[7月9日23:55.天候:晴 宮城県仙台市太白区郊外 とある廃校]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
……って、今はそういう場合じゃない!
高橋:「先生!早く学校の中へ!」
高橋は学校の校門を開けて私を誘導した。
私と、高橋の仲間の佐藤君はそれに誘われるようにして中へ飛び込んだ。
高橋の仲間だったゾンビ化した3人が、呻き声を上げながら私達に向かって来る。
高橋:「うらぁっ!」
そして、思いっ切り門扉を閉める。
もちろん、閂をガチャンと掛けるのも忘れない。
ゾンビ3人は門扉の鉄格子を乱暴に揺すり、あるいは隙間に手を突っ込んで、ただ言葉にならない叫びを上げていた。
高橋:「しばらくはこれで大丈夫でしょう」
愛原:「あ、ああ。そうだな」
佐藤:「岡田、白鳥、二瓶……皆、どうしちまったんだよ……!?」
佐藤君はその場にへたり込んでしまった。
高橋:「あれが俺と先生が霧生市と船で体験したバイオハザードだ!ボヤボヤしてたら、あいつらに食い殺されるぞ!死にたくなかったらついてこい!」
高橋は佐藤君の首根っこを掴むと、急いで木造校舎へと向かった。
愛原:「街の方は大丈夫なんだろうな?」
高橋:「今はそんなことを心配している時ではありません」
学校の正面入口も校門と同じく観音開きであったが、こちらは2枚ドアだった。
当然ながら、鍵が掛かっている。
しかしそこは、高橋君。
キーピックを鍵穴に差し込んで、いとも簡単に解錠してしまった。
佐藤:「さ、さすがは高橋さんっスね……」
高橋:「そんなことはいいから!もう1度言うが、死にたくなかったら、俺や先生から離れるんじゃねぇぞ」
佐藤:「は、はい!」
私達は学校の中に入った。
入ったらもちろん最初にあるのは下駄箱。
校舎が木造なら、下駄箱も木造だった。
もちろん、用があるのはここではない。
高橋:「おい、佐藤。ここからお前の出番だぞ?お前達はここで何を見たんだ?そこへ連れてけ」
佐藤:「は、はい」
無人の廃校だ。
校門の外と違って、ゾンビが徘徊しているはずがない。
廃校なので、もちろん校内には電気が通っておらず、真っ暗だ。
それを見越して、私や高橋はライトを持って来ている。
ハンディタイプだと片手が塞がり、ショットガンやライフルなど、両手を使って発砲する銃器が使えない為、耳に掛けて前方を照らすライトを持って来ていた。
私は購入した覚えは無いのだが、どうも私が入院している時に高橋や高野君が購入したらしい。
佐藤:「凄いっスね。何か、特殊部隊の装備みたいっスね」
佐藤君はさっきの恐怖はどこへやら、そんな感嘆な声を上げた。
そういう佐藤君はハンディタイプのライトを持って来ている。
ポケットサイズなのでそんなに明るく照らせるものではないが、それなりに明るいのはLEDだからか。
高橋:「いいから早く案内しろ」
佐藤:「はい、こっちです」
所々、暴走族のような落書きがしてあるのは、やはり不法侵入者がいたからか。
もっとも、この佐藤君達もその1人であったわけで、彼らから齎された情報を基にここに来ている私達も共犯者のようなものか。
愛原:「しかしねぇ、高橋君。言っちゃ何だか、やっぱり武器は必要なんじゃないかなぁ?」
高橋:「武器ならありますよ?」
高橋はさっきゾンビ化したケン君を殴り殺した大型のレンチと、車から持って来たという鉄パイプを持って来た。
佐藤:「さすがは高橋さんっス!」
愛原:「鉄パイプかよ……」
霧生市のバイオハザードを体験した身としては、こんなものあまり役に立たないことは分かっている。
ていうかこんなものを装備しているとは、走り屋じゃなくて、やっぱり暴走族なんじゃないのか?
私がそう思っていると、高橋が言った。
高橋:「珍走団の中には、走り屋を潰して回る『潰し屋』ってのがいるんですよ。それに対抗する為の、最低限の護身用です」
佐藤:「そうそう」
愛原:「色んなジャンルがあるんだなぁ……」
佐藤:「『警察に捕まると点数とカネが減る。潰し屋に捕まると寿命とカネと減る』と言われてます」
愛原:「ゾンビより怖ェな、おい!」
高橋:「それよりまだなのか?」
佐藤:「この先です」
校舎の突き当りまでやってきた。
それまでは月明かりが窓から差し込んでいて、場所によっては少し明るい所もあったのだが、そこは陰になっていて真っ暗だった。
佐藤:「あれ!?」
高橋:「どうした?」
そこは階段になっていた。
佐藤:「ここに下に降りる階段があったんです!こんなドア、前に来た時は無かったのに!」
これだけ見ると、階段は2階へ上がるものだけしかないように見える。
佐藤君の話では、下に降りる階段もあったというのだ。
だが確かによく見ると、ここだけやけに新しい。
鉄製のドアも、その周りの壁もコンクリート造りになっていた。
ところが、そのドアにノブが無い。
ノブがあったであろう場所は、丸い蓋がしてあった。
それは簡単にズラすことはできたのだが、開けてみると、穴の中に正方形の出っ張りがあった。
要はこの出っ張りにノブを取り付けて、それで開けられる仕組みになっているらしい。
因みにドアノブ自体が鍵になっているこのタイプを、『グレモン錠』と言い、鍵とドアノブの両方を果たすそれを『グレモン鍵』または『ハンドルキー』と言う。
愛原:「どこかでグレモン鍵を探さないと!」
高橋:「チッ!誰がこんな面倒なマネを!」
高橋の言葉に、私は背筋が寒くなるのを覚えた。
ここは廃校だ。
といっても管理自体は、まだ仙台市などの自治体が行っているのかもしれない。
ただ、暴走族の侵入を許している時点で、それが疎かにはなっているのだろうが。
逆を言えば、そんな管理状況で、何でここだけ真新しい壁とドアを作ったのか。
ここがちゃんと管理されている場所なら、気にはなっても、背筋が寒くなるほどのものではなかっただろう。
今にも朽ち果てそうな木造校舎には似つかわしくないコンクリート壁と鉄扉。
これは一体……?
愛原:「もしかしたら、本当にこの先に研究施設があるのかもな。……ていうか佐藤君だっけ?前来た時は無かったということは、キミはこの先にあるという階段を下りたってことかい?」
佐藤:「は、はい!階段を下りた先にはエレベーターがありました」
愛原:「エレベーター!?」
佐藤:「そうなんです。ただ、階数表示のランプは点いて無かったですし、試しにボタンを押してみましたけど、何にも起こらなかったんで、そのまま帰ったんです」
私は周りを見回した。
もしエレベーターが1階から上にもあるのなら、この階段のすぐ横にあるはずだ。
しかし、それは無かった。
つまり、エレベーターは地下1階から更に下に降りる為のものなのではないか。
そして、そこにあるものとは……。
愛原:「やっぱり昔、アンブレラ日本支部が使ってた研究室があるのかもな。……となると、やっぱりちゃんとした武器が必要だと思う」
高橋:「いや、それよりせっかくドアノブを見つけても、エレベーターが動いてないんじゃ意味が無いと思います」
愛原:「エレベーターを動かす手段も、この学校の中にあるかもしれないぞ?」
佐藤:「ただ単に停電してるんで、動いてないだけだと思いますけど……」
取りあえず私達はハンドルキーを探すことにした。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
……って、今はそういう場合じゃない!
高橋:「先生!早く学校の中へ!」
高橋は学校の校門を開けて私を誘導した。
私と、高橋の仲間の佐藤君はそれに誘われるようにして中へ飛び込んだ。
高橋の仲間だったゾンビ化した3人が、呻き声を上げながら私達に向かって来る。
高橋:「うらぁっ!」
そして、思いっ切り門扉を閉める。
もちろん、閂をガチャンと掛けるのも忘れない。
ゾンビ3人は門扉の鉄格子を乱暴に揺すり、あるいは隙間に手を突っ込んで、ただ言葉にならない叫びを上げていた。
高橋:「しばらくはこれで大丈夫でしょう」
愛原:「あ、ああ。そうだな」
佐藤:「岡田、白鳥、二瓶……皆、どうしちまったんだよ……!?」
佐藤君はその場にへたり込んでしまった。
高橋:「あれが俺と先生が霧生市と船で体験したバイオハザードだ!ボヤボヤしてたら、あいつらに食い殺されるぞ!死にたくなかったらついてこい!」
高橋は佐藤君の首根っこを掴むと、急いで木造校舎へと向かった。
愛原:「街の方は大丈夫なんだろうな?」
高橋:「今はそんなことを心配している時ではありません」
学校の正面入口も校門と同じく観音開きであったが、こちらは2枚ドアだった。
当然ながら、鍵が掛かっている。
しかしそこは、高橋君。
キーピックを鍵穴に差し込んで、いとも簡単に解錠してしまった。
佐藤:「さ、さすがは高橋さんっスね……」
高橋:「そんなことはいいから!もう1度言うが、死にたくなかったら、俺や先生から離れるんじゃねぇぞ」
佐藤:「は、はい!」
私達は学校の中に入った。
入ったらもちろん最初にあるのは下駄箱。
校舎が木造なら、下駄箱も木造だった。
もちろん、用があるのはここではない。
高橋:「おい、佐藤。ここからお前の出番だぞ?お前達はここで何を見たんだ?そこへ連れてけ」
佐藤:「は、はい」
無人の廃校だ。
校門の外と違って、ゾンビが徘徊しているはずがない。
廃校なので、もちろん校内には電気が通っておらず、真っ暗だ。
それを見越して、私や高橋はライトを持って来ている。
ハンディタイプだと片手が塞がり、ショットガンやライフルなど、両手を使って発砲する銃器が使えない為、耳に掛けて前方を照らすライトを持って来ていた。
私は購入した覚えは無いのだが、どうも私が入院している時に高橋や高野君が購入したらしい。
佐藤:「凄いっスね。何か、特殊部隊の装備みたいっスね」
佐藤君はさっきの恐怖はどこへやら、そんな感嘆な声を上げた。
そういう佐藤君はハンディタイプのライトを持って来ている。
ポケットサイズなのでそんなに明るく照らせるものではないが、それなりに明るいのはLEDだからか。
高橋:「いいから早く案内しろ」
佐藤:「はい、こっちです」
所々、暴走族のような落書きがしてあるのは、やはり不法侵入者がいたからか。
もっとも、この佐藤君達もその1人であったわけで、彼らから齎された情報を基にここに来ている私達も共犯者のようなものか。
愛原:「しかしねぇ、高橋君。言っちゃ何だか、やっぱり武器は必要なんじゃないかなぁ?」
高橋:「武器ならありますよ?」
高橋はさっきゾンビ化したケン君を殴り殺した大型のレンチと、車から持って来たという鉄パイプを持って来た。
佐藤:「さすがは高橋さんっス!」
愛原:「鉄パイプかよ……」
霧生市のバイオハザードを体験した身としては、こんなものあまり役に立たないことは分かっている。
ていうかこんなものを装備しているとは、走り屋じゃなくて、やっぱり暴走族なんじゃないのか?
私がそう思っていると、高橋が言った。
高橋:「珍走団の中には、走り屋を潰して回る『潰し屋』ってのがいるんですよ。それに対抗する為の、最低限の護身用です」
佐藤:「そうそう」
愛原:「色んなジャンルがあるんだなぁ……」
佐藤:「『警察に捕まると点数とカネが減る。潰し屋に捕まると寿命とカネと減る』と言われてます」
愛原:「ゾンビより怖ェな、おい!」
高橋:「それよりまだなのか?」
佐藤:「この先です」
校舎の突き当りまでやってきた。
それまでは月明かりが窓から差し込んでいて、場所によっては少し明るい所もあったのだが、そこは陰になっていて真っ暗だった。
佐藤:「あれ!?」
高橋:「どうした?」
そこは階段になっていた。
佐藤:「ここに下に降りる階段があったんです!こんなドア、前に来た時は無かったのに!」
これだけ見ると、階段は2階へ上がるものだけしかないように見える。
佐藤君の話では、下に降りる階段もあったというのだ。
だが確かによく見ると、ここだけやけに新しい。
鉄製のドアも、その周りの壁もコンクリート造りになっていた。
ところが、そのドアにノブが無い。
ノブがあったであろう場所は、丸い蓋がしてあった。
それは簡単にズラすことはできたのだが、開けてみると、穴の中に正方形の出っ張りがあった。
要はこの出っ張りにノブを取り付けて、それで開けられる仕組みになっているらしい。
因みにドアノブ自体が鍵になっているこのタイプを、『グレモン錠』と言い、鍵とドアノブの両方を果たすそれを『グレモン鍵』または『ハンドルキー』と言う。
愛原:「どこかでグレモン鍵を探さないと!」
高橋:「チッ!誰がこんな面倒なマネを!」
高橋の言葉に、私は背筋が寒くなるのを覚えた。
ここは廃校だ。
といっても管理自体は、まだ仙台市などの自治体が行っているのかもしれない。
ただ、暴走族の侵入を許している時点で、それが疎かにはなっているのだろうが。
逆を言えば、そんな管理状況で、何でここだけ真新しい壁とドアを作ったのか。
ここがちゃんと管理されている場所なら、気にはなっても、背筋が寒くなるほどのものではなかっただろう。
今にも朽ち果てそうな木造校舎には似つかわしくないコンクリート壁と鉄扉。
これは一体……?
愛原:「もしかしたら、本当にこの先に研究施設があるのかもな。……ていうか佐藤君だっけ?前来た時は無かったということは、キミはこの先にあるという階段を下りたってことかい?」
佐藤:「は、はい!階段を下りた先にはエレベーターがありました」
愛原:「エレベーター!?」
佐藤:「そうなんです。ただ、階数表示のランプは点いて無かったですし、試しにボタンを押してみましたけど、何にも起こらなかったんで、そのまま帰ったんです」
私は周りを見回した。
もしエレベーターが1階から上にもあるのなら、この階段のすぐ横にあるはずだ。
しかし、それは無かった。
つまり、エレベーターは地下1階から更に下に降りる為のものなのではないか。
そして、そこにあるものとは……。
愛原:「やっぱり昔、アンブレラ日本支部が使ってた研究室があるのかもな。……となると、やっぱりちゃんとした武器が必要だと思う」
高橋:「いや、それよりせっかくドアノブを見つけても、エレベーターが動いてないんじゃ意味が無いと思います」
愛原:「エレベーターを動かす手段も、この学校の中にあるかもしれないぞ?」
佐藤:「ただ単に停電してるんで、動いてないだけだと思いますけど……」
取りあえず私達はハンドルキーを探すことにした。