[6月17日19:00.天候:雨 東京都台東区上野 東京中央学園]
〔「こんばんは。NHKニュースの時間です。まずは、速報です。今日午後6時頃、東京都台東区にあります東京中央学園上野高校において、男子生徒が校舎4階の窓から飛び下り、意識不明の重体です。繰り返します。今日午後6時頃、東京都台東区の東京中央学園上野高校で、男子生徒が校舎4階の窓から飛び下り、意識不明の重体となっております。速報から、お伝えしました。詳しいことは分かり次第、お伝えします。それでは、次のニュースです。……」〕
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
学校から事故があったとの知らせを受け、私は高橋と共に車を飛ばした。
学校に向かうと、既にパトカーや救急車などの緊急車両の他、マスコミの車なども駆け付けていた。
リポーター:「……御覧の通り、学校には生徒の保護者と思われる車が入っており……」
愛原:「今、中継で映ってるよ。俺らの車」
高橋:「凄いっスねぇ!」
愛原:「凄いねぇじゃねーよ!リサがまた何かしたんじゃないだろうな!?」
警備員:「すいません!保護者の方ですか!?」
愛原:「そうです!」
私は助手席から、警備員に応答した。
雨が降り出したせいか、警備員はレインコートを着ている。
警備員:「お名前は?」
愛原:「愛原と申します。愛原リサの保護者です」
警備員:「……確認が取れました。それでは、あちらの駐車スペースにお停めください」
愛原:「分かりました。……あそこだそうだ」
高橋:「ハイ」
私は高橋に言って、指示通りの駐車場所に車を止めさせた。
もっとも、元々来客用駐車場のスペースであったが。
車を止めて、通用口から校舎の中に入る。
坂上修一:「おっ、愛原さん!」
愛原:「坂上先生!リサは大丈夫なんですか?」
坂上:「ええ。さすがというべきか……。今は、無傷です」
担任の坂上修一先生は、リサの正体を知っている。
彼もまたこの高校のOBで、現役生時代は相当の怪奇現象を潜り抜けて来た猛者とも言える。
その為、リサの正体が人外であったとしても、すぐに理解できたほどである。
坂上先生の、『今は、無傷』というのも、リサの体質を理解しての言葉である。
リサ:「あっ、先生とお兄ちゃん」
愛原:「リサ、大丈夫か!?」
リサ達は保健室にいた。
但し、一部の者達は病院に搬送されている。
リサは学校のジャージに着替えていた。
さすがに家で着ていたコスプレ用の体操服にブルマーではなく、学校指定の体操着(上がTシャツタイプなのはコスプレ用と同じだが、下が緑色のクォーターパンツになっている)である。
何でも自殺を図った生徒が部室に飛び込んで来たが、その先にリサがいたそうだ。
ガラス窓をブチ破って来たせいで、リサにもガラス片が降り注いだそうだが、その時のケガは持ち前の回復力で全回復している。
但し、制服には男子生徒の血がベットリと付いた為、着替えたそうだ。
リサ:「私はね」
愛原:「栗原さんもいたそうだな?彼女は?」
リサ:「鬼斬り先輩は病院に行った。先輩もガラスの破片が刺さったりしたからね」
中には気分が悪くなった者もいるらしい。
リサは保健室で体に刺さったガラス片を抜いたり、体についた血を拭き取るだけで良かった。
リサ:「だから、わたしは何もしてないよ?ただ巻き込まれただけ」
愛原:「そうか。それなら……」
リサ:「血だらけの制服、どうしよう?」
愛原:「さすがに気持ち悪いから捨てた方がいいだろう。また、新しいの買ってやるから」
リサ:「おー!……あ、血は気持ち悪くないけど、見た目が悪いよね」
高橋:「啜るんじゃねぇぞ!」
リサだけが血だらけの男子生徒を見て、涎を垂らしたんだろうな。
幸い、明日が授業の無い土日で助かった。
また、夏服にあっては2着購入しているので、まだ1着ある。
夏服は季節柄、汚れやすいからだ。
また、まだ夏服の方が安い。
リサ:「分かってるよ」
愛原:「坂上先生、取りあえずリサは連れて帰っていいですか?」
坂上:「はい。警察の事情聴取も終わってますので、どうか気をつけて」
私はリサと一緒に、後者の外に出た。
保護者への説明会は、明日以降行われるだろう。
ん?PTA会長代行として、私も行かないといけない?
マジか……。
[同日19:30.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
金曜日の夜で雨が降っているということもあり、帰り道は渋滞にハマってしまった。
高橋もイライラしている。
私はそんな高橋を宥めながら、善場主任との連絡をしなければならなかった。
ミニバンのリアシートに座るリサは、さすがに疲れたのか……。
リサ:「…………」
座席にもたれかかって、うとうとしていた。
そうしているうちに、ようやくマンションに辿り着く。
高橋:「やっと着きましたよ」
愛原:「御苦労。この車、しばらくリースで借りといて良かったな」
高橋:「そうっスね」
NV200バネットの5ナンバーワゴンタイプである。
見た目は地味だし、乗り心地も商用バンの延長線だからそんなに良いわけではない。
しかし、探偵の仕事によくある隠密活動には、こういった車が良いのだ。
大手の法人事務所では、タクシーを貸し切りにすることもあるという。
タクシーもまた、どこにいようが違和感無い車である為、隠密活動にはちょうど良いのだ。
また、車から離れる時も、運転手は残っている為、駐車場を探したり、駐車違反で取り締まりを受けたりする心配も無い。
リサ:「先生、お腹空いた」
愛原:「分かってる。今日はカレーだ。もう作ってあるから、あとは温め直して食べるだけだ」
リサ:「おー!」
食性に関してだけは、本当に元に戻ったな。
これだけは、本当に良かった。
愛原:「あ、はい。もしもし?」
またもや善場主任から電話が来た。
善場:「愛原所長。どうやら明日、本当に保護者説明会があるようです。その後で良いので、リサを連れてこちらの事務所まで来て頂けますか?」
愛原:「分かりました。保護者説明会が終わりましたら、また御連絡します」
どうやら明日は、忙しい日になりそうだ。
最悪、日曜日も返上かな?
〔「こんばんは。NHKニュースの時間です。まずは、速報です。今日午後6時頃、東京都台東区にあります東京中央学園上野高校において、男子生徒が校舎4階の窓から飛び下り、意識不明の重体です。繰り返します。今日午後6時頃、東京都台東区の東京中央学園上野高校で、男子生徒が校舎4階の窓から飛び下り、意識不明の重体となっております。速報から、お伝えしました。詳しいことは分かり次第、お伝えします。それでは、次のニュースです。……」〕
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
学校から事故があったとの知らせを受け、私は高橋と共に車を飛ばした。
学校に向かうと、既にパトカーや救急車などの緊急車両の他、マスコミの車なども駆け付けていた。
リポーター:「……御覧の通り、学校には生徒の保護者と思われる車が入っており……」
愛原:「今、中継で映ってるよ。俺らの車」
高橋:「凄いっスねぇ!」
愛原:「凄いねぇじゃねーよ!リサがまた何かしたんじゃないだろうな!?」
警備員:「すいません!保護者の方ですか!?」
愛原:「そうです!」
私は助手席から、警備員に応答した。
雨が降り出したせいか、警備員はレインコートを着ている。
警備員:「お名前は?」
愛原:「愛原と申します。愛原リサの保護者です」
警備員:「……確認が取れました。それでは、あちらの駐車スペースにお停めください」
愛原:「分かりました。……あそこだそうだ」
高橋:「ハイ」
私は高橋に言って、指示通りの駐車場所に車を止めさせた。
もっとも、元々来客用駐車場のスペースであったが。
車を止めて、通用口から校舎の中に入る。
坂上修一:「おっ、愛原さん!」
愛原:「坂上先生!リサは大丈夫なんですか?」
坂上:「ええ。さすがというべきか……。今は、無傷です」
担任の坂上修一先生は、リサの正体を知っている。
彼もまたこの高校のOBで、現役生時代は相当の怪奇現象を潜り抜けて来た猛者とも言える。
その為、リサの正体が人外であったとしても、すぐに理解できたほどである。
坂上先生の、『今は、無傷』というのも、リサの体質を理解しての言葉である。
リサ:「あっ、先生とお兄ちゃん」
愛原:「リサ、大丈夫か!?」
リサ達は保健室にいた。
但し、一部の者達は病院に搬送されている。
リサは学校のジャージに着替えていた。
さすがに家で着ていたコスプレ用の体操服にブルマーではなく、学校指定の体操着(上がTシャツタイプなのはコスプレ用と同じだが、下が緑色のクォーターパンツになっている)である。
何でも自殺を図った生徒が部室に飛び込んで来たが、その先にリサがいたそうだ。
ガラス窓をブチ破って来たせいで、リサにもガラス片が降り注いだそうだが、その時のケガは持ち前の回復力で全回復している。
但し、制服には男子生徒の血がベットリと付いた為、着替えたそうだ。
リサ:「私はね」
愛原:「栗原さんもいたそうだな?彼女は?」
リサ:「鬼斬り先輩は病院に行った。先輩もガラスの破片が刺さったりしたからね」
中には気分が悪くなった者もいるらしい。
リサは保健室で体に刺さったガラス片を抜いたり、体についた血を拭き取るだけで良かった。
リサ:「だから、わたしは何もしてないよ?ただ巻き込まれただけ」
愛原:「そうか。それなら……」
リサ:「血だらけの制服、どうしよう?」
愛原:「さすがに気持ち悪いから捨てた方がいいだろう。また、新しいの買ってやるから」
リサ:「おー!……あ、血は気持ち悪くないけど、見た目が悪いよね」
高橋:「啜るんじゃねぇぞ!」
リサだけが血だらけの男子生徒を見て、涎を垂らしたんだろうな。
幸い、明日が授業の無い土日で助かった。
また、夏服にあっては2着購入しているので、まだ1着ある。
夏服は季節柄、汚れやすいからだ。
また、まだ夏服の方が安い。
リサ:「分かってるよ」
愛原:「坂上先生、取りあえずリサは連れて帰っていいですか?」
坂上:「はい。警察の事情聴取も終わってますので、どうか気をつけて」
私はリサと一緒に、後者の外に出た。
保護者への説明会は、明日以降行われるだろう。
ん?PTA会長代行として、私も行かないといけない?
マジか……。
[同日19:30.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
金曜日の夜で雨が降っているということもあり、帰り道は渋滞にハマってしまった。
高橋もイライラしている。
私はそんな高橋を宥めながら、善場主任との連絡をしなければならなかった。
ミニバンのリアシートに座るリサは、さすがに疲れたのか……。
リサ:「…………」
座席にもたれかかって、うとうとしていた。
そうしているうちに、ようやくマンションに辿り着く。
高橋:「やっと着きましたよ」
愛原:「御苦労。この車、しばらくリースで借りといて良かったな」
高橋:「そうっスね」
NV200バネットの5ナンバーワゴンタイプである。
見た目は地味だし、乗り心地も商用バンの延長線だからそんなに良いわけではない。
しかし、探偵の仕事によくある隠密活動には、こういった車が良いのだ。
大手の法人事務所では、タクシーを貸し切りにすることもあるという。
タクシーもまた、どこにいようが違和感無い車である為、隠密活動にはちょうど良いのだ。
また、車から離れる時も、運転手は残っている為、駐車場を探したり、駐車違反で取り締まりを受けたりする心配も無い。
リサ:「先生、お腹空いた」
愛原:「分かってる。今日はカレーだ。もう作ってあるから、あとは温め直して食べるだけだ」
リサ:「おー!」
食性に関してだけは、本当に元に戻ったな。
これだけは、本当に良かった。
愛原:「あ、はい。もしもし?」
またもや善場主任から電話が来た。
善場:「愛原所長。どうやら明日、本当に保護者説明会があるようです。その後で良いので、リサを連れてこちらの事務所まで来て頂けますか?」
愛原:「分かりました。保護者説明会が終わりましたら、また御連絡します」
どうやら明日は、忙しい日になりそうだ。
最悪、日曜日も返上かな?