報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「新潟の夜と朝」

2022-09-11 20:14:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月25日23:00.天候:雨 新潟県新潟市中央区 ロイヤルホスト新潟駅前店]

 車でホテルまで送ってもらった後、私達はまず部屋に向かった。
 それから着替えてシャワーを浴び、それから1階のテナントであるロイホに来たというわけだ。

 リサ:「ステーキ美味しー!」
 愛原:「そりゃあ良かった……」

 リサは分厚いステーキを注文して、それをガツガツ食べていた。
 さっきまでゾンビ無双していたとは思えない。
 私はというと、久しぶりのバイオテロに遭遇したことで、空腹だったというのに、今は却って食欲が落ちている状態となっていた。
 さすがに肉は食べれなかったので、オムライスにした。
 高橋は高橋で、パスタにしている。
 リサの食べっぷりを見ていると、ゾンビが捕食しているように見えるのだ。

 高橋:「先生、夕飯の料金、大丈夫っスか?」
 愛原:「ああ。これについても、後でデイライトさんに請求すれば全額支給してくれるそうだ」

 食事代については請求の対象ではないのだが、恐らくこれはリサの活躍に対する報酬代わりなのだろう。

 愛原:「それにしても、まさか本当にゾンビと対峙することになるとは……」
 高橋:「ヤバかったっスね。しばらくそんなことも無かったら、すっかり忘れてたっス。おかげで、少し気持ち悪かったくらいで……」
 愛原:「オマエが一番倒してたもんな」
 高橋:「そうっスね。明日はどうするんスか?」
 愛原:「もちろん、帰るさ。仕事は終わったんだからな。……それとも、オマエの家に案内してくれるのか?」
 高橋:「マジ、カンベンしてください」
 愛原:「ま、遊びに来たわけじゃないからな……」
 高橋:「あ、そうだ。先生、警備員やる前は、トラックドライバーだったって言ってましたよね?その名残で、今も大型免許持ってるとか……」
 愛原:「まあな。……うん、確かに新潟に本社のある運送会社だった。まだ、あるらしいな」
 高橋:「先生の思い出を辿りましょう!」
 愛原:「何でだよ!」
 リサ:「わたしも興味ある!」
 高橋:「だろぉ!?」
 愛原:「あのなぁ!」

 その時、私はふと思い出した。

 愛原:「待てよ。確か、あの会社……近くに日帰り温泉があったな……。今もあるなら、そこに行ってみるか」
 高橋:「それはいいっスね!」

[6月26日00:00.天候:晴 同地区内 ホテル東横イン新潟駅前]

 夕食を終えた私達は、部屋に戻った。

 リサ:「明日は何時起き?」
 愛原:「ホテルの朝食もガッツリ食べるんだろ?だったら、7時くらいに起きた方がいい」
 リサ:「7時起きね」

 部屋の前で別れる。

 愛原:「疲れたから、さっさと寝よう」
 高橋:「そうっスね」

 私は歯磨きをするべく、バスルームに入った。

 高橋:「先生、西港のバイオハザード、ニュースでやってますよ?深夜特番っスかね」
 愛原:「……だろうな」

 港湾道路は封鎖されていたから、船外でゾンビ化した者が街に流入するなんてことはないはずだ。
 陰性が確認された乗客達は解放されたが、もうこんな深夜だ。
 きっと市内に一泊して、それからそれぞれの家に帰るだろう。
 感染末期症状はゾンビ化したので、あいにくだが楽にしてやるしかない。
 では、感染初期症状の者はどうするのかというと、これは治療できる。
 但し、ただでさえコロナ禍で病床が逼迫している中、新たにそのような患者を受け入れる余裕のある病院は無い。
 しばらくは港湾に仮設したテントの中で治療を続け、BSAAの医療チームが用意した医療車に入れる他は無かった。
 それは大型トラックを改造した“スーパーアンビュランス”と呼ばれる、『移動する集中治療室』である。
 これは東京消防庁も保有しており、これから応援として駆け付けるという。
 また、自衛隊の救急車もテレビ画面に映っていた。

 愛原:「あれはコロナ第一波には無かった光景だな」
 高橋:「今回のは既に知られた旧型Tウィルスですからね。日本にも一応ワクチンがあるんスよね?」
 愛原:「そうだな」

 それにしても、どうして今更90年代後半のウィルス兵器が船内に蔓延したのだろう?
 今はウィルスではなく、特異菌という新種のカビが兵器として使われる時代だというのに。
 もっとも、その菌根はBSAAだか“青いアンブレラ”だかによって、爆破・焼却されたというが……。

[同日07:00.天候:晴 同ホテル客室]

 枕が変わると寝落ちしにくいが、しかしその分、抵抗なく起きれやすいというメリットもある。
 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らし、私はそれで起きた。
 浅めの眠りだったせいか、霧生市のバイオハザードを再現した夢を見た。
 今思うと、あの地獄から無傷で生還できたのは、本当に奇跡しか言いようがない。
 市民の中には脱出に成功しても、その後にゾンビ化した者も多々いたそうだし、栗原さんのように片足食い千切られた者もいる。
 本当はその時点で感染してしまうそうだが、栗原さんも私と同様、最初から抗体を持った人間だったという。
 旧型Tウィルスは、開発したアンブレラでさえ欠陥品だとするほどだ。
 10人に1人の割合で、最初から抗体を持っている人間が存在する。

 愛原:「起きろ、高橋。朝だぞ」
 高橋:「うっス……」

 私は高橋を起こして、窓のカーテンを開けた。
 昨夜は悪天候だったが、今日は晴天だ。

 愛原:「多分、Tウィルスそのものは外に流出していないだろう」

 私はそう呟いて、リサの部屋に内線電話を掛けた。

 リサ:「……おはよう……」
 愛原:「おはよう、リサ。ちゃんと起きたか?後で朝飯食いに行くから、支度しろよ?」
 リサ:「分かった……」

 私は電話を切った。

 愛原:「テレビはどうだ?」
 高橋:「また昨夜からのバイオハザードで持ち切りっスね」
 愛原:「……だろうな」
 高橋:「それより先生。先生の働いていた運送会社ってのは、どこにあるんですか?」
 愛原:「木工団地って知ってるか?」
 高橋:「ああ!東区にありますね。了解っス。そこに行く、バスを調べておきます」
 愛原:「頼むぞ。こっちのバスは、Suica使えるのか?」
 高橋:「あ、大丈夫です」
 愛原:「そうか」

 まあ、この町のことについては、高橋に任せておこう。
 私の場合、今から20年くらい前の話だし、あくまでも本社が新潟にあったというだけで、拠点は仙台営業所だったから。
 たまにしか行かなかったのだ。
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“私立探偵 愛原学” 「港湾バイオハザード」

2022-09-11 11:49:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月25日18:15.天候:雨 新潟県新潟市中央区 新潟西港中央埠頭]

 BSAA隊長:「こちらαチーム!コード・スペードエリアに現着!直ちに船内に潜入する!」
 HQ:「了解。該当船舶はロシア船籍の貨客船『ハラーショ』、船内にて旧型Tウィルスによるバイオハザードが発生しているもよう!現在、韓国地区本部隊が先着している!日本地区本部隊である各チームも、船内にて合流せよ!」
 隊長:「了解!」

 私達は日本のBSAAもまたヘリから降下し、船首甲板から船内に進入したのを確認した。
 で、私達はというと……。

 愛原:「早く!早くこちらへ!こちらは出口です!」

 非感染者や感染無症状の乗員・乗客の避難誘導に当たっていた。
 こういう時、完全なる抗体を持っている私はもちろんのこと、霧生市のバイオハザードを経験している者が対応に当たった方が良いという判断だった。

 ゾンビ:「アァア……!」
 高橋:「おりゃっ!」

 ゾンビ化した者にあっては、高橋が手持ちのマグナムを撃ち込んでいる。

 高橋:「先生、感染者全員ぶっ殺していいんスか!?」
 愛原:「ダメだ!あくまでゾンビ化した人だけだ!」

 昔は感染し、症状が出た時点で手遅れとされた。
 しかし、今は違う。
 感染しても初期症状(高熱、全身掻痒、食欲増大)までなら、ワクチンの投与で治癒できるようになった。
 ゾンビ化するということは、脳もやられたということだから、さすがにその時点では手遅れなのだ。

 リサ:「先生!まだ奥にいた!」

 リサはというと、更に船内の奥に向かって、要救助者の救助。

 乗客:「痒い……痒い……」
 愛原:「でかした!早く外に!」
 リサ:「うん!」

 因みにリサに血が付いているのは、多分、途中でゾンビと交戦したからだな。
 もちろん、ラスボスクラスのリサに、ザコゾンビは屁でもない。
 しかし、外も外で戦場だった。

 感染者:「うぅ……ウゥウガァァァァ!!」
 医療班A:「うわっ!間に合わなかった!」
 医療班B:「け、警備班!」

 ワクチンを投与しても、それが効くまでの間にゾンビ化してしまう乗客もいたからだ。

 高橋:「だから全員、ブッ殺しゃ済む話だろうがよ!」
 愛原:「WHOやBSAAで決められたからしょうがないだろ!『脳が無事なうちは人権あり。脳がやられたら人権剥奪』ってな!」

 もっとも、特異菌の場合は脳がやられることもなく、精神だけがおかしくなって人食いとかするからなぁ……。
 あの定義はどうするんだろう?

 高橋:「めんどくせぇ!」

 高橋はまた駆け寄って来るゾンビを射殺した。

[同日22:00.天候:曇 同地区内]

 船から火の手が上がっている。
 火災の原因は分からない。
 乗員・乗客は合わせて150人くらいいたが、その半数が感染者であり、そのうち半数がゾンビ化、更に半数くらいがクリムゾンヘッドやリッカーへと変化した。
 さすがにそんなゾンビの上位種とは交戦することは無く、突入したBSAAに射殺されている。

 リサ:「わたしもオリジナル先輩みたいに、首を捩じり切ってやりたかったな」

 リサはリッカーの話を聞いて、先日観た映画の話をした。
 味方サイドで登場したリサ・トレヴァー。
 襲ってきたリッカーを素手で首を捩じり切り、倒してしまった。

 愛原:「冗談じゃなく、本当にできそうだな、オマエは……」
 リサ:「というか、お腹空いた」
 愛原:「えっ!?」
 高橋:「俺は一っ風呂浴びたいくらいです。変な汗かいちまった」
 愛原:「それは確かに」

 しばらくして、善場主任がやってきた。

 リサ:「お待たせしました」
 愛原:「私達、別に感染してなかったでしょう?」
 善場:「ええ。そうするまでもありませんでしたね。それでは、引き上げます。車へ」
 愛原:「はい」

 私達は車に乗り込んだ。

 愛原:「デイライトさんは残らなくていいのですか?」
 善場:「私達はあくまで情報収集に特化した組織ですので……。それに今、港湾はBSAAの権限で封鎖されています。ここにいる公的組織の中で、1番強い権限を持っているのはBSAAです。従いまして、私達も封鎖区域外に出なければなりません」
 愛原:「なるほど」

 車が走り出す。
 途中にゲートがあったが、そこでもまた検問があった。
 警備をしているのは警察ではなく、BSAAだった。
 バイオテロが発生したとあらば、国関係無く駆け付け、速やかに事態を収拾するという任務を負う。
 日本もBSAAの活動を承認している以上、この取り決めには従わなくてはならない。
 霧生市のバイオハザードが発生する前までは、承認していなかったが……。

 リサ:「あ、そうそう。ヨンヒがいたよ」
 善場:「本当ですか!?」
 リサ:「うん。軍服とガスマスクを着けていたから一瞬分かんなかったけど、匂いで分かった」
 善場:「今回の部隊は極東支部が出動しました。それは当たり前ですが、日本地区本部だけでなく、韓国地区本部も参戦したということは……」

 韓国側は、今回の事件について何か知っているということだな。

 リサ:「それよりお腹空いた」
 善場:「一旦、ホテルに戻って着替えてきなさい。さすがに血が付いたままではダメだからね」
 リサ:「はーい……」

 リサはともかく、あんな状況を体験したにも関わらず、私も空腹を感じるようになるとは……。
 私も、少しおかしくなったのかな。

 善場:「はい、善場です」

 善場主任が自分の電話に出る。

 善場:「……はい。只今、現場を離脱し、新潟駅の方向に向かっています。……はい。……は?……ええっ!?そ、それではロシア当局に……ダメ?そんな……」

 何かあったのだろうか?
 電話を切った善場主任に、私は聞いた。

 愛原:「何かあったんですか?」
 善場:「うちの新潟事務所からの連絡なんですが……。“ハラーショ”号が出港した現地時間の当日、ウラジオストク駅からモスクワ行きの長距離列車が出発したのですが……」
 愛原:「あー、“ロシア”号でしたっけ?」
 善場:「今はダイヤ改正されているので、モスクワ行きの列車もいくつかあるみたいですね。そのうちの1つが“ロシア”号ですが、それに乗ったかどうかは不明です」
 愛原:「誰がですか?」
 善場:「斉藤容疑者ですよ。元社長の」
 愛原:「ええーっ!?」
 善場:「ロシア当局は、『シベリア鉄道のことはシベリア鉄道当局の権限なので、介入できない』なんて言ってるんですよ」
 愛原:「う、ウソだぁー!」
 善場:「私も詭弁だと思います。きっと、斉藤容疑者が、自分の所に当局の手が及ばないよう、色々と根回ししたのでしょうね」
 愛原:「で、でも、ということは、列車を降りれば逮捕できるということですね?」
 善場:「……と、思いますが、当局があの調子では、本当に逮捕するかどうか……」
 愛原:「ロシアのBSAAは!?」
 善場:「欧州本部の管轄ですが、あいにくと今、欧州本部は……」

 内紛でゴタゴタしてるんだっけか。

 愛原:「そ、そうだ!“青いアンブレラ”がいた!」
 善場:「は?」

 善場主任が冷たい視線を向けてくる。
 リサですら、震え上がるほどの冷たい瞳。

 善場:「“青いアンブレラ”は、我が国にとって、非合法組織です。そんな所に協力は仰げませんね」
 愛原:「し、失礼しました!」

 日本にとっては、な。
 欧米では民間軍事会社として、合法的に活動している。
 きっと、ロシアでも……。
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