[12月13日13:00.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷]
雪の積もる道を進む一台の黒い車。
そこを駆るのはイリーナが魔法で作り出した車。
稲生の魔力に合わせて、タクシーでよく使用されている車種と酷似している。
魔力が強くなればなるほど高級車または大型車にできる。
マリアが魔力を付与すれば、ロンドンタクシーのようになる。
運転手も白い帽子を深く被っているが、幻魔獣という妖を変身させたもの。
レンガ造りのトンネルを潜ると、マリアの屋敷に辿り着く。
運転手:「到着しました」
稲生:「ありがとう」
稲生は車を降りた。
車を降りたのは稲生だけではなかった。
隣には稲生専属のメイド人形、ダニエラもいる。
マリアが作ったメイド人形は基本的にはマリアに付き従うものだが、ダニエラは何故か稲生に付いている。
マリアが命令したわけでもないのにだ。
無論、イリーナが何かしたわけでもない。
護衛と称して銃器を所持することもあるが、今は見当たらない(どこかに隠し持っているのかも)。
車のトランクからは村のスーパーなどで爆買い(というほどではないが、買い出ししたものだけでトランクが一杯になるほどの量。タクシー用のセダンのトランクが一杯になるほどの)した食料品や日用品が積まれている。
稲生:「大丈夫?僕持とうか?」
稲生が言うとダニエラは微笑を浮かべて制した。
その代わり、口笛をピイッと吹くと、中から仲間のメイド人形がわらわらとやって来て、それらを屋敷の中に運び入れた。
稲生:「タクシー用の車で、確かミニバンタイプもあるから、それに乗れればいいんだけどな……」
日産NV200バネット辺りのことを言っているのだろうが、稲生はあいくと乗ったことが無い。
魔法で作り出す為には、実際に乗った体験が無いとダメなのだ。
実体験したほどのイメージが無いと、稲生やマリアの魔力では作り出せない。
マリアがロンドンタクシーしか作れないのはその為である。
イギリスの車でベントレーもあるが、これは乗ったことが無い。
稲生:「あれなら荷物も多く積めるだろうし……」
稲生は急いで屋敷の中に入った。
稲生:「ほんと、外は寒いなぁ……」
そしてコートのポケットから、ある物を取り出す。
稲生:「取りあえず、年末年始帰省とUターンの足は確保した。イリーナ先生が一緒だと心強いなぁ。ていうか、この小説で何回僕は年末年始を迎えてるんだ?(僕の実年齢、何歳だ?)」
魔道師は悪魔と契約すると、見返りとして極端に老化を遅延させられるのである。
但し、弊害もあって、25歳くらいまで人間の体は成長する。
それ以前に悪魔と契約してしまうと、体の成長も極端に遅延させられてしまうわけである。
悪魔もそこまで細かい調整はしない(デーモン閣下も【お察しください】)。
その為、18歳で魔道師になったマリアは、今でも女子高生の制服が似合う見てくれになっている。
稲生:「マリアさんは具合悪いのかな?」
ミカエラ:「お部屋で休んでおられます」
メイド人形達は今、人間形態になっている。
人形形態では人間形態をデフォルメされたかのようなコミカルなものであるが、人間形態ではガチのメイドさんなのである。
稲生:「だよなぁ……。朝までは何とも無かったのに……。ちょっと行ってこよう。黙って行って来ちゃったからな……」
稲生は屋敷の西側2階に向かった。
2階まで吹き抜けの中央エントランスを境に、西側と東側に分かれている。
東側の2階には稲生の部屋があり、西側の1階にはマリアの部屋が、2階にはイリーナの部屋があった。
但し、イリーナがいない時はマリアは2階を使う。
尚、稲生は普通に歩いているが、館内は普通の人間から見ればホラーチックな雰囲気になっている。
稲生:「マリアさん、マリアさん」
稲生はマリアの部屋をノックした。
マリア:「……なに……?」
中からワンピースタイプの寝巻を着たマリアが中から出て来た。
稲生:「外出から戻りました。けして逃亡ではありません」
マリア:「あ、そう……。一瞬、人形達が騒いでたからどうしたかと思ってたけど……」
徒弟制度のある世界では、たまに弟子が厳しい修行に付いて行けず、逃亡することがある。
昔は大相撲の世界でも発生し、捕獲された逃亡者がリンチ死したという事件もあった。
これは魔道師の世界も同じである。
屋敷からの勝手な外出は、ややもすると逃亡と見なされる恐れがある。
ただ今回の場合は……。
そもそもが門内一ユルい指導のイリーナ組で、しかも当の師匠が拠点たるこの屋敷におらず、更には姉弟子のマリアが体調不良でダウンとあらば、そもそも外出許可もへッタクレも無いわけだ。
稲生:「ちゃんと『車』を用意し、ダニエラも随行しました」
マリア:「それで?」
稲生:「年末年始、帰省とUターンの足を確保しましたので」
マリア:「ああ、分かった。カネは後で師匠からもらって」
稲生:「分かりました」
マリア:「まあ……あの婆さん、今度いつ来るか分かんないけど……」
稲生:「はあ……。あの、体調悪いんですか?」
マリア:「こういうのは突然来る。私は寝てるから、今日は屋敷内なら好きに過ごしていい」
稲生:「分かりました」
マリアは早々に自室に入り、稲生はその場をあとにした。
稲生:「大変そうだなぁ……」
自分の部屋に戻る為、再び中央エントランスホールに戻る。
エレーナ:「ちわー!まいどー!お届け物でーす!」
と、そこへエレーナが『魔女の宅急便』にやってきた。
稲生:「おっ、エレーナか」
エレーナ:「稲生氏、ちょうど良かった。ハンコくれ」
稲生:「あれ、人形達どこ行った?まあいいや」
エレーナ:「イリーナ先生宛てだね。きっと中身は高級時計だ」
稲生:「先生にお世話になっている政財界の著名人は多いからね。……はい、これでいい」
エレーナ:「あざーっす!……因みにさ、因みにだよ?人形の稼働率落ちてない?」
稲生:「少し頭数が少ないかもね」
魔力が付与されない人形はただのメイド人形。
フランス人形がメイド服着ているようなものだ。
稲生:「今、マリアさん、体調悪いから」
エレーナ:「突然来たパティーン?」
稲生:「そう」
エレーナ:「それじゃあ、しょうがないか」
稲生:「僕に何か手伝えそうなものは無いかな?」
エレーナ:「……放置でOK」
稲生:「えっ?」
エレーナ:「ヘタにちょっかい出すと、却ってウザいから」
稲生:「エレーナの回復薬で何とかならない?」
エレーナ:「いや、生理はRPGの状態異常じゃないからね」
稲生:「明日には何とかなる……」
エレーナ:「いや、アンタ、生理ナメてんの?1日で終わんないから。多分、明日の方がキツいんじゃないか?そんな状態でマリアンナの部屋に行ってみー?殺意の籠った目で見られるから」
稲生:「マジか。実はさっき、部屋に行ったんだよなぁ……」
エレーナ:「バカじゃねーの?そういう時こそ、お付きのメイド人形に様子を聞くんだよ!」
稲生:「そ、そうか」
エレーナ:「実は今、リリィもそれでダウンしてるんだ」
稲生:「そうか。リリィも15歳くらいだからなぁ……」
と、その時……。
イリーナ:「たっだいまぁー!いやー、日本は暖かいねぇ!ちょっとロシアに里帰りしてきたよ!やっぱサンクトペテルブルグはチョー寒かった!あ、お土産後でエレーナに届けてもらうからよろしくねー!」
とにかく明るいイリーナが帰って来た。
エレーナ:「1000年以上も生きると、生理とは無縁になるからな」
稲生:「な、なるほど……」
雪の積もる道を進む一台の黒い車。
そこを駆るのはイリーナが魔法で作り出した車。
稲生の魔力に合わせて、タクシーでよく使用されている車種と酷似している。
魔力が強くなればなるほど高級車または大型車にできる。
マリアが魔力を付与すれば、ロンドンタクシーのようになる。
運転手も白い帽子を深く被っているが、幻魔獣という妖を変身させたもの。
レンガ造りのトンネルを潜ると、マリアの屋敷に辿り着く。
運転手:「到着しました」
稲生:「ありがとう」
稲生は車を降りた。
車を降りたのは稲生だけではなかった。
隣には稲生専属のメイド人形、ダニエラもいる。
マリアが作ったメイド人形は基本的にはマリアに付き従うものだが、ダニエラは何故か稲生に付いている。
マリアが命令したわけでもないのにだ。
無論、イリーナが何かしたわけでもない。
護衛と称して銃器を所持することもあるが、今は見当たらない(どこかに隠し持っているのかも)。
車のトランクからは村のスーパーなどで爆買い(というほどではないが、買い出ししたものだけでトランクが一杯になるほどの量。タクシー用のセダンのトランクが一杯になるほどの)した食料品や日用品が積まれている。
稲生:「大丈夫?僕持とうか?」
稲生が言うとダニエラは微笑を浮かべて制した。
その代わり、口笛をピイッと吹くと、中から仲間のメイド人形がわらわらとやって来て、それらを屋敷の中に運び入れた。
稲生:「タクシー用の車で、確かミニバンタイプもあるから、それに乗れればいいんだけどな……」
日産NV200バネット辺りのことを言っているのだろうが、稲生はあいくと乗ったことが無い。
魔法で作り出す為には、実際に乗った体験が無いとダメなのだ。
実体験したほどのイメージが無いと、稲生やマリアの魔力では作り出せない。
マリアがロンドンタクシーしか作れないのはその為である。
イギリスの車でベントレーもあるが、これは乗ったことが無い。
稲生:「あれなら荷物も多く積めるだろうし……」
稲生は急いで屋敷の中に入った。
稲生:「ほんと、外は寒いなぁ……」
そしてコートのポケットから、ある物を取り出す。
稲生:「取りあえず、年末年始帰省とUターンの足は確保した。イリーナ先生が一緒だと心強いなぁ。ていうか、この小説で何回僕は年末年始を迎えてるんだ?(僕の実年齢、何歳だ?)」
魔道師は悪魔と契約すると、見返りとして極端に老化を遅延させられるのである。
但し、弊害もあって、25歳くらいまで人間の体は成長する。
それ以前に悪魔と契約してしまうと、体の成長も極端に遅延させられてしまうわけである。
悪魔もそこまで細かい調整はしない(デーモン閣下も【お察しください】)。
その為、18歳で魔道師になったマリアは、今でも女子高生の制服が似合う見てくれになっている。
稲生:「マリアさんは具合悪いのかな?」
ミカエラ:「お部屋で休んでおられます」
メイド人形達は今、人間形態になっている。
人形形態では人間形態をデフォルメされたかのようなコミカルなものであるが、人間形態ではガチのメイドさんなのである。
稲生:「だよなぁ……。朝までは何とも無かったのに……。ちょっと行ってこよう。黙って行って来ちゃったからな……」
稲生は屋敷の西側2階に向かった。
2階まで吹き抜けの中央エントランスを境に、西側と東側に分かれている。
東側の2階には稲生の部屋があり、西側の1階にはマリアの部屋が、2階にはイリーナの部屋があった。
但し、イリーナがいない時はマリアは2階を使う。
尚、稲生は普通に歩いているが、館内は普通の人間から見ればホラーチックな雰囲気になっている。
稲生:「マリアさん、マリアさん」
稲生はマリアの部屋をノックした。
マリア:「……なに……?」
中からワンピースタイプの寝巻を着たマリアが中から出て来た。
稲生:「外出から戻りました。けして逃亡ではありません」
マリア:「あ、そう……。一瞬、人形達が騒いでたからどうしたかと思ってたけど……」
徒弟制度のある世界では、たまに弟子が厳しい修行に付いて行けず、逃亡することがある。
昔は大相撲の世界でも発生し、捕獲された逃亡者がリンチ死したという事件もあった。
これは魔道師の世界も同じである。
屋敷からの勝手な外出は、ややもすると逃亡と見なされる恐れがある。
ただ今回の場合は……。
そもそもが門内一ユルい指導のイリーナ組で、しかも当の師匠が拠点たるこの屋敷におらず、更には姉弟子のマリアが体調不良でダウンとあらば、そもそも外出許可もへッタクレも無いわけだ。
稲生:「ちゃんと『車』を用意し、ダニエラも随行しました」
マリア:「それで?」
稲生:「年末年始、帰省とUターンの足を確保しましたので」
マリア:「ああ、分かった。カネは後で師匠からもらって」
稲生:「分かりました」
マリア:「まあ……あの婆さん、今度いつ来るか分かんないけど……」
稲生:「はあ……。あの、体調悪いんですか?」
マリア:「こういうのは突然来る。私は寝てるから、今日は屋敷内なら好きに過ごしていい」
稲生:「分かりました」
マリアは早々に自室に入り、稲生はその場をあとにした。
稲生:「大変そうだなぁ……」
自分の部屋に戻る為、再び中央エントランスホールに戻る。
エレーナ:「ちわー!まいどー!お届け物でーす!」
と、そこへエレーナが『魔女の宅急便』にやってきた。
稲生:「おっ、エレーナか」
エレーナ:「稲生氏、ちょうど良かった。ハンコくれ」
稲生:「あれ、人形達どこ行った?まあいいや」
エレーナ:「イリーナ先生宛てだね。きっと中身は高級時計だ」
稲生:「先生にお世話になっている政財界の著名人は多いからね。……はい、これでいい」
エレーナ:「あざーっす!……因みにさ、因みにだよ?人形の稼働率落ちてない?」
稲生:「少し頭数が少ないかもね」
魔力が付与されない人形はただのメイド人形。
フランス人形がメイド服着ているようなものだ。
稲生:「今、マリアさん、体調悪いから」
エレーナ:「突然来たパティーン?」
稲生:「そう」
エレーナ:「それじゃあ、しょうがないか」
稲生:「僕に何か手伝えそうなものは無いかな?」
エレーナ:「……放置でOK」
稲生:「えっ?」
エレーナ:「ヘタにちょっかい出すと、却ってウザいから」
稲生:「エレーナの回復薬で何とかならない?」
エレーナ:「いや、生理はRPGの状態異常じゃないからね」
稲生:「明日には何とかなる……」
エレーナ:「いや、アンタ、生理ナメてんの?1日で終わんないから。多分、明日の方がキツいんじゃないか?そんな状態でマリアンナの部屋に行ってみー?殺意の籠った目で見られるから」
稲生:「マジか。実はさっき、部屋に行ったんだよなぁ……」
エレーナ:「バカじゃねーの?そういう時こそ、お付きのメイド人形に様子を聞くんだよ!」
稲生:「そ、そうか」
エレーナ:「実は今、リリィもそれでダウンしてるんだ」
稲生:「そうか。リリィも15歳くらいだからなぁ……」
と、その時……。
イリーナ:「たっだいまぁー!いやー、日本は暖かいねぇ!ちょっとロシアに里帰りしてきたよ!やっぱサンクトペテルブルグはチョー寒かった!あ、お土産後でエレーナに届けてもらうからよろしくねー!」
とにかく明るいイリーナが帰って来た。
エレーナ:「1000年以上も生きると、生理とは無縁になるからな」
稲生:「な、なるほど……」