報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「仮面の少女」

2018-07-13 19:21:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月9日11:42.JR東京駅八重洲南口]

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございました。次は東京駅八重洲口、東京駅八重洲口。終点でございます。……〕

 私はそれまで記憶障害で入院していたという病院に向かい、そこで色々やってきた。
 検査などもしてみたが、相変わらずの記憶喪失というだけで、それ以外は特に障害も出ていない。
 その為、正式に退院しても大丈夫ということになった。
 但し、ボスが本当に何か申し入れをしてきたらしいが、そこはあえて【お察しください】。

 高橋:「すいません、先生。車、用意できなくて……」
 愛原:「いや、いいよ、別に。あとは、このまま事務所に帰るだけだから」
 高橋:「あいつらもまた、現地に向かいやがりまして……」
 愛原:「一体、何だって言うんだ?」

 私達はバスを降りた。
 都営バスは本当に駅の入口のすぐ近くにバスが止まるので、上手く乗りこなすと便利だ。

 高橋:「事務所でお話しましょう。その前に、寄る所がありますので」
 愛原:「寄る所だと?」

 私と高橋は駅構内を通り抜け、丸の内側へと出た。

 高橋:「大した所ではありません。コンビニですよ、コンビニ」
 愛原:「NEWDAYSなら、そこにあるだろう」
 高橋:「あ、いえ、そこじゃないです。ま、とにかく事務所へ」
 愛原:「?」

 私は首を傾げた。
 都営バスは反対側の丸の内側からも出ている。
 もっとも、運行担当営業所は違うだろうが。

 愛原:「だいぶ暑くなったな。俺の記憶が途切れる頃は、逆にクソが付くほど寒かったのに」
 高橋:「携帯型の扇風機で良ければ!」

 高橋はポケットの中から乾電池式の扇風機を取り出した。

 愛原:「ありがとう。……いや、うん……。熱風が来るだけだから、やっぱいいや」
 高橋:「そうですか。でもきっと、俺の話を聞いたら逆に寒くなりますよ」
 愛原:「何だ?納涼怪談大会でもする気か?」
 高橋:「近いかもしれません」
 愛原:「確かにバイオハザードのゾンビ祭りも文句無しのホラーだが、あれは寒くなるホラーじゃなくて、むしろ熱くなるホラーだからなぁ……」
 高橋:「でも、今度のはきっと寒くなります」
 愛原:「寒くなるホラーというと……幽霊の話とかか?」
 高橋:「……かもしれません」

[同日11:55.天候:晴 東京駅丸の内北口バス停→都営バス東20系統車内]

 バスの中はクーラーが効いて涼しかった。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは定刻通りに発車した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださまいして、ありがとうございます。この都営バスは東京都現代美術館前経由、錦糸町駅前行きでございます。次は呉服橋、呉服橋。……〕

 私と高橋君は1番後ろの座席に座っている。
 真っ昼間のバス車内は空いていた。
 というか、お腹も空いて来たな。
 バスを降りたら、何か食べよう。

 高橋:「少しだけ、お話しましょうか」

 高橋が唐突に言った。

 高橋:「先生が行方不明の間も、俺はあの仮面のクソガキを捜してました。それで、そいつをようやく見つけたんです。今、俺のチームの者が見張っててくれています」
 愛原:「いいのか?相手はあのタイラントも従えていたコだぞ?何の武器も持たない状態で……」
 高橋:「分かってます。あくまで見張っているだけで、手を出さないように言ってあります」
 愛原:「向こうから襲って来たら?」
 高橋:「全力で逃げるように言ってあります」
 愛原:「それならいいか……いいのか?……まあ、いいや。で、そのリサはどこにいる?」

 本名は知らない。
 アメリカの『リサ・トレヴァー』という名前の少女が実験体にさせられたという話は日本にも伝わっており、コンセプトが似ていたことから、私もそう呼んでいる。
 マスコミなどは、『仮面の少女』とか、ネットでは『仮面子ちゃん』と呼ばれていたが。
 但し、こっちには日本人の少女なので、くれぐれも誤解の無いように。

 高橋:「ここです」

 高橋はスマホの画面を私に見せた。
 そこに写っていたのは……。

 愛原:「学校!?」

 それも、随分古い。
 今時、田舎に行ってもなかなか無いのではないかと思われる木造校舎の外観だった。

 高橋:「はい」
 愛原:「東京に、まだこんな木造校舎の学校があるなんて……」
 高橋:「あ、いえ。都内ではありません」
 愛原:「何だ?……はっ、まさか……霧生市!?」
 高橋:「……だったら、面白かったんですがね。あいにくとあそこは『滅菌中』とかで、完全に立入禁止区域となっています。東北ですよ」
 愛原:「東北?」
 高橋:「ええ」
 愛原:「何で?」
 高橋:「今はもうとっくに潰れましたが、アンブレラには日本法人があったんです」
 愛原:「それは知ってる。一応、アメリカの本体から独立して、善良な製薬会社を目指そうとはしたものの、霧生市のバイオハザードを引き起こして、結局潰れたんじゃないか」
 高橋:「ええ。もしかしたら、学校を装った研究施設があるかもしれませんよ?」
 愛原:「アメリカじゃないんだから、そんなことないだろう」
 高橋:「とにかく、いると分かった以上、俺はそこに行くつもりです。そしてそれは、先生も行くべきなんです」
 愛原:「何だか知らんが、リサがいるなら行くべきだろうな」

 私は霧生市のバイオハザードから脱出する時に、リサを連れ出した。
 彼女自身はタイラントと違って、どちらかというと被害者サイドではないかと思ったからだ。
 だから私は連れ出した。
 きっと、その方が幸せになれるだろうからと。
 もし彼女が何か困っているのなら、力にならなければならない義務がある。
 しかし、高橋は違う考えのようだった。

 高橋:「ええ。是非、先生の手で仕留めてください」
 愛原:「リサはそんなに悪い事をしたのか?」
 高橋:「先生は覚えていないでしょうけどね、あの船でバイオハザードを引き起こしたのはあのクソガキです」

 ちょっと何言ってるか分かんないです。
 何で政府に保護されているリサが、あの船に乗ってきて、しかもバイオハザードを引き起こしたんだ???
 全く、私にはワケが分からなかった。
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“私立探偵 愛原学” 「病院へ向かう」

2018-07-13 10:35:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月9日07:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 しかしながら、ここ7ヶ月ほどの記憶が無い。
 目覚まし時計が鳴って、私は起床した。
 ……うん、ちゃんと昨日の記憶はある。
 昨日は飲んだくれているところを、私の弟子を自負する高橋君に保護されたんだったけな。
 私は起き上がって、寝室から出た。
 因みに、住んでいる所まで変わってしまった。
 それもそのはず。
 私は爆弾テロされた旧・事務所の一角を、そのまま居住区にしていたのだから。

 高橋:「おはようございます、先生」
 愛原:「あ、ああ。おはよう」

 高橋は私の家に住み込みで働いている。
 何でも、私を一流の探偵ということで、その一挙手一投足から勉強したいのだそうだ。
 その代わり、私の身の周りのことは何でもしてくれるとのこと。

 高橋:「もうすぐ朝飯できますんで、もう少しお待ちください」
 愛原:「分かった。ちょっと、顔洗って来る」
 高橋:「はい!」

 10代の頃は暴走族だか半グレ集団だか知らないが、そういう荒れた生活していた割には、やたら生活能力は強い。
 本人曰く、『少年院や少年刑務所で習いました』とのことだが、本当だろうか。
 今だって、手際良く朝食を作ってくれている。

〔「……次のニュースです。今年元日に太平洋沖に沈んだ豪華客船“顕正号”沈没事故ですが、その後の調査で特異ウィルスによるバイオハザードが船内で発生していたと国連組織BSAAが明らかにしました。BSAA極東支部の会見では……」〕

 高橋:「チッ!」

 高橋は舌打ちをすると、テレビのチャンネルを替えた。

 愛原:「どうした?」
 高橋:「あ、いえ。何でもありません」

 私は顔を洗って来ると、ダイニングに戻った。
 それにしても、このマンションも広いな。
 これも探偵協会が用意してくれたということだが、何だか出来過ぎている。
 どういうつもりなのか、協会に行って聞いて来る必要があるかもしれないな。
 だがその前に事務所に寄って……あ、病院に行かなきゃいけないんだっけ。
 昨夜、高野君に強く言われたしなぁ……。

[同日08:00.天候:晴 同地区 愛原の事務所]

 私達の住むマンションと事務所は、徒歩数分の御近所さんだ。

 高橋:「先生、病院に行かれるんじゃないんですか?」
 愛原:「ああ。だけどその前に、少しでもこの半年間のブランクを埋めておきたい。まずはメールからだ」

 私は事務所に入った。
 まだ、高野君は来ていなかった。
 高野君は事務員であり、基本的に私や高橋君と行動することはない。

 愛原:「ん!?」

 その時、事務所の電話が鳴った。

 高橋:「はい、愛原学探偵事務所です。……ボス!」

 ん?ボスだと?

 高橋:「……あ、はい。何の御用でしょうか?……分かりました。少々お待ちください」

 高橋は電話の受話器を私に渡した。

 愛原:「もしもし。お電話代わりました。愛原です」
 ボス:「私だ。高野君から聞いたよ。ようやく、事務所に戻ってきてくれたみたいだね?」
 愛原:「あ、こりゃどうも……。何ともはや……」

 ボスの正体については、未だに分からない。
 私が事務所を開設した時に『探偵協会の者だ』と名乗り、ボスの指示に従って動けば、事務所経営を安泰にしてくれるという。
 実際にクライアントを紹介してくれたりして、確かにその通りであったのだが……。
 探偵の仕事ってこんなんだったっけ?と、未だに疑問符を取り払えないのだ。

 ボス:「まあいい。記憶障害は残っているようだが、それ以外は特に問題は無さそうだね」
 愛原:「は、はい。今のところは……」
 ボス:「ところで、今日のニュースを見たかね?」
 愛原:「いえ、それはまだ……」
 ボス:「探偵たるもの、常に周囲の情報には敏感でなければならんぞ。今朝の朝刊でも買って読みたまえ。それと病院の方には協会の方からも話しておくから、ちゃんと行くのだぞ?」
 愛原:「り、了解しました!」

 私は電話を切った。

 愛原:「高橋君。俺は病院に行ってくる」
 高橋:「お供します!」

 言うと思った。

 愛原:「……俺の病院どこだっけ?」
 高橋:「俺がチームの者に言って、車回させますよ」
 愛原:「いや、いいよ!キミの仲間をタクシー代わりに使うな!」
 高橋:「大丈夫です。皆、先生に心酔してますんで」
 愛原:「俺、何かした?」
 高橋:「バイオハザードを2回も生き抜いたってことで、先生はちょっとした有名人ですよ」
 愛原:「1回目……霧生市のバイオハザードはもちろん記憶にあるが、2回目の沈没船については全く記憶が無いんだって」

 高橋は私が止める間も無く、チームメイト(?)にLINEを送っていた。
 そして……。

 手下A:「高橋さん、おはざーっス!」
 手下B:「お迎えに参上っス!」
 高橋:「遅ェぞ!5分以内に来いっつったろ!45秒遅刻だ……!」

 ギロリと高橋は年下の2人を睨みつけた。

 愛原:「高橋君、いいから!やめなさい!」
 高橋:「先生がそう仰るのでしたら……」

 私は再び走り屋仕様のチェイサーに乗ることとなった。

[同日08:20.天候:晴 都内の道路]

 渋滞する都内の道路をすり抜けたり、時には空いている逆方向の道を走ったりしている。
 車内にはヘビメタのロックが掛かっている。

 手下B:「高橋さん、やりましたよ。山口のヤツ、ついに見つけたらしいっス!」
 高橋:「マジか!?」
 愛原:「何が?」
 高橋:「あ……えーと……!先生の前だ。黙ってろ」
 手下B:「さ、サーセン」
 手下A:「でも高橋さん、どうせ先生にも後で話すんでしょう?ざっくりとだけでも言ってみたらどうっスか?」
 愛原:「まあ、確かに気になるね」
 高橋:「アレですよ。昨夜話した、白い仮面のクソガキのことです」
 愛原:「あれでしょ?リサ・トレヴァーのことでしょ?」

 もちろん、昔アメリカに現れたというアレとはまた違う。
 ただ、日本でも似たような実験は行われていて、その実験体たる彼女のことだ。
 霧生市のバイオハザードの後、政府に保護されたということだが……。

 高橋:「ええ。霧生市のアイツです」
 愛原:「それがどうして、俺達の敵なんだ?」
 高橋:「話せば長くなります。後でお話します」
 愛原:「……分かった」
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