[6月18日14:30.天候:雨 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
悪の製薬企業として全世界に名を轟かせた“アンブレラ・コーポレーション・インターナショナル”。
日本では『アンブレラ製薬』と呼ばれ、日本にも現地法人を持っていた。
名前を『日本アンブレラ製薬』と言い、『アンブレラ日本支部』とか、『アンブレラ・ジャパン』とも呼ばれた。
名前の由来は、その名の通り雨傘で、様々な病気を雨に見立て、『世界中の人々を、病気の雨から庇護する傘でありたい』という願いを込めて付けられたものだという。
しかし、実際はそれは後付けの名前とロゴマークであったことが、後の“青いアンブレラ”の活躍で判明することになる。
そんな悪の製薬会社に立ち向かうべく、立ち上げられたのがNPO法人デイライト。
日本政府の後押しで作られたものである。
名前の由来は日光で、『日の光が差すほど晴れれば、雨傘など不要』という痛烈な皮肉が込められている。
そんなNPO法人デイライト東京事務所で、私達は善場主任から新たなる仕事の依頼を受けた。
しかしその内容は、私よりもリサが活躍しそうなものだった。
善場:「あなたのBOWとしての感覚を貸してもらいたいのです」
リサ:「私が……バイト?」
善場:「もしかしたら、初仕事かもしれませんね」
リサ:「学校にバイト許可の申請しなきゃ」
善場:「それは不要です。あくまで、『試験』の一環なので」
リサ:「試験?」
善場:「でも、仕事ですね。報酬は現金ではないようにしましょう」
愛原:「何の仕事ですか?」
善場:「来週末、ロシアから件の日本人旅客達が帰国してきます。その乗客達の中に、BOWがいないかリサの感覚を借りたいのです」
愛原:「そんな情報があるんですか!?」
善場:「もちろん、内密にお願いしますよ?」
高橋:「そんなのがいたら、飛行機ん中で暴れるんじゃねーのか?」
善場:「ロシア側がそのようなヘマをするとは思えません。遅効性のウィルスを投与し、帰国次第発症するように設定している恐れがあります」
愛原:「ロシアがそんなことを……」
善場:「ロシアにも、アメリカ版アンブレラみたいな製薬組織があります。BSAA欧州本部はものの見事に混乱に陥れたようですが、未だに落ち着いている極東支部、それも日本地区本部が目障りのようです」
愛原:「よくそんな情報、手に入りましたね?」
善場:「北朝鮮の情報と同様、外国政府からの情報は重要です」
リサ:「……もしかして、ヨンヒ?」
善場:「!」
リサ:「最近、ヨンヒの姿が見えないの。一応、『日本のBSAA部隊で講習を受けている』ってことにはなってるけど、でも、韓国の支部の人が、日本の支部の講習を受けるとは思えないし……」
善場:「よく分かったね。私達がパク・ヨンヒの留学ビザ取得におしたのは、そういった情報を手に入れる為よ」
高橋:「何だか、政治的な駆け引きってのは面倒だなぁ……」
善場:「とにかく、ロシアが何か企んでいるのは事実です。ただ、どこまで本当なのか分かりません。あからさまな機器を使えば、怪しまれます。そこでリサは、出迎え客に紛れ込んで、帰国者達の中にウィルスが投与されている人がいないかを見て頂きたいのです」
リサ:「私の鼻で分かるかなぁ……」
善場:「BOWは変な臭いがするって言ってたでしょ?この前の実験の時、あなたは『変化する前の姿』の状態でそれを嗅ぎ分けることができました。適任だと思います」
リサ:「分かった。やってみる」
善場:「お願いしますね」
[6月25日12:00.天候:晴 東京都中央区丸の内 JR東京駅]
私達を乗せたタクシーが、東京駅八重洲中央口に到着する。
愛原:「チケットでお願いします」
運転手:「ありがとうございます」
どうして東京駅に来たのかって?
もちろん、これから新幹線に乗る為だ。
どうして新幹線なの?成田空港に行くんじゃないの?と、思うかもしれない。
私達も、そういうものだと思っていた。
そこなら日帰りもできるだろうと。
だが、そうではなかった。
ロシア側は当初、ウラジオストクから成田まで、チャーター便を飛ばすか、日本の航空会社に迎えに来させるように言っていたらしい。
日本政府も想定内だったのか、日本の航空会社にチャーター便の手配をしていたそうだ。
そしたら何と、急きょ、ロシア側が『ウラジオストクから船で、新潟港まで日本人乗客を輸送する』と言ってきた。
つまり、新潟港まで迎えに来いということだ。
船はロシア側で用意するからと。
元々、新潟~ウラジオストクには国際航路が通っていた。
今は休止中だが、正式に廃止なったわけではない。
これは新潟~北朝鮮(元山)の万景峰号と同じ。
高橋:「プーチンちん、ボコしていいっスか?」
愛原:「ボコせるものなら、とっくにゼレンスキー大統領が直接やってるよ。できないから皆苦労してるんだ」
リサ:「新幹線、久しぶりに乗るー!先生、駅弁買っていい!?」
リサだけが楽しそう。
愛原:「ああ、そうだな」
一泊することになったが、それはデイライト側で手配してくれた。
善場主任とは、現地で落ち合うことになっている。
急のことなので、キップは指定席ではなく、自由席だった。
もっとも、始発駅の東京駅から乗るのだから問題無いわけだし、何よりまだコロナ禍で乗客数がコロナ前に戻ったわけではない。
愛原:「キップは1人ずつ持とう」
高橋:「うっス!」
リサ:「わたし、先生の隣ー!」
愛原:「自由席だよ。さっさと駅弁買って、ホームに行くぞ」
高橋:「うっス。あと、タバコも吸い溜めしておきたいっす」
愛原:「勝手にしろ」
私はキップを2人に配ると、それで改札口を通った。
在来線コンコースに入り、次に新幹線改札口を通る。
東海道新幹線なら直接新幹線コンコースなのだが、東京側では新幹線しかやっていないJR東海と違い、在来線もやっているJR東日本だからそうなる。
愛原:「何がいい?」
リサ:「肉系統かな」
愛原:「やっぱり」
この時、リサは制服ではなく、やっぱり私服を着ていた。
制服の方が目立つので、私服で出迎え客に紛れた方が良いという作戦だった。
今回は白いTシャツの上にグレーのパーカー。
下は、黒いスカートだった。
パーカーの袖は捲くっている。
どうしても感覚を研ぎ澄ます為には第1形態に戻る必要がある為、正体を隠す必要がある。
もっとも、パーカーのフードだけで正体を隠せる程度の『異形』は珍しいらしい。
リサ:「これがいい!」
愛原:「あいよ」
高橋:「先生、これいいっスか?」
愛原:「分かったよ。……って、ビールは飲むな!仕事で行くんだから!」
高橋:「さ、サーセン」
駅弁と飲み物を購入した後、私達は乗り場へ向かった。
悪の製薬企業として全世界に名を轟かせた“アンブレラ・コーポレーション・インターナショナル”。
日本では『アンブレラ製薬』と呼ばれ、日本にも現地法人を持っていた。
名前を『日本アンブレラ製薬』と言い、『アンブレラ日本支部』とか、『アンブレラ・ジャパン』とも呼ばれた。
名前の由来は、その名の通り雨傘で、様々な病気を雨に見立て、『世界中の人々を、病気の雨から庇護する傘でありたい』という願いを込めて付けられたものだという。
しかし、実際はそれは後付けの名前とロゴマークであったことが、後の“青いアンブレラ”の活躍で判明することになる。
そんな悪の製薬会社に立ち向かうべく、立ち上げられたのがNPO法人デイライト。
日本政府の後押しで作られたものである。
名前の由来は日光で、『日の光が差すほど晴れれば、雨傘など不要』という痛烈な皮肉が込められている。
そんなNPO法人デイライト東京事務所で、私達は善場主任から新たなる仕事の依頼を受けた。
しかしその内容は、私よりもリサが活躍しそうなものだった。
善場:「あなたのBOWとしての感覚を貸してもらいたいのです」
リサ:「私が……バイト?」
善場:「もしかしたら、初仕事かもしれませんね」
リサ:「学校にバイト許可の申請しなきゃ」
善場:「それは不要です。あくまで、『試験』の一環なので」
リサ:「試験?」
善場:「でも、仕事ですね。報酬は現金ではないようにしましょう」
愛原:「何の仕事ですか?」
善場:「来週末、ロシアから件の日本人旅客達が帰国してきます。その乗客達の中に、BOWがいないかリサの感覚を借りたいのです」
愛原:「そんな情報があるんですか!?」
善場:「もちろん、内密にお願いしますよ?」
高橋:「そんなのがいたら、飛行機ん中で暴れるんじゃねーのか?」
善場:「ロシア側がそのようなヘマをするとは思えません。遅効性のウィルスを投与し、帰国次第発症するように設定している恐れがあります」
愛原:「ロシアがそんなことを……」
善場:「ロシアにも、アメリカ版アンブレラみたいな製薬組織があります。BSAA欧州本部はものの見事に混乱に陥れたようですが、未だに落ち着いている極東支部、それも日本地区本部が目障りのようです」
愛原:「よくそんな情報、手に入りましたね?」
善場:「北朝鮮の情報と同様、外国政府からの情報は重要です」
リサ:「……もしかして、ヨンヒ?」
善場:「!」
リサ:「最近、ヨンヒの姿が見えないの。一応、『日本のBSAA部隊で講習を受けている』ってことにはなってるけど、でも、韓国の支部の人が、日本の支部の講習を受けるとは思えないし……」
善場:「よく分かったね。私達がパク・ヨンヒの留学ビザ取得におしたのは、そういった情報を手に入れる為よ」
高橋:「何だか、政治的な駆け引きってのは面倒だなぁ……」
善場:「とにかく、ロシアが何か企んでいるのは事実です。ただ、どこまで本当なのか分かりません。あからさまな機器を使えば、怪しまれます。そこでリサは、出迎え客に紛れ込んで、帰国者達の中にウィルスが投与されている人がいないかを見て頂きたいのです」
リサ:「私の鼻で分かるかなぁ……」
善場:「BOWは変な臭いがするって言ってたでしょ?この前の実験の時、あなたは『変化する前の姿』の状態でそれを嗅ぎ分けることができました。適任だと思います」
リサ:「分かった。やってみる」
善場:「お願いしますね」
[6月25日12:00.天候:晴 東京都中央区丸の内 JR東京駅]
私達を乗せたタクシーが、東京駅八重洲中央口に到着する。
愛原:「チケットでお願いします」
運転手:「ありがとうございます」
どうして東京駅に来たのかって?
もちろん、これから新幹線に乗る為だ。
どうして新幹線なの?成田空港に行くんじゃないの?と、思うかもしれない。
私達も、そういうものだと思っていた。
そこなら日帰りもできるだろうと。
だが、そうではなかった。
ロシア側は当初、ウラジオストクから成田まで、チャーター便を飛ばすか、日本の航空会社に迎えに来させるように言っていたらしい。
日本政府も想定内だったのか、日本の航空会社にチャーター便の手配をしていたそうだ。
そしたら何と、急きょ、ロシア側が『ウラジオストクから船で、新潟港まで日本人乗客を輸送する』と言ってきた。
つまり、新潟港まで迎えに来いということだ。
船はロシア側で用意するからと。
元々、新潟~ウラジオストクには国際航路が通っていた。
今は休止中だが、正式に廃止なったわけではない。
これは新潟~北朝鮮(元山)の万景峰号と同じ。
高橋:「プーチンちん、ボコしていいっスか?」
愛原:「ボコせるものなら、とっくにゼレンスキー大統領が直接やってるよ。できないから皆苦労してるんだ」
リサ:「新幹線、久しぶりに乗るー!先生、駅弁買っていい!?」
リサだけが楽しそう。
愛原:「ああ、そうだな」
一泊することになったが、それはデイライト側で手配してくれた。
善場主任とは、現地で落ち合うことになっている。
急のことなので、キップは指定席ではなく、自由席だった。
もっとも、始発駅の東京駅から乗るのだから問題無いわけだし、何よりまだコロナ禍で乗客数がコロナ前に戻ったわけではない。
愛原:「キップは1人ずつ持とう」
高橋:「うっス!」
リサ:「わたし、先生の隣ー!」
愛原:「自由席だよ。さっさと駅弁買って、ホームに行くぞ」
高橋:「うっス。あと、タバコも吸い溜めしておきたいっす」
愛原:「勝手にしろ」
私はキップを2人に配ると、それで改札口を通った。
在来線コンコースに入り、次に新幹線改札口を通る。
東海道新幹線なら直接新幹線コンコースなのだが、東京側では新幹線しかやっていないJR東海と違い、在来線もやっているJR東日本だからそうなる。
愛原:「何がいい?」
リサ:「肉系統かな」
愛原:「やっぱり」
この時、リサは制服ではなく、やっぱり私服を着ていた。
制服の方が目立つので、私服で出迎え客に紛れた方が良いという作戦だった。
今回は白いTシャツの上にグレーのパーカー。
下は、黒いスカートだった。
パーカーの袖は捲くっている。
どうしても感覚を研ぎ澄ます為には第1形態に戻る必要がある為、正体を隠す必要がある。
もっとも、パーカーのフードだけで正体を隠せる程度の『異形』は珍しいらしい。
リサ:「これがいい!」
愛原:「あいよ」
高橋:「先生、これいいっスか?」
愛原:「分かったよ。……って、ビールは飲むな!仕事で行くんだから!」
高橋:「さ、サーセン」
駅弁と飲み物を購入した後、私達は乗り場へ向かった。