報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「探偵のクリスマス・イブとクリスマス」

2018-12-29 20:15:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月24日20:30.天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はリサの親友で埼玉に実家のある斉藤絵恋さんと一緒にクリスマスパーティーをやった。
 その帰り道である。

 愛原:「うー!外は寒すぎ!」
 リサ:「もっと体温上げる?」
 愛原:「あ、いや、いいよ!これ以上上げたらアレだろ?人間形態じゃなくなるだろ?」
 リサ:「まあね」
 高橋:「軽い気持ちで答えるんじゃねぇ」

 何とか逃げ込むように私達は駅構内へと入って行った。
 岩本町駅もなかなか深い。

 高橋:「霧生電鉄の霞台団地駅とかを思い出しますね、先生?」
 愛原:「そうだな。あれは地下鉄じゃねぇだろ」
 高橋:「階段を下りて行く感じが、そんなイメージってことですよ。JRには無いですよ」
 愛原:「まあな」

 階段やエスカレーターを下りて行き、改札口を通ってコンコースに入る。

 高橋:「ここがバイオハザードになったら、絶対武器が必要ですよ」
 愛原:「東京でバイオハザードが起きたら、日本は終わりだぞ」

 巨大都市をいくつも抱えている中国なら大丈夫だろうがな。
 あそこは5年くらい前、香港でバイオテロが起きたからな(“バイオハザード6”)。
 アメリカの政府高官が香港バイオテロの黒幕だったというので、米中関係が悪化したんだっけ。
 大統領も暗殺され、こちらも被害者だみたいな対応をアメリカ政府はしていたけど……。

 愛原:「ちょうど電車来た?」
 高橋:「あー、残念ですね。反対方向ですよ」
 愛原:「何だ」

 ホームからぞろぞろと階段やエスカレーターを上がって来る乗客達がいたので、私は一瞬走り出し掛けた。
 で、ホームに下りてみると、確かに反対側のホームに電車が止まっていた。

〔「1番線から京王線直通、快速の大沢……失礼しました。橋本行き、すぐの発車となります」〕

 都営新宿線の緑色をした電車が発車していった。

 高橋:「何だか遅れてるみたいですね」
 愛原:「マジか!?」
 高橋:「ほんの2〜3分ってところですけど」
 愛原:「ふーん……」

 こういう場合、乗り入れ先で何かあったとかが考えられるかな。

 愛原:「ん?どうした、リサ?」

 リサは先ほどの電車が出て行った方向をジッと見ていた。

 リサ:「ううん。何でも無い」

〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが短い8両編成で到着します。黄色い線の内側で、お待ちください〕

 愛原:「ありゃ、短いヤツか。混んでるかなぁ?」
 高橋:「いい加減、都営新宿線も全部10両にするべきですよね」

 雲羽:「そうそう。いちいちこいつらの乗る電車が何両編成か調べないといけない」

 リサ:(私と同じ感じの気配がしたような気がするけど……気のせいだよね)

 電車がトンネルの向こうから轟音を立てて接近してきた。
 リサのセミロングの髪が風に靡く。

 愛原:「そんなに混んでなかった」

 3連休最終日の夜だからかな。

〔4番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう、岩本町〕

 私達は先頭車に乗り込んだ。
 電車の中は暖房が効いて温かい。
 都営地下鉄の車両だが、内装がどこかJRに似ているのは最近流行りの標準化というヤツか。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 ドアチャイムも往路で乗った京王電車とは違い、先ほど乗った京浜東北線の電車とほぼ同じ。
 オリジナリティと言えば、長さが不ぞろいの吊り革か。
 長身の高橋なら余裕で掴まれるドア上の吊り革もあれば、明らかに子供用と言えるほど低い位置の吊り革もある。
 その位置の低い吊り革をリサが掴まり、私は標準の高さの吊り革に掴まり、高橋がドア上の高い吊り革に掴まればちょうど良い。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕
〔The next station is Bakuroyokoyama.Please change here for the Toei Asakusa line and the JR Sobu line.〕

 乗客A:「さっきの電車見た?」
 乗客B:「え?何が?」

 私達のすぐ近くにはヲタクっぽい男2人がドアの前に立って、何やらゲームの話をしている。

 乗客A:「バイオ7のエヴリンみたいなのがいたよ」
 乗客B:「オメーもついにロリコンか?そっちの方がヤベーって」
 リサ:(エヴリン……!?)
 乗客A:「違う違う。婆さん形態の方。車椅子スペースに、車椅子で乗ってたの」
 乗客B:「気のせいだろ?」
 乗客A:「いや、気のせいだとは思うんだけどね。バイオのプレイヤーとしては、ちょっと気になったわけよ」
 乗客B:「気にし過ぎだって。それより、お台場の例大祭どうする?」
 乗客A:「どうすっぺ?」
 リサ:(あのお婆さん、エヴリンなの?)
 愛原:「どうした、リサ?ボーッとしちゃって」
 リサ:「ううん、何でもない。パーティーではしゃぎ過ぎちゃって、ちょっと疲れたのかなぁって……」
 高橋:「おいおい、化け物も疲れるのかよ。ま、そうでないと無理ゲーになっちまうけどな」
 愛原:「お前、あの人達の話に混じって来たらどうだ?」

 こうして私達のクリスマス・イブは無事に終わった。

[12月25日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 某居酒屋]

 愛原:「じゃ、今年1年お疲れさまでした。仕事納めまでには、まだあと数日ありますけど、クリスマスパーティーも兼ねて今日忘年会をやらせて頂きます」

 私がビールの入ったグラスを手に取ると、高橋と高野君、そしてリサもグラスを手に取った。
 私達はビールだが、リサはもちろんジュースである。

 愛原:「それじゃ、カンパーイ!」
 高橋:「カンパーイ!」
 リサ:「カンパーイ!」
 高野:「お疲れさまでしたー!」

 居酒屋の座敷で飲み明かすことになる。
 高野君は相変わらずパンツスーツだが、今日のリサはスカートだ。
 生足でも全然寒くないそうだが、高野君にストッキングをはかされていた。

 愛原:「飲み放題だからな、好きなだけ飲んでいいぞ」
 高野:「先生。明日は普通に仕事なんですから、飲み過ぎはいけませんよ?」
 愛原:「つったって、キミの方がガンガン飲むじゃないか」
 高橋:「先生!俺はジョッキの一気飲みができます!見ててください!」
 愛原:「危ないからやめなさい。……あ、後でクリスマス限定のケーキも頼んであるから、またリサにローソク消してもらおう」
 リサ:「ううん。今度は先生に消してもらいたい」
 愛原:「俺が?」
 リサ:「うん」
 高橋:「俺からもお願いします。先生の息の吹き掛かったケーキを食べたいです」
 愛原:「またオマエはさらっと気持ち悪いこと言う……」

 私は高橋にツッコミを入れたが、リサは高橋の言葉にうんうんと頷いていた。

 高野:「弟子と娘に慕われて、実に羨ましい限りですわね、先生?」
 愛原:「娘って、だから俺はまだそんな歳じゃないって」

 でもリサの学校では、一応そのように通した方がラクなんだよなぁ……。
 何だか複雑な気持ちだ。
 こんな感じで、今年は終わりそうだな。
コメント (4)
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