[12月24日20:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 斉藤家]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は埼玉県さいたま市にある斉藤社長の御宅で行われるクリスマスパーティーにお呼ばれした。
それも無事に終了し、私達はそろそろお暇することにした。
斉藤秀樹:「うちの運転手に大宮駅まで送らせますので、どうぞ乗ってください」
愛原:「どうもすいません」
家の中からガレージに出れるのだが、玄関に靴があるので、外から回ることにした。
秀樹:「今夜もまた冷えますなぁ」
愛原:「全くです」
車は光岡自動車のガリュー。
主に絵恋さんが乗る車らしい。
フォルムはまるでロールスロイスのようだが、ベースは日産・ティアナで、ロールスロイスよりも手頃な値段で購入できる。
(そもそも光岡自動車自体、なかなか見かけない。作者の祖父は死後、これの霊柩車に遺体として乗車した)
絵恋:「風邪引いたりしないでね。今度は私が遊びに行くから」
リサ:「分かった。待ってる」
秀樹:「愛原さんも風邪など引かれませんよう……」
愛原:「ありがとうございます」
秀樹:「あ、こちら、もしよろしければつまらないものですが、お返しです」
私は斉藤社長から紙袋を受け取った。
愛原:「これは……」
秀樹:「私共で製造している入浴剤と風邪薬です」
愛原:「あ、これはどうもわざわざ……」
製薬会社ならではの餞別だな。
私はありがたく受け取ることにした。
風邪薬を寄越してくる辺り、何ともまあ……。
私が車に乗り込むと、後でリサも乗った。
リサ:「また明日、連絡する」
絵恋:「はーい、待ってまーす」
リサが車の窓を開け、ギュッと絵恋の手を握ると、
絵恋:「萌ぇぇぇぇっ!」
悶絶した。
秀樹:「それでは良い御年を」
愛原:「良いお年を」
車が斉藤家を発車する。
愛原:「本当に絵恋さん、リサがお気に入りだなー?」
リサ:「うん。私もサイトー大好き。友達」
新庄運転手:「御嬢様も初めて御親友ができて、大変お喜びでございます。どうかこれからも末永くお付き合いのほど、私からもお願い申し上げます」
リサ:「うん」
[同日20:15.天候:晴 JR大宮駅西口→京浜東北線ホーム]
車で15分ほどで大宮駅に到着する。
本当はもう少し早く着けるそうなのだが、意外なほどに道路が混雑していた。
これはさいたまスーパーアリーナのイベントによる影響と、3連休最終日による行楽客によるものらしい。
新庄:「お疲れさまでした」
愛原:「ありがとうございます」
新庄:「今回はお迎えに行けなくて申し訳ありませんでした」
愛原:「いえ、いいですよ」
元より電車で行くつもりだったし。
新庄:「もしまた御来訪の際は、お電話頂けばお迎えに上がります」
愛原:「ありがとうございます」
多分私は無いな。
恐らくリサなら、遊びに行く関係でまたこの車に乗る機会があるかもしれない。
もっとも、その場合は漏れなく絵恋さんの同乗付きか。
私達は大宮駅西口の乗降場で車を降りると、すぐに駅構内に入った。
愛原:「やっぱり寒いねぇ……」
リサ:「はいっ!」
私が手を擦ると、リサが手を握って来た。
BOWならではの高い体温のおかげで、握られた手だけは温まる。
愛原:「ははは、ありがとう。せっかく餞別にもらった風邪薬だけど、本来はこういうものの世話になりたくはないものだね」
高橋:「先生、よく見ると包装紙の下にうっすらと『試供品』の文字が見えますよ?」
愛原:「マジか!」
もちろん、医薬品たる風邪薬の方ではない。
医薬品を試供品で渡すと、さすがに薬事法違反だろう。
医薬部外品の入浴剤の方だ。
高橋:「きっと営業マンのカレンダー配りのついでに渡していたヤツの余りですよ。全く!」
愛原:「まあまあ。タダでもらったものなんだから。中身は市販品と一緒だよ」
それでも箱に入っているものなんだからな。
場合によっては営業先に、この箱ごと渡していたのかもしれないな。
いや、もしかしたらスーパーの歳末福引の景品の余りとか???
まあいいや。
入浴剤も風邪薬も、箱買いすればそれなりにいい値段がするからな。
ありがたくお持ち帰りさせて頂くとしよう。
私達はエスカレーターで2階に上がると、改札口からコンコース内に入った。
新幹線乗り場は賑わっていたが、私達が向かうのは今度は埼京線ではない。
高橋:「今度は岩本町回りですか?」
愛原:「ああ。せっかく体の温まる物をもらったんだからな、アキバから岩本町までの移動も怖くないよ」
高橋:「大丈夫です。ヲタク狩りでもオヤジ狩りでも援交狩りでも、この俺がボコしてやりますよ」
愛原:「寒さのことを言ってるんだよ。昭和通りはそこまで危険地帯なのかい?」
京浜東北線ホームは他のホームと比べて比較的空いていた。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の電車は、20時29分発、各駅停車、磯子行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
高橋:「1番前っスか?後ろっスか?」
愛原:「いやいや。少し後ろの方に行って……」
途中の車両で、優先席ではない連結器横の3人席がある。
そこが丸々空いている所を狙うと……。
愛原:「ほれ、ちょうど3人」
高橋:「おお〜、さすが先生」
愛原:「始発駅ならではだな。都営新宿線だと、なかなかこうは行かないよ」
高橋の話だと、夕方以降は新宿駅始発の本八幡行きが無いらしい。
橋本だの笹塚だのから来る電車ばかりだ。
だったらもう岩本町駅から乗った方が良い。
さすがにもう寒さに慣れた気になっているからな。
〔この電車は京浜東北線、各駅停車、磯子行きです〕
〔This is the Keihin-Tohoku line train for Isogo.〕
愛原:「あ、リサ。さすがにここは暖房が入ってるから、もう手繋ぎはいいよ」
冬の電車はお尻の下からジンジン温まるのが良い。
リサ:「やー」
リサはそう言って、今度は腕に手を絡めてきた。
高橋:「おい、クソガキ。テメこのやろ、本来は俺のポジだぞ?あぁ?」
愛原:「何でオマエのポジなんだよ?」
高橋:「弟子として師匠のお体を温めるのもまた務めかと……」
愛原:「無いわ!“大魔道師の弟子”ですら、そんなの無いわ!」
今年は昨年末からの記憶喪失に悩まされ、高橋のゲイぶりに悩まされる年であったようだ。
リサがロリ心をくすぐる……もとい、愛嬌を向けてくれることが幸いだったくらいかな。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は埼玉県さいたま市にある斉藤社長の御宅で行われるクリスマスパーティーにお呼ばれした。
それも無事に終了し、私達はそろそろお暇することにした。
斉藤秀樹:「うちの運転手に大宮駅まで送らせますので、どうぞ乗ってください」
愛原:「どうもすいません」
家の中からガレージに出れるのだが、玄関に靴があるので、外から回ることにした。
秀樹:「今夜もまた冷えますなぁ」
愛原:「全くです」
車は光岡自動車のガリュー。
主に絵恋さんが乗る車らしい。
フォルムはまるでロールスロイスのようだが、ベースは日産・ティアナで、ロールスロイスよりも手頃な値段で購入できる。
(そもそも光岡自動車自体、なかなか見かけない。作者の祖父は死後、これの霊柩車に遺体として乗車した)
絵恋:「風邪引いたりしないでね。今度は私が遊びに行くから」
リサ:「分かった。待ってる」
秀樹:「愛原さんも風邪など引かれませんよう……」
愛原:「ありがとうございます」
秀樹:「あ、こちら、もしよろしければつまらないものですが、お返しです」
私は斉藤社長から紙袋を受け取った。
愛原:「これは……」
秀樹:「私共で製造している入浴剤と風邪薬です」
愛原:「あ、これはどうもわざわざ……」
製薬会社ならではの餞別だな。
私はありがたく受け取ることにした。
風邪薬を寄越してくる辺り、何ともまあ……。
私が車に乗り込むと、後でリサも乗った。
リサ:「また明日、連絡する」
絵恋:「はーい、待ってまーす」
リサが車の窓を開け、ギュッと絵恋の手を握ると、
絵恋:「萌ぇぇぇぇっ!」
悶絶した。
秀樹:「それでは良い御年を」
愛原:「良いお年を」
車が斉藤家を発車する。
愛原:「本当に絵恋さん、リサがお気に入りだなー?」
リサ:「うん。私もサイトー大好き。友達」
新庄運転手:「御嬢様も初めて御親友ができて、大変お喜びでございます。どうかこれからも末永くお付き合いのほど、私からもお願い申し上げます」
リサ:「うん」
[同日20:15.天候:晴 JR大宮駅西口→京浜東北線ホーム]
車で15分ほどで大宮駅に到着する。
本当はもう少し早く着けるそうなのだが、意外なほどに道路が混雑していた。
これはさいたまスーパーアリーナのイベントによる影響と、3連休最終日による行楽客によるものらしい。
新庄:「お疲れさまでした」
愛原:「ありがとうございます」
新庄:「今回はお迎えに行けなくて申し訳ありませんでした」
愛原:「いえ、いいですよ」
元より電車で行くつもりだったし。
新庄:「もしまた御来訪の際は、お電話頂けばお迎えに上がります」
愛原:「ありがとうございます」
多分私は無いな。
恐らくリサなら、遊びに行く関係でまたこの車に乗る機会があるかもしれない。
もっとも、その場合は漏れなく絵恋さんの同乗付きか。
私達は大宮駅西口の乗降場で車を降りると、すぐに駅構内に入った。
愛原:「やっぱり寒いねぇ……」
リサ:「はいっ!」
私が手を擦ると、リサが手を握って来た。
BOWならではの高い体温のおかげで、握られた手だけは温まる。
愛原:「ははは、ありがとう。せっかく餞別にもらった風邪薬だけど、本来はこういうものの世話になりたくはないものだね」
高橋:「先生、よく見ると包装紙の下にうっすらと『試供品』の文字が見えますよ?」
愛原:「マジか!」
もちろん、医薬品たる風邪薬の方ではない。
医薬品を試供品で渡すと、さすがに薬事法違反だろう。
医薬部外品の入浴剤の方だ。
高橋:「きっと営業マンのカレンダー配りのついでに渡していたヤツの余りですよ。全く!」
愛原:「まあまあ。タダでもらったものなんだから。中身は市販品と一緒だよ」
それでも箱に入っているものなんだからな。
場合によっては営業先に、この箱ごと渡していたのかもしれないな。
いや、もしかしたらスーパーの歳末福引の景品の余りとか???
まあいいや。
入浴剤も風邪薬も、箱買いすればそれなりにいい値段がするからな。
ありがたくお持ち帰りさせて頂くとしよう。
私達はエスカレーターで2階に上がると、改札口からコンコース内に入った。
新幹線乗り場は賑わっていたが、私達が向かうのは今度は埼京線ではない。
高橋:「今度は岩本町回りですか?」
愛原:「ああ。せっかく体の温まる物をもらったんだからな、アキバから岩本町までの移動も怖くないよ」
高橋:「大丈夫です。ヲタク狩りでもオヤジ狩りでも援交狩りでも、この俺がボコしてやりますよ」
愛原:「寒さのことを言ってるんだよ。昭和通りはそこまで危険地帯なのかい?」
京浜東北線ホームは他のホームと比べて比較的空いていた。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の電車は、20時29分発、各駅停車、磯子行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
高橋:「1番前っスか?後ろっスか?」
愛原:「いやいや。少し後ろの方に行って……」
途中の車両で、優先席ではない連結器横の3人席がある。
そこが丸々空いている所を狙うと……。
愛原:「ほれ、ちょうど3人」
高橋:「おお〜、さすが先生」
愛原:「始発駅ならではだな。都営新宿線だと、なかなかこうは行かないよ」
高橋の話だと、夕方以降は新宿駅始発の本八幡行きが無いらしい。
橋本だの笹塚だのから来る電車ばかりだ。
だったらもう岩本町駅から乗った方が良い。
さすがにもう寒さに慣れた気になっているからな。
〔この電車は京浜東北線、各駅停車、磯子行きです〕
〔This is the Keihin-Tohoku line train for Isogo.〕
愛原:「あ、リサ。さすがにここは暖房が入ってるから、もう手繋ぎはいいよ」
冬の電車はお尻の下からジンジン温まるのが良い。
リサ:「やー」
リサはそう言って、今度は腕に手を絡めてきた。
高橋:「おい、クソガキ。テメこのやろ、本来は俺のポジだぞ?あぁ?」
愛原:「何でオマエのポジなんだよ?」
高橋:「弟子として師匠のお体を温めるのもまた務めかと……」
愛原:「無いわ!“大魔道師の弟子”ですら、そんなの無いわ!」
今年は昨年末からの記憶喪失に悩まされ、高橋のゲイぶりに悩まされる年であったようだ。
リサがロリ心をくすぐる……もとい、愛嬌を向けてくれることが幸いだったくらいかな。