[12月12日17:30.天候:晴 魔界王国アルカディア とある辺境の村にある宿屋の客室]
女将:「本日はこんな田舎の宿にお泊り頂き、真にありがとうございました。従業員一同、またのお越しを心よりお待ち申し上げます。……あ、くれぐれもお忘れ物だけ無いようにお願い致します、本日は真にありがとうございました」
深々と宿泊客であるエレーナに頭を下げる女将。
人間界では女将の立場であるエレーナも、一たび旅人になれば逆の立場だ。
エレーナ:「……。今来たところだよ!」
女将:「ええっ!?」
エレーナ:「半日かけて今着いた所だよ!まだ荷物置いてもいねーよ!」
女将:「こ、これは失礼致しました。えーと……120名様で御予約の日蓮正宗報恩坊様……」
エレーナ:「違うよ!1人で来たエレーナ・マーロンだよ!何だよ、日蓮正宗報恩坊って。作者の所属寺院じゃんかよ。てか、120名もいねーだろ」
女将:「お客様、失礼ですが、女性の一人旅ということは自殺か何かで……」
エレーナ:「軽い気持ちで聞いてんじゃねー!仕事だよ!ビジネス!」
女将:「これは失礼致しました。あ、お詫びにこれをどうぞ」
エレーナ:「なにこれ?」
女将:「有料チャンネルのカードでございます」
エレーナ:「剣と魔法のファンタジーの世界で、何でこんなものあるんだよ!?……いや、アルカディアシティは電車走ってるけどさ。まあいいや。なに?あなた、女将か何か?」
女将:「申し遅れました。私、女将のオーカミと申します」
エレーナ:「え?え?え?女将オーカミ?」
女将:「オーカミ・オッカーミと申します」
エレーナ:「凄い名前だね!?もしかして、魔族か何か?」
女将:「父親が人間、母親が魔族でございます」
エレーナ:「だろうね。でないと、こういう商売できないもんね」
女将:「さようでございますね。あ、どうぞお掛けになってください。今、お茶お入れしますね」
エレーナ:「うん。……って、ちょっとちょっとちょっと!椅子に座布団が無い」
女将:「あ、これは大変失礼致しました。今すぐお持ち致します」
エレーナ:「こんな硬い椅子座ったら、腰と尻痛めちゃうよ」
女将:「お待ちどう様でした」
女将、ポイッと座布団を投げる。
エレーナ:「何で投げるんだよ!大相撲千秋楽か!」
女将:「そうなんですよ〜」
エレーナ:「そうなんですよ、じゃねー!何だよ、旅の千秋楽って……」
女将:「お客様、お部屋の方は如何ですか?」
エレーナ:「まあ、こんなもんじゃない。普通でしょ」
女将:「ありがとうございます」
エレーナ:「いや、別に褒めて無いし。RPGの世界の宿屋なんて、だいたいこんなもんでしょ」
女将:「お部屋からの眺めも凄くいいんですよ」
エレーナ:「え、ホント?マジ?」
女将:「どうぞ御覧になってください」
エレーナ:「どれどれ……」
エレーナ、観音開きの窓を開ける。
女将:「お向かいの部屋が一望できるんです」
エレーナ:「向かいの部屋しか見えないじゃん!なに?山とか川とか見えないの?」
女将:「山、反対側のお部屋になってしまうんですねー」
エレーナ:「マジかよ。クソみたいな部屋だな。私のホテルみたいに、街中に建ってるってんならしょうがないけど……」
女将:「イケメンのエルフ男性の方がお泊りになったりしましてですねぇ……。ヘヘヘ……」
エレーナ:「それ女将の言うことじゃないからね。因みにね、因みにだよ?今日は向かいの部屋、誰が止まってるの?」
女将:「あ、オバハンの団体です」
エレーナ:「マジかよ!うるさそうだな!」
女将:「100名様で御予約の日蓮正宗妙観講婦人部の団体様です」
エレーナ:「マジかよ!?やだな!ここまで勧誘に来そうで!……って、いつまでお茶入れてんの!?」
女将:「あっ」
エレーナ:「マーライオンか!」
女将:「お待たせ致しました。アップルティーが入りましてございます」
エレーナ:「意外だね!?意外なの入れてたね!?」
女将:「どうぞご賞味ください」
エレーナ、ティーカップを口に運ぶ。
エレーナ:「ただの煎茶じゃんか。なに、ウソついてんだよ」
女将:「お部屋の鍵、お渡ししますね」
エレーナ:「あ、そうか。鍵まだもらってなかったね」
女将、一旦退室する。
エレーナ:「ってか、ティーカップに煎茶ってどういうセンスだよ……」
女将:「お待たせしました」
エレーナ:「デケェな!なにそのプロ野球選手がMVP取ったみたいな鍵!?」
女将:「おめでとうございます」
エレーナ:「いや、私取ってないし!ってか、そんなデカい鍵穴だったっけ!?」
女将:「いえ、これをこうしてドアの前に差し込むのでございます」
エレーナ:「あ、閂ね!だったら、普通の閂でいいじゃない!てか、普通の鍵でいいじゃん!何で閂なのよ!」
女将:「防犯の為でございます」
エレーナ:「ぼ、防犯!?どう見ても普通の鍵の方が防犯になると思うけどね!?だってこれ、ドアの隙間から手を入れて閂外せるよ!?」
女将:「盲点でしたねぇ!」
エレーナ:「いや、盲点じゃなくて普通に分かるし!……ああ、そうそう。この辺、何か温泉湧いてるんだって?」
女将:「そうなんですよ。結構、それ目当てに遠くからお見えになるお客様も多いんですよー」
エレーナ:「へえ、そうなんだ。どんな温泉なの?」
女将:「黄色く濁ってるんですよ」
エレーナ:「黄色!?珍しいね!よく白く濁ってて、『濁り湯の温泉』なんてあるけどね!?」
女将:「そうですねぇ。で、異様な臭いがするんですよ」
エレーナ:「硫黄の臭い、でしょ?」
女将:「いえ、何かあの……アンモニアの臭いがするんですよ」
エレーナ:「オシッコじゃないの、それ!?」
女将:「オシッコなんですかねぇ……」
エレーナ:「いやいやいや!黄色く濁っててアンモニア臭でしょ!?オシッコでしょ!?」
女将:「オシッコなんですかねぇ……」
エレーナ:「それで遠くからわざわざ入りに来るの!?」
女将:「ジャイアント・ビー(人間サイズまたはそれ以上のサイズの蜂のモンスター)とか、ビックラゲ(同様のクラゲのモンスター)に刺された冒険者の方達がよく来られるんですよ」
エレーナ:「それオシッコでしょ!?よく蜂やクラゲに刺されたらオシッコ掛けろって言うじゃない?オシッコでしょ!」
女将:「オシッコなんですかねぇ……」
エレーナ:「何でそこは他人事なのよ。マジかよ、汚い温泉だね」
女将:「あ、お客様。オシッコで思い出したんですけど、御夕食は如何なさいますか?」
エレーナ:「何で思い出してんだ!何で思い出してくれてんだっ、この!!……夕食!?何時から!?」
女将:「夜6時からとなっております」
エレーナ、自分の腕時計を見る。
エレーナ:「あ、もうすぐだね」
女将:「こちらにお持ちしましょうか?それともお持ち帰りに……」
エレーナ:「どこに持って帰るんだよ!私今日ここに泊まるの!女将のアンタが持って来い!」
女将:「かしこまりました。それでは後ほどお持ち致します」
エレーナ:「うん」
女将:「それではごゆっくりどうぞ」
エレーナ:「うん。どっか行け早く」
女将が退室する。
エレーナ:「マジかよ。変な宿屋来ちゃったな……。あ、そうだ。有料チャンネル見てみよう。てか、何でここテレビがあるんだよ?魔界にテレビ局なんて無いのに……。人間界の放送が映ったりして」
エレーナ、有料チャンネルのカードを入れてテレビを点けた。
〔「わ、わたし……。あ、あなたのことが……す……好き!」「私もあなたのことが大好きです!お姉様!」〕
エレーナ:「レズものじゃん!?何だこれ!?」
エレーナ、他のチャンネルに切り替える。
〔「ああッ、来て!わたし、もう……!」「お姉様!私も我慢できない!!」〕
エレーナ:「これも女同士じゃん!?気持ち悪ィな!もういいや!」
エレーナ、テレビの電源を切る。
女将:「…………」
エレーナ:「って、何か言って入ってこいよ!なに、こっそり入って来てんの!?」
女将:「御夕食をお持ちしました」
エレーナ:「何で夕食カップラーメンなの!?」
女将:「カップ焼きそばの方が良かったですか?」
エレーナ:「そこじゃない!なに?宿屋なんだから、もっと立派な料理出て来るんじゃないの!?」
女将:「先ほど、コック長の方から『確変が止まらない。どうしよう?』という連絡が来まして……」
エレーナ:「パチンコやってんの!?てかこの村、パチ屋あるんだ!何考えてんだよ!?」
女将:「もうすぐ作者が代打ちに行くそうですので……」
エレーナ:「知らねーよ!作者の代打ちの情報なんかよ!もうアッタマ来た!私、外で食べてくる!」
女将:「あ、どうぞ。フロントでお湯入れて行ってください」
エレーナ:「そういうことじゃない!」
女将:「本日はこんな田舎の宿にお泊り頂き、真にありがとうございました。従業員一同、またのお越しを心よりお待ち申し上げます。……あ、くれぐれもお忘れ物だけ無いようにお願い致します、本日は真にありがとうございました」
深々と宿泊客であるエレーナに頭を下げる女将。
人間界では女将の立場であるエレーナも、一たび旅人になれば逆の立場だ。
エレーナ:「……。今来たところだよ!」
女将:「ええっ!?」
エレーナ:「半日かけて今着いた所だよ!まだ荷物置いてもいねーよ!」
女将:「こ、これは失礼致しました。えーと……120名様で御予約の日蓮正宗報恩坊様……」
エレーナ:「違うよ!1人で来たエレーナ・マーロンだよ!何だよ、日蓮正宗報恩坊って。作者の所属寺院じゃんかよ。てか、120名もいねーだろ」
女将:「お客様、失礼ですが、女性の一人旅ということは自殺か何かで……」
エレーナ:「軽い気持ちで聞いてんじゃねー!仕事だよ!ビジネス!」
女将:「これは失礼致しました。あ、お詫びにこれをどうぞ」
エレーナ:「なにこれ?」
女将:「有料チャンネルのカードでございます」
エレーナ:「剣と魔法のファンタジーの世界で、何でこんなものあるんだよ!?……いや、アルカディアシティは電車走ってるけどさ。まあいいや。なに?あなた、女将か何か?」
女将:「申し遅れました。私、女将のオーカミと申します」
エレーナ:「え?え?え?女将オーカミ?」
女将:「オーカミ・オッカーミと申します」
エレーナ:「凄い名前だね!?もしかして、魔族か何か?」
女将:「父親が人間、母親が魔族でございます」
エレーナ:「だろうね。でないと、こういう商売できないもんね」
女将:「さようでございますね。あ、どうぞお掛けになってください。今、お茶お入れしますね」
エレーナ:「うん。……って、ちょっとちょっとちょっと!椅子に座布団が無い」
女将:「あ、これは大変失礼致しました。今すぐお持ち致します」
エレーナ:「こんな硬い椅子座ったら、腰と尻痛めちゃうよ」
女将:「お待ちどう様でした」
女将、ポイッと座布団を投げる。
エレーナ:「何で投げるんだよ!大相撲千秋楽か!」
女将:「そうなんですよ〜」
エレーナ:「そうなんですよ、じゃねー!何だよ、旅の千秋楽って……」
女将:「お客様、お部屋の方は如何ですか?」
エレーナ:「まあ、こんなもんじゃない。普通でしょ」
女将:「ありがとうございます」
エレーナ:「いや、別に褒めて無いし。RPGの世界の宿屋なんて、だいたいこんなもんでしょ」
女将:「お部屋からの眺めも凄くいいんですよ」
エレーナ:「え、ホント?マジ?」
女将:「どうぞ御覧になってください」
エレーナ:「どれどれ……」
エレーナ、観音開きの窓を開ける。
女将:「お向かいの部屋が一望できるんです」
エレーナ:「向かいの部屋しか見えないじゃん!なに?山とか川とか見えないの?」
女将:「山、反対側のお部屋になってしまうんですねー」
エレーナ:「マジかよ。クソみたいな部屋だな。私のホテルみたいに、街中に建ってるってんならしょうがないけど……」
女将:「イケメンのエルフ男性の方がお泊りになったりしましてですねぇ……。ヘヘヘ……」
エレーナ:「それ女将の言うことじゃないからね。因みにね、因みにだよ?今日は向かいの部屋、誰が止まってるの?」
女将:「あ、オバハンの団体です」
エレーナ:「マジかよ!うるさそうだな!」
女将:「100名様で御予約の日蓮正宗妙観講婦人部の団体様です」
エレーナ:「マジかよ!?やだな!ここまで勧誘に来そうで!……って、いつまでお茶入れてんの!?」
女将:「あっ」
エレーナ:「マーライオンか!」
女将:「お待たせ致しました。アップルティーが入りましてございます」
エレーナ:「意外だね!?意外なの入れてたね!?」
女将:「どうぞご賞味ください」
エレーナ、ティーカップを口に運ぶ。
エレーナ:「ただの煎茶じゃんか。なに、ウソついてんだよ」
女将:「お部屋の鍵、お渡ししますね」
エレーナ:「あ、そうか。鍵まだもらってなかったね」
女将、一旦退室する。
エレーナ:「ってか、ティーカップに煎茶ってどういうセンスだよ……」
女将:「お待たせしました」
エレーナ:「デケェな!なにそのプロ野球選手がMVP取ったみたいな鍵!?」
女将:「おめでとうございます」
エレーナ:「いや、私取ってないし!ってか、そんなデカい鍵穴だったっけ!?」
女将:「いえ、これをこうしてドアの前に差し込むのでございます」
エレーナ:「あ、閂ね!だったら、普通の閂でいいじゃない!てか、普通の鍵でいいじゃん!何で閂なのよ!」
女将:「防犯の為でございます」
エレーナ:「ぼ、防犯!?どう見ても普通の鍵の方が防犯になると思うけどね!?だってこれ、ドアの隙間から手を入れて閂外せるよ!?」
女将:「盲点でしたねぇ!」
エレーナ:「いや、盲点じゃなくて普通に分かるし!……ああ、そうそう。この辺、何か温泉湧いてるんだって?」
女将:「そうなんですよ。結構、それ目当てに遠くからお見えになるお客様も多いんですよー」
エレーナ:「へえ、そうなんだ。どんな温泉なの?」
女将:「黄色く濁ってるんですよ」
エレーナ:「黄色!?珍しいね!よく白く濁ってて、『濁り湯の温泉』なんてあるけどね!?」
女将:「そうですねぇ。で、異様な臭いがするんですよ」
エレーナ:「硫黄の臭い、でしょ?」
女将:「いえ、何かあの……アンモニアの臭いがするんですよ」
エレーナ:「オシッコじゃないの、それ!?」
女将:「オシッコなんですかねぇ……」
エレーナ:「いやいやいや!黄色く濁っててアンモニア臭でしょ!?オシッコでしょ!?」
女将:「オシッコなんですかねぇ……」
エレーナ:「それで遠くからわざわざ入りに来るの!?」
女将:「ジャイアント・ビー(人間サイズまたはそれ以上のサイズの蜂のモンスター)とか、ビックラゲ(同様のクラゲのモンスター)に刺された冒険者の方達がよく来られるんですよ」
エレーナ:「それオシッコでしょ!?よく蜂やクラゲに刺されたらオシッコ掛けろって言うじゃない?オシッコでしょ!」
女将:「オシッコなんですかねぇ……」
エレーナ:「何でそこは他人事なのよ。マジかよ、汚い温泉だね」
女将:「あ、お客様。オシッコで思い出したんですけど、御夕食は如何なさいますか?」
エレーナ:「何で思い出してんだ!何で思い出してくれてんだっ、この!!……夕食!?何時から!?」
女将:「夜6時からとなっております」
エレーナ、自分の腕時計を見る。
エレーナ:「あ、もうすぐだね」
女将:「こちらにお持ちしましょうか?それともお持ち帰りに……」
エレーナ:「どこに持って帰るんだよ!私今日ここに泊まるの!女将のアンタが持って来い!」
女将:「かしこまりました。それでは後ほどお持ち致します」
エレーナ:「うん」
女将:「それではごゆっくりどうぞ」
エレーナ:「うん。どっか行け早く」
女将が退室する。
エレーナ:「マジかよ。変な宿屋来ちゃったな……。あ、そうだ。有料チャンネル見てみよう。てか、何でここテレビがあるんだよ?魔界にテレビ局なんて無いのに……。人間界の放送が映ったりして」
エレーナ、有料チャンネルのカードを入れてテレビを点けた。
〔「わ、わたし……。あ、あなたのことが……す……好き!」「私もあなたのことが大好きです!お姉様!」〕
エレーナ:「レズものじゃん!?何だこれ!?」
エレーナ、他のチャンネルに切り替える。
〔「ああッ、来て!わたし、もう……!」「お姉様!私も我慢できない!!」〕
エレーナ:「これも女同士じゃん!?気持ち悪ィな!もういいや!」
エレーナ、テレビの電源を切る。
女将:「…………」
エレーナ:「って、何か言って入ってこいよ!なに、こっそり入って来てんの!?」
女将:「御夕食をお持ちしました」
エレーナ:「何で夕食カップラーメンなの!?」
女将:「カップ焼きそばの方が良かったですか?」
エレーナ:「そこじゃない!なに?宿屋なんだから、もっと立派な料理出て来るんじゃないの!?」
女将:「先ほど、コック長の方から『確変が止まらない。どうしよう?』という連絡が来まして……」
エレーナ:「パチンコやってんの!?てかこの村、パチ屋あるんだ!何考えてんだよ!?」
女将:「もうすぐ作者が代打ちに行くそうですので……」
エレーナ:「知らねーよ!作者の代打ちの情報なんかよ!もうアッタマ来た!私、外で食べてくる!」
女将:「あ、どうぞ。フロントでお湯入れて行ってください」
エレーナ:「そういうことじゃない!」