[6月16日18:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日の業務を終え、私は事務所から徒歩数分のマンションへ帰って来た。
愛原:「ただいまァ」
高橋:「お帰りなさい、先生」
夕食の支度の為に、先に帰宅していた高橋が出迎える。
高橋:「今、夕食作ってますんで」
愛原:「ああ」
リサの体調が悪化し、体質に変化があってから1ヶ月が経過した。
幸いにして食事の嗜好については、時間の経過の問題で良かったようで、今現在は殆ど従来通りに戻っている。
見た目の問題は、髪であった。
黒い髪だったのが、どんどん色が抜け落ちてしまい、今では完全に脱色状態になってしまった。
この事については既に学校に申告し、『病気または体質によるもの』として、認められている。
本来は、黒染めすれば良いのだろう。
試しに黒染めしたこともあったが、やはりどうしてもすぐに抜け落ちてしまうのだ。
髪質も少し変わり、それまでウェーブの掛かった感じだったのが、今はストレートに変わっている。
リサ:「先生、お帰り」
愛原:「ああ、ただいま」
服装の嗜好も変わり、室内では体操着に紺色のブルマーという出で立ちに変わった。
最初は私を誘うつもりでそういうコスプレをしているのだろうと思っていて、もちろんそれもあるのだろうが、どうも理由がハッキリしない。
しかし、外に出る時は普通の私服に着替えている。
先月以降、リサの体内外で色々と変化があったのは事実のようだ。
リサ:「明日は帰り、少し遅くなる」
愛原:「そうなのか。何かあるのか?」
リサ:「新聞部の取材。毎年恒例の『学校の七不思議特集』 。また、わたしが語り部に呼ばれたから」
愛原:「そうか。くれぐれも、ホラー演出しないようにな」
リサ:「分かってる。また、あの鬼斬り先輩も出るみたいだから、滅多なことできないし」
愛原:「おお、栗原さんか」
リサ:「そう」
愛原:「それなら、まあそうなるな。リサはどんなこと話すつもりだ?まさか、自分のことじゃないよな?」
リサ:「違う。私は“花子さん”のことを話そうと思う」
愛原:「ああ、あれか。大丈夫なのか?」
リサ:「大丈夫。“花子さん”は、もういないから」
愛原:「いないって分かるのか」
リサ:「分かる」
因みに、今着ている体操服とブルマーは東京中央学園でかつて着用されていたものではない。
リサが通販で買ったものである。
恐らくコスプレ用なのだと思う。
体操服の胸の所に、『りさ・とればー』と、平仮名で大きく名前を書いてある。
どうして、これを着ようと思ったのかは分からない。
ただの私服のつもりで買ったのだろうか?
実際に私を誘う目的で着る場合は、東京中央学園でかつて着用されていた体操服と緑色のブルマーを着用してくる。
リサ:「だから、皆に忘れさせないように語り継いであげなきゃ」
愛原:「それでもいいんだけど、この前の代替修学旅行であった話は?」
リサ:「あー……それはタイミングを見て話すかどうか決める」
愛原:「そうか。バッドエンドにならないよう、気をつけてな」
リサ:「分かってる。昨年は神田拓郎さんの幽霊が来て、大騒ぎだった。あれ、わたしの立ち回りが悪かったら、バッドエンドになってたかも……」
愛原:「そうだな」
[同日18:30.天候:曇 愛原のマンション]
高橋:「お待たせしました。できましたよ」
リサ:「おー」
愛原:「今日は焼肉定食か。リサが好きそうだ。肉は何だ?」
高橋:「牛カルビです」
愛原:「そうか。そりゃいい」
高橋:「先生、どうぞ」
高橋は缶ビールの蓋を開けると、私のグラスに注いだ。
愛原:「ありがとう。それじゃ、いただきます」
リサ:「いただきまーす」
高橋:「しっかし、アレっすねー」
愛原:「何だ?」
高橋:「リサの髪、いっそのことパツキンかシルバーアッシュに染めるってのはどうっスか?」
愛原:「アホか。オマエじゃあるまいし。校則違反だろうが」
高橋:「脱色も校則違反じゃ?」
愛原:「リサの場合はわざとそうしたんじゃないってことくらい、オマエも分かるだろう?体質の変化によってそうなったからしょうがないって、学校にも認めてもらったよ」
高橋:「うらやまっスね」
愛原:「オマエだって、髪を金髪に染めてんだろうが」
高橋:「い、いや、これはその……俺のアイデンティティーっスから」
愛原:「何がアイデンティティーだよ……」
[同日19:00.天候:雨 愛原のマンション]
食事が終わる頃、雨が降って来た。
愛原:「雨が降ってきたな……」
高橋:「通りでジメジメすると思ったっス」
こういう時、エアコンは『冷房』の方がいいのか、『除湿』の方がいいのか迷ってしまう。
リサは体操服姿のまま、リビングのソファに座ってテレビを観ていた。
〔「さあ、今日のゲストは、今話題のスーパーアイドル、尾崎まなみちゃんです!」「どうも、こんばんはー」「何や、またオマエかい」「ど、どーも……」「おま、ゲストに『オマエ』言うなや!」〕
リサ:「あはははは!」
リサは食後のデザートと、冷凍庫からカップアイスを取り出して食べている。
食事の嗜好は、本当に体質変化前と変わらず、食べれるようになった。
だが、最近はゲームをやらなくなったな……。
テレビの、こういうバラエティ番組を観るようになったが……。
そういえば、“トイレの花子さん”も、テレビ観賞が好きだったと聞いたことがあるが、それと関係あるのだろうか。
リサ:「先生もこっちに来て。一緒に観よう」
愛原:「何のバラエティだ?」
リサ:「『事務所対抗、アイドルクイズ大会!』」
愛原:「何だその昭和のクイズ番組みたいなタイトルは?w」
まあ、とにかく食事の嗜好は戻り(といっても、まだ悪食はあるらしい)、ファッションセンスについては異常性が見られるものの、何とか普通に戻りつつあって良かった。
明日は善場主任の所に、リサの動向について報告しに行く日なのだが、普通の報告ができそうだ。
因みに、部屋着として何故か体操服を着るようになったことについては既に報告済みで、善場主任の反応は、『しばらく様子見で』ということだった。
善場:「何かのこだわりで着ているのかもしれませんし、一時期の気の迷いなのかもしれません。あくまでも室内限定で着ているというのであれば、このまま様子見としておきましょう。もしかしたら、そのうち飽きて、また普通の私服を着るようになるかもしれませんし」
とのこと。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日の業務を終え、私は事務所から徒歩数分のマンションへ帰って来た。
愛原:「ただいまァ」
高橋:「お帰りなさい、先生」
夕食の支度の為に、先に帰宅していた高橋が出迎える。
高橋:「今、夕食作ってますんで」
愛原:「ああ」
リサの体調が悪化し、体質に変化があってから1ヶ月が経過した。
幸いにして食事の嗜好については、時間の経過の問題で良かったようで、今現在は殆ど従来通りに戻っている。
見た目の問題は、髪であった。
黒い髪だったのが、どんどん色が抜け落ちてしまい、今では完全に脱色状態になってしまった。
この事については既に学校に申告し、『病気または体質によるもの』として、認められている。
本来は、黒染めすれば良いのだろう。
試しに黒染めしたこともあったが、やはりどうしてもすぐに抜け落ちてしまうのだ。
髪質も少し変わり、それまでウェーブの掛かった感じだったのが、今はストレートに変わっている。
リサ:「先生、お帰り」
愛原:「ああ、ただいま」
服装の嗜好も変わり、室内では体操着に紺色のブルマーという出で立ちに変わった。
最初は私を誘うつもりでそういうコスプレをしているのだろうと思っていて、もちろんそれもあるのだろうが、どうも理由がハッキリしない。
しかし、外に出る時は普通の私服に着替えている。
先月以降、リサの体内外で色々と変化があったのは事実のようだ。
リサ:「明日は帰り、少し遅くなる」
愛原:「そうなのか。何かあるのか?」
リサ:「新聞部の取材。毎年恒例の『学校の七不思議特集』 。また、わたしが語り部に呼ばれたから」
愛原:「そうか。くれぐれも、ホラー演出しないようにな」
リサ:「分かってる。また、あの鬼斬り先輩も出るみたいだから、滅多なことできないし」
愛原:「おお、栗原さんか」
リサ:「そう」
愛原:「それなら、まあそうなるな。リサはどんなこと話すつもりだ?まさか、自分のことじゃないよな?」
リサ:「違う。私は“花子さん”のことを話そうと思う」
愛原:「ああ、あれか。大丈夫なのか?」
リサ:「大丈夫。“花子さん”は、もういないから」
愛原:「いないって分かるのか」
リサ:「分かる」
因みに、今着ている体操服とブルマーは東京中央学園でかつて着用されていたものではない。
リサが通販で買ったものである。
恐らくコスプレ用なのだと思う。
体操服の胸の所に、『りさ・とればー』と、平仮名で大きく名前を書いてある。
どうして、これを着ようと思ったのかは分からない。
ただの私服のつもりで買ったのだろうか?
実際に私を誘う目的で着る場合は、東京中央学園でかつて着用されていた体操服と緑色のブルマーを着用してくる。
リサ:「だから、皆に忘れさせないように語り継いであげなきゃ」
愛原:「それでもいいんだけど、この前の代替修学旅行であった話は?」
リサ:「あー……それはタイミングを見て話すかどうか決める」
愛原:「そうか。バッドエンドにならないよう、気をつけてな」
リサ:「分かってる。昨年は神田拓郎さんの幽霊が来て、大騒ぎだった。あれ、わたしの立ち回りが悪かったら、バッドエンドになってたかも……」
愛原:「そうだな」
[同日18:30.天候:曇 愛原のマンション]
高橋:「お待たせしました。できましたよ」
リサ:「おー」
愛原:「今日は焼肉定食か。リサが好きそうだ。肉は何だ?」
高橋:「牛カルビです」
愛原:「そうか。そりゃいい」
高橋:「先生、どうぞ」
高橋は缶ビールの蓋を開けると、私のグラスに注いだ。
愛原:「ありがとう。それじゃ、いただきます」
リサ:「いただきまーす」
高橋:「しっかし、アレっすねー」
愛原:「何だ?」
高橋:「リサの髪、いっそのことパツキンかシルバーアッシュに染めるってのはどうっスか?」
愛原:「アホか。オマエじゃあるまいし。校則違反だろうが」
高橋:「脱色も校則違反じゃ?」
愛原:「リサの場合はわざとそうしたんじゃないってことくらい、オマエも分かるだろう?体質の変化によってそうなったからしょうがないって、学校にも認めてもらったよ」
高橋:「うらやまっスね」
愛原:「オマエだって、髪を金髪に染めてんだろうが」
高橋:「い、いや、これはその……俺のアイデンティティーっスから」
愛原:「何がアイデンティティーだよ……」
[同日19:00.天候:雨 愛原のマンション]
食事が終わる頃、雨が降って来た。
愛原:「雨が降ってきたな……」
高橋:「通りでジメジメすると思ったっス」
こういう時、エアコンは『冷房』の方がいいのか、『除湿』の方がいいのか迷ってしまう。
リサは体操服姿のまま、リビングのソファに座ってテレビを観ていた。
〔「さあ、今日のゲストは、今話題のスーパーアイドル、尾崎まなみちゃんです!」「どうも、こんばんはー」「何や、またオマエかい」「ど、どーも……」「おま、ゲストに『オマエ』言うなや!」〕
リサ:「あはははは!」
リサは食後のデザートと、冷凍庫からカップアイスを取り出して食べている。
食事の嗜好は、本当に体質変化前と変わらず、食べれるようになった。
だが、最近はゲームをやらなくなったな……。
テレビの、こういうバラエティ番組を観るようになったが……。
そういえば、“トイレの花子さん”も、テレビ観賞が好きだったと聞いたことがあるが、それと関係あるのだろうか。
リサ:「先生もこっちに来て。一緒に観よう」
愛原:「何のバラエティだ?」
リサ:「『事務所対抗、アイドルクイズ大会!』」
愛原:「何だその昭和のクイズ番組みたいなタイトルは?w」
まあ、とにかく食事の嗜好は戻り(といっても、まだ悪食はあるらしい)、ファッションセンスについては異常性が見られるものの、何とか普通に戻りつつあって良かった。
明日は善場主任の所に、リサの動向について報告しに行く日なのだが、普通の報告ができそうだ。
因みに、部屋着として何故か体操服を着るようになったことについては既に報告済みで、善場主任の反応は、『しばらく様子見で』ということだった。
善場:「何かのこだわりで着ているのかもしれませんし、一時期の気の迷いなのかもしれません。あくまでも室内限定で着ているというのであれば、このまま様子見としておきましょう。もしかしたら、そのうち飽きて、また普通の私服を着るようになるかもしれませんし」
とのこと。