[12月24日17:27.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日はリサの友人の斉藤絵恋さんから、クリスマスパーティーにお呼ばれした。
今は電車で現地に向かっているところである。
高橋:「先生。もうそろそろですよ」
愛原:「お……そうか」
電車内では何もすることが無いので、ついボーッとしてしまった。
電車がホームに滑り込む。
〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます〕
ここで電車を降りた。
で、ホームを吹き荒ぶ風に襲われる。
愛原:「埼玉は寒いなぁ……」
高橋:「先生。俺が温めてあげますよ」
高橋がサラッと気持ちの悪いことを言って来たが、リサが私の手を握ってきた。
リサ:「センセー、温かい?」
BOWたるリサの体温は高く、まるでカイロを握っているかのようだ。
愛原:「おおっ、温かい。温かいぞ、リサ」
リサ:「ヘヘヘ……」
高橋:「クソガキが……!」
因みに当たり前のことだが、今のリサは完全に人間形態をしている。
愛原:「それにしても、ウィルスの不活性化くらい俺にも分かるのに、善場さんも気を使ってくれるな」
高橋:「先生をナメてるんですよ。ここは1つ、俺が……」
愛原:「余計なことはするなよ?善場さんは国家権力の代行者だから、国家を敵に回すぞ?」
高橋:「ちっ、サツの犬か……」
愛原:「国家公務員だから、地方公務員の警察より怖いんだって」
階段を下りて改札口を出る。
各駅停車しか止まらない小さな駅の割に賑わっているのは、近くにさいたまスーパーアリーナがあるからだろう。
何かクリスマスイベントが行われていても不思議ではない。
しかし、私達の行き先はそれとは反対方向である。
高橋:「先生、こっちですよ」
愛原:「ああ」
高橋はスマホを見ていた。
ここから先はスマホの地図を頼りに行くしか無い。
何故ならリサはこの前、車で行ったからだ。
電車で行くのは初めてになる。
ま、近くまで行けば分かるだろうが。
愛原:「迷子にならないよう頼むよ?何しろ、東京より寒いからな」
高橋:「任せてください」
高橋はダウンジャケット、私はダウンコートを羽織っている。
私は一応スーツを着て来たのだが、高橋は相変わらずラフな格好だ。
誰かに“相棒”の右京さんと亀山みたいだと言われたことがある。
私達は私立探偵であって、警察関係者ではないのだが。
愛原:「リサは寒くないのか?」
リサ:「ううん。全然。大丈夫」
愛原:「そうか」
リサも一応、ジャンパーを羽織ってはいるが、下半身はデニムのショートパンツに黒いソックスをはいているだけだ。
つまり、ほとんど生足だということ。
体温が高い為に、寒さを感じにくいのかもしれない。
BOWの中には倒されると発火して消えてしまう者がいるが、総じて通常時の体温が高い者が多いという。
倒されるということは、致命傷を食らうということだから、それで何か身体に体内のウィルスが作用して発火するのだろうな。
すまないが、この辺は私にも分からない。
善場氏に聞けば研究所に問い合わせてくれるのだろうが、何かまた分かりやすく説明する為に、誤解を受ける表現をされそうだ。
ただ、その法則からすれば、リサももし倒されるようなことがあるとすれば、そういう死に様となる可能性は高いということだ。
リサ:「もう少しくっつく?この方が温かいよ?」
愛原:「そ、そうだな。ありがたいけど、怖いお兄さんが睨んでるから、このくらいでいいよ」
高橋:「……!!」
着く前にバッドエンドを迎えてしまう。
[同日17:45.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 斉藤家]
さいたま市でも屈指の高級住宅街に、斉藤絵恋さんの実家はあった。
リサ:「あっ、このお家だよ!」
愛原:「ほお、凄いな。3階建てか」
茶色のレンガの外壁が特徴だった。
愛原:「高橋、ピンポンやってくれ」
高橋:「ハイ」
高橋は背負っていたリュックの中に手を入れると、中からラケットと……。
愛原:「誰が卓球やれっつったよ!?」
高橋:「えっ?ですが……」
愛原:「そのピンポンじゃねーよ!」
リサ:「お兄ちゃん、大ボケ」
高橋:「あぁっ!?」
リサが代わりにインターホンを押した。
リサ:「愛原リサでーす!」
インターホンのスピーカー越しにリサが言った。
すると、中からバタバタという音が聞こえたかと思うと、ズデーンという何か転ぶ音が聞こえた。
愛原:「んんっ!?」
高橋:「これ、NGですか?」
雲羽:『続けて!』(←カンペ)
で、やっと玄関のドアが開く。
メイド:「愛原様ですね?お待ちしておりました」
愛原:「ど、どうも、こんばんは。あ、あの……さっき何か、大きな音が聞こえて来たんですけど、大丈夫ですか?」
高橋:「事件でしたら、先生が解決しますよ?」
メイド:「申し訳ございません。御嬢様が喜びのあまり、急いで玄関に向かわれたのですが、途中、滑って転んでしまわれまして……」
斉藤絵恋:「ちょっと!廊下のワックス掛け過ぎよ!どうなってるのよ!?」
執事:「申し訳ございません、御嬢様。どうか、御機嫌を……」
ちょっとドジっ子な御嬢様なのかな???
リサ:「サイトー、大丈夫?」
絵恋:「な、なんのそのこれしき……ハハハ……!」
ワックスでピカピカに磨かれた廊下と同様、ピカピカのおでこに絆創膏を絵恋さんは貼っていた。
斉藤秀樹:「やあ、どうも。東京からわざわざ御苦労様です」
愛原:「お招き頂いて、ありがとうございます。あ、こちらつまらないものですが……」
私は手土産を渡した。
秀樹:「銀座の風月堂ですか。あそこのお菓子は美味しいですよ。さすが愛原さん、目の付け所が違いますねぇ」
愛原:「私のクライアントの国家公務員さん達も御用達にしているものらしいんですよ。すいません、この程度のセンスしか思いつかなくて……」
秀樹:「いえいえ、とんでもない。ありがたく頂戴します。ささ、どうぞ。外は寒かったでしょう。もう間もなくパーティーの準備ができますから、どうぞあちらでお待ちください」
私達は応接間へ案内された。
秀樹:「あの球技大会以降、何か動きはありましたか?」
愛原:「特に無いですね。多分、クライアントさん達で動いてはいるんでしょうけど。調査終了後については関知しないのが、探偵というものでして」
秀樹:「それもそうですね」
愛原:「それよりも大丈夫ですか?何か、御嬢さんが派手に転んだみたいですけど……」
秀樹:「ああ、大丈夫です。娘のおでこは頑丈ですから」
愛原:「はあ……」
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日はリサの友人の斉藤絵恋さんから、クリスマスパーティーにお呼ばれした。
今は電車で現地に向かっているところである。
高橋:「先生。もうそろそろですよ」
愛原:「お……そうか」
電車内では何もすることが無いので、ついボーッとしてしまった。
電車がホームに滑り込む。
〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます〕
ここで電車を降りた。
で、ホームを吹き荒ぶ風に襲われる。
愛原:「埼玉は寒いなぁ……」
高橋:「先生。俺が温めてあげますよ」
高橋がサラッと気持ちの悪いことを言って来たが、リサが私の手を握ってきた。
リサ:「センセー、温かい?」
BOWたるリサの体温は高く、まるでカイロを握っているかのようだ。
愛原:「おおっ、温かい。温かいぞ、リサ」
リサ:「ヘヘヘ……」
高橋:「クソガキが……!」
因みに当たり前のことだが、今のリサは完全に人間形態をしている。
愛原:「それにしても、ウィルスの不活性化くらい俺にも分かるのに、善場さんも気を使ってくれるな」
高橋:「先生をナメてるんですよ。ここは1つ、俺が……」
愛原:「余計なことはするなよ?善場さんは国家権力の代行者だから、国家を敵に回すぞ?」
高橋:「ちっ、サツの犬か……」
愛原:「国家公務員だから、地方公務員の警察より怖いんだって」
階段を下りて改札口を出る。
各駅停車しか止まらない小さな駅の割に賑わっているのは、近くにさいたまスーパーアリーナがあるからだろう。
何かクリスマスイベントが行われていても不思議ではない。
しかし、私達の行き先はそれとは反対方向である。
高橋:「先生、こっちですよ」
愛原:「ああ」
高橋はスマホを見ていた。
ここから先はスマホの地図を頼りに行くしか無い。
何故ならリサはこの前、車で行ったからだ。
電車で行くのは初めてになる。
ま、近くまで行けば分かるだろうが。
愛原:「迷子にならないよう頼むよ?何しろ、東京より寒いからな」
高橋:「任せてください」
高橋はダウンジャケット、私はダウンコートを羽織っている。
私は一応スーツを着て来たのだが、高橋は相変わらずラフな格好だ。
誰かに“相棒”の右京さんと亀山みたいだと言われたことがある。
私達は私立探偵であって、警察関係者ではないのだが。
愛原:「リサは寒くないのか?」
リサ:「ううん。全然。大丈夫」
愛原:「そうか」
リサも一応、ジャンパーを羽織ってはいるが、下半身はデニムのショートパンツに黒いソックスをはいているだけだ。
つまり、ほとんど生足だということ。
体温が高い為に、寒さを感じにくいのかもしれない。
BOWの中には倒されると発火して消えてしまう者がいるが、総じて通常時の体温が高い者が多いという。
倒されるということは、致命傷を食らうということだから、それで何か身体に体内のウィルスが作用して発火するのだろうな。
すまないが、この辺は私にも分からない。
善場氏に聞けば研究所に問い合わせてくれるのだろうが、何かまた分かりやすく説明する為に、誤解を受ける表現をされそうだ。
ただ、その法則からすれば、リサももし倒されるようなことがあるとすれば、そういう死に様となる可能性は高いということだ。
リサ:「もう少しくっつく?この方が温かいよ?」
愛原:「そ、そうだな。ありがたいけど、怖いお兄さんが睨んでるから、このくらいでいいよ」
高橋:「……!!」
着く前にバッドエンドを迎えてしまう。
[同日17:45.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 斉藤家]
さいたま市でも屈指の高級住宅街に、斉藤絵恋さんの実家はあった。
リサ:「あっ、このお家だよ!」
愛原:「ほお、凄いな。3階建てか」
茶色のレンガの外壁が特徴だった。
愛原:「高橋、ピンポンやってくれ」
高橋:「ハイ」
高橋は背負っていたリュックの中に手を入れると、中からラケットと……。
愛原:「誰が卓球やれっつったよ!?」
高橋:「えっ?ですが……」
愛原:「そのピンポンじゃねーよ!」
リサ:「お兄ちゃん、大ボケ」
高橋:「あぁっ!?」
リサが代わりにインターホンを押した。
リサ:「愛原リサでーす!」
インターホンのスピーカー越しにリサが言った。
すると、中からバタバタという音が聞こえたかと思うと、ズデーンという何か転ぶ音が聞こえた。
愛原:「んんっ!?」
高橋:「これ、NGですか?」
雲羽:『続けて!』(←カンペ)
で、やっと玄関のドアが開く。
メイド:「愛原様ですね?お待ちしておりました」
愛原:「ど、どうも、こんばんは。あ、あの……さっき何か、大きな音が聞こえて来たんですけど、大丈夫ですか?」
高橋:「事件でしたら、先生が解決しますよ?」
メイド:「申し訳ございません。御嬢様が喜びのあまり、急いで玄関に向かわれたのですが、途中、滑って転んでしまわれまして……」
斉藤絵恋:「ちょっと!廊下のワックス掛け過ぎよ!どうなってるのよ!?」
執事:「申し訳ございません、御嬢様。どうか、御機嫌を……」
ちょっとドジっ子な御嬢様なのかな???
リサ:「サイトー、大丈夫?」
絵恋:「な、なんのそのこれしき……ハハハ……!」
ワックスでピカピカに磨かれた廊下と同様、ピカピカのおでこに絆創膏を絵恋さんは貼っていた。
斉藤秀樹:「やあ、どうも。東京からわざわざ御苦労様です」
愛原:「お招き頂いて、ありがとうございます。あ、こちらつまらないものですが……」
私は手土産を渡した。
秀樹:「銀座の風月堂ですか。あそこのお菓子は美味しいですよ。さすが愛原さん、目の付け所が違いますねぇ」
愛原:「私のクライアントの国家公務員さん達も御用達にしているものらしいんですよ。すいません、この程度のセンスしか思いつかなくて……」
秀樹:「いえいえ、とんでもない。ありがたく頂戴します。ささ、どうぞ。外は寒かったでしょう。もう間もなくパーティーの準備ができますから、どうぞあちらでお待ちください」
私達は応接間へ案内された。
秀樹:「あの球技大会以降、何か動きはありましたか?」
愛原:「特に無いですね。多分、クライアントさん達で動いてはいるんでしょうけど。調査終了後については関知しないのが、探偵というものでして」
秀樹:「それもそうですね」
愛原:「それよりも大丈夫ですか?何か、御嬢さんが派手に転んだみたいですけど……」
秀樹:「ああ、大丈夫です。娘のおでこは頑丈ですから」
愛原:「はあ……」