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廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

街はずれ、の雰囲気ではない快演

2016年01月23日 | Jazz LP (Prestige)

The Prestige Blues-Swingers / Outskirts Of Town  ( Prestige 7145 )


プレスティッジ・ブルース・スインガーズなどと名乗っているけれど、もちろんそんなバンドは実際に存在するわけではなく、当時プレスティッジと契約
していたミュージシャンたちを一堂に集めてビッグバンド形式の大ブルース大会をやろう、という豪気な企画の元に出来上がったレコードです。
良くも悪くもこのレーベルらしい内容で、地味なジャケットデザインからは想像できないような弾けまくったブルースが聴けます。

アート・ファーマー、アイドリース・シュリーマン、ジェローム・リチャードソン、バスター・クーパー、ペッパー・アダムス、ジミー・フォレストという豪華な
顔ぶれのホーン陣をタイニー・グライムス、レイ・ブライアント、ウェンデル・マーシャル、オージー・ジョンソンというベタベタのリズム隊が支える、もう
これだけでお腹いっぱいになりそうな編成です。 ビリー・エクスタイン楽団やアール・ハインズ楽団でトロンボーン兼アレンジャーとして活躍していた
ジェリー・ヴァレンタインがアレンジしたブルースのスタンダードを目一杯やっているのですが、これが驚くほどよく纏まった演奏で、常設バンドを
聴いているような気分になります。 弾むようなテンポは常に軽快で、全員のアンサンブルには一糸の乱れもなく、なんて上手い演奏なんだろう。

歌物のスタンダードが1曲も入っていないという1本筋がきっちりと通った硬派な内容で、レーベルカラーがよく出ています。 ジャズはブルースから発展
した音楽であるということ、だから本来は白人のための音楽ではないということ、そういうことを言いたげな内容です。 だから日本でもまったく人気が
ないですが、これは聴かずに済ますにはあまりにもったいない演奏です。 アレンジはとてもスッキリしていて、演奏の歯切れの良さが気持ちいい。

更に特筆するべきは、録音の良さ。 RVGらしくない怖ろしくハイファイで高い音圧にスピーカーの前から吹っ飛ばされます。 アンプのメモリを通常の
位置の半分以下に絞らないと音が大き過ぎて聴くことができません。 上手い演奏を生き生きと再現してくれます。 

有名なビッグバンドの音楽にはリーダーの個性がはっきり出ているものですが、それが胃にもたれて聴く気がしない時があります。 そういう時にこそ
こういうニュートラルなビッグサウンドはうってつけで、そういう意味でも重宝するレコードだと思います。



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30年振りに聴き直す

2015年12月26日 | Jazz LP (Prestige)

The Modern Jazz Quartet / Concorde  ( Prestige PRLP 7005 )


1年程前から、そろそろMJQをもう1度ちゃんと聴き直さなきゃいけないな、と折に触れて思うようになりました。 なぜかはよくわかりません。
急にそういう想いが頭をよぎるようになったものの、レコード屋に行くといつもそんなことは忘れてしまってなかなか実現する機会がなかったのですが、
ここのところの手がすべったもの買いの中で、懐かしいタイトルを見つけました。 でも、栄光のプレスティッジのナンバー5なのに4,000円というのは、
手がすべったというよりも、それだけもう人気が無いということなのかもしれません。

初めてこれを聴いたのは、20歳の時。 当時読んでいた「名盤百選」にこれと "Django" が載っていたからです。 でも、その時は「何だ、これ?」という
感じでした。 その頃私がジャズに求めていたのはもっと荒々しく激しいもので、そういうものとは真逆の音楽に呆れてしまった。 だから、1度聴いた
だけでレコードは処分して、それ以来まったく聴かなくなってしまいました。

でも、音楽と過ごす生活も大きく一巡して、ついでに年も取ると、若い頃はダメだったのに今はすんなりと聴けるようになってくるものが出てきます。
30年振りに改めて聴くと、よくできた音楽だったんだなということがわかります。 特にこのプレスティッジ時代は題材をジャズの曲に絞っている所が
良くて、意外にジャズっぽい雰囲気が強く残っています。 以前はそういうところには全然気が付かなかった。

50年代の前半に黒人がこういう音楽をやるには相当の勇気と覚悟が必要だったはずで、嫌な思いもたくさんしたでしょう。 にもかかわらず、20年以上
ブレることなくやり続けたのはすごいことだと思うし、その尖がった姿勢は後のフリー運動なんかを先取りしていたような気すらしてきます。 
誰かの真似ではない、自分だけの音楽をやるのだという強い意志がなければできないことです。 クラシックの室内楽的な、というようなところではなく、
フリージャズなんかと同じで、その生きざまのようなものを聴く音楽なんだろうなと思います。 

アトランティック・レーベルに残された "Last Concert" を聴くと、聴衆が叫び声をあげて熱狂的に拍手している様子が収められています。 以前は
理解できなかったその興奮も、今はよくわかる気がします。 私も後追いながら、たくさん残された作品をぼちぼちと聴いていこうと思います。


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マラソンセッション4部作の中で1番好きなのは?

2015年04月11日 | Jazz LP (Prestige)

Miles Davis Quintet / Steamin'  ( Prestige 7200 )


マイルスのマラソンセッションの中で1番好きなのは、これです。

残っていた契約ノルマを消化するために、というのが一般的に言われることですが、そんな単純な話ではないような気がします。
マイルスの中にはこれまでやってきたことを一旦総括して、同時にこれからはこのバンドでやっていくんだぞと宣言する気持ちが
あったのではないでしょうか。

プレスティッジでの録音は様々な大物たちが都度集まってマイルスが総監督をするという伝統的なセッション形式でしたが、それでは飽き足らず
すぐに次を見越して、自分の音楽をやるために自己のバンドを持つ決心をします。 このマラソンセッションで彼がやりたかったのは、
これまで自分がセッションという形でやってきたビ・バップやハード・バップの曲を自分が作った新しいバンドでやったらどうなるか、という
実証実験だったんだろうと思います。 そのために、契約ノルマをこなすというこの機会を上手く利用しただけなんでしょう。 

"Salt Peanuts" をやったのは、俺たちはパーカーのバンドを超えることができるはずだ、という強い想いがあったからに決まっている。 
見かけ上は普通のハード・バップで目新しいことは何もなくても、マイルスの内面では間違いなく「実験」という意識があって、
しかもそれは自分にしかわからない冒険なんだという自覚もあったに違いないと思います。 

そういう彼の想いが1番よくわかるのが、このアルバムだからです。 

それに、ここに収められた "Something I Dreamed Last Night" はマラソンセッションの中では最も感動的で素晴らしいバラードです。
これが聴けるだけでも、このアルバムの価値は不変だろうと思います。




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孤高のテナー

2015年02月01日 | Jazz LP (Prestige)

Coleman Hawkins / Plays Make Someone Happy from Do Re Mi  ( Moodsville MV 31 )


1904年に生まれて1969年に亡くなったコールマン・ホーキンスが一番活躍したのは1930~40年代だったので、残された録音の大半がSPです。
LP期にも録音はありますが、プレスティッジやインパルスのような若手が中心のレーベルと契約したため、本人のカラーとレーベルの雰囲気が
イマイチしっくりと馴染まず、出来上がったレコードは居心地の悪さが目立ちます。 本当はノーマン・グランツが彼のレコードをつくればよかった
んでしょうが、プレスティッジとの契約が邪魔をして手が出せなかったのでしょう。 

アルバム作りが上手いレーベルにいたお蔭でレスターは晩年に統一されたカラーを持ったレコードを固め打ちしており、これが今でも一定の人気を
得ている要因になっていますが、ホークは複数のアルバムコンセプトの下でレコードが残されたので散漫な印象が強く、どうも人気がパッとしない。

そんな中で、唯一この人の魅力をうまく捉えていると思えるのが一連のMoodsvilleへの録音です。 トミー・フラナガンのトリオをバックにワンホーンで
ゆったりと吹いていく様子が素晴らしい。 このレーベルのコンセプトはバラードではなくミディアムスローテンポを主軸にすることですが、品の良い
ピアノトリオの心地いいテンポに乗って吹いていく上手さはさすがで、他の奏者ではこうはいかなかったでしょう。 また、インストものでは
普通は取り上げないような楽曲をメインに演るので、どの曲も新鮮味があります。

テナーの音の魅力ということにかけてはこの人の右に出る人はいません。 結局、誰もこんな音で吹くことはできなかった訳で、そういう意味では
神々しいくらいに孤高の存在ですが、そういうところが少し近寄り難いのかもしれません。 

でも私にとってはこの人は別格の存在で、他のアーティストのように手垢にまみれていない現在の状態くらいでちょうどいいと思っています。
事あるごとにこのレコードを取り出しては、"Climb Every Mountain" の美メロに酔います。 RVGの深くエコーの効いた音場も素晴らしいです。



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新春の芽吹き

2015年01月04日 | Jazz LP (Prestige)

Art Farmer ~ Gigi Gryce / When Farmer Met Gryce  ( Prestige 7085 )


年が明けたこの時期を「新春」と表現した人はつくづく偉いと思います。 その語感の的確さにいつも感心します。
季節的には冬真っ盛りの寒空ですが、人々が気付かないところで ~積もった落ち葉の下で、冷たく凍った幹の皮の裏で~ 新しい命の芽が生まる準備が
始まっているを感じさせてくれる言葉です。

音楽の現場でも新しい才能が常に世に出る準備が至る所で行われているわけで、そういう新しい芽吹きの時期を上手く録ったのがこの盤だと思います。
ブルーノートやプレスティッジというレーベルがコロンビアなどの大手レーベルと決定的に違ったのがここで、常に若い演奏家が世に出る後押しをする
という徹底した現場主義だった。

このアルバムを制作したボブ・ワインストックの目的は、ジジ・グライスの作曲能力を世にお披露目することでした。 この盤のオリジナルは2枚の
10インチ盤で、そのどちらも Art Farmer Quintet という名義だったにも関わらず、12インチとして切り直した際にはその名前は使わなかった。
その意味をよく汲んであげる必要があります。

でも、私にはそういう制作上のコンセプトに、その見事な演奏にも関わらず、手放しで賛同することができません。 
それは、ここに収録されたジジ・グライスが作った楽曲に中に、非常に危うい、神経症的な匂いを感じるからです。 
それはこの盤だけではなく、New Jazz盤なんかも同様です。

ジジ・グライスという人は60年代の初頭に、ジャズ界から追放されます。 そして、その後二度とミュージシャンとして復帰することはなく、
最後はブロンクスの小学校の教員としてその生涯を終えます。 アート・ファーマーとのコンビも、ドナルド・バードとのユニットも短命でした。
その理由は、一言で言うと「ウザい人」だったからです。

40年代後半のビ・バップ盛隆期に既に"ポスト・ビ・バップ"を見据えてパリに留学してブーランジェやオネゲルに師事し、演奏旅行で渡仏してきた
ブラウニーとセッションで火花を散らし、パーカーの影響からいち早く抜け出すなど、早くから尖った才能が光る人で、そうやって苦労して収めた
楽理を活かして作曲した曲の著作権を守るために会社を興したりするのですが、そういうのは当時のジャズ界では異端なことでした。
また元々の性格が内向的で懐疑的で被害妄想的だったところにこの権利の帰属への過剰なこだわりが仇となり、業界の中では異端児扱い
されて孤立するようになります。 これが神経症のスイッチを押すこととなり、妻は子供を抱えて出て行き、友人も去って行きました。

"Rat Race Blues" の、あの何とも言えない独特の暗さをわざわざ持ち出すまでもなく、そういうこの人の理詰めで過剰な自意識と内面の不安定さが
作曲された楽曲の中に色濃く漂っていることに鋭敏な感性なら気付くはずだし、仮にそこまで明示的に自覚できなくても、なんか理知的過ぎるとか、
纏まり過ぎているとか、そういう遠回しにやってくる印象に気付く人はきっといるでしょう。

ただ、このアルバムは54~55年の録音というまだ初期のものなのでそういう陰の要素はまださほど顕著ではなくうっすらと感じる程度だし、
何より2人の演奏の若々しさと技術の高さがすべてに優っています。 だからとてもいい演奏として一般的に需要が高いのはよくわかる内容です。




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"Boogaloo" Joe Jones

2014年10月12日 | Jazz LP (Prestige)

Joe Jones / Boogaloo Joe  ( Prestige PR 7697 )


最近ハマっているのが、この "Boogaloo" Joe Jones のレコードたち。 

本名は Ivan Joseph Jones 、1940年サウス・ジャージー生まれで、1968年にプレスティッジからデビューしています。 このアルバムの1曲目のタイトル
から、他のジョー・ジョーンズたちと区別するために "Boogaloo" Joe Jones と呼ばれるようになっています。

ジャズというよりはいわゆるレア・グルーヴといわれるジャンルに属する内容ですが、このレア・グルーヴというのは定義がはっきりしません。
60年代後半から顕著になったブルースやソウルミュージックに片脚どころか両脚をどっぷりつかったジャズ、若しくはジャズと融合した
ソウルミュージック、という感じのようですが間違ってたらごめんなさい。 いずれにせよ、オルガンやアーシーなテナーサックスがキーになってます。

ただ、この人の場合はそれほど脂っこくなく、そういう要素がちょうどいい塩梅になっていてとても聴きやすいです。 特にこのアルバムは全体的に
穏やかでゆったりしたムードがあり、"People Are Talking" というケニー・バレルを思わせる静かに透き通ったバラードや "Dream On Little Dreamer"
というペリー・コモのヒット曲で見事なギタープレイを聴かせてくれるとてもいいアルバムです。 

ラスティー・ブライアントのテナーも少し抑えた感じだし、バーナード・パーディーもサポートに徹していて、ジョー・ジョーンズのギターを前面に
出そうとしています。  


このアルバムが「静」だとしたら、こちらは「動」のアルバムという感じです。



Boogaloo Joe Jones / Right On Brither  ( Prestige PR 7766 )


1曲目からベースがブーンと唸ってカッコいいのですが、全体的にブリブリで元気な曲が多いです。 ギター、オルガン、テナーが互角で対等に
ソロを受け持ち、それらをバーナード・パーディーが後ろから煽っていく。 B面最後の名曲 "Let It Be Me" が明るくゆったりと締めます。


まあ、どちらも何も考えず音楽に身を任せていればいいわけで、楽に聴けるという意味ではこれに勝るものはないかもしれません。
アメリカ音楽の最も優れた姿であるソウルミュージックに最接近したジャズの最良の姿の一つがここにあります。



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生涯の愛聴盤

2014年09月21日 | Jazz LP (Prestige)

Dexter Gordon / The Panther !  ( Prestige PRST 7829 )


OJCのリマスターCDでずっと愛聴してきましたが、レコードを見かけてしまい、つい、フラフラと買ってしまいました。 安かったですし。
1970年7月の録音で、もうこの時期になるとレコードかCDか、という議論は意味がなく(音に違いなんかない)、ステレオカートリッジに
取り換えるのが面倒なので持っていてもあまり頻繁に聴くことはないのはわかっていても、デックスのアルバムでは3指に入る好き盤なので、
こればかりは抗えませんでした。

レコーディングエンジニアはRCA専属だったポール・グッドマン、プロデューサーはドン・シュリッテン。 サウンドには特に特徴もなく、
残響の少ないデッドなものなので、わざわざレコードで持つ必要はないでしょう。

デックスはこの時期は既にコペンハーゲンに移住していて、年に何回かジャズ・フェスティバルに出るためにアメリカに帰郷するという生活でした。
その短い滞在の間にポツリポツリとレコーディングして、プレスティッジから発売されていました。 特に野心的な内容ではありませんが、
ビ・バップ期からのプロとしての活動で身体に沁みついたバップ・マナー全開のお手本のような演奏ばかりで、とにかく感動的です。

中でも、The Christmas Song と Valse Robin の2曲が素晴らしく、これがこのアルバムの価値を高めてくれています。 トミー・フラナガンの
静かなサポートもとても良くて、全体的に趣味の良いアルバムになっている。 トミフラは15歳の時(45年)にプロとして初めて仕事をしたのですが、
その時の相手がデックスだったので、このレコーディングには格別なものがあったのかもしれません。

プレステの7000番台後半はいいレコードがたくさんあっていいですね。 値段も安いし、ぼちぼち買っていこうと思います。



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深化した好みを満たしてくれるもの

2014年08月31日 | Jazz LP (Prestige)

Cedar Walton / Cedar !  ( Prestige PRST 7519 )


未知の音盤を物色していて、これは聴いてみようと思うポイントはいくつかありますが、その中の1つにピアノを誰が弾いているか、というのが
あると思います。 近年の録音であればホーン奏者が未知の場合が多いのですが、その時にピアノがケニー・バロンだったらまず間違いないだろう、
と思うように、古い録音の場合はシダー・ウォルトンなら間違いないな、と思うことが多いです。

ピアノトリオのレコードがたくさん作られた最初のピークは50年代ですが、この人の名前がレコードで見られるようになるのは60年代に入ってからで、
デビューがあと5年早ければ代表作と言われるようなピアノトリオのレコードがどこかのレーベルで作られていたのになあ、と残念に思います。
ピアニストにとっては名刺代わりになるので、そういうのがあれば仕事がしやすかっただろうに、いささか気の毒になります。

コルトレーンのジャイアント・ステップスやショーター時代のジャズ・メッセンジャーズへの参加でグループサウンドへの貢献を学んだ後で
録音された本作は、これ以上ない極上の2管クインテットを聴かせてくれます。

レコーディングはRVGではなくリチャード・アルダーソンですが、ドーハムのトランペットのナチュラルな音やジュニア・クックの二枚目なテナーの音色も
素晴らしくて、レコードを聴く快楽を与えてくれます。 これは67年の録音ですが、この頃のプレスティッジやリヴァーサイドにはこういういいレコード
がザクザクあって、値段も安いし、もう最高だよな、と思います。 昔レコード漁りをしていた頃はプレスティッジといえばN.Y.Cラベルの若い番号の
ものばかり欲しがっていましたが、音楽の深みが見えてくると、欲しいと思うレコードの対象がこのあたりへと完全にシフトしてしまいました。 




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Red Garland の凄み

2014年08月24日 | Jazz LP (Prestige)

Red Garland / Revisted !  ( Prestige PRST 7658 )


レッド・ガーランドのアルバムで私が一番好きなのが、このアルバムです。 先月のDUのセールの売れ残りの中にこれを見つけた時は嬉しかったなあ。

ここに収められた曲は Groovy のセッションと同時期に行われたものですが、なぜかその時点での発売が見送られて、ガーランドが故郷に戻って
表舞台から姿を消した後にプレスティッジが発売しました。 その際、元々モノラル録音だったものがステレオへリマスタリングされて、
ジャケットの表面の上部に朱書きで、" This Album Has Been ELECTRONICALLY REMASTERED For Stereo " とコメントが書かれています。 
そのせいか、ジャケットの番号は PR 7658 なのに、盤面の番号は PRST 7658 となっています。

さほどステレオへの変更による恩恵があるとは思えないし、RVGのモノラル録音の音の太さは後退してしまっているのですが、不思議な陰影を帯びた
シックな音場には独特の魅力があるように思います。 

アルバムの最後に収録された "It Could Happen To You" の演奏がとにかく素晴らしくて、この曲がガーランド最高の名演だと思います。
技術的にどうこうではなく、この曲の魅力をここまで上手く表現したものは歌ものやインストものも含めて他には見当たりません。
冒頭のソロによる導入部分の感情の込め方やそこからチェンバースとテイラーが加わる入り方などは何度聴いても鳥肌が立ちます。
ドラムのブラッシュの気持ちよさ、ブロックコードによるメロディーライン、たっぷりとタメの効いたスイング感などが相俟って深い陶酔感を
憶えます。 こんな気分にさせられる演奏は他に思いつきません。 この曲があるから、このアルバムが一番好きなのです。

レッド・ガーランドはみんな知っているような気がしているだけで、実際はあまりよく知られていない人だと思います。 なぜ、ある時期から急に
姿を消したのかだって、よくわかりません。 母親が病気になって看病するために故郷に戻ったのだとか、ロックの台頭に嫌気がさしたからとか、
まあ諸説あるようですが、本当のところはどうなのかが実はよくわからないのです。 

誰にとってもわかりやすい演奏をしたせいで誰もが食傷気味で軽く見られていますが、昨今のよくわからないピアノトリオ乱立状態の中で
この人のことをふと想い出すと、その演奏の本当の凄さが身に沁みてきます。 コレクターは相変わらず Groovy ばかりに高値をつけて
同時期の録音であるこの盤に見向きもしない様子を見ると、ガーランドの価値を貶めたのはコレクター達なんじゃないか、と悲しくなります。




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優れたジャム・セッションの見分け方

2014年02月02日 | Jazz LP (Prestige)

Interplay For 2 Trumpets And 2 Tenor ( Prestige 7112 )


ジャム・セッションというは、ある意味残酷な形式で、単発のアルバムなら気にならないようないろんなことがかなり相対的に浮彫になります。
特にこのアルバムのように同一楽器の複数編成だとそれが顕著なので、当事者たちはさぞやりにくかったことでしょう。

Idrees Sulieman と Webster Young の違いは意外にはっきりとわかります。 Sulieman は硬質で鋭く尖った音、Young は柔らかくふくよかで
暖かい音です。 この2人は優劣の差は感じず、それぞれの良いところがくっきりと際立っています。 Sulieman は旋律の1つ1つをとても
丁寧に吹く人なんだなあということがよくわかる一方、Young はその音色がマイルスそっくりなのに驚きますが、旋律の妙よりもそのサウンドの
魅力で聴かせる人だということがわかります。

このアルバムの目玉は2つあって、1つは何と言ってもコルトレーンがいることですが、彼の最初のスタイルの完成形が最良の姿で聴けます。
彼が吹き始めると場の空気が急に変わってしまう様は凄くて、やはりその存在感が普通の演奏家とは根本的に違うことがよくわかります。
私はPrestige時代のコルトレーンが大好きで、どのアルバムも愛聴していますが、こういう出番の少ないアルバムほど彼の良さが際立つように
思います。 なので、Bobby Jaspar にはこれは気の毒なセッションだったなあ、とここでも彼の薄倖ぶりに同情してしまいます。 相変わらず
締まりのないボワッと膨らんだ音でフレーズの組み立て方も下手だなあ、バラードでこんな早いパッセージばかり入れてどうすんだよ、という感じです。

もう1つの目玉は、名曲"Soul Eyes"のレコード初演が聴けることです。 やっぱりこの曲はコルトレーンのインパルス盤が1番いいと思いますが、
この演奏も捨てがたい。 4管によるテーマの重奏が感動的で、Sulieman の丁寧な演奏が素晴らしい。 そして、コルトレーンの落ち着き払った
様子の見事さ。 この曲は彼のためにあるのだと思います。

そして、Paul Chambers がいることでこのアルバムカラーが決定づけられているように思います。 実は、本当の意味で演奏に色付けできるのは
ベースやドラムスたちなのですが、それができる演奏家は限られていて、Chambers はその稀有な1人でした。

このレーベルでかなり多くの割合を占めるジャム形式のアルバムの中で、こういう風に演奏家の個性や楽曲の素晴らしさを堪能できるものは
このレコードを筆頭にして枚数はさほど多くありません。 メンツだけは凄いけど中身は・・・・というレコードのほうが多く、値段だけで買うものを
判断していると失敗します。 Prestigeはリハーサルなしのジャム・セッションが多くてどれも素晴らしい、と十把一からげな言い方をされることが
多いですが、それは嘘です。 やはり、1枚ずつ内容を自分なりに消化していくことが大事なんじゃないでしょうか。




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