報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「再・卯酉東海道(往)」

2022-09-30 20:36:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月30日06:22.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線615T電車先頭車内]

〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 出発当日になり、私と高橋、そしてリサと我那覇絵恋さんは、早朝の最寄り駅にいた。
 トンネルの向こうから轟音と強風が近づいて来る。
 やってきたのは、都営地下鉄の車両だった。
 週末の早朝ということもあり、乗客はそんなに多くない。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 先頭車に乗り込み、ラインカラーとよく似た色合いの座席に腰かけた。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 すぐに発車メロディが鳴って、ドアが閉まる。
 ホームドアも閉まり切ってから、ようやく運転室から微かに発車合図のブザーが聞こえたと思うと、ガチャッと運転士がハンドルを操作する音が聞こえた。
 そして、エアーの抜ける音がし、電車は静かに走り出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 絵恋さんは、上京最後の旅行を名残惜しそうにしている。
 今日の1泊2日の旅行を終えた後、次の日にはまた沖縄に帰らないといけないからだ。

 高橋:「先生、あの姉妹とはどこの駅で待ち合わせで?」
 愛原:「東京駅だ。まあ、ラチ内で待ち合わせになるだろうな」
 高橋:「ラチ内?」
 リサ:「改札内ってこと。お兄ちゃん、先生は鉄ヲタなんだから」
 高橋:「くっ……!」
 愛原:「悪いな。さらっと専門用語使っちゃって……」
 高橋:「さ、サーセン……」

[同日06:40.天候:晴 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅]

 愛原:「なに?もうキップ買ってあるの?」

 地下鉄は岩本町駅で降り、そこから徒歩でJR秋葉原駅に向かった。
 地上乗換とはいえ、副駅名に『秋葉原』が採用されているだけあり、岩本町駅からは徒歩圏内である(尚、地下鉄日比谷線の秋葉原駅はもっと近い)。
 昭和通り口にも“みどりの窓口”はあったが、2021年3月に廃止されている。
 JR東日本は合理化政策をどんどん進めており、都心のそこそこ大きい駅であっても、“みどりの窓口”を廃止に追い込んでいる。
 代わりに指定席券売機を設置しているわけだが、窓口対応でないと困るものもあるので、ちょっと……とは思う。

 リサ:「うん。既に往復」
 絵恋:「今回の交通費は、デイライトさんから出るんですよね?これ、領収証です」
 愛原:「いや、多分、申し訳ないけど、絵恋さんの分は出ないと思うぞ?うちの事務所の関係者じゃないし」
 絵恋:「ええっ!?」
 高橋:「金持ちなんだから、別にいいだろうが……」

 因みにリサ達がどうして先にキップを購入したのかというと、学生の特権、学割を利用したからである。
 これは学校で発行された学割証を出札窓口に持って行き、学生証を提示すると、乗車券が2割引きされるというもの。
 私も学生の頃は、そうしていた記憶がある。
 学校は夏休みだが、平日であれば事務室は開いている為、そこに行って発行申請を行うわけである。
 そういえばリサ達、何日か前、制服を着て学校に向かったことがある。
 最初は夏期講習とか、部活関係とかかと思ったのだが、どうやら違ったようだ。

 愛原:「でもよく知ってるな?あんまり学校の方から、そういう説明は無いというイメージなんだが……」

 生徒手帳に書いていることが殆どなので、それをよく読む真面目な生徒ほど、学割を使用することが多い。

 リサ:「あの鬼斬り先輩から聞いた」
 愛原:「なるほど。学校の先輩から聞いたか」

 ということは、恐らく栗原蓮華の妹の愛理も学割を使うのだろう。
 中学生からは、大人運賃になるからだ。
 蓮華は恐らく学割よりもっと割引率の高い、障害者手帳を使うものと思われる(栗原蓮華は左足を失う大怪我を負っており、第2種障害者となっていて、これは鉄道運賃半額の対象となる)。

 愛原:「俺と高橋は定額だな」

 私は指定席券売機で、往復新幹線自由席特急券と乗車券を2人分購入した。
 もちろん、領収証の発行も忘れない。
 乗車券は『東京山手線内』なので、この駅から既にこの乗車券を利用できる。

 愛原:「どうせ、後でデイライトさんに請求できるけど」
 高橋:「いっそのこと、グリーン車にしますか?w」
 愛原:「アホ。さすがにムリあるわ」

 すぐ調子に乗る高橋を窘め、私達は乗車券だけを自動改札機に通し、コンコースに入った。

[同日06:51.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東日本・東京駅→JR東海・東京駅]

〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうございます。次は、有楽町に、停車致します〕

 秋葉原駅から山手線に乗り込んで、東京駅へ。
 在来線コンコースと東海道新幹線コンコースを繋ぐ、南乗換改札口(通称、『南乗り(なんのり)』)を通過した。
 通過する際は乗車券と特急券を同時に改札機に入れる。
 そのままホームに上がるのではなく、待ち合わせ場所である八重洲南口改札前に向かった。

 栗原蓮華:「おはようございます、愛原先生!」

 少女達の中では最年長かつ最長身の蓮華が挨拶してきた。
 栗原姉妹は制服姿で、蓮華の左足からは義足が伸びている。
 霧生市に在住していた時、追跡中の特殊部隊から逃走する『1番』と鉢合わせになったことで、左足を食い千切られた。
 それ以外にも、東京の親戚宅にいた愛理を除く他の兄弟達を食い殺されたことで、それを捜索する為と怒りを露わにする為、わざと義足を隠さずに生活していたという。
 『1番』の仲間で、妹の愛理を襲った『2番』のリサに、手持ちの刀の刃を振るったこともある。
 今は『1番』もこの世からは消えてしまったが、『2番』のリサに対する警告として、今でも義足はこのように晒している。

 愛原:「ああ、おはよう。ちゃんとキップは買えたかな?」
 蓮華:「当たり前です」
 愛原:「学割?」
 蓮華:「妹は学割で、私は(障害者)手帳で……」
 愛原:「ああ、そう」

 予想通りだった。

 リサ:「先生、駅弁買うでしょ?」
 愛原:「そうだな。2人とも、朝食はまだかい?」
 蓮華:「まだです」
 愛原:「そうか。じゃあ、駅弁買ってあげるから、それからホームに行こう」
 蓮華:「ありがとうございます!」

 因みに蓮華の手には、麻袋に包んだ刀剣がある。
 リサも恐れるほどに、その刀剣は『鬼の首を斬れる』ものらしい。
 リサが本当に先輩と恐れる理由は、その刀剣にある。

 愛原:「7時27分発、“こだま”705号、名古屋行き。これの1号車に乗るけど、いいかな?」

 私はリサを指さして言った。
 BSAAとの取り決めによるものだが、蓮華はそれを理解しているので、了承した。
 そして駅弁を買うと、私達は階段を昇ってホームに向かった。
 今では階段の昇り降りを慣れた足つきで昇降する蓮華だが、やはり最初は血の滲む訓練をしなければならなかったらしい。
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“私立探偵 愛原学” 「夏休み初期の動き」 4

2022-09-30 16:14:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月27日13:00.天候:曇 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 次の日の午後、私達は報告書を携えて善場主任の所に向かった。

 善場:「昨日はお疲れさまでした」
 愛原:「いいえ、これも仕事ですから……」

 私は報告書や領収書などを善場主任に提出した。

 善場:「昨日は何時頃にお帰りですか?」
 愛原:「22時くらいでしたね」
 善場:「ということは、閉園ギリギリまで楽しんだということですね。分かります」
 愛原:「そ、そうですね」

 まあ、最後は私の趣味もあったのだが。
 もちろん、さすがにモノレールの代金までは請求できまい。

 善場:「……随分と写真が多いですね」
 愛原:「まあ、特に絵恋さんが必死に撮りまくったそうですから」
 善場:「リサの様子を確認するのには、大変ありがたいことですが」
 高橋:「ほとんど盗撮じゃねーかよ、これなんか、ほら!」

 高橋は呆れた様子で、画像の1枚を指さした。
 そこには、明らかにリサのスカートの中を写した物が入っている。
 短いスカートを穿くリサもリサだが、スカートの中には紺色のブルマーを穿いているのが分かった。
 ただ、『ショーツが直接見えるよりも貴重!』とか、『ノーパンより功徳~~~~~!!』と、喜ぶヘンタイもいるので、これとて安心できない。
 やはり、スパッツなどのボトムタイプのオーバーパンツを穿くのが無難なのだろう。
 東京中央学園は体操服用としてのブルマーを廃止した際に、見せパン用としてしばらくブルマーを続けていたそうだが、それでも盗撮被害があとを絶たなかったこともあり、ついには指定の黒スパッツを作って、それを穿かせるようにした。
 尚、その際、ブルマーの完全廃止を校則に明記しなかった為に、今でも一部の委託店では販売しているとのこと。

 善場:「一部は盗撮犯真っ青のプロフェッショナルな撮影をしていますね……」

 と、これには善場主任も呆れた。

 善場:「まあ、矛先はまだリサのみに向けられているようですから、今は暫く目を瞑りましょう」
 高橋:「いいのか?性犯罪者予備軍は、もっとビシバシ取り締まった方がいいんじゃねーのか?」
 善場:「交通犯罪者正規軍の方も、もっとビシバシ取り締まった方が良いかもしれませんね?」

 と、善場主任は高橋を見据えた。

 高橋:「おおっとォ……!」

 これには高橋も、黙らざるを得なかった。

 愛原:「オマエの免停期間、もしも今月一杯だったら、ずっと事務所で留守番してもらうところだったよ」
 高橋:「は、はは……サーセン……」
 善場:「やはり、韓国BSAAが合流してきましたか」

 画像の中に、留学生のパク・ヨンヒが出て来る。
 見た感じは、リサ達と一緒にディズニーをエンジョイしているように見えるが……。

 愛原:「これに関して、日本のBSAAに何か連絡はありましたか?」
 善場:「『研修生が休暇で東京ディズニーランドに行く。え?愛原リサも一緒?ただの偶然ニダ』と」
 高橋:「ぜってーウソだろ!?」
 善場:「はい。これには私共も懐疑的です。恐らく、間近でリサを観察する良い機会だと思ったのでしょう。学校生活におけるリサの観察は、留学生という立場を利用してできますが、プライベートとなると、友達にでもならないと厳しいですから」

 リサはパク・ヨンヒがBSAA関係者だと知っているので、警戒したようである。
 画像を見ると、ヨンヒはあえて東京中央学園の制服姿でリサ達と同行しているが、これも表向きは『学友として』という所を主張する為だろう。
 『BSAAとして』としてしまうと、リサに警戒されるからだ。

 善場:「ランド内で、リサが何かトラブルとかは聞いてますか?」
 愛原:「いえ、何も聞いていません」
 善場:「そうですか。それなら、良いのですが……」
 高橋:「それより姉ちゃん、ちゃんと報酬は払ってくれるんだろうなぁ?」
 善場:「はい。まずは諸経費、レンタカー代と燃料代、高速代に駐車料金については後程、振り込ませて頂きます。報酬につきましては……」

 入園料などが入っていないのは、今回の件は我那覇絵恋の肝煎りで行われたものであり、これについては私達は一切負担していない為。

 善場:「次回はいよいよ、愛原公一氏からの情報提供ですね?」
 愛原:「はい」
 善場:「一体、どんな情報を提供して下さるのでしょうか?」
 愛原:「分かりませんが、リサのことのようです」
 善場:「リサのことですか。愛原公一氏は、恐らく白井伝三郎と直接折衝した最後の人でしょうから、その時に交わした言葉の内容でしょうか?」
 愛原:「分かりません。恐らく、リサに関する何か重要な秘密を握った感がありますね」
 善場:「リサに関する重要な情報……ですか」
 愛原:「はい。もしかすると、本当に『リサを人間に戻す方法』を知っているのかもしれません」
 善場:「危険な方法でなら、私共でも把握しているのですよ。ただ、愛原所長がリサを失いたくないと仰る以上は、もっと安全な方法を模索しなければなりませんので……」
 愛原:「分かってますよ」

 それは善場主任が人間に戻った方法。
 しかし善場主任は、Gウィルス投与による『感染者』であった為、その方法でも生き残れたが、BOWとして人間から改造されたリサには危険だとされている。
 危険というのは、リサ自身が命を落とす恐れがあるということだ。
 もちろん、公一伯父さんの言う『リサに関すること』が、それとは限らない。
 実はもっとつまらない話なのかもしれない。
 しかし、勿体ぶっていることから、それ相応の話なのかもしれないと思っている。

 善場:「今週末に出発でしたね?」
 愛原:「そうです。仰る通り、『リサに関すること』という重要な機密ですので、カムフラージュはしておきました」
 善場:「ありがとうございます。具体的には、どのように?」
 愛原:「幸い私は公一伯父さんの甥です。甥っ子が親戚の伯父さんの家に遊びに行く、というのは何ら不自然なことではありません。また、伯母さんに関しては、民宿を経営されているということもあり、旅行がてらそこに宿泊するというのも、ごくごく自然だと思います」
 善場:「普通の家族旅行なら、ですが、しかしリサが一緒というのがどうも……」
 愛原:「はい、まだ弱いですね。そこで、他にも同行者を募ろうと思ったのです。調べてみると、私やリサの知り合いで、あの方面に向かうことが不自然ではない人物がヒットしました。その人達にも同行してもらおうと思いました。これなら、バッと見、何の目的か分かりにくくなります。当然ですね。その同行者達とは、目的が異なるわけですから」
 善場:「その同行者というのは?」
 愛原:「栗原姉妹です。そして、伯父さんの潜伏先である伯母さんの民宿とは、静岡県の富士山の麓です。これが何を意味しているか……です」
 善場:「日蓮正宗大石寺」
 愛原:「はい。彼女らはそこの信徒。そこへの参拝に連れて行こうと誘ったら、乗ってくれましたよ」
 善場:「総本山参りは、どこの宗派でも尊ぶべき信仰活動とされています。日蓮正宗も例外ではない以上、そこへの足を確保してくれたのなら、誘いに乗るのでしょうね」
 愛原:「そこで、今度の仕事に関する費用と報酬ですが……」

 こうして私は、また無事にデイライトさんとの契約を成立させることができた。
 功徳~~~~~~!! 
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