[7月11日10:00.天候:晴 宮城県仙台市内某所→JR仙台駅]
私の名前は愛原学。
都内で探偵事務所を経営している。
郊外でのBOW調査も終わり、検査入院を経て、ようやく帰京できることになった。
今、私と高橋は仙台駅に向かうタクシーに乗っている。
ここまではいいのだが、不思議なのはそのリアシートにはちょこんとリサ・トレヴァーも乗っていること。
私はついリサとは病院でお別れするものと思っていた。
だが退院手続きを取っている時、BSAA職員から頼まれたのだ。
リサを東京まで連れて行ってほしいと。
何でも日本地区本部に連れて行きたいそうだが、こんな時に中国で比較的大きなバイオハザードが発生し、輸送用ヘリもそちらで優先的に使うことになった為、陸送するしか無くなったのだという。
それなら装甲車で運べば良いではないかということだが、それもまた中国で使うことになってしまった。
かといって自衛隊に頼むと高くつく。
しかもよく見ると、リサは私に懐いているので、私が輸送すれば安全だろうという判断をしたというのだ。
さすがに夜中のあれを見た以上、1つ返事で受けにくい状態だったのだが……。
高橋:「先生。いくら報酬が高いからって、こんな危険な仕事引き受けないでくださいよ」
愛原:「ま、まあいいじゃないか。高野君の話じゃ、まだ探偵の仕事の依頼が来ていないというんだし。当面の生活費は確保しておく必要がある」
高橋:「どうなっても知りませんよ」
愛原:「降りるなら降りていいぞ?」
高橋:「いえ。俺は先生と地獄の果てまでも付いて行く決心はしてますんで」
愛原:「じゃ、俺の決定に賛成ってことでいいな」
高橋:「しょうがないですね」
助手席後ろのシートに座っているリサは、物珍しそうに窓の外を見ていた。
リサ:「これが車……」
よっぽど珍しいのか。
愛原:「そんなに珍しいかい?」
リサ:「いつも移動はヘリコプターとか、トラックの荷台だったから……」
荷物扱いだな。
元は普通の少女だっただろうに、BSAAも微妙かな。
いや、こうして私に託しているという所は英断かもな。
そこは旧アンブレラと違うかもしれない。
愛原:「そうか。じゃあ、今日は東京まで珍しい乗り物で行くことになるよ」
リサ:「ほんと!?」
愛原:「ほんとほんと」
私はリサの頭を撫でて答えた。
手触りといい、髪質といい、この辺は人間の少女と変わらないのになぁ……。
こうして私達は、無事に仙台駅のタクシー降り場に到着した。
愛原:「タクシーチケットで払います」
運転手:「どうぞ」
タクシーチケットで払うの久しぶりだなぁ……。
これはBSAAの職員からもらったものだ。
リサの輸送を手伝う代わりに、その報酬と交通費は全て負担してくれるそうだ。
私は運転手から渡されたボールペンで料金を記入した。
運転手:「ありがとうございました」
愛原:「どうも」
私達はタクシーを降りた。
高橋:「プリウスのリアシートに3人は狭いですよ」
愛原:「リサがまだ女の子で良かったな」
高橋:「そういう問題じゃ……」
愛原:「乗り換え先はタクシーのリアシートよりも広いぞ」
高橋:「BSAAの奴ら、グリーン車くらい用意してくれなかったんですか」
愛原:「別にいいだろ。往路みたいな高速バスよりは」
高橋:「すいません!」
私達は駅構内に入った。
リサ:「おお〜!人がいっぱい!」
愛原:「東北一のターミナル駅だからな。まだ夏休みじゃないから、こんなもんだ」
リサ:「これだけ人が多いと、一思いに薙ぎ払いたくなっちゃうね〜!」
愛原:「するなよ!?するなよ!?絶対するなよ!?」
高橋:「先生、いっそのこと、こいつマジで殺……」
愛原:「さて、早く乗り場に行こう!」
私達は駅構内に入ると、上の階へ昇るエスカレーターに乗った。
高橋:「先生。昔はどこぞの空港で、バイオテロが発生したというじゃありませんか。ここも油断できませんよ?」
愛原:「未だに地下鉄以外の鉄道駅でそんな話は聞かないから大丈夫だろ。いざとなったら……リサに任せてみよう」
リサ:「ゾンビくらい一網打尽だよ!」
高橋:「アホか!……先生、俺が言いたいのは……」
愛原:「分かってる。俺は常に真剣に考えてるぞ」
高橋:「さすが先生です」
2階は在来線乗り場。
新幹線改札口は3階にある。
私達は更にエスカレーターで3階に上がった。
愛原:「よく普通車指定席3人横並びの席を確保できたものだ」
高橋:「もしかしたら奴ら、先生が必ず引き受けると予想していたのかもしれませんね?」
愛原:「はは、そうかもな」
高橋:「ナメやがって……!」
愛原:「ま、旧アンブレラの織り込みに巻き込まれるよりはマシなんじゃない?BSAAは正義の組織だからな。悪の組織に恩を売ったところで、後でロクでもないことになるのがベタな法則だが、正義の組織なら協力しておいても損は無いと思うんだ」
高橋:「それは俺も同意見です」
3階に着くと新幹線改札口がある。
もちろん今は自動改札機がズラッと並んでいる。
愛原:「キップは1人ずつ持とう。リサは窓側がいいな?」
リサ:「うん!」
高橋:「『うん』じゃなくて、『はい』だろ!」
リサ:「はい!お兄ちゃん!」
高橋:「う、うむ。素直でよろしい」
おやおや、高橋君もリサが妹みたいに思えて来たかなぁ?
愛原:「自動改札機を通り方は知ってるか?」
リサ:「んーとね……クランクを拾って来て開けるー」
愛原:「それは秘密の研究所とか、そこに至る道に仕掛けられたゲートを開ける時にやろうね」
“バイオハザード”と言えばクランクだ。
謎解きのアイテムとして欠かせないものだ。
実写映画が何だか物足りないのは、こういうクランクとかアイテムボックスとかが出てこないからだと私は思う。
愛原:「こうやって、ここにキップを入れる。するとゲートが開いて、向こうの穴からキップが出て来るから、こうやって通ってキップを取る」
リサ:「おお〜」
恐らく普通の人間の少女だった頃は、電車に乗ったことくらいあるだろうに、BOWとして改造されてからはそういう機会も無くなった上、人間だった頃の記憶も消されて、新鮮味のあるものとなっているのだろう。
高橋:「先生、保安検査場はこの先ですか?」
愛原:「キミは真人間だった頃の記憶はちゃんとあるよね?」
高橋が真顔で聞いているのは、彼が比較的表情に乏しい者であり、今の質問は冗談で聞いているものと信じたい。
私達はエスカレーターで更にホームへと向かった。
私の名前は愛原学。
都内で探偵事務所を経営している。
郊外でのBOW調査も終わり、検査入院を経て、ようやく帰京できることになった。
今、私と高橋は仙台駅に向かうタクシーに乗っている。
ここまではいいのだが、不思議なのはそのリアシートにはちょこんとリサ・トレヴァーも乗っていること。
私はついリサとは病院でお別れするものと思っていた。
だが退院手続きを取っている時、BSAA職員から頼まれたのだ。
リサを東京まで連れて行ってほしいと。
何でも日本地区本部に連れて行きたいそうだが、こんな時に中国で比較的大きなバイオハザードが発生し、輸送用ヘリもそちらで優先的に使うことになった為、陸送するしか無くなったのだという。
それなら装甲車で運べば良いではないかということだが、それもまた中国で使うことになってしまった。
かといって自衛隊に頼むと高くつく。
しかもよく見ると、リサは私に懐いているので、私が輸送すれば安全だろうという判断をしたというのだ。
さすがに夜中のあれを見た以上、1つ返事で受けにくい状態だったのだが……。
高橋:「先生。いくら報酬が高いからって、こんな危険な仕事引き受けないでくださいよ」
愛原:「ま、まあいいじゃないか。高野君の話じゃ、まだ探偵の仕事の依頼が来ていないというんだし。当面の生活費は確保しておく必要がある」
高橋:「どうなっても知りませんよ」
愛原:「降りるなら降りていいぞ?」
高橋:「いえ。俺は先生と地獄の果てまでも付いて行く決心はしてますんで」
愛原:「じゃ、俺の決定に賛成ってことでいいな」
高橋:「しょうがないですね」
助手席後ろのシートに座っているリサは、物珍しそうに窓の外を見ていた。
リサ:「これが車……」
よっぽど珍しいのか。
愛原:「そんなに珍しいかい?」
リサ:「いつも移動はヘリコプターとか、トラックの荷台だったから……」
荷物扱いだな。
元は普通の少女だっただろうに、BSAAも微妙かな。
いや、こうして私に託しているという所は英断かもな。
そこは旧アンブレラと違うかもしれない。
愛原:「そうか。じゃあ、今日は東京まで珍しい乗り物で行くことになるよ」
リサ:「ほんと!?」
愛原:「ほんとほんと」
私はリサの頭を撫でて答えた。
手触りといい、髪質といい、この辺は人間の少女と変わらないのになぁ……。
こうして私達は、無事に仙台駅のタクシー降り場に到着した。
愛原:「タクシーチケットで払います」
運転手:「どうぞ」
タクシーチケットで払うの久しぶりだなぁ……。
これはBSAAの職員からもらったものだ。
リサの輸送を手伝う代わりに、その報酬と交通費は全て負担してくれるそうだ。
私は運転手から渡されたボールペンで料金を記入した。
運転手:「ありがとうございました」
愛原:「どうも」
私達はタクシーを降りた。
高橋:「プリウスのリアシートに3人は狭いですよ」
愛原:「リサがまだ女の子で良かったな」
高橋:「そういう問題じゃ……」
愛原:「乗り換え先はタクシーのリアシートよりも広いぞ」
高橋:「BSAAの奴ら、グリーン車くらい用意してくれなかったんですか」
愛原:「別にいいだろ。往路みたいな高速バスよりは」
高橋:「すいません!」
私達は駅構内に入った。
リサ:「おお〜!人がいっぱい!」
愛原:「東北一のターミナル駅だからな。まだ夏休みじゃないから、こんなもんだ」
リサ:「これだけ人が多いと、一思いに薙ぎ払いたくなっちゃうね〜!」
愛原:「するなよ!?するなよ!?絶対するなよ!?」
高橋:「先生、いっそのこと、こいつマジで殺……」
愛原:「さて、早く乗り場に行こう!」
私達は駅構内に入ると、上の階へ昇るエスカレーターに乗った。
高橋:「先生。昔はどこぞの空港で、バイオテロが発生したというじゃありませんか。ここも油断できませんよ?」
愛原:「未だに地下鉄以外の鉄道駅でそんな話は聞かないから大丈夫だろ。いざとなったら……リサに任せてみよう」
リサ:「ゾンビくらい一網打尽だよ!」
高橋:「アホか!……先生、俺が言いたいのは……」
愛原:「分かってる。俺は常に真剣に考えてるぞ」
高橋:「さすが先生です」
2階は在来線乗り場。
新幹線改札口は3階にある。
私達は更にエスカレーターで3階に上がった。
愛原:「よく普通車指定席3人横並びの席を確保できたものだ」
高橋:「もしかしたら奴ら、先生が必ず引き受けると予想していたのかもしれませんね?」
愛原:「はは、そうかもな」
高橋:「ナメやがって……!」
愛原:「ま、旧アンブレラの織り込みに巻き込まれるよりはマシなんじゃない?BSAAは正義の組織だからな。悪の組織に恩を売ったところで、後でロクでもないことになるのがベタな法則だが、正義の組織なら協力しておいても損は無いと思うんだ」
高橋:「それは俺も同意見です」
3階に着くと新幹線改札口がある。
もちろん今は自動改札機がズラッと並んでいる。
愛原:「キップは1人ずつ持とう。リサは窓側がいいな?」
リサ:「うん!」
高橋:「『うん』じゃなくて、『はい』だろ!」
リサ:「はい!お兄ちゃん!」
高橋:「う、うむ。素直でよろしい」
おやおや、高橋君もリサが妹みたいに思えて来たかなぁ?
愛原:「自動改札機を通り方は知ってるか?」
リサ:「んーとね……クランクを拾って来て開けるー」
愛原:「それは秘密の研究所とか、そこに至る道に仕掛けられたゲートを開ける時にやろうね」
“バイオハザード”と言えばクランクだ。
謎解きのアイテムとして欠かせないものだ。
実写映画が何だか物足りないのは、こういうクランクとかアイテムボックスとかが出てこないからだと私は思う。
愛原:「こうやって、ここにキップを入れる。するとゲートが開いて、向こうの穴からキップが出て来るから、こうやって通ってキップを取る」
リサ:「おお〜」
恐らく普通の人間の少女だった頃は、電車に乗ったことくらいあるだろうに、BOWとして改造されてからはそういう機会も無くなった上、人間だった頃の記憶も消されて、新鮮味のあるものとなっているのだろう。
高橋:「先生、保安検査場はこの先ですか?」
愛原:「キミは真人間だった頃の記憶はちゃんとあるよね?」
高橋が真顔で聞いているのは、彼が比較的表情に乏しい者であり、今の質問は冗談で聞いているものと信じたい。
私達はエスカレーターで更にホームへと向かった。