報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「交錯する物語」

2018-07-02 19:14:37 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月23日16:58.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR東北新幹線“やまびこ”50号9号車内]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。上越新幹線、北陸新幹線、高崎線、埼京線、川越線、京浜東北線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。大宮の次は、上野に止まります〕

 西日が差す中、列車は減速を始めた。
 すぐ左手に上越新幹線や北陸新幹線の共用線路と、更にその外側にはニューシャトルの軌道も見える。

 敷島:「取りあえず、アリスとシンディはここで下車だな。俺はリンとレンを事務所まで送ってくるから」
 アリス:「分かったわ」
 鏡音リン:「わーい!社長と一緒〜!」\(^_^)/
 アリス:「早く帰って来るのよ」
 敷島:「何だったら、夕食は先に食べてていいぞ」
 アリス:「トニーのお腹を空かせるわけにはいかないからね、そうさせてもらうわ」

 列車がホームに滑り込む。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ〜、大宮です。14番線に到着の電車は……」〕

 アリスとシンディはここで列車を降りた。
 尚、この時点で平賀と村上、それにロイも仙台駅で降りている。

 リン:「んしょんしょ……」
 敷島:「何やってるんだ?」
 リン:「もち。向かい合わせだYo」
 敷島:「別にいいのに……」

 リンは自分達の座っている席を向かい合わせにした。
 これで敷島やエミリーの席と対面することになる。
 そうしているうちに、再び列車は走り出した。
 ここから先は線形が悪くなる為、新幹線は時速110キロ以下の徐行区間となる。
 それでも最高速度が100キロの埼京線よりは速い。
 その時、敷島のスマホが震えた。

 敷島:「鷲田警視からだ」

 敷島はスマホ片手にデッキに出た。

 敷島:「どうしました、鷲田部長?」
 鷲田:「敷島社長、今どこにいる?」
 敷島:「新幹線の中ですよ。今、大宮を出たところです。……ええ。うちのボーカロイドか一緒だったので、事務所まで送って行こうかと。何しろ彼らはうちの大事な財産なんでね」
 鷲田:「そうか。これは捜査情報なので内密にしておいて欲しいのだが、キミがくれた情報は無効になったよ」
 敷島:「? どういうことですか?」
 鷲田:「デイジーの購入者と思われる男、布袋仁氏が自宅マンションで殺された」
 敷島:「はあ!?」
 鷲田:「それも死後3ヶ月ほど経ってて、ホトケさんはすっかりミイラになってたよ」
 敷島:「包帯をどこでそんなに買ったんだー?」
 鷲田:「なにもエジプトのミイラみたいになっていた、とは言っとらん!」
 敷島:「おっと!デイジーのことだから、きっとオーナーを裏切ったんでしょうね」
 鷲田:「これだからあのロボット達は怖い。ちゃんと制御してくれなきゃ困るぞ」
 敷島:「うちのロイドは大丈夫ですよ」

 敷島は脇に立つエミリーをチラッと見て言った。

 敷島:「ミイラみたいになってて、よく殺されたって分かりますね?」
 鷲田:「警察をナメるな。ホトケさんの体の中から、銃弾が何発も出て来た。にも関わらず、部屋には銃など無い。誰かが射殺したと見ていいだろう。そっちのロボットならできるだろう?」
 敷島:「確かにデイジーは銃火器を装備していたそうです。でも、よく近隣住民に発砲音がバレませんでしたね」
 鷲田:「サイレンサーでも使ったのだろう。キミんとこもそれを使っていたじゃないか」
 敷島:「そうでした。それじゃ、振り出しに戻っちゃいますね」
 鷲田:「キミ達が探索を試みた廃坑、あそこを警察で調べてみることにする。ただ、今の東北地方は活発化した梅雨前線のせいで、現地には近づけない状態だ。天候が回復次第、捜査を行う」
 敷島:「うちのロイド貸します?相手は爆弾頭に乗せて特攻してくる奴らですよ?」
 鷲田:「必要になったら貸してもらおう。その為の捜査情報提供であることを忘れないでくれ」
 敷島:「分かりました。……いや、私はリンとレンを事務所に置いたらまた帰りますよ。うちの嫁が早く帰れってうるさくて」
 鷲田:「そうか。それは結構なことだ。今のうちに必要とされておくがいい」
 敷島:「どういうことですか?」
 鷲田:「俺みたいに結婚25年目ともなれば、早く帰ろうとすると却って迷惑がられるってことだ」
 敷島:「あらまっ!それは御愁傷様です。それでは失礼します」

 敷島は電話を切った。

 エミリー:「何ですって?」
 敷島:「結論から言おう。リンとレンを事務所に置いたら、すぐ大宮に引き返した方が良さそうだ」
 エミリー:「それはロボットテロが?」
 敷島:「いや、俺の結婚生活が」
 エミリー:「は???」

 エミリーは首を傾げた。
 そして、

 エミリー:(私はまだ人間のことを全て理解できていないということか……)

 と、思ったのだった。

[同日同時刻 天候:曇 千葉県成田市某所 DCJ成田営業所]

 営業所の入る小さなビルの前に1台のトラックがやってきた。

 部下A:「鳥柴主任、アメリカ本社から例の物が届きました」
 鳥柴:「ついに来ましたか」

 鳥柴は土曜休み返上で成田営業所にいた。
 営業職としては月金の仕事でも、裏の仕事であるエージェントとしての仕事は不規則である。

 部下B:「主任、一体本社は何を送って寄越したのです?」
 鳥柴:「向こうのエージェント達は、とんでもない化け物を送って寄越したのよ。で、アメリカでは面倒見切れないから日本で面倒見て欲しいって」
 部下C:「ただでさえ、こちらは9号機(※)問題で忙しいってのに……」

 ※デイジーのこと。マルチタイプとしてのナンバリングは9号機である為。

 鳥柴:「本当に化け物扱いね。こんな頑丈なコンテナに入れられちゃって。敷島社長ならビジネスクラスにでも乗せてあげるのにね」
 部下B:「いや、多分それ航空会社的にアウトだと思います」

 営業所の倉庫内に運び込まれたコンテナ。
 運送業者が大きな鍵で何重にもロックされた扉を開けて行く。

 部下A:「主任、結局中身は何なんですか?」
 鳥柴:「もうそろそろ文字数が限界だから、次回に話すわ」
 部下B:「次回!?文字数!?」
 鳥柴:「アメリカのエージェント達は、ドクター・ウィリーの秘密研究所をまた1つ特定した。そしてその中に、あの化け物が保管されていたのよ」
 部下C:「また3号機(シンディ)ですか?」
 鳥柴:「いいえ。違うわ。どうしてKR団は日本だけでなく、アメリカでも大騒ぎしていたのか……?その答えがあのコンテナの中にある!」

 鳥柴が指さすと同時にコンテナの扉が開かれ、その中から『化け物』は現れたのである。
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“戦う社長の物語” 「鷲田警視の事件簿」 2

2018-07-02 10:42:09 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月23日15:30.天候:晴 東京都豊島区内某所 とある賃貸マンション]

 不動産屋の橋本にドアチェーンを切ってもらった鷲田達は、恐る恐るドアを全開にしてみた。
 しかし、いきなり目の前に死体が転がっているということも無ければ、デイジーが襲って来るということも無かった。

 村中:「何も無い……ですね」
 鷲田:「ふむ……。とにかく、中を見てみよう。橋本さん、あなたもそうするでしょう?」
 橋本:「え、ええ……」
 鷲田:「私らは後からついて行きますから、あなたが先に行って布袋さんを捜してもらえますかな?」
 橋本:「わ、分かりました」

 橋本はまず玄関のすぐ近くにあるトイレのドアを開けた。
 ごく普通の洋式便器があったが、ウォシュレットは無いようだ。
 そこには誰もいなかった。
 その隣の浴室を開ける。
 やっぱりそこにも誰もいない。

 鷲田:「男の1人暮らしにしては、意外ときれいにしてるな」
 村中:「そうですね。几帳面な男だったのでしょうか?」
 鷲田:「分からん」

 と、その時、鷲田は背後に視線を感じた。
 すると開け放たれた玄関のドアの向こうから、買い物袋を提げた1人の中年女性がこちらを見ていたのだ。

 鷲田:「何か、御用ですかな?」
 女:「あらやだ、ごめんなさい。不動産屋さんが、ついに家探しを始めたのかと思いまして……」
 鷲田:「確かにその通りですが、あなたは布袋さんを御存知で?」
 女:「知ってるも何も、隣の部屋に住む者ですから」
 村中:「ああ、そういうこと」

 村中は一旦、外に出た。

 鷲田:「村中君、キミはこの女性から布袋氏について、聞いておいてくれ」
 村中:「了解しました」

 鷲田は再び室内に入る。

 橋本:「鷲田さん、いいですか?」
 鷲田:「ああ、よろしく」
 橋本:「次はキッチンですけど、調べますか?」
 鷲田:「そうですな」

 鷲田はキッチンの照明を点けてみた。
 すると、ちゃんと点灯した。
 因みにガスコンロを点けてみたが、こちらも点火したし、水道の蛇口を捻ってみると水が出た。
 どうやら滞納していたのは家賃だけで、ライフラインについてはちゃんと支払いをしていたらしい。

 鷲田:「布袋さんは、いつからこのマンションに住んでいたので?」
 橋本:「およそ1年前ですね。それから1年毎の更新で入居されていたのですが、ここ3ヶ月ほど家賃が滞納されていまして……」
 鷲田:「家賃は銀行引き落としですか?」
 橋本:「そうですね」
 鷲田:「しかし今、ライフラインを調べてみましたが、どれも生きています。もし家賃を引き落とししていた口座がスカンピンになっていたら、こっちも滞納で止められてるはずなんですが……」
 橋本:「でも実際、銀行口座はスカ……いや、ゼロになってまして……」
 鷲田:「んん?」

 鷲田は首を傾げた。
 一方、村中の方はというと、布袋の隣室に住むという主婦の原田茜(52歳)から話を聞いていた。

 村中:「フム……。すると、布袋さんはどこにでもいる普通のオジさんであったと」
 原田:「そうなんですよ。今時珍しく、ちゃんと引っ越しの挨拶にも来るような方でねぇ……」
 村中:「なるほど。実は布袋さん、ここ3ヶ月ほど家賃を滞納して行方不明になったみたいなんですよ。何か心当たりはありませんかねぇ?」
 原田:「会えばいつもニコニコ挨拶してくれる人で、悩みなんて無さそうな人でしたけどねぇ。でもこういう人に限って、実は心に闇を抱えていたりするものですからねぇ。私もね、顕正新聞というとても素晴らしい新聞を日曜日に配ったりしているんですけどね、普段ニコニコしてるヤツほど、いざ顕正新聞を渡そうとすると、いきなり嫌な顔になるんですよ。あれこそ修羅の形相……」
 村中:「いや、あの、すいませんけど、布袋さんについて……」
 原田:「……でね、浅井先生も仰ってるんですけど、これは広宣流布が間近に迫ってるが故の……」

 中年専業主婦に話を聞こうとすると、結構困難だという。

 鷲田:「ふむ……。冷蔵庫の中には……あまり食べ物は入ってないか。キッチンには、あまり変わった所はありませんな」
 橋本:「そうですね。では、今度はこちらの部屋を……」

 だが、キッチンもちゃんと片付けられている。
 そのおかげで、ハエなどがわくことが無いのだ。

 鷲田:(本当に夜逃げでもしたのかな。几帳面な性格だったとすると、一応ちゃんと片付けてからと……)

 村中はやっと話を聞き出せた。

 原田:「そうそう。この前ね、えーと……3ヶ月ちょっと前くらいかしら。ケンショー新聞“浅井先生特集号”ができたので、持って行ったんですよ。そしたらですねぇ、女が出て来たんですよ」
 村中:「女!?どういう人物ですか?」
 原田:「んーと……外人さん?あそこにいる刑事さんくらいの背丈で、肌は少し黒かったかしら。髪の色も、趣味の悪いピンクだか紫だかってヤツでねぇ……」
 村中:(デイジーだ!やっぱりこの部屋にいたんだ!)
 原田:「そしたらそのクソ女、『そんなインチキ新聞は要らない。これを代わりにやる』なんて言って、バカ妙観講のクソ新聞持って来やがったんですよ!キーッ!浅井先生のことを、『浅井教のインチキ教祖』だなんて、信じられます!?あいつら全員、地獄に堕ちればいいんだわ!!」
 村中:「ままま、奥さん、落ち着いて。他に何か……」
 原田:「浅井先生は素晴らしい御方なのよ!アホ池田や極悪日顕なんかよりもね!!」
 村中:「いや、あのね……。(あ、ダメだ、こりゃ)」

 鷲田と橋本は最後の部屋を調べ始めた。

 鷲田:「何だか、玄関が騒がしいな……」
 橋本:「原田さんですね。何か、変わった宗教に入っておられるらしくて、住人の方達から苦情が入ってるんですよ。『宗教の勧誘された』と」
 鷲田:「まあ、入信勧誘自体はどこの宗教団体でもやっていることですからなぁ……」
 橋本:「断ると『地獄に堕ちる!』と言われるそうです」
 鷲田:「勧誘を断ったくらいで地獄に堕とす神様だか仏様だか知りませんが、それもどうかと思いますぞ?」
 橋本:「ですよねぇ……」
 鷲田:「だいいち、そんなんでいちいち地獄に堕としていたら、地獄が満員御礼になる。地獄の鬼達も土日出勤させられて嫌になるでしょうな」
 橋本:「うちの会社もなんですけどw」

 実は現世って、何気にどこかの十六小地獄の1つなのかも。

 鷲田:「この部屋は……あ、寝室ですな」

 洋室であり、床にはカーペットが敷いてある。
 風の通りがあるのは、窓が開いていたからだ。
 それも大きく開いていたのではなく、およそ5cmほどである。

 鷲田:「クロゼットを調べてみましょう」
 橋本:「はい」

 橋本はクロゼットを開けた。
 しかし、そこに何か死体が押し込められているというわけでもなければ、何かが飛び出してくるということも無かった。

 橋本:「誰もいませんでしたね。一体、布袋さんはどこへ?」
 鷲田:「恐らく、ここでしょうな」

 鷲田はベッドの掛布団を捲ってみた。
 直後、橋本の悲鳴が室内に響き渡った。
 そこにあったのは、布袋と思われる男のミイラ化した死体だった。
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