報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東京中央学園上野高校」 5

2018-12-04 19:07:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月3日11:30.天候:不明 東京都台東区上野 東京メトロ日比谷線付近]

 愛原:「こっちの通路は何になっているんでしょう?」

 私はもう1つの通路を進んだ。
 すると、もう1つドアがあった。

 高橋:「今度はザギン線のトンネルだったりして……」
 愛原:「何さり気なく芸能界関係者みたいなこと言ってるんだよ?」
 斉藤:「『どう?ザギンでシースーでもつまみながら一杯?』なんて、知り合いのプロデューサーが言ってましたなー」
 愛原:「本当ですか?どのように対応なさいました?」
 斉藤:「『ギロッポンで会食があるから』と断りました」
 高橋:「俺の知り合いの半グレが……」
 愛原:「あ?何か言ったか、高橋?」
 高橋:「な、何でも無いです」
 愛原:「そうだよな。俺の弟子を自認するヤツが、地域の治安を悪くするようなヤツであるはずがない」
 高橋:「そ、その通りです。先生」

 高橋は急いでドアノブに手を掛けた。

 高橋:「じゃあ、早速開けてみます」
 愛原:「気を付けろよ」

 高橋はドアノブを回すと、ドアを開けた。
 そこにあったのは……。

 愛原:「これは……!?」

 どこかの事務所であった。
 しかし、もぬけの殻だ。
 よく見ると窓には、『テナント募集中』の貼り紙がしてある。

 愛原:「一体どうなってるんだ?」
 斉藤:「ここの事務所、前は何が入っていたのか調べてみますよ」
 愛原:「斉藤さん……」
 斉藤:「うちのグループに、不動産会社もあるんです。そちらを当たってみますから」
 愛原:「何から何まですいません」
 高橋:「ここに、さっきの倉庫にあったヤツを運び込んで、ここから更にどこかに運んだんじゃないですかね?」
 愛原:「なるほど!」
 斉藤:「ということは、日本アンブレラか何かが?」
 愛原:「きっとそうですよ!私も調べてみます!」

 あの倉庫が秘密の研究室だったとして、そこでの研究成果を校舎経由で持ち出すのは危険だ。
 その為、ここに何か別の事務所をカムフラージュとして用意しておき、ここから運び出したか。
 よく見ると、事務所の外には車が何台か止まれる駐車場もある。
 そこに車を着ければ……。

 愛原:「よし、戻ろう。あいにくとアンブレラの痕跡や科学教師の痕跡は見つからなかったが、写真を撮って報告書に貼り付ければいいだろう」
 高橋:「はい」

 高橋はデジカメを取り出して、それで今までの物を撮影した。

 愛原:「斉藤さん、御協力ありがとうございました。このお礼は何と申し上げたら良いか……」
 斉藤:「いえいえ。御礼を言うのはこっちです。私も現役生だった頃からの謎が解けました。そろそろ戻りましょう。球技大会の午前の部が終わってしまいます」
 愛原:「それもそうですね」

 私達は今来た道を戻った。
 それにしても、と思う。
 そっちの日比谷線のトンネルに通じている方は、本当にデストラップとしての物だったのかなぁ……?
 あまり想像したくないが、東京メトロにお金を払ってチャーターした電車で運んでいたりとかは……無いよね。

 愛原:「あの、斉藤さん」
 斉藤:「何でしょうか?」
 愛原:「斉藤さんの会社、北関東とかに研究所を持っていたりとかは無いですか?」
 斉藤:「あ、はい。群馬の方にありますが……?」
 愛原:「他に研究所じゃなくても、何か全日本製薬と関係のある施設は?」
 斉藤:「鬼怒川温泉に保養所があります。それがどうかしましたか?」
 愛原:「なるほど……」
 高橋:「先生?」
 愛原:「斉藤さん、全日本製薬さんは日本アンブレラの協力会社だったんですよね?」
 斉藤:「はい、そうです。まさか、あのアンブレラが生物兵器を開発していたとは……」
 愛原:「具体的には何をどう協力していたんですか?」
 斉藤:「基本的には群馬の研究所において、日本アンブレラの新薬サンプルを保管したりとかです。車ではなく、電車で届けられることが多かったですね。そこからうちの社員が駅まで取りに行って……」
 愛原:「日本アンブレラから預かった新薬はまだあったりします?」
 斉藤:「まさか。アメリカの本体であのような不祥事が発覚した後、すぐに取引を中止しましたよ。こっちまで悪名が飛び火されたんじゃ、たまりませんから」
 愛原:「なるほど……」

 私はもう1度、日比谷線のトンネルに出るドアを開けた。

 高橋:「先生、危ないですよ」
 愛原:「分かってる」

 電車が来ないかどうか慎重に確認してから、私は線路に降りた。
 トンネル側からよく見ると、ドアの前から両側10メートルほどに掛けて小さなプラットホームになっているのが分かる。
 ちょうど、電車が1両分くらい止まれる長さだな。

 愛原:「私には、ここに電車を着けて、斉藤さんの会社の研究所に運んでいたような気がしてしょうがないんですよ」
 斉藤:「ええっ!?」

 先ほど見たのは東武鉄道から乗り入れ、そして東武スカイツリーラインへ帰って行く東武動物公園行きだった。
 地下鉄に乗り入れる電車の、最北端の行き先だな。
 そして東武線は、そこから群馬方面と栃木方面に線路が分かれる。
 問題は、どうやってここに電車を止めたかだな。
 貸切電車でも運転させたのかなぁ?
 でも、コスパ物凄く高いな。
 それとも、生物兵器は物凄く高く売れるから、電車を貸し切るくらいのコスパは何でも無かったのだろうか。
 いや、それは考えられる。
 何しろ霧生市のバイオハザードの時、日本アンブレラは地元の霧生電鉄に新薬だのBOWだのを専用電車と専用線を設けて運搬させていたくらいだからな。
 東京メトロも東武鉄道も民間企業である以上、大金を出されたら貸切電車を走らせてはくれるだろう。
 うん、何かそんな気がしてきた。
 取りあえず、推理はここまでだ。
 あとは善場さんに報告して、国家権力で調査してもらおう。

[同日12:00.天候:晴 東京中央学園上野高校 第2体育館]

 司会:「これにて、午前の試合を終了致します。これより13時まで、昼食休憩と致します。尚、メインステージでは東京中央学園チアリーディング部によるチアリーディング、そして軽音部によるライブ演奏が行われます。皆様、どうぞお誘い合わせの上、お楽しみください。それではご苦労さまでした」

 何とか昼休み前までに戻ることができた。
 私は試合を観戦していたお抱え運転手の新庄さんや、執事さん達から試合の経過を聞いた。

 愛原:「試合、絶好調だったな」
 リサ:「ぶー。でも愛原さん、観てなかったじゃん」
 愛原:「ゴメンゴメン。斉藤さんのお父さんと話し込んじゃった上に、校長先生にも御挨拶してたものだからさぁ……」

 取りあえず、私は嘘は言っていない。
 一応、調査は終了したから、午後はちゃんと観戦できそうだ。
 私は高橋が作って来てくれた弁当をつまみながら、リサと一緒に昼食を取った。
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“私立探偵 愛原学” 「東京中央学園上野高校」 4

2018-12-04 10:20:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月3日11:00.天候:晴 東京中央学園上野高校1F科学準備室倉庫]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はとあるクライアントの依頼で、リサの通う中学校の同じ学校法人が運営している高校にやってきた。
 協力者としてリサの親友、斉藤絵恋の親父さんである斉藤秀樹さんが同行している。
 彼は日本でも指折りの製薬企業の経営者であり、かつては日本アンブレラの活動に協力していた。
 日本アンブレラはアメリカ本体のそれと違い、光の部分(カムフラージュとしての真面目な製薬企業の一面)を担っていた。
 だから斉藤さんの会社(全日本製薬。愛称『ゼンニチ』)が何か違法なことをしていたわけではない。
 当時は中小企業だったゼンニチ製薬が、たまたまアンブレラという大企業と取引をしていただけに過ぎない。

 日本アンブレラから科学教師として派遣されていた者がいた。
 今は転職してここにはいない。
 その転職先も『第2のアンブレラ』と呼ばれるトライセル社というのだから、どれだけマッドサイエンティストなのやら。
 宗教で言えばオウム信者が顕正会に移籍するようなものだ。
 そんな彼が秘密の研究室として使用していたのは、科学準備室の倉庫。
 勝手に改造して研究室に使用していたという所までは掴んだ。
 あとはその証拠を押さえてクライアントに提出するだけなのだが、中はものの見事にスッカラカン。
 どうやらこの学校を退職する時に、根こそぎ片付けたらしいな。

 高橋:「先生、このスイッチ、何ですかね?」

 高橋が入口近くのスイッチをヘッドランプで照らした。
 手には相変わらずマグナム44を持っている。

 愛原:「ヘタに触るな。侵入者用のトラップがまだ作動するかもしれんぞ」
 斉藤:「とはいえ、位置的に電気のスイッチっぽいですけどね」
 愛原:「あ、それもそうですね」

 倉庫内は窓が無い為に真っ暗だ。
 私と高橋の持っているライトだけが頼りだ。
 因みに私のはハンディライトであるが。

 愛原:「高橋、スイッチ入れてくれ」
 高橋:「はいっ!」

 高橋はスイッチを入れたが、うんともすんとも言わない。
 電源が落ちているのか。
 まあ、これからリニューアル工事が始まるのだから、科学室界隈は電源が落とされていても不思議は無いか。

 斉藤:「愛原さん!」

 その時、斉藤社長が私に声を掛けた。
 私が声のする方にライトを向けると、もう1つのドアの前に立つ社長の姿があった。

 愛原:「斉藤さん、それは……」
 斉藤:「ドアがもう1つあるなんて聞いてないぞ」

 しかし造りからして、準備室から入る方のドアと同じだ。
 後から付けられたわけではないだろう。

 愛原:「よし、開けてみましょう」
 高橋:「先生!もしかしたら、化け物が潜んでるかもしれません。ここは1つ、武器を持っている俺が!」
 愛原:「そ、そうか?じゃあ、お願いしようかな」

 何だか私もそんな気がする。

 愛原:「斉藤さん、危険ですから下がっててください」
 斉藤:「わ、分かりました」

 高橋は試しにドアをドンドン叩いてみた。
 これで向こうからドンドン叩いて来たらガチだな。
 だが、高橋が何度叩いても向こうから叩き返してくることは無かった。
 誰もいないのか?
 いや、開けてみたら、たまたま意識が無かったというだけで、入った瞬間襲って来るというパターンもあるからな。

 高橋:「では、開けてみます」
 愛原:「油断するなよ」

 高橋はドアノブを掴み、そしてグッと回してみた。
 が!

 高橋:「っ!……っ!」

 しかし、ドアが開かなかった。
 鍵が掛かっているのだ。

 愛原:「こっちは鍵が掛かっているのか!」
 高橋:「キーピックで開けてみます!」

 高橋はキーピックを荷物の中から取り出した。

 高橋:「てか、鍵穴が無い!」
 愛原:「何だって!?」

 私はドアを照らしてみた。
 確かに鍵穴が無いが、よく見ると……。

 愛原:「これ、電気錠じゃね!?」
 高橋:「電気錠!?」

 電気でロックするタイプ。
 いわゆる、電子ロックというヤツだ。

 愛原:「どこかで開錠操作をしないと開かないぞ?」
 高橋:「マジっすか!」

 警備室かな?
 でも、こんな秘密の研究室みたいな所、警備室も知っているのか……。

 斉藤:「愛原さん、この分電盤みたいなのは何でしょう?」

 ドアから5メートルほど離れた壁に、くすんだ白いボックスがあった。
 確かに分電盤っぽい。

 愛原:「これだ!」

 私はボックスを開けてみた。
 確かに中にはブレーカーがあった。

 高橋:「よし。やってみます」

 高橋はゴム手袋をはめて、ガチャンとブレーカーのレバーを下げた。
 家のヒューズだと上にカチッと上げるのに、こういう大きなレバータイプは下に下げるんだな。

 愛原:「!?」

 すると、倉庫内の照明が点いた。
 これが大元の電源だったか。
 そして、さっきのドアもカチッという音がしてロックが解除された。

 愛原:「よし、今だ!」

 私達はもう1つのドアを開けた。
 その先は……。

 愛原:「おおーっ!」

 地下に下りる階段があった。

 高橋:「何だかガチっぽくなってきましたね」
 愛原:「そうだな」
 高橋:「俺が先導します。付いてきてください」
 愛原:「ああ、分かった」

 高橋は銃を構えた。
 無機質なコンクリート壁には照明が灯っておらず、私達は再びライトの明かりを頼りに進んだ。
 恐らく地下1階と思しき所に着いた時、廊下が分かれ道となっていた。
 正面には意匠の違う鉄扉がある。

 高橋:「よし。あそこから見てみましょう」
 愛原:「ああ、分かった」

 その鉄扉には鍵が掛かっていたが、それは内鍵だった。
 高橋は内鍵を開けて、ドアを開けた。

 高橋:「あ?何だここ?」

 真っ暗な廊下に対し、開けた先は照明が灯っている。
 いや、灯っているというか、蛍光灯が等間隔に設置されていて、まるでどこかのトンネルのよう……ん?トンネル!?
 と、右から眩い光と轟音と強風が迫って来た。

 愛原:「高橋!戻れ!ここ地下鉄のトンネルだ!」
 高橋:「ええーっ!?」

 高橋が通路に戻ると、電車が間一髪で通過した。
 通過していった電車のリアを見ると、東武鉄道の車両で行き先が『東武動物公園』になっていたことから、東京メトロ日比谷線と思われる。

 愛原:「大丈夫か、高橋!?」
 高橋:「は、はい!」
 愛原:「とんだデストラップだったなー……」
 斉藤:「どうします?ここはもう引き返した方が……」
 愛原:「せっかく来たんですから、今度はもう1つの通路を見てみましょう」

 私はそう言って、先ほどの通路を引き返した。
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