報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夏休みを迎える前」

2022-09-19 20:16:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月27日16:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 リサ:「ただいま」

 リサが学校から帰って来た。

 愛原:「おっ、お帰り」
 リサ:「今日ね、学校で進路相談があったんだよ」
 愛原:「え?」
 高橋:「おい、まさか『先生と結婚するので、進学も就職もしません』とか言ったんじゃないだろうな?」
 リサ:「そう言いたかったんだけど、多分それはNGだと思うから、『進学』にしておいた」
 愛原:「善場主任も、それを気にしてるんだよ。じゃあ、善場主任には『進学』って言っておくからな?」
 リサ:「うん」
 愛原:「因みに進学するとして、どこの学校に行きたいとかあるのか?」
 リサ:「うーん……。なるべく近い所の方がいいなぁ……」

 管理の都合上、リサは独り暮らしができない。
 なので遠方の大学に進学して、独り暮らしができないのだ。

 リサ:「やっぱり附属の東京中央学園大学、かなぁ……」
 愛原:「東中大か……。どこにあるんだっけ?」
 リサ:「池袋。高校の池袋校舎のすぐ近くにあるんだよ」
 愛原:「そうかぁ」

 東京中央学園の高等部はいくつかある。
 リサの通っている上野高校は、主に普通科と英語科。
 池袋高校は工業科と商業科がある。

 愛原:「まあ、ブクロならここから通えるな」
 リサ:「そうだね」

 都営新宿線と東京メトロ丸ノ内線だな。
 小川町駅で乗り換えできるはずだ。

 高橋:「附属だと受験しなくていいんじゃねーのか?」
 リサ:「推薦入試だけだって」
 愛原:「ということは、普段の成績と、先生からの評価が大事だな」

 リサはそんなに成績は悪くないから大丈夫だろう。
 未だに赤点を取ったことがないのだから。
 問題は、素行か……。
 いや、別に不良ってわけじゃないのだが、いじめっ子気質が問題視されたことがある。

 愛原:「リサ、イジメ、ダメ、絶対!いいな?」
 リサ:「……し、してないよ」
 高橋:「嘘つくな、コラァッ!」

 と、そこへ、事務所の電話が鳴った。

 愛原:「静かにしろよ。……はい、愛原学探偵事務所です」
 坂上:「あ、愛原さんの事務所ですか?私、東京中央学園上野高校の坂上修一と申します」
 愛原:「あっ、坂上先生!いつもリサがお世話になっております」
 坂上:「こちらこそ、どうも……。御自宅にお電話しましたら、こちらの番号に転送されましたもので……」

 今、自宅には誰もいないので、自宅に掛かって来た電話は、この事務所に自動転送されるように設定してあるのだ。

 愛原:「そうんですよ。今、自宅には誰もいないものですから……」
 坂上:「リサさんもいませんか?」
 愛原:「リサなら、もう帰って来てますよ?」
 リサ:「ヤバッ!」

 リサ、慌てて事務所から出ようとする。
 だが、それを高橋が羽交い締め。

 高橋:「待てや、コラ!脱走は銃殺だって、アンブレラの時から言われてたそうだなぁ!?」
 リサ:「ここ、アンブレラじゃないし!」
 愛原:「あー、すいません、賑やかで……。それで、うちのリサに何の御用でしょうか?」
 坂上:「他のクラスの生徒から、『リサさんにイジメられた』という被害報告がありましたので、後ほど3者面談をと思いまして……」
 愛原:「大変、申し訳ございません!」
 リサ:「ちょっと、老廃物をもらっただけだよぉ!?」
 高橋:「ダサくチクられてんじゃねーよ、バーカ!もっとチクらなさそうなヤツを選べよな、あぁッ!?」
 リサ:「ちょうどいい匂いの経血垂らしてたヤツがいたんだよ!」
 高橋:「知るか!」
 愛原:「……はい、それでは後日ということで……。はい、承知しました。……はい、失礼致します」

 私は電話を切った。

 愛原:「……リサ、オマエ後で説教な?」
 リサ:「ぴっ!?」
 高橋:「けっ、ざまぁみろwww」

 と、そこへまた電話が掛かって来た。

 愛原:「はい、愛原学探偵事務所です」
 警察官:「こちら、警視庁○×警察署交通課の者ですが……」
 愛原:「……すぐに出頭させます!申し訳ございません!」

 また、電話を切る。

 愛原:「高橋ィ!オマエはオマエで、また警察の停止命令を振り切って逃げたんだってなぁ!?」
 高橋:「ぴっ!?」
 愛原:「さっさと出頭しに行ってこーい!」
 高橋:「は、はいぃぃぃっ!」
 リサ:「ぷwww」

[7月15日10:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 それからしばらくは、何も起きなかった。

 愛原:「明日からの3連休だが、上野姉妹を藤野まで連れて行くという任務がある」
 高橋:「ただのボランティアっスよね?」
 愛原:「まあ、そう言うな。今回は善場主任も合流するから、ちゃんとした仕事も含まれてるぞ」
 高橋:「そうっスか……」

 藤野の研究施設に収容されている上野姉妹の母親を、仮釈放にするかどうかを決めるという。
 リサは猛反対している。
 私を食おうとしていたことは、絶対に許さないという。
 なので、上野姉妹は連れて行くが、リサは連れて行かないという選択肢もあった。
 だが、それはリサが許さないだろう。
 ハブられたという感が強いからだ。
 それと、もう1つ問題があった。

 愛原:「また免停食らいやがって、この野郎!」
 高橋:「ら、来週末には解除されますんで……」
 愛原:「そういう問題じゃねぇ!」

 というわけで、電車で行くことになりそうである。

 愛原:「リサの夏休みは、絵恋さんを連れて仙台に行こうと思ってる」
 高橋:「えっ、先生の帰省なのに?」
 愛原:「公一伯父さんを覚えてるだろう?」
 高橋:「ああ。結局、アンブレラと繋がってた人ですね」
 愛原:「その伯父さん、起訴猶予処分になったんだよ」
 高橋:「えっ、じゃあ無罪放免ですか?」
 愛原:「無罪ってわけじゃないな。逮捕歴と前歴は残るわけだし……」

 前科ではなく、前歴である。

 愛原:「元々伯父さんが開発した化学肥料は、本当に化学肥料のつもりで開発したものだ。それを日本アンブレラ、特に白井伝三郎が悪用する為に伯父さんから譲り受けただけに過ぎない。結果的に伯父さんは日本アンブレラに加担した罪で逮捕されたわけだけども、そういった所が考慮されて、起訴猶予になったんだ」

 年齢的なものもあるし、本当に化学肥料のつもりで作ったもので、最初から日本アンブレラに悪用されることを想定して作ったわけではないということで。
 ただ、あの時点で日本アンブレラの悪い噂は知っていたはずだし、悪用されるかもしれないということは想定できたのにも関わらず、譲り渡してしまったということで逮捕はされた。
 しかし、起訴とはならず、起訴猶予となったわけである。

 高橋:「今、どこに住んでるんです?あの……宮城の元公民館は無くなりましたよね?」
 愛原:「ああ。別の所に住んでるよ。ちょっとその伯父さんを訪ねてみようと思うんだ。もしかしたら、色々と知ってるかもしれないしね」
 高橋:「そうですか」
 愛原:「来週末には免停解除だろ?向こうに行ったら車は必須になるから、また運転頼むわ」
 高橋:「お任せください!」
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“私立探偵 愛原学” 「今後について」

2022-09-19 16:38:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月27日13:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は報告と打ち合わせで、大型クライアントであるNPO法人デイライトさんの東京事務所にやってきた。
 コロナ禍で軒並み探偵事務所が潰れて行く中、こうした大型クライアントが付いた私はとてもラッキーなことである。
 本当なら他にも斉藤元社長からの定期的な仕事の依頼(という名の雑用)があったのだが、これは無くなってしまった。
 だから、今はデイライトさんの仕事が本当にありがたいのである。
 もっとも、デイライトさんとしては、有名な大手事務所より弱小零細事務所の方が、何かあった時に切り捨てやすいという政治的な理由もあるようだが……。
 デイライトさんとて、NPO法人は隠れ蓑で、その実は日本政府の防諜機関であると思われる。
 そして善場主任は、バイオテロ対策に特化した業務を請け負っているようである。

 善場:「お疲れさまです、愛原所長」

 私と高橋は、事務所の応接会議室へと通されていた。

 愛原:「善場主任、お疲れさまです。こちら、昨日の事件の報告書になります」
 善場:「ありがとうございます。拝見します」

 主任は書類に目を通した。

 善場:「広域暴走族“極東戦線”の構成員が、件のBOWを連れて来たのですね?」
 愛原:「はい、間違いありません。そして、新潟支部長の金田某……恐らく、在日朝鮮人のキムというのが本名でしょうが、彼が変異間際、『騙された』と言っていました」
 善場:「新潟県警にも問い合わせました。確かに、“極東戦線”は在日コリアンの構成員が多いそうです。そして、それは今、とても重要なことです」
 愛原:「と、仰いますと?」
 善場:「極東戦線は北朝鮮にも通じていると見られ、あのBOWは北朝鮮から持ち込まれたものかもしれないのです」
 愛原:「何ですって!?」
 善場:「本来ならBSAAが介入する案件なのでしょうが、北朝鮮はBSAAの活動を一切承認していません。その為、BSAAの介入が非常に難しい状態なのです」
 愛原:「それは困りますね。実際、ああして日本に持ち込ませたのですから」
 善場:「もちろん日本国内に入った分にはBSAA極東支部日本地区本部もしくは、日韓合同部隊の介入があります。昨日もそうでしたよね?」

 尚、韓国地区本部隊が単独で日本国内で活動するのは、さすがに日本政府は承認していない。
 活動したい場合は、日本地区本部隊との合同という形を取らなくてはならないことになっているそうだ。

 善場:「北朝鮮から持ち込まれたものと判明した場合、日本政府として北朝鮮に強く抗議します」
 愛原:「それだけか……」
 高橋:「だったら、BSAAの活動を承認しない方がいいのかよ……」
 善場:「国際的な信用を得られるかどうかにも関わりますから、そういうことではないんですよ。例えば国連の常任理事国は、全てBSAAの活動を承認しなければならないことになっていますからね」
 愛原:「つまり、あのロシアもってことになりますね」
 善場:「そうです。2011年にロシア領の孤島でバイオハザード事件がありましたが、BSAAが介入しました。もちろん、ロシア政府が特にそれに対して妨害とか、そういうことはしていません」
 愛原:「なるほど」
 高橋:「それで姉ちゃん、どうするんだ?極東戦線は……」
 善場:「各県警に対して、極東戦線の構成員を拘束するように申し伝えます。叩けば埃が出て来る人達ばかりでしょうから、それで逮捕できるでしょう」
 愛原:「別件逮捕ですね」

 “はんごろし”に集まった極東戦線のメンバー達は全滅したが、全員があそこに集まったわけではない。
 新潟支部は壊滅状態になっただろうが、近県の支部はまだ残っているはずである。
 そこをデイライトのバックにいる政府機関が、各県警に対して圧力を掛け、メンバー全員を何でもいいから逮捕するようにさせるわけだ。
 それこそ、暴走族なら当たり前の交通違反でも逮捕ってことにするのかな。

 高橋:「極東も終わったな……」
 愛原:「しかし、どうして一暴走族の団体がBOWなんか掴まされたんですかね?」
 善場:「それはこれからの調査で明らかになると思います。あくまでも、私個人の見解で宜しければ……。極東戦線のメンバ―の多くは在日コリアンだということは分かっています。しかし、中には韓国ではなく、北朝鮮にルーツのあるメンバーもいるでしょう。特に、新潟はそういうのが多いですから。どういった方法かは不明ですが、恐らくはメンバーの中に朝鮮総連に直接通じている者がいて、そこからBOWを預かるように伝えられたのではないでしょうか。そして、実際に指示があったのかどうかも不明ですが、そのBOWを件の現場で使用した。そういう事ではないかと思います」
 愛原:「なるほどねぇ……。主任のその見解がピッタリ大正解だったとして、北朝鮮の意図は何でしょうか?」
 善場:「日本側の防衛体勢がどうなのか見る為とか、BSAAの介入方法とか、そういうのを見る為なのかもしれません」
 愛原:「じゃあ、どこかで北朝鮮関係者があの現場を見ていたというわけですか」
 善場:「その可能性は十分考えられます。所長の周りで、怪しい人物とかはいませんでしたか?」
 愛原:「いやあ、ちょっとそれは……気が付かなかったですねぇ……」
 高橋:「姉ちゃん、あの時は修羅場で、とてもそんなことに気づける状態じゃねーよ」
 善場:「そうですか……」

 一瞬マスターかと思ったが、彼もまたゾンビに食い殺されて、自分もゾンビになってしまっている。
 工作員なら、そんな危ない所にはいないだろう。
 取りあえず、一民間探偵業者としては、ここまでが仕事のようだ。
 後は公的機関の仕事になる。
 そこから話は変わって……。

 愛原:「あと一月足らずでリサの学校は夏休みですが、沖縄に転校した斉藤絵恋さんが上京したいそうです。まあ、目的はリサとの再会でしょうが……」
 善場:「それは構いませんよ。こちらとしても、斉藤容疑者の娘に聞きたいことがありますので、ちょうど良い機会です」
 高橋:「リサとの再会の前に、姉ちゃん達の尋問か。トボけてるようなら、ビシバシ拷問するわけだな」
 善場:「拷問は日本国憲法で禁止されています」
 高橋:「いざとなったら、女子少年院へゴーか。残念だな」
 愛原:「絵恋さんが直接何かしたわけじゃないだろう?」
 善場:「それと、所長にもお伺いしたいのですが……」
 愛原:「何でしょう?」
 善場:「リサも高校2年生になりまして、そろそろ進路を決める時期だと思うのです。リサはどうしたいか聞いていますか?」
 愛原:「私と結婚したい、と……」
 善場:「それはリサが人間に戻れたらの話だと何度も言っているはずです。恐らく高校在学中は、それは難しいと思いますので、就職か進学かの希望を聞いておいてください」
 愛原:「分かりました」
 高橋:「体型だけなら、相変わらず中学生のまんまなんだけどな」
 善場:「それは仕方ありません。Gウィルスの作用で、成長ホルモンに大きな影響が出てしまうからです。私やアメリカのシェリー・バーキン氏も同じです」

 善場主任の体型は平均的なものである。
 それは、アンブレラに捕まって実験をされた時点で、もう大学生だったからだろう。
 大学の特別講師を隠れ蓑にしていた白井伝三郎に目を付けられたのが運の尽きであった。

 善場:「それでも少しずつ成長はしているはずなので、いずれは大人の体型になれるとは思います」
 愛原:「それは確かに。さすがに、アンブレラの研究所で着せられていたセーラー服はもう着られなくなりましたしね」

 取りあえず、後でリサに今後の進路のことについて話してみよう。
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“私立探偵 愛原学” 「仕事の終わり」

2022-09-19 12:40:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月26日23:40.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 上越新幹線の最終列車は、定刻通りに上野駅を出た。
 地下深いトンネルから、地上への坂道を一気に駆け登る。

 愛原:「リサ、起きろ。そろそろ着くぞ」
 リサ:「んー……」

 リサは弁当を食べ終わった後、舟を漕いだりしていたが、ついに寝てしまっていた。
 それを起こしてやる。

 リサ:「でへへへ……せ、先生……そこダメ……ッ……!」
 愛原:「ん!?」

 どうやらエロい夢でも見ていたようだ。
 しかも、私が何かしているらしい。

 高橋:「先生。ここは1つ、マグナム撃ち込んで、目ェ覚ましてやりましょう」
 愛原:「キミのマグナム、弾切れなうじゃなかった?」
 高橋:「うっ……!」
 リサ:「……あれ?」

 そこでリサが目を覚ました。

 愛原:「おはよう。もう東京に着くぞ」
 リサ:「マジで?……夢だったのかぁ……」
 愛原:「残念だったな。高橋のマグナムは明日、デイライトさんで補充してもらえ」
 高橋:「そうします」

〔「……各在来線、最終列車の時間となっております。お乗り換えのお客様は、お乗り遅れの無いよう、ご注意ください。本日もJR東日本、上越新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 列車は深夜の東京駅のホームに滑り込んだ。

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。お忘れ物の無いよう、お降りください。21番線の電車は、回送となります。ご乗車になれませんので、ご注意ください」〕

 高橋:「先生、ここからどうします?」
 愛原:「夜も遅いからタクシーにしよう」
 高橋:「分かりました」

 日曜日の夜、人も疎らな東京駅。
 コロナ前なら、それでも終電に急ぐ客とかでごった返していたはずだ。
 しかし、それも今は……。

 リサ:「ふわ……!」

 リサは大きな欠伸を何度もした。
 マスク越しでも、それが分かるほどだ。

 愛原:「家まで頑張れよ」
 リサ:「うん……」

 八重洲中央口のタクシー乗り場に向かう。

 愛原:「墨田区菊川1丁目……までお願いします」
 運転手:「はい、かしこまりました」

 トールワゴンタイプのタクシーのリアシートに3人横並びに座る。

 愛原:「ん?」

 一瞬、私のスマホから『Enemy approaching(接触警戒)』という表示が出た。
 赤い画面に白抜きの文字である。
 しかし、すぐに緑の表示と共に、『No enemy』と変わった。

 愛原:「んん?」

 これはBSAAが開発したアプリの機能である。
 近くにBSAAが認定したウィルス兵器に感染・保有しているクリーチャーやBOWが接近すると、それを知らせてくれるアプリである。
 リサに関しては、暴走の危険がある第3形態以降に反応するように設定している。
 今のリサは……第0形態のはずだが……。
 しかも、最初は注意信号である黄色い画面に、『Enemy approaching(接近注意)』の表示になるはずだが……。
 リサがいる場合は、リサの方が感応してくれるので、あまり使い勝手の良いアプリとは言えない。

 愛原:「まただ……」

 またいきなり赤信号が表示されて、またすぐ緑に変わる。
 アプリの不具合だろうか?
 明日、善場主任に相談してみよう。

[6月27日00:10.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 マンションに着く頃には、アプリが変な動作をすることもなくなった。

 愛原:「チケットで払います」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 私がチケットで料金を払っている間、リサが先に降りた。
 何だか、辺りを警戒しているようだ。

 愛原:「どうした?」

 領収証と控えをもらってタクシーを降り、リサに聞いた。

 リサ:「……何でもない」
 愛原:「そうか?」
 リサ:「早く帰ろ」
 愛原:「う、うん……」

 特にマンションは、何も異常は無かったが……。

 高橋:「先生、明日はパンとかでいいっスか?」
 愛原:「いいよ。夜も遅いし」
 高橋:「あざっス」
 愛原:「リサ、先に風呂入ってすぐに寝なよ。もう日付変わっちゃったし」
 リサ:「分かってるよ。わたしはシャワーだけでいい」

 リサはそう言って、自分の部屋に戻って行った。

 愛原:「それより高橋、さっきのタクシーなんだが……」
 高橋:「日本交通がどうかしたんスか?」
 愛原:「いや、そうじゃなくて、タクシーの中で、俺のアプリだけ変な動作していたのは気づいただろ?」
 高橋:「ええ。俺のは大丈夫でした」
 愛原:「アプリのせいなのか、俺のスマホが悪いのか、どっちなんだろうな?」

 因みに私はAndroidで、高橋はIphoneだ。

 高橋:「明日……っつーか、もう今日っスけど、姉ちゃんに聞いてみるしかないんじゃないスか?」
 愛原:「やっぱりそうなるか」
 高橋:「今は大丈夫なんスよね?」
 愛原:「今はな……」

 結局、その後も私のアプリが不具合を起こすことなかった。

[同日06:30.天候:晴 愛原のマンション]

 リサ:「おはよう……」

 部屋から出て来たリサは、体操服にブルマーだった。
 もはや、これが今はリサの中でのマイブームなのだろう。
 元々は私の【㊙エロ動画】をこっそり観たリサが真似をしたというが……。

 愛原:「おはよう。よく眠れたか?」
 リサ:「良く分かんない……」

 そう言うリサは、そんなに好調とは言えない体調のようだった。

 高橋:「ナプキンは多めに持って行けよ」
 リサ:「分かってるよ……」

 あ、そういうこと!

 高橋:「お待たせしました、先生」
 愛原:「う、うん」

 今朝の朝食はトーストにベーコンエッグ、生野菜サラダ、オニオンコンソメスープ(インスタント)だった。

 愛原:「今日は事務所に行って、昨日の事件の報告書をまとめる。午後はデイライトさんの事務所に行くから」
 高橋:「分かりました」
 愛原:「リサの活躍で、何か御褒美が出るといいな?」
 リサ:「うん、そうだね……」

 朝食を食べ終わって、リサは制服に着替えたが……。

 リサ:「あ、そうだ。サイトーがね、夏休み、こっちに来たいって」
 愛原:「そうなのか」
 高橋:「もちろん、お断りだぜ」

 高橋のドヤ顔を無視して、私は言った。

 愛原:「一応、これも善場主任に言ってみるよ」
 リサ:「分かった」

 こちらから沖縄に行くのはアレだが、向こうから来る分には問題無いと思うが……。
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