくれないかもしれないし、組織そのものも硬直化しているんでしょう。アメリカに滞在して、好きなことしたらいいのにね。……2016.5.4 Wed