[11月3日11:30.天候:不明 東京都台東区上野 東京メトロ日比谷線付近]
愛原:「こっちの通路は何になっているんでしょう?」
私はもう1つの通路を進んだ。
すると、もう1つドアがあった。
高橋:「今度はザギン線のトンネルだったりして……」
愛原:「何さり気なく芸能界関係者みたいなこと言ってるんだよ?」
斉藤:「『どう?ザギンでシースーでもつまみながら一杯?』なんて、知り合いのプロデューサーが言ってましたなー」
愛原:「本当ですか?どのように対応なさいました?」
斉藤:「『ギロッポンで会食があるから』と断りました」
高橋:「俺の知り合いの半グレが……」
愛原:「あ?何か言ったか、高橋?」
高橋:「な、何でも無いです」
愛原:「そうだよな。俺の弟子を自認するヤツが、地域の治安を悪くするようなヤツであるはずがない」
高橋:「そ、その通りです。先生」
高橋は急いでドアノブに手を掛けた。
高橋:「じゃあ、早速開けてみます」
愛原:「気を付けろよ」
高橋はドアノブを回すと、ドアを開けた。
そこにあったのは……。
愛原:「これは……!?」
どこかの事務所であった。
しかし、もぬけの殻だ。
よく見ると窓には、『テナント募集中』の貼り紙がしてある。
愛原:「一体どうなってるんだ?」
斉藤:「ここの事務所、前は何が入っていたのか調べてみますよ」
愛原:「斉藤さん……」
斉藤:「うちのグループに、不動産会社もあるんです。そちらを当たってみますから」
愛原:「何から何まですいません」
高橋:「ここに、さっきの倉庫にあったヤツを運び込んで、ここから更にどこかに運んだんじゃないですかね?」
愛原:「なるほど!」
斉藤:「ということは、日本アンブレラか何かが?」
愛原:「きっとそうですよ!私も調べてみます!」
あの倉庫が秘密の研究室だったとして、そこでの研究成果を校舎経由で持ち出すのは危険だ。
その為、ここに何か別の事務所をカムフラージュとして用意しておき、ここから運び出したか。
よく見ると、事務所の外には車が何台か止まれる駐車場もある。
そこに車を着ければ……。
愛原:「よし、戻ろう。あいにくとアンブレラの痕跡や科学教師の痕跡は見つからなかったが、写真を撮って報告書に貼り付ければいいだろう」
高橋:「はい」
高橋はデジカメを取り出して、それで今までの物を撮影した。
愛原:「斉藤さん、御協力ありがとうございました。このお礼は何と申し上げたら良いか……」
斉藤:「いえいえ。御礼を言うのはこっちです。私も現役生だった頃からの謎が解けました。そろそろ戻りましょう。球技大会の午前の部が終わってしまいます」
愛原:「それもそうですね」
私達は今来た道を戻った。
それにしても、と思う。
そっちの日比谷線のトンネルに通じている方は、本当にデストラップとしての物だったのかなぁ……?
あまり想像したくないが、東京メトロにお金を払ってチャーターした電車で運んでいたりとかは……無いよね。
愛原:「あの、斉藤さん」
斉藤:「何でしょうか?」
愛原:「斉藤さんの会社、北関東とかに研究所を持っていたりとかは無いですか?」
斉藤:「あ、はい。群馬の方にありますが……?」
愛原:「他に研究所じゃなくても、何か全日本製薬と関係のある施設は?」
斉藤:「鬼怒川温泉に保養所があります。それがどうかしましたか?」
愛原:「なるほど……」
高橋:「先生?」
愛原:「斉藤さん、全日本製薬さんは日本アンブレラの協力会社だったんですよね?」
斉藤:「はい、そうです。まさか、あのアンブレラが生物兵器を開発していたとは……」
愛原:「具体的には何をどう協力していたんですか?」
斉藤:「基本的には群馬の研究所において、日本アンブレラの新薬サンプルを保管したりとかです。車ではなく、電車で届けられることが多かったですね。そこからうちの社員が駅まで取りに行って……」
愛原:「日本アンブレラから預かった新薬はまだあったりします?」
斉藤:「まさか。アメリカの本体であのような不祥事が発覚した後、すぐに取引を中止しましたよ。こっちまで悪名が飛び火されたんじゃ、たまりませんから」
愛原:「なるほど……」
私はもう1度、日比谷線のトンネルに出るドアを開けた。
高橋:「先生、危ないですよ」
愛原:「分かってる」
電車が来ないかどうか慎重に確認してから、私は線路に降りた。
トンネル側からよく見ると、ドアの前から両側10メートルほどに掛けて小さなプラットホームになっているのが分かる。
ちょうど、電車が1両分くらい止まれる長さだな。
愛原:「私には、ここに電車を着けて、斉藤さんの会社の研究所に運んでいたような気がしてしょうがないんですよ」
斉藤:「ええっ!?」
先ほど見たのは東武鉄道から乗り入れ、そして東武スカイツリーラインへ帰って行く東武動物公園行きだった。
地下鉄に乗り入れる電車の、最北端の行き先だな。
そして東武線は、そこから群馬方面と栃木方面に線路が分かれる。
問題は、どうやってここに電車を止めたかだな。
貸切電車でも運転させたのかなぁ?
でも、コスパ物凄く高いな。
それとも、生物兵器は物凄く高く売れるから、電車を貸し切るくらいのコスパは何でも無かったのだろうか。
いや、それは考えられる。
何しろ霧生市のバイオハザードの時、日本アンブレラは地元の霧生電鉄に新薬だのBOWだのを専用電車と専用線を設けて運搬させていたくらいだからな。
東京メトロも東武鉄道も民間企業である以上、大金を出されたら貸切電車を走らせてはくれるだろう。
うん、何かそんな気がしてきた。
取りあえず、推理はここまでだ。
あとは善場さんに報告して、国家権力で調査してもらおう。
[同日12:00.天候:晴 東京中央学園上野高校 第2体育館]
司会:「これにて、午前の試合を終了致します。これより13時まで、昼食休憩と致します。尚、メインステージでは東京中央学園チアリーディング部によるチアリーディング、そして軽音部によるライブ演奏が行われます。皆様、どうぞお誘い合わせの上、お楽しみください。それではご苦労さまでした」
何とか昼休み前までに戻ることができた。
私は試合を観戦していたお抱え運転手の新庄さんや、執事さん達から試合の経過を聞いた。
愛原:「試合、絶好調だったな」
リサ:「ぶー。でも愛原さん、観てなかったじゃん」
愛原:「ゴメンゴメン。斉藤さんのお父さんと話し込んじゃった上に、校長先生にも御挨拶してたものだからさぁ……」
取りあえず、私は嘘は言っていない。
一応、調査は終了したから、午後はちゃんと観戦できそうだ。
私は高橋が作って来てくれた弁当をつまみながら、リサと一緒に昼食を取った。
愛原:「こっちの通路は何になっているんでしょう?」
私はもう1つの通路を進んだ。
すると、もう1つドアがあった。
高橋:「今度はザギン線のトンネルだったりして……」
愛原:「何さり気なく芸能界関係者みたいなこと言ってるんだよ?」
斉藤:「『どう?ザギンでシースーでもつまみながら一杯?』なんて、知り合いのプロデューサーが言ってましたなー」
愛原:「本当ですか?どのように対応なさいました?」
斉藤:「『ギロッポンで会食があるから』と断りました」
高橋:「俺の知り合いの半グレが……」
愛原:「あ?何か言ったか、高橋?」
高橋:「な、何でも無いです」
愛原:「そうだよな。俺の弟子を自認するヤツが、地域の治安を悪くするようなヤツであるはずがない」
高橋:「そ、その通りです。先生」
高橋は急いでドアノブに手を掛けた。
高橋:「じゃあ、早速開けてみます」
愛原:「気を付けろよ」
高橋はドアノブを回すと、ドアを開けた。
そこにあったのは……。
愛原:「これは……!?」
どこかの事務所であった。
しかし、もぬけの殻だ。
よく見ると窓には、『テナント募集中』の貼り紙がしてある。
愛原:「一体どうなってるんだ?」
斉藤:「ここの事務所、前は何が入っていたのか調べてみますよ」
愛原:「斉藤さん……」
斉藤:「うちのグループに、不動産会社もあるんです。そちらを当たってみますから」
愛原:「何から何まですいません」
高橋:「ここに、さっきの倉庫にあったヤツを運び込んで、ここから更にどこかに運んだんじゃないですかね?」
愛原:「なるほど!」
斉藤:「ということは、日本アンブレラか何かが?」
愛原:「きっとそうですよ!私も調べてみます!」
あの倉庫が秘密の研究室だったとして、そこでの研究成果を校舎経由で持ち出すのは危険だ。
その為、ここに何か別の事務所をカムフラージュとして用意しておき、ここから運び出したか。
よく見ると、事務所の外には車が何台か止まれる駐車場もある。
そこに車を着ければ……。
愛原:「よし、戻ろう。あいにくとアンブレラの痕跡や科学教師の痕跡は見つからなかったが、写真を撮って報告書に貼り付ければいいだろう」
高橋:「はい」
高橋はデジカメを取り出して、それで今までの物を撮影した。
愛原:「斉藤さん、御協力ありがとうございました。このお礼は何と申し上げたら良いか……」
斉藤:「いえいえ。御礼を言うのはこっちです。私も現役生だった頃からの謎が解けました。そろそろ戻りましょう。球技大会の午前の部が終わってしまいます」
愛原:「それもそうですね」
私達は今来た道を戻った。
それにしても、と思う。
そっちの日比谷線のトンネルに通じている方は、本当にデストラップとしての物だったのかなぁ……?
あまり想像したくないが、東京メトロにお金を払ってチャーターした電車で運んでいたりとかは……無いよね。
愛原:「あの、斉藤さん」
斉藤:「何でしょうか?」
愛原:「斉藤さんの会社、北関東とかに研究所を持っていたりとかは無いですか?」
斉藤:「あ、はい。群馬の方にありますが……?」
愛原:「他に研究所じゃなくても、何か全日本製薬と関係のある施設は?」
斉藤:「鬼怒川温泉に保養所があります。それがどうかしましたか?」
愛原:「なるほど……」
高橋:「先生?」
愛原:「斉藤さん、全日本製薬さんは日本アンブレラの協力会社だったんですよね?」
斉藤:「はい、そうです。まさか、あのアンブレラが生物兵器を開発していたとは……」
愛原:「具体的には何をどう協力していたんですか?」
斉藤:「基本的には群馬の研究所において、日本アンブレラの新薬サンプルを保管したりとかです。車ではなく、電車で届けられることが多かったですね。そこからうちの社員が駅まで取りに行って……」
愛原:「日本アンブレラから預かった新薬はまだあったりします?」
斉藤:「まさか。アメリカの本体であのような不祥事が発覚した後、すぐに取引を中止しましたよ。こっちまで悪名が飛び火されたんじゃ、たまりませんから」
愛原:「なるほど……」
私はもう1度、日比谷線のトンネルに出るドアを開けた。
高橋:「先生、危ないですよ」
愛原:「分かってる」
電車が来ないかどうか慎重に確認してから、私は線路に降りた。
トンネル側からよく見ると、ドアの前から両側10メートルほどに掛けて小さなプラットホームになっているのが分かる。
ちょうど、電車が1両分くらい止まれる長さだな。
愛原:「私には、ここに電車を着けて、斉藤さんの会社の研究所に運んでいたような気がしてしょうがないんですよ」
斉藤:「ええっ!?」
先ほど見たのは東武鉄道から乗り入れ、そして東武スカイツリーラインへ帰って行く東武動物公園行きだった。
地下鉄に乗り入れる電車の、最北端の行き先だな。
そして東武線は、そこから群馬方面と栃木方面に線路が分かれる。
問題は、どうやってここに電車を止めたかだな。
貸切電車でも運転させたのかなぁ?
でも、コスパ物凄く高いな。
それとも、生物兵器は物凄く高く売れるから、電車を貸し切るくらいのコスパは何でも無かったのだろうか。
いや、それは考えられる。
何しろ霧生市のバイオハザードの時、日本アンブレラは地元の霧生電鉄に新薬だのBOWだのを専用電車と専用線を設けて運搬させていたくらいだからな。
東京メトロも東武鉄道も民間企業である以上、大金を出されたら貸切電車を走らせてはくれるだろう。
うん、何かそんな気がしてきた。
取りあえず、推理はここまでだ。
あとは善場さんに報告して、国家権力で調査してもらおう。
[同日12:00.天候:晴 東京中央学園上野高校 第2体育館]
司会:「これにて、午前の試合を終了致します。これより13時まで、昼食休憩と致します。尚、メインステージでは東京中央学園チアリーディング部によるチアリーディング、そして軽音部によるライブ演奏が行われます。皆様、どうぞお誘い合わせの上、お楽しみください。それではご苦労さまでした」
何とか昼休み前までに戻ることができた。
私は試合を観戦していたお抱え運転手の新庄さんや、執事さん達から試合の経過を聞いた。
愛原:「試合、絶好調だったな」
リサ:「ぶー。でも愛原さん、観てなかったじゃん」
愛原:「ゴメンゴメン。斉藤さんのお父さんと話し込んじゃった上に、校長先生にも御挨拶してたものだからさぁ……」
取りあえず、私は嘘は言っていない。
一応、調査は終了したから、午後はちゃんと観戦できそうだ。
私は高橋が作って来てくれた弁当をつまみながら、リサと一緒に昼食を取った。