[7月6日11:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]
社長室のテレビで囲み取材を受ける勝又都議の様子を観る敷島。
〔「勝又議員、ついに“クール・トウキョウ・プロジェクト”の始動が議会で承認されましたね?」「はい。2020年東京オリンピックとのタイアップも兼ねたこの企画、第一歩が踏み出せました」……〕
敷島:「はは、勝っちゃんも有名人だな」
エミリー:「あいつが効果をアップさせたのではないでしょうか?」
エミリーはテレビ画面を指さした。
勝又の後ろには、白いスーツを着たレイチェルが立っている。
敷島:「レイチェルがお前達と同型機ってことは、秘書の仕事もできるんじゃないかって思ったんだ。で、ちょうど私設秘書を探していた勝っちゃんに勧めてみたら、見事に当たったな」
敷島はズズズとコーヒーを啜った。
〔「後ろの秘書さんは、ロイドですか?」「いやあ、お分かりですか。クール・トウキョウ準備委員会の代表として、私自身がロイドを使う必要があると思いまして……」「これが議会で承認された大きな理由であるという話もありますが、それについては?」「それはあるかもしれません。とにかく、責任者自身がそうであるという態度を見せることに意義があったようです」〕
敷島:「ちゃんと仕事してるじゃないか。勝っちゃん、良かったなァ」
エミリー:「妹を褒めてくださり、ありがとうございます」
敷島:「背後から近づいて暗殺していたわけだから、勝っちゃんの命をそうやって狙って来る輩に対しても万全だな」
エミリー:「そうですね」
〔「次です。先週、日本各地で発生した爆弾テロの首謀者とされるデイジーについて、警察では……」〕
敷島:「……デイジーの持ち主から一時預かって不正改造をした後、返却して持ち主を殺させたところまでは分かってるんだがなぁ……」
〔「東京では“クール・トウキョウ”の目玉となっているアンドロイド、特にボーカロイドやマルチタイプが注目されている中、人間に危害を加える個体も発生しているということで、対策が急がれています」〕
敷島:「不正改造しやがる人間が悪いんだがな。映画なんかじゃ、そういう黒幕は大抵アメリカにいる場合が多いんだけど、デイジーの不正改造をしやがったヤツもアメリカ人っぽいぞ」
エミリー:「社長の計画、進みそうですね」
敷島:「何が?」
エミリー:「社長御自らアメリカに乗り込み、その黒幕を退治することです」
敷島:「バカ言え。そういうのはシュワちゃんやブルース・ウィリス辺りに任せるよ」
大型バスで特攻する姿は、どう見てもハリウッドの映画スターにしか見えなかったエミリーだった。
エミリー:「私には社長がハリアーやアパッチで、暴走したロイドに攻撃する姿が思い浮かびますが?」
敷島:「こら。俺には操縦免許なんて無いぞ。……でもまあ、アメリカのデイライト社におバカな科学者がいたとしたら、一発殴りに行ってもいいかな」
エミリー:「さすがです」
敷島:「『営業が売りにくいモン造るな!』ってね」
エミリー:「……観点が違います」
敷島:「その点、平賀先生達は売り込みやすいものを造ってくれるから楽だ」
営業畑一筋(自称)の敷島である。
敷島:「午後は早速、売り込みに行くぞ」
エミリー:「はい」
敷島:「勝っちゃんの“クール・トウキョウ”が都議会で承認されたってことで、この勢いで霞ヶ関まで売りに行くぞ」
未だに霞ヶ関へのマルチタイプの売り込みを続けていた敷島だった。
敷島:「諦めないのが営業魂ってもんだからな」
エミリー:「さすがです」
[同日17:05.天候:晴 豊洲アルカディアビル1Fメインホール]
メインホールの片隅に置かれているグランドピアノ。
このビルに入居している、とある楽器メーカーが宣伝用に置いたものだが、それをエミリーが弾くことがある。
元々は自動演奏機能付きで17時になると勝手に流れていたのだが、それをエミリーがたまに弾くようになった(もちろん許可済み)。
自動演奏機能が付いているのに、あえてロボット(ロイド)が弾いているということで注目を浴びたこともあった。
今では、ビルの入居者は殆ど慣れてしまっている。
ホール内に流れているのは“幻想即興曲”。
鏡音リン:「あっ、社長!やっぱりここにいた!」
エレベーターから降りてきたリンが、ホール内のベンチに茫然自失とした感じで座っている敷島に駆け寄った。
敷島:「『アリッサー!』『ヒャッハー!“魔のモノ”の為に、お前の心臓は頂くぜー!』か……」
リン:「社長、古いよ。それ、“クロックタワー3”でしょ?」
敷島:「リンか……」
リン:「お役所に売り込みに行ったけど、悉く断れたって話なら、もう何度もあったでしょ?」
敷島:「“クール・トウキョウ”は推進されたはずなんだけどなぁ……」
所詮は地方自治体の議会で可決されただけの話。
国の機関としては、やはり国会を通らなければ棒にも箸にも掛からないらしい。
リン:「リンの仲間は売らないの?リンも増産されたら面白いなぁ!」
敷島:「ボーカロイドは、あくまでもエンターテイメント用だから。ミクみたいに、実は兵器用でしたなんて売り込んだりしようものなら……」
エミリーのピアノ演奏が終わる。
リン:「シンディの時は、横でフルート吹いてたね」
エミリー:「シンディは管楽器が得意だからな。ピアノには自動演奏させて、自分は横でフルート吹いてたのだろう?」
リン:「あれも面白かったよね。何せ、ピアノさんがシンディに合わせて鍵盤動かしてたんだから」
リンはピアノの方を向いてニッと笑った。
エミリー:「社長、気を取り直して帰りましょう。明日は科学館で七夕イベントがあります」
敷島:「そうだったな。リンとレンがイベントに出るんだったな。明日はよろしく頼むぞ?」
リン:「はーい!」(^O^)/
ロイド達の活躍はまだまだ続く。
敷島の営業は、前途多難なれど。
社長室のテレビで囲み取材を受ける勝又都議の様子を観る敷島。
〔「勝又議員、ついに“クール・トウキョウ・プロジェクト”の始動が議会で承認されましたね?」「はい。2020年東京オリンピックとのタイアップも兼ねたこの企画、第一歩が踏み出せました」……〕
敷島:「はは、勝っちゃんも有名人だな」
エミリー:「あいつが効果をアップさせたのではないでしょうか?」
エミリーはテレビ画面を指さした。
勝又の後ろには、白いスーツを着たレイチェルが立っている。
敷島:「レイチェルがお前達と同型機ってことは、秘書の仕事もできるんじゃないかって思ったんだ。で、ちょうど私設秘書を探していた勝っちゃんに勧めてみたら、見事に当たったな」
敷島はズズズとコーヒーを啜った。
〔「後ろの秘書さんは、ロイドですか?」「いやあ、お分かりですか。クール・トウキョウ準備委員会の代表として、私自身がロイドを使う必要があると思いまして……」「これが議会で承認された大きな理由であるという話もありますが、それについては?」「それはあるかもしれません。とにかく、責任者自身がそうであるという態度を見せることに意義があったようです」〕
敷島:「ちゃんと仕事してるじゃないか。勝っちゃん、良かったなァ」
エミリー:「妹を褒めてくださり、ありがとうございます」
敷島:「背後から近づいて暗殺していたわけだから、勝っちゃんの命をそうやって狙って来る輩に対しても万全だな」
エミリー:「そうですね」
〔「次です。先週、日本各地で発生した爆弾テロの首謀者とされるデイジーについて、警察では……」〕
敷島:「……デイジーの持ち主から一時預かって不正改造をした後、返却して持ち主を殺させたところまでは分かってるんだがなぁ……」
〔「東京では“クール・トウキョウ”の目玉となっているアンドロイド、特にボーカロイドやマルチタイプが注目されている中、人間に危害を加える個体も発生しているということで、対策が急がれています」〕
敷島:「不正改造しやがる人間が悪いんだがな。映画なんかじゃ、そういう黒幕は大抵アメリカにいる場合が多いんだけど、デイジーの不正改造をしやがったヤツもアメリカ人っぽいぞ」
エミリー:「社長の計画、進みそうですね」
敷島:「何が?」
エミリー:「社長御自らアメリカに乗り込み、その黒幕を退治することです」
敷島:「バカ言え。そういうのはシュワちゃんやブルース・ウィリス辺りに任せるよ」
大型バスで特攻する姿は、どう見てもハリウッドの映画スターにしか見えなかったエミリーだった。
エミリー:「私には社長がハリアーやアパッチで、暴走したロイドに攻撃する姿が思い浮かびますが?」
敷島:「こら。俺には操縦免許なんて無いぞ。……でもまあ、アメリカのデイライト社におバカな科学者がいたとしたら、一発殴りに行ってもいいかな」
エミリー:「さすがです」
敷島:「『営業が売りにくいモン造るな!』ってね」
エミリー:「……観点が違います」
敷島:「その点、平賀先生達は売り込みやすいものを造ってくれるから楽だ」
営業畑一筋(自称)の敷島である。
敷島:「午後は早速、売り込みに行くぞ」
エミリー:「はい」
敷島:「勝っちゃんの“クール・トウキョウ”が都議会で承認されたってことで、この勢いで霞ヶ関まで売りに行くぞ」
未だに霞ヶ関へのマルチタイプの売り込みを続けていた敷島だった。
敷島:「諦めないのが営業魂ってもんだからな」
エミリー:「さすがです」
[同日17:05.天候:晴 豊洲アルカディアビル1Fメインホール]
メインホールの片隅に置かれているグランドピアノ。
このビルに入居している、とある楽器メーカーが宣伝用に置いたものだが、それをエミリーが弾くことがある。
元々は自動演奏機能付きで17時になると勝手に流れていたのだが、それをエミリーがたまに弾くようになった(もちろん許可済み)。
自動演奏機能が付いているのに、あえてロボット(ロイド)が弾いているということで注目を浴びたこともあった。
今では、ビルの入居者は殆ど慣れてしまっている。
ホール内に流れているのは“幻想即興曲”。
鏡音リン:「あっ、社長!やっぱりここにいた!」
エレベーターから降りてきたリンが、ホール内のベンチに茫然自失とした感じで座っている敷島に駆け寄った。
敷島:「『アリッサー!』『ヒャッハー!“魔のモノ”の為に、お前の心臓は頂くぜー!』か……」
リン:「社長、古いよ。それ、“クロックタワー3”でしょ?」
敷島:「リンか……」
リン:「お役所に売り込みに行ったけど、悉く断れたって話なら、もう何度もあったでしょ?」
敷島:「“クール・トウキョウ”は推進されたはずなんだけどなぁ……」
所詮は地方自治体の議会で可決されただけの話。
国の機関としては、やはり国会を通らなければ棒にも箸にも掛からないらしい。
リン:「リンの仲間は売らないの?リンも増産されたら面白いなぁ!」
敷島:「ボーカロイドは、あくまでもエンターテイメント用だから。ミクみたいに、実は兵器用でしたなんて売り込んだりしようものなら……」
エミリーのピアノ演奏が終わる。
リン:「シンディの時は、横でフルート吹いてたね」
エミリー:「シンディは管楽器が得意だからな。ピアノには自動演奏させて、自分は横でフルート吹いてたのだろう?」
リン:「あれも面白かったよね。何せ、ピアノさんがシンディに合わせて鍵盤動かしてたんだから」
リンはピアノの方を向いてニッと笑った。
エミリー:「社長、気を取り直して帰りましょう。明日は科学館で七夕イベントがあります」
敷島:「そうだったな。リンとレンがイベントに出るんだったな。明日はよろしく頼むぞ?」
リン:「はーい!」(^O^)/
ロイド達の活躍はまだまだ続く。
敷島の営業は、前途多難なれど。