報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「学校であった怖い話2022」 3

2022-09-05 20:21:05 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月17日19:00.天候:雨 東京都台東区上野 東京中央学園]

〔「こんばんは。NHKニュースの時間です。まずは、速報です。今日午後6時頃、東京都台東区にあります東京中央学園上野高校において、男子生徒が校舎4階の窓から飛び下り、意識不明の重体です。繰り返します。今日午後6時頃、東京都台東区の東京中央学園上野高校で、男子生徒が校舎4階の窓から飛び下り、意識不明の重体となっております。速報から、お伝えしました。詳しいことは分かり次第、お伝えします。それでは、次のニュースです。……」〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 学校から事故があったとの知らせを受け、私は高橋と共に車を飛ばした。
 学校に向かうと、既にパトカーや救急車などの緊急車両の他、マスコミの車なども駆け付けていた。

 リポーター:「……御覧の通り、学校には生徒の保護者と思われる車が入っており……」
 愛原:「今、中継で映ってるよ。俺らの車」
 高橋:「凄いっスねぇ!」
 愛原:「凄いねぇじゃねーよ!リサがまた何かしたんじゃないだろうな!?」
 警備員:「すいません!保護者の方ですか!?」
 愛原:「そうです!」

 私は助手席から、警備員に応答した。
 雨が降り出したせいか、警備員はレインコートを着ている。

 警備員:「お名前は?」
 愛原:「愛原と申します。愛原リサの保護者です」
 警備員:「……確認が取れました。それでは、あちらの駐車スペースにお停めください」
 愛原:「分かりました。……あそこだそうだ」
 高橋:「ハイ」

 私は高橋に言って、指示通りの駐車場所に車を止めさせた。
 もっとも、元々来客用駐車場のスペースであったが。
 車を止めて、通用口から校舎の中に入る。

 坂上修一:「おっ、愛原さん!」
 愛原:「坂上先生!リサは大丈夫なんですか?」
 坂上:「ええ。さすがというべきか……。今は、無傷です」

 担任の坂上修一先生は、リサの正体を知っている。
 彼もまたこの高校のOBで、現役生時代は相当の怪奇現象を潜り抜けて来た猛者とも言える。
 その為、リサの正体が人外であったとしても、すぐに理解できたほどである。
 坂上先生の、『今は、無傷』というのも、リサの体質を理解しての言葉である。

 リサ:「あっ、先生とお兄ちゃん」
 愛原:「リサ、大丈夫か!?」

 リサ達は保健室にいた。
 但し、一部の者達は病院に搬送されている。
 リサは学校のジャージに着替えていた。
 さすがに家で着ていたコスプレ用の体操服にブルマーではなく、学校指定の体操着(上がTシャツタイプなのはコスプレ用と同じだが、下が緑色のクォーターパンツになっている)である。
 何でも自殺を図った生徒が部室に飛び込んで来たが、その先にリサがいたそうだ。
 ガラス窓をブチ破って来たせいで、リサにもガラス片が降り注いだそうだが、その時のケガは持ち前の回復力で全回復している。
 但し、制服には男子生徒の血がベットリと付いた為、着替えたそうだ。

 リサ:「私はね」
 愛原:「栗原さんもいたそうだな?彼女は?」
 リサ:「鬼斬り先輩は病院に行った。先輩もガラスの破片が刺さったりしたからね」

 中には気分が悪くなった者もいるらしい。
 リサは保健室で体に刺さったガラス片を抜いたり、体についた血を拭き取るだけで良かった。

 リサ:「だから、わたしは何もしてないよ?ただ巻き込まれただけ」
 愛原:「そうか。それなら……」
 リサ:「血だらけの制服、どうしよう?」
 愛原:「さすがに気持ち悪いから捨てた方がいいだろう。また、新しいの買ってやるから」
 リサ:「おー!……あ、血は気持ち悪くないけど、見た目が悪いよね」
 高橋:「啜るんじゃねぇぞ!」

 リサだけが血だらけの男子生徒を見て、涎を垂らしたんだろうな。
 幸い、明日が授業の無い土日で助かった。
 また、夏服にあっては2着購入しているので、まだ1着ある。
 夏服は季節柄、汚れやすいからだ。
 また、まだ夏服の方が安い。

 リサ:「分かってるよ」
 愛原:「坂上先生、取りあえずリサは連れて帰っていいですか?」
 坂上:「はい。警察の事情聴取も終わってますので、どうか気をつけて」

 私はリサと一緒に、後者の外に出た。
 保護者への説明会は、明日以降行われるだろう。
 ん?PTA会長代行として、私も行かないといけない?
 マジか……。

[同日19:30.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 金曜日の夜で雨が降っているということもあり、帰り道は渋滞にハマってしまった。
 高橋もイライラしている。
 私はそんな高橋を宥めながら、善場主任との連絡をしなければならなかった。
 ミニバンのリアシートに座るリサは、さすがに疲れたのか……。

 リサ:「…………」

 座席にもたれかかって、うとうとしていた。
 そうしているうちに、ようやくマンションに辿り着く。

 高橋:「やっと着きましたよ」
 愛原:「御苦労。この車、しばらくリースで借りといて良かったな」
 高橋:「そうっスね」

 NV200バネットの5ナンバーワゴンタイプである。
 見た目は地味だし、乗り心地も商用バンの延長線だからそんなに良いわけではない。
 しかし、探偵の仕事によくある隠密活動には、こういった車が良いのだ。
 大手の法人事務所では、タクシーを貸し切りにすることもあるという。
 タクシーもまた、どこにいようが違和感無い車である為、隠密活動にはちょうど良いのだ。
 また、車から離れる時も、運転手は残っている為、駐車場を探したり、駐車違反で取り締まりを受けたりする心配も無い。

 リサ:「先生、お腹空いた」
 愛原:「分かってる。今日はカレーだ。もう作ってあるから、あとは温め直して食べるだけだ」
 リサ:「おー!」

 食性に関してだけは、本当に元に戻ったな。
 これだけは、本当に良かった。

 愛原:「あ、はい。もしもし?」

 またもや善場主任から電話が来た。

 善場:「愛原所長。どうやら明日、本当に保護者説明会があるようです。その後で良いので、リサを連れてこちらの事務所まで来て頂けますか?」
 愛原:「分かりました。保護者説明会が終わりましたら、また御連絡します」

 どうやら明日は、忙しい日になりそうだ。
 最悪、日曜日も返上かな?
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“愛原リサの日常” 「学校であった怖い話2022」 2

2022-09-05 13:33:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月17日17:00.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 坂上:「えー、それでは最後のトリは、あなたにお願いします。2年生の……」
 橘:「はい。2年9組、橘理香です」

 リサと同学年の女子。
 一体、何を話すのだろうか。

 橘:「私が話すのは、『トイレの鬼』です。この学校には、人間の老廃物を啜る鬼が棲んでいるのです」
 リサ:(それ、わたしのことじゃね?)

 リサは橘のことは知らない。
 しかし、橘の話を聞くと、どうもやっぱり犯人は自分のような気がしてしょうがないのだ。
 どうやら、リサに『捕食』された者からの噂話として聞いたらしい。

 橘:「その鬼は、どこのトイレに現れるか分かりません。しかし、女子だけを狙うことから、女子トイレにしか現れないのです」
 リサ:(うん、だってわたし女子だし)
 橘:「しかも、どのトイレに出るか分からないので、尚更怖いのです」
 リサ:(なるべく人けの少ないトイレが狙い目。外トイレを使うこともある)
 橘:「放課後、1人で校舎を歩いていると、同じ学校の制服を着た女子に化けた鬼が現れます。同じ学校の生徒だということで、みんな油断してしまうのです」

 リサは段々自分のことを話されていることに、むず痒くなっていった。
 中には誇張されている部分や、デマである部分もあって、『それは違う!』と言いそうになるのだが、正体がバレてしまう為、そこはグッと堪えた。

 橘:「事件が始まったのは、去年くらいからです。そして、調べてみると、それは中等部から続いていることが分かっています。恐らく、鬼は私と同じ2年生に化けているのではないでしょうか?愛原リサさん……」
 リサ:「は、はいッ!」

 まさかバレたと、ビックリしたリサ。
 幸い、それで第1形態に戻ることはなかった。

 橘:「その様子からして、愛原さんも恐ろしい目に遭ったようですね?本当は愛原さんも、この話をされるおつもりだったのでは?」
 リサ:「ね、ネタとしては、あったかなぁ……」
 橘:「でも、聖クラリス女学院の話も面白かったです。他校を見ても、そのような恐ろしい化け物が1人くらい紛れ込んでいてもおかしくはありません。ここ最近、『トイレの鬼』は現れていませんが、そろそろ出る頃でしょう。特に女子の皆さんは、放課後のトイレを使う時は十分気をつけてください」

 幸いにして、リサが正体だとバレることはなかった。
 この事件の真相を知っているのは、ここにいるのは張本人のリサと、妹をリサに『捕食』された栗原蓮華くらいだ。

[同日17:30.天候:曇 新聞部部室]

 橘:「……以上で私の話を終わります。ありがどうございました」

 話の途中で、転校してしまった斉藤絵恋が『トイレの鬼』ではないかと疑われる流れになってしまった。
 確かにリサ、斉藤絵恋が転校してから、『捕食』をしていない。

 リサ:(サイトーには悪いけど、わたしの代わりに『鬼』になってもらおう)

 リサはマスクの向こうでニヤリと笑った。

 坂上:「ありがとうございました。それでは、七不思議ですので、次の方が最終話となるわけですが……」
 3年生男子:「いや、来ねーじゃねーか!」
 坂上:「そ、そうですね……」
 3年生男子:「そうですね、じゃねーよ!どうなってんだよ!」
 栗原:「坂上君、部長に連絡してみたら?」
 坂上:「あ、はい。今、LINEしてみます」

 坂上はスマホを取り出した。
 そもそもケータイすらロクに普及していなかった1995年、SNSがロクに普及していなかった2008年の回ではできなかったことだろう。

 坂上:「おかしい。既読が付かない」
 3年生男子:「もう、直接通話しろよ!」
 坂上:「は、はい!」

 坂上は部長に電話した。

 リサ:「部長さんって誰?」
 栗原:「確か、日ノ上君って言ったかな。私の隣のクラスの人」
 3年生男子:「俺のクラスだよ!『七不思議が完成すると、面白い事が起きるから期待してて』って言うから来てやったのによ!」
 栗原:「『七不思議が完成すると、怖い事が起きる』の間違いじゃない?」
 3年生男子:「ンなことどうだっていいんだよ!ミステリーが起きればよ!」
 リサ:「ミステリーねぇ……」

 ホラーを提供できるリサだが、ミステリーは無理だなと思った。

 3年生男子:「まだ出ねーのか!?」
 坂上:「す、すいません!」
 栗原:「風見君、坂上君のせいじゃないんだから、坂上君にキレたってしょうがないでしょ?」
 風見:「うるせぇ!」

 と、その時だった。

 リサ:「何か聞こえる……」
 栗原:「えっ?」

 何か雑音のような物が聞こえてくる。
 それは、部室内にある校内放送用のスピーカーからであることが分かった。

 風見:「橘と言ったか?ちょっとボリューム上げてくれ」
 橘:「はい!」

 風見はボリュームのツマミの近くにいた橘に言った。
 橘がボリュームをマックスにする。
 どうやら、テープに録音された音声のようである。
 今時カセットテープだなんてレトロであるが、放送室の機器の中に、確か、カセットテープで再生できるものもあったことをリサは思い出した。
 放送室なんて1度しか入ったことのないリサ、しかもそこは東京中央学園ホラーの中ではセーフティゾーンなのか、今までの七不思議特集では殆ど出て来ることはなかった。

〔「……新聞部で部長をしている日ノ上と申します。本日、新聞部の部室に集まっている皆さんにお詫びを申し上げます」〕

 風見:「ヒノの声だ!」

〔「……本日、どうしても7人目を見つけることはできませんでした。そのお詫びとして、僕自身が7話目になろうと思います」〕

 風見:「何だそりゃ?ヒノ自身が7話目を話に来てくれるってことなのか?」

〔「……ごめんなさい。尚、このテープは自動で焼却されます」〕

 リサ:「え?」
 坂上:「ああっ?!」

 坂上が窓の外を見て絶叫を上げた。
 リサの席は、窓を背にして座る位置にある。
 それで急いで振り向くと、恐ろしい形相をした男子生徒が窓に向かって突進してくるところだった。
 新聞部の上、最上階の4階には放送室がある。
 そこから自殺を図って飛び下りた日ノ上だが、地面に激突する直前、通り掛かった布団屋(仮眠室や保健室の布団を回収しに来た)の上に落ち、それがトランポリンのように弾かれる形で部室の窓に突っ込んで来たというわけである。
 ある意味、これも伝説回となってしまった。
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“愛原リサの日常” 「学校であった怖い話2022」 1

2022-09-05 11:03:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月17日15:30.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F新聞部部室]

 予定通り、放課後、リサは新聞部の部室に向かった。

 栗原:「リサ」
 リサ:「あっ、鬼斬り先輩」
 栗原:「その呼び方はやめなって何度も言ってるだろ。本当に斬るよ?」
 リサ:「ゴメンなさーい」

 さすがに今のリサは、学校の夏制服をちゃんと着ている。
 栗原は片足が義足の為、歩く度にカチャカチャと金属音が鳴っている。
 霧生市出身で、霧生市のバイオハザード事件に巻き込まれた際、リサと同種の『日本版リサ・トレヴァー』に片足を食い千切られた過去を持つ。
 尚、『2番』たる愛原リサは、栗原の片足を食い千切った『1番』の存在は当然知っていて、あの日、真っ先に研究所を脱走したのも知ってはいたが、栗原にそんなことをしていたのは知らなかった。
 『2番』のリサが研究所から脱走しなかったのは、逃げても意味が無いことを知っていたからだと本人は言う。
 だが、おかげでこうして生き延びていられいるのだから、良い判断だっただろう。
 尚、ここでは栗原が3年生、リサが2年生なので、先輩後輩の関係である。

 リサ:「先輩は何を話すの?」
 栗原:「色々と考えてる。昨年あった話とかね」
 リサ:「あれは、わたしも考えてのに……」
 栗原:「まあ、私はさっさと神田さんに負けちゃって気絶していたから、あなたが話すのが1番かもね」
 リサ:「うん、かもね」
 栗原:「そういうリサは?」
 リサ:「んーとね、わたしは“花子さん”かな」
 栗原:「教育資料館の?リサならでの話かもね」
 リサ:「そうだよね」

 新聞部の部室に入ると、既に他の語り部が何人か来ていた。
 あいにくと、やはり見たことの無い顔ぶればかりだ。
 今年からは座る席が決まっており、長机には所属と名前が書かれた札が置かれている。

 栗原:「私はここね」

 『3年3組 栗原蓮華』という名札が置かれた席に座る栗原。
 リサには、もちろん『2年5組 愛原リサ』という札が置かれていた。
 他に見ると、3年生や2年生はもちろん、1年生もいるのが分かった。

 2年生男子:「失礼しまーす」
 3年生男子:「ちゃス」

 リサ:「やっぱり聞き手の新聞部員は、1年生っぽいですね」
 栗原:「何でも、昔からこの担当は1年生が行うという伝統ができたみたいだよ。伝説の1995年と2008年の回の時なんか特にね」
 2年生男子:「あ、それ、知ってます!実は自分、それを話そうと思うんで、よろしくオナシャス!」
 リサ:「昨年の回も、なかなか伝説じゃなかった?」
 栗原:「かもね」

 しばらくして、最後に新聞部員が入って来た。
 今年の担当は1年生男子のようだ。

 坂上修二:「皆さん、本日はお忙しい中、お集まり頂いて、ありがとうございます。僕は新聞部の坂上修二と申します。まだ、1年生です。よろしくお願いします」
 リサ:「坂上……?坂上先生の関係?」
 坂上:「あ、坂上先生は僕の叔父さんです」
 リサ:「親戚!?……坂上先生は、あなたがこの回に出ること、了承したの?」
 坂上:「実は話していません」
 リサ:「やっぱり……」
 栗原:「やっぱりね……」
 坂上:「何か知ってるんですか?」
 リサ:「伝説の1995年の回、その時の新聞部の担当って、坂上先生だったんだよ」

 その時、リサの担任の坂上の修一の年齢からすると、現在の年齢がバレてしまう。

 2年生男子:「はい!この事は自分が詳しいんで、自分がトップバッターで話させて頂きたいんですけど、いいですか!?」
 坂上修二:「はい、それではよろしくお願いします。話の前に、自己紹介からお願いします」
 2年生男子:「はい!自分、2年1組の新堂徹って言います!さっきチラッて言ってた1995年の回なんですけど、実はその時の語り部の1人が自分の叔父さんで、その叔父さんから聞いた話なんですけど……」

 こうして、『学校の七不思議特集2022』もまた滞りなく開始された。
 滞りなく開始されたのは、伝説の回の1つとなってしまった2021年も同じである。
 だから、まだ油断はできない。

[同日16:30.天候:曇 新聞部部室]

 栗原:「……というお話でした」

 栗原は第4話目を担当した。
 因みに席は決まるようになったが、誰が何話目を話すのかは決められていない。
 担当の新聞部員がランダムに語り部を指名していく、という伝統に基づくものである。

 坂上:「ありがとうございました。昨年、この新聞部で、そんな恐ろしいことがあったんですね」

 栗原は予告通り、2021年の回が伝説回にノミネートされた所以を話した。
 神田拓郎という、かつてこの学校の3年生だった男子が、恋敵に自殺に見せかけて殺されたこと。
 死に至った際に頭が潰れたせいで、首無し死体の幽霊としてこの部室にやってきたこと。
 そして、恋敵の首と胴体を捩じり切ったものの、また、幽霊と化した恋敵に復讐される形で2人とも消えていったことを話した。

 栗原:「一応、私の宗派で塔婆供養はしましたので、もう幽霊として現れることはないと思いますけど」
 坂上:「ありがとうございました。それでは、次の5話目は愛原リサさんにお願いします」
 リサ:「わ、分かりました」

 部室内には、ただならぬ空気が漂っている。
 七不思議の集まりで、1人1話話す形式であるのだから、語り部は7人いないとおかしい。
 だが、何かの手違いなのか、今は6人しかいなかった。
 これは、伝説の回となるジンクスであることを意味している。
 1995年の回も2008年の回も、そして昨年である2021年の回も、6人しか集まらなかったのだ!
 そして、今年!
 まさか、2年連続で伝説の回となるのだろうか。

 リサ:「わたしは2年5組の愛原リサと言います。私がこれからお話しするのは、代替修学旅行であった話です」
 栗原:「へえ?教育資料館の話をするんじゃないんだ?」
 リサ:「もしわたしが6話目を話すことになるんでしたら、そうしてました。ただ、それには教育資料館に移ってもらう必要があるので、今回はやめておきます」

 リサは代替修学旅行であった話を話した。
 コロナ禍で、リサの世代は中等部時代の修学旅行ができなかった。
 そこで今から数ヶ月前、スキー合宿も兼ねた中等部代替修学旅行が行われた。

 リサ:「わたし達が乗った電車には、もう1つ、別の学校が乗っていました。六本木にある聖クラリス女学院です」
 3年生男子:「おおっ!あの美少女揃いの女子校!」

 リサは聖クラリス女学院の梅田美樹の話をした。

 リサ:「……ヤツは人喰いをする為に、同級生達を寒空の中、まっぱにして、それから……」

 話しているうちに、リサも、

 リサ:(わたしも食べたい!血肉が欲しい!)

 と、思うようになった。
 悪い意味での食性も、元に戻ったということである。
 リサの活躍を正直に語ると、リサ自身の正体もバレてしまうので、そこは脚色した。
 リサ自身も梅田美樹の凶行を目撃してしまったことで、自分も食い殺されそうになったが、寸での所でBSAAが駆け付けてきたことで命拾いしたということにしておいた。

 リサ:「……こんな感じです」
 坂上:「あの代替修学旅行で、そんなことがあったんですね。分かりました。ありがとうございます。それでは、次の6話目は……」

 まだ7人目は部室に来ていない。
 これからも来ないようなら、実質的に次の語り部がトリとなる。
 全員が、トリとなるかもしれない語り部に目をやった。
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