報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「廃校であった怖い話」

2018-07-16 19:11:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月9日23:55.天候:晴 宮城県仙台市太白区郊外 とある廃校]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 ……って、今はそういう場合じゃない!

 高橋:「先生!早く学校の中へ!」

 高橋は学校の校門を開けて私を誘導した。
 私と、高橋の仲間の佐藤君はそれに誘われるようにして中へ飛び込んだ。
 高橋の仲間だったゾンビ化した3人が、呻き声を上げながら私達に向かって来る。

 高橋:「うらぁっ!」

 そして、思いっ切り門扉を閉める。
 もちろん、閂をガチャンと掛けるのも忘れない。
 ゾンビ3人は門扉の鉄格子を乱暴に揺すり、あるいは隙間に手を突っ込んで、ただ言葉にならない叫びを上げていた。

 高橋:「しばらくはこれで大丈夫でしょう」
 愛原:「あ、ああ。そうだな」
 佐藤:「岡田、白鳥、二瓶……皆、どうしちまったんだよ……!?」

 佐藤君はその場にへたり込んでしまった。

 高橋:「あれが俺と先生が霧生市と船で体験したバイオハザードだ!ボヤボヤしてたら、あいつらに食い殺されるぞ!死にたくなかったらついてこい!」

 高橋は佐藤君の首根っこを掴むと、急いで木造校舎へと向かった。

 愛原:「街の方は大丈夫なんだろうな?」
 高橋:「今はそんなことを心配している時ではありません」

 学校の正面入口も校門と同じく観音開きであったが、こちらは2枚ドアだった。
 当然ながら、鍵が掛かっている。
 しかしそこは、高橋君。
 キーピックを鍵穴に差し込んで、いとも簡単に解錠してしまった。

 佐藤:「さ、さすがは高橋さんっスね……」
 高橋:「そんなことはいいから!もう1度言うが、死にたくなかったら、俺や先生から離れるんじゃねぇぞ」
 佐藤:「は、はい!」

 私達は学校の中に入った。
 入ったらもちろん最初にあるのは下駄箱。
 校舎が木造なら、下駄箱も木造だった。
 もちろん、用があるのはここではない。

 高橋:「おい、佐藤。ここからお前の出番だぞ?お前達はここで何を見たんだ?そこへ連れてけ」
 佐藤:「は、はい」

 無人の廃校だ。
 校門の外と違って、ゾンビが徘徊しているはずがない。
 廃校なので、もちろん校内には電気が通っておらず、真っ暗だ。
 それを見越して、私や高橋はライトを持って来ている。
 ハンディタイプだと片手が塞がり、ショットガンやライフルなど、両手を使って発砲する銃器が使えない為、耳に掛けて前方を照らすライトを持って来ていた。
 私は購入した覚えは無いのだが、どうも私が入院している時に高橋や高野君が購入したらしい。

 佐藤:「凄いっスね。何か、特殊部隊の装備みたいっスね」

 佐藤君はさっきの恐怖はどこへやら、そんな感嘆な声を上げた。
 そういう佐藤君はハンディタイプのライトを持って来ている。
 ポケットサイズなのでそんなに明るく照らせるものではないが、それなりに明るいのはLEDだからか。

 高橋:「いいから早く案内しろ」
 佐藤:「はい、こっちです」

 所々、暴走族のような落書きがしてあるのは、やはり不法侵入者がいたからか。
 もっとも、この佐藤君達もその1人であったわけで、彼らから齎された情報を基にここに来ている私達も共犯者のようなものか。

 愛原:「しかしねぇ、高橋君。言っちゃ何だか、やっぱり武器は必要なんじゃないかなぁ?」
 高橋:「武器ならありますよ?」

 高橋はさっきゾンビ化したケン君を殴り殺した大型のレンチと、車から持って来たという鉄パイプを持って来た。

 佐藤:「さすがは高橋さんっス!」
 愛原:「鉄パイプかよ……」

 霧生市のバイオハザードを体験した身としては、こんなものあまり役に立たないことは分かっている。
 ていうかこんなものを装備しているとは、走り屋じゃなくて、やっぱり暴走族なんじゃないのか?
 私がそう思っていると、高橋が言った。

 高橋:「珍走団の中には、走り屋を潰して回る『潰し屋』ってのがいるんですよ。それに対抗する為の、最低限の護身用です」
 佐藤:「そうそう」
 愛原:「色んなジャンルがあるんだなぁ……」
 佐藤:「『警察に捕まると点数とカネが減る。潰し屋に捕まると寿命とカネと減る』と言われてます」
 愛原:「ゾンビより怖ェな、おい!」
 高橋:「それよりまだなのか?」
 佐藤:「この先です」

 校舎の突き当りまでやってきた。
 それまでは月明かりが窓から差し込んでいて、場所によっては少し明るい所もあったのだが、そこは陰になっていて真っ暗だった。

 佐藤:「あれ!?」
 高橋:「どうした?」

 そこは階段になっていた。

 佐藤:「ここに下に降りる階段があったんです!こんなドア、前に来た時は無かったのに!」

 これだけ見ると、階段は2階へ上がるものだけしかないように見える。
 佐藤君の話では、下に降りる階段もあったというのだ。
 だが確かによく見ると、ここだけやけに新しい。
 鉄製のドアも、その周りの壁もコンクリート造りになっていた。
 ところが、そのドアにノブが無い。
 ノブがあったであろう場所は、丸い蓋がしてあった。
 それは簡単にズラすことはできたのだが、開けてみると、穴の中に正方形の出っ張りがあった。
 要はこの出っ張りにノブを取り付けて、それで開けられる仕組みになっているらしい。
 因みにドアノブ自体が鍵になっているこのタイプを、『グレモン錠』と言い、鍵とドアノブの両方を果たすそれを『グレモン鍵』または『ハンドルキー』と言う。

 愛原:「どこかでグレモン鍵を探さないと!」
 高橋:「チッ!誰がこんな面倒なマネを!」

 高橋の言葉に、私は背筋が寒くなるのを覚えた。
 ここは廃校だ。
 といっても管理自体は、まだ仙台市などの自治体が行っているのかもしれない。
 ただ、暴走族の侵入を許している時点で、それが疎かにはなっているのだろうが。
 逆を言えば、そんな管理状況で、何でここだけ真新しい壁とドアを作ったのか。
 ここがちゃんと管理されている場所なら、気にはなっても、背筋が寒くなるほどのものではなかっただろう。
 今にも朽ち果てそうな木造校舎には似つかわしくないコンクリート壁と鉄扉。
 これは一体……?

 愛原:「もしかしたら、本当にこの先に研究施設があるのかもな。……ていうか佐藤君だっけ?前来た時は無かったということは、キミはこの先にあるという階段を下りたってことかい?」
 佐藤:「は、はい!階段を下りた先にはエレベーターがありました」
 愛原:「エレベーター!?」
 佐藤:「そうなんです。ただ、階数表示のランプは点いて無かったですし、試しにボタンを押してみましたけど、何にも起こらなかったんで、そのまま帰ったんです」

 私は周りを見回した。
 もしエレベーターが1階から上にもあるのなら、この階段のすぐ横にあるはずだ。
 しかし、それは無かった。
 つまり、エレベーターは地下1階から更に下に降りる為のものなのではないか。
 そして、そこにあるものとは……。

 愛原:「やっぱり昔、アンブレラ日本支部が使ってた研究室があるのかもな。……となると、やっぱりちゃんとした武器が必要だと思う」
 高橋:「いや、それよりせっかくドアノブを見つけても、エレベーターが動いてないんじゃ意味が無いと思います」
 愛原:「エレベーターを動かす手段も、この学校の中にあるかもしれないぞ?」
 佐藤:「ただ単に停電してるんで、動いてないだけだと思いますけど……」

 取りあえず私達はハンドルキーを探すことにした。
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“私立探偵 愛原学” 「廃校」

2018-07-16 10:27:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月9日23:30.天候:曇 宮城県仙台市太白区某所 国道286号線上]

 私の名前は愛原学。
 今日は仕事以外でこの町にやってきた。
 何でも、バイオハザードたけなわだった霧生市から一緒に脱出した仮面の少女が私達に敵対し、そいつがこの町にいるのだと高橋が言ったからだ。
 私の記憶はまだまだ曖昧で、何が起こったのかは思い出せない。
 だが、少しずつ記憶は戻っているようで、その断片的な記憶から推測するに、どうも何か誤解があったのではないかと思う。
 ただ、分からないのは、霧生市脱出後、日本政府に保護されたはずの彼女が、どうしてあの船に乗っていて、どうして私達に敵対したのかだ。
 それと、もう1つ不安なのは、その彼女の強さは尋常ではないということ。
 船の中でどのように戦ったのかの記憶が無いので、霧生市のバイオハザードの時を思い返してみよう。
 タイラントと共に行動し、しかもタイラントの方が従属的な立場だったはずだ。
 そこはアメリカの話と全く違う。

 高橋:「ん?……おい、こんな道あったのか?」

 私が考え事をしていると、リアシートに私と並んで座る高橋が前を見ながら言った。

 佐藤:「ああ、バイパスっスね。だいぶ前からありましたよ」
 高橋:「ふーん……」
 千葉:「でも学校は、そっちの旧道の方にあるっス」
 高橋:「そうか」
 愛原:「ん?学校?……あ、そうか。廃校って行ってたっけ」
 高橋:「そうです」

 恐らくは車検に通らないであろう青白いヘッドランプを灯したストリームが、旧道の方にハンドルを切る。
 確かにバイパスと比べて、車の通りは少ないようだ。

 佐藤:「で、こっちと……」

 何か知らんが、朽ちたブロック塀などに、明らかに暴走族の落書きとかがしてあるのだが……。
 実は本当に暴走族の抗争会場に行くんじゃないのか。

 千葉:「おー、もうあいつら来てる」
 高橋:「見張りを頼んだからな」

 朽ちたブロック塀に錆びついた校門。
 そして月明かりに照らされて、木造校舎が見えて来る。
 確かに、こんな所に旧アンブレラの研究施設が隠されているとは誰も思うまいな。
 それにしても、ホラーチックな雰囲気だ。
 よくこんな所見っけてきたものだ。
 私がそれを指摘すると……。

 佐藤:「地元じゃ、ちょっとしたホラースポットなんスよ。俺らみたいなのが、よく肝試しに行くんス」

 とのことだ。
 ああ、やっぱり。
 いるんだよな、こういう無謀な若者たちが。

 高橋:「俺の仲間に地元が仙台ってヤツがいまして、そいつがぼんやり言ってたことがヒントになったんですよ」
 愛原:「キミ、俺より人脈あるな……」

 車が仲間の車2台の前に止まる。
 だが、仲間の車が来たというのに、誰も降りてこない。

 愛原:「なあ。あの車、誰か乗ってるのか?」
 高橋:「クソッ!俺達が来るまで待ってろと言ったのに!」
 佐藤:「一服でもしてんじゃないスか?」
 千葉:「便所にでも行ってるんスよ、きっと」
 愛原:「皆で連れション、連れタバコかい?それにしても、俺達が向かってるってのは知ってるんだから、誰かしら残っててもいいだろうに」
 高橋:「ええ。後で殴り聞かせておきますので、どうか先生、お怒りを鎮めてください……
 愛原:「いや、まずキミの怒りを収めようか」

 とにかく私達は車を降りた。
 そして、先に来て待っているはずの高橋の仲間の車に近づいた。
 止まっているのは赤いスカイラインと青いレガシー。
 どちらも、走り屋さんが乗りそうな車だ。
 実際そのように改造されている。

 愛原:「うーん……スカイラインは誰も乗っていなさそうだなぁ……」

 私は運転席を覗き込んだ。
 走り屋さんの車だと、窓にスモークが貼っていたりするから、尚更車内を覗き込みにくい。
 もっとも、それが狙いで貼っているのだろうが。

 佐藤:「あっ、いましたいました!」
 愛原:「えっ?」

 レガシーの方を見ると、助手席に誰かが乗っていた。
 シートを倒し、しかもうつ伏せになっているので、スモークガラスに隠れて分からなかったのだ。

 千葉:「寝てたのかよ、ケンのヤツ!w」

 千葉君は笑いながら助手席のドアを開けた。

 千葉:「おい、ケン!起きろ!高橋さん達、着いたぞ!」

 千葉君はケン君という仲間を揺り起こした。

 高橋:「留守番を任されていたものの、退屈で寝てしまったってところですかね」
 愛原:「それならしょうがないじゃん」
 千葉:「おいケン!ケンってば!おい!!」

 だが、何だか様子がおかしい。

 佐藤:「どうした?」
 千葉:「いや、ケンが起きねぇんだ」
 佐藤:「酔っ払って寝ちまったのか?」
 千葉:「酒の臭いはしねぇよ。……ケン、起きろよ!」
 ケン:「ウウウ……!」
 佐藤:「おっ、やっと起きたじゃん。しょうがねぇなぁ……」

 佐藤君が苦笑いをしている。
 だが、私は何だか嫌な予感がした。
 いや……その……ケン君とやらが放った呻き声……これって……。

 ケン:「ゥアアアアアッ!!」
 千葉:「ぎゃあああっ!!」
 佐藤:「な、何だァ!?」
 愛原:「ゾンビ化してる!?どういうことだ!?」
 高橋:「くっ……!」

 高橋は車の中に積んであった長いレンチを取り出すと、それでケン君の頭を殴り付けた。
 ケン君はお構いなしに千葉君の肉に食らい付いている。

 千葉:「がぁ……!あぁあ……!!」
 佐藤:「……!!」

 佐藤君は放心状態だった。
 私も何か武器になるものを探したが、あいにくと見つからない。
 そうこうしているうちに、高橋君がケン君の頭を叩き割った。

 ケン:「アァアッ……!」
 高橋:「はぁ……はぁ……!何てこった……!」

 私は千葉君に駆け寄ったが、千葉君は目を見開いたまま微動だにしなかった。
 もう死んでしまったことは明らかだった。

 高橋:「佐藤、お前は逃げろ。逃げてサツに通報してくれ」
 愛原:「そ、そうだな。それがいい」

 だが、佐藤君は腰が抜けて立てないようだった。

 高橋:「チッ、弱虫め」
 愛原:「いや、しょうがないよ。てか、何でゾンビ化!?別に、街は何とも無かったのに……」
 高橋:「あのクソガキのせいでしょう。船の時と同じだ」
 愛原:「ええっ?……とにかく、何の武器も無いんじゃしょうがない。佐藤君を連れて、一旦引き返そう。バイパスとの分岐点にコンビニがあっただろ。あそこまで行けば……」

 私がどうしてそんなことを言ったのかというと、スマホが何故か圏外になっていたからだ。
 私のも高橋のも、そして佐藤君のも……。
 山深い所だからなのか、或いは……。
 それでも、コンビニには固定電話がある。
 店の入口の横に公衆電話もあるだろうから、そこから通報すれば良い。
 そう思ったのだ。
 だが、それはできなかった。
 もう、私達は逃げられない。
 何故なら……。

 ゾンビA:「アァァ……!」
 ゾンビB:「ウゥウ……!」
 ゾンビC:「アァア……!」
 高橋:「こ、こいつら……!」

 高橋の仲間達は、ちゃんと私達を待っていたのだ。
 ゾンビ化し、私達の血肉を食らう為に……!
コメント (2)
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