[1月17日22時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]
私は風呂に入った後、リビングでレポートを書いていた。
パール「先生、お茶をどうぞ」
愛原「ありがとう。でも、寝る前にお茶飲んだりしたら、眠れなくなるかもな」
パール「ほうじ茶ですから、そんなにカフェインは入ってないと思います」
愛原「おー、ほうじ茶か。それならいいや。ありがとう」
パール「いいえ」
ほうじ茶はその製法上、製造中にカフェインが壊れてしまう。
その為、煎茶よりもまろやかで胃に優しい。
パール「明日、事務所で作成されてはいかかですか?」
愛原「いや、クライアントを待たせてしまっている。なるべく早くレポートを作成して、報告したい」
事故物件の怪奇現象の正体について。
こんなことも探偵の仕事に回って来るのだから凄いことだ。
愛原「ん?リサはどうした?」
今は高橋が風呂に入っている。
リサを先に風呂に入れてやったのだが、上がった旨報告すると、すぐ自分の部屋に向かって行ってしまった。
いつもなら、そこのソファに寝転がってテレビを観たり、スマホを弄ったりするのだが。
私に尻を向けてブルマ尻を堪能させたり、或いは逆に甘えてきて、膝枕をねだったりすることがあった。
パール「部屋に戻りましたよ。来週はテストですから、勉強しているのかもしれません」
愛原「おー、そうか。テスト勉強か。それは感心感心……」
リサがソファに寝っ転がらないのは少し寂しいが、理由が理由なだけに、しょうがない。
愛原「これを飲んだら、休むことにしよう。俺も疲れたし」
パール「はい。そうなさってください」
[期日不明 時刻不明(昼間) 天候:雨 とある高層マンション]
どこだここは……?
私は、とあるマンションの1室にいた。
室内は散らかっていて、まるで、かつて私が独り暮らしをしていた頃のようである。
だが、マンションの内装に見覚えは無い。
間取りはオーソドックスなワンルーム。
窓の外を見ると、空は曇っていて、雨が降っている。
だが、濃い霧が掛かっているのか、外は全く見えない。
んん?何だここは?
私は部屋の外に出ようとした。
ところが、ここで場面が変わる。
今度は立体駐車場にいた。
タワー式の立体駐車場ではなく、自走式の立体駐車場。
ショッピングモールのそれほど広くは無いので、もしかしたら、マンションの駐車場なのかもしれない。
車は殆どのマスに止まっているが、出入りしている様子は無い。
私がその駐車場を歩いていると、管理人室が見えて来た。
そこに誰かいるだろうかと思って、中を覗くと、確かにそこには誰かがいた。
マンションや駐車場の管理人室にいるくらいだから、私よりずっと年上のオジさん、或いはお爺さんでもいるのだろうと思ったが違った。
そこにいたのは、意外にも若い女性だった。
年齢は20代前半くらいで、青みがかった髪をポニーテールにしていた。
そして、彼女は白っぽい着物を着ていた。
確かあれ、薄墨色とか言うんじゃなかったかな?
私が声を掛けると、彼女はすぐに応対してくれた。
愛原「ここはどこなんですか?あ、いや、駐車場の中だというのは知ってますが……」
管理人「ここは三途の川の中州です」
愛原「えっ?」
管理人「此岸と彼岸の境目に位置しています」
すると、私は死んだのか!?
管理人「このマンションは臨終後、閻魔大王の裁判を受けまでの間、一時滞在する為の物です」
愛原「そ、そうなの?」
やはり、私は死んだようだ。
愛原「すると、私は死んだんだな?」
管理人「…………」
愛原「全く記憶が無いんだ。私は、どうして死んだんだ?」
管理人「私の立場では、お答えできません」
愛原「な、なに!?」
管理人「裁判が始まるまでは、このマンション内は自由に移動して構いませんので」
愛原「裁判ということは、弁護士は付くのか?」
管理人「もう既に閻魔帳に全ての事が書かれており、あとは閻魔大王が判断することなので、弁護士は付きません」
愛原「ええ……」
そして、また場面が変わる。
今度はマンションの屋上であった。
そこに出ると、雨が降りしきっている。
降り方は安定しておらず、霧雨になったこともあれば、土砂降りになったこともある。
いずれにせよ、傘が無いと厳しい強さの雨である。
にも関わらず、私は気にすることなく、転落防止用の柵の手前ギリギリまで歩いた。
すると、それまで霧に包まれていた景色が少しだけ晴れる。
ぼんやりだが、向こう側の景色が見えるようになった。
そこにも、マンションのような建物がいくつも見える。
管理人「下を見てみてください」
愛原「下?」
いつの間にか私の後ろから、あの管理人が近づいてきた。
彼女もまた傘は差していない。
それどころか、何だか木の棒のようなものを持っている。
私が言われた通り下を覗くと、私は驚いた。
このマンションの立地条件、とても不思議だ。
それは、大きな川の中州に建っていたのだ。
よく見ると、向こう側に立っているマンションも、中洲の上に建っている。
愛原「本当に三途の川なのか!?」
管理人「あなたが生前暮らしていた世界では、そう呼ばれています。私はあなたのような方が彷徨わないよう、管理を任されている者です」
愛原「そ、そうなのか……!」
すると管理人は、手に持っていた棒を浮かせると、それに腰かけた。
下にしていた所がやや太くなっている。
そこで私は気づいた。
彼女が持っているのはオール(櫂)だと。
舟を漕ぐ為の、あのオールだと。
しかし彼女はそれで舟を漕ぐのではなく、横に浮かせてそれに腰かけ、そのままマンションの外へと飛び去って行った。
[1月18日03時20分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階]
愛原「はっ!?」
私はそこで目が覚めた。
目の前に広がるのは、暗闇。
そして、後頭部を中心に激しい痛みを感じた。
こ、これは一体……?
夢だったのか?
段々はっきりと目が暗闇に慣れてくると、確かにそこには私の部屋の風景が広がっていた。
それにしても、頭が痛い。
何だこれは?
と、とにかく、頭痛薬を飲んでおこう。
確か薬は、リビングに薬箱があり、そこにロキソニンを入れていたのを思い出した。
私は痛む頭を抑えながら、まずはトイレに向かった。
それから、エレベーターに向かう。
リサを起こさないように、こっそりエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターの中は照明が煌々と輝いているので、思わず目が眩む。
それで3階に下り、高橋とパールの部屋の前を通った。
おせっせした後なのか、それとも今日は乗らないのか、特に2人の部屋からはそういった物音は聞こえてこない。
薬箱を開けると、果たしてそこにロキソニンはあった。
冷蔵庫にあるミネラルウォーターでロキソニンを飲むと、これで一安心したのか、また眠気が襲って来た。
私はまたエレベーターに乗り込み、4階に戻って自分の部屋に入った。
そしてまた寝入ったのであるが、また変な夢を見てしまった。
今度は高橋とゾンビ無双している夢だったので、こちらは特段気にする必要は無いだろう。
要はつまり、今夜は深い眠りに就けなかったということだ。
私は風呂に入った後、リビングでレポートを書いていた。
パール「先生、お茶をどうぞ」
愛原「ありがとう。でも、寝る前にお茶飲んだりしたら、眠れなくなるかもな」
パール「ほうじ茶ですから、そんなにカフェインは入ってないと思います」
愛原「おー、ほうじ茶か。それならいいや。ありがとう」
パール「いいえ」
ほうじ茶はその製法上、製造中にカフェインが壊れてしまう。
その為、煎茶よりもまろやかで胃に優しい。
パール「明日、事務所で作成されてはいかかですか?」
愛原「いや、クライアントを待たせてしまっている。なるべく早くレポートを作成して、報告したい」
事故物件の怪奇現象の正体について。
こんなことも探偵の仕事に回って来るのだから凄いことだ。
愛原「ん?リサはどうした?」
今は高橋が風呂に入っている。
リサを先に風呂に入れてやったのだが、上がった旨報告すると、すぐ自分の部屋に向かって行ってしまった。
いつもなら、そこのソファに寝転がってテレビを観たり、スマホを弄ったりするのだが。
私に尻を向けてブルマ尻を堪能させたり、或いは逆に甘えてきて、膝枕をねだったりすることがあった。
パール「部屋に戻りましたよ。来週はテストですから、勉強しているのかもしれません」
愛原「おー、そうか。テスト勉強か。それは感心感心……」
リサがソファに寝っ転がらないのは少し寂しいが、理由が理由なだけに、しょうがない。
愛原「これを飲んだら、休むことにしよう。俺も疲れたし」
パール「はい。そうなさってください」
[期日不明 時刻不明(昼間) 天候:雨 とある高層マンション]
どこだここは……?
私は、とあるマンションの1室にいた。
室内は散らかっていて、まるで、かつて私が独り暮らしをしていた頃のようである。
だが、マンションの内装に見覚えは無い。
間取りはオーソドックスなワンルーム。
窓の外を見ると、空は曇っていて、雨が降っている。
だが、濃い霧が掛かっているのか、外は全く見えない。
んん?何だここは?
私は部屋の外に出ようとした。
ところが、ここで場面が変わる。
今度は立体駐車場にいた。
タワー式の立体駐車場ではなく、自走式の立体駐車場。
ショッピングモールのそれほど広くは無いので、もしかしたら、マンションの駐車場なのかもしれない。
車は殆どのマスに止まっているが、出入りしている様子は無い。
私がその駐車場を歩いていると、管理人室が見えて来た。
そこに誰かいるだろうかと思って、中を覗くと、確かにそこには誰かがいた。
マンションや駐車場の管理人室にいるくらいだから、私よりずっと年上のオジさん、或いはお爺さんでもいるのだろうと思ったが違った。
そこにいたのは、意外にも若い女性だった。
年齢は20代前半くらいで、青みがかった髪をポニーテールにしていた。
そして、彼女は白っぽい着物を着ていた。
確かあれ、薄墨色とか言うんじゃなかったかな?
私が声を掛けると、彼女はすぐに応対してくれた。
愛原「ここはどこなんですか?あ、いや、駐車場の中だというのは知ってますが……」
管理人「ここは三途の川の中州です」
愛原「えっ?」
管理人「此岸と彼岸の境目に位置しています」
すると、私は死んだのか!?
管理人「このマンションは臨終後、閻魔大王の裁判を受けまでの間、一時滞在する為の物です」
愛原「そ、そうなの?」
やはり、私は死んだようだ。
愛原「すると、私は死んだんだな?」
管理人「…………」
愛原「全く記憶が無いんだ。私は、どうして死んだんだ?」
管理人「私の立場では、お答えできません」
愛原「な、なに!?」
管理人「裁判が始まるまでは、このマンション内は自由に移動して構いませんので」
愛原「裁判ということは、弁護士は付くのか?」
管理人「もう既に閻魔帳に全ての事が書かれており、あとは閻魔大王が判断することなので、弁護士は付きません」
愛原「ええ……」
そして、また場面が変わる。
今度はマンションの屋上であった。
そこに出ると、雨が降りしきっている。
降り方は安定しておらず、霧雨になったこともあれば、土砂降りになったこともある。
いずれにせよ、傘が無いと厳しい強さの雨である。
にも関わらず、私は気にすることなく、転落防止用の柵の手前ギリギリまで歩いた。
すると、それまで霧に包まれていた景色が少しだけ晴れる。
ぼんやりだが、向こう側の景色が見えるようになった。
そこにも、マンションのような建物がいくつも見える。
管理人「下を見てみてください」
愛原「下?」
いつの間にか私の後ろから、あの管理人が近づいてきた。
彼女もまた傘は差していない。
それどころか、何だか木の棒のようなものを持っている。
私が言われた通り下を覗くと、私は驚いた。
このマンションの立地条件、とても不思議だ。
それは、大きな川の中州に建っていたのだ。
よく見ると、向こう側に立っているマンションも、中洲の上に建っている。
愛原「本当に三途の川なのか!?」
管理人「あなたが生前暮らしていた世界では、そう呼ばれています。私はあなたのような方が彷徨わないよう、管理を任されている者です」
愛原「そ、そうなのか……!」
すると管理人は、手に持っていた棒を浮かせると、それに腰かけた。
下にしていた所がやや太くなっている。
そこで私は気づいた。
彼女が持っているのはオール(櫂)だと。
舟を漕ぐ為の、あのオールだと。
しかし彼女はそれで舟を漕ぐのではなく、横に浮かせてそれに腰かけ、そのままマンションの外へと飛び去って行った。
[1月18日03時20分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階]
愛原「はっ!?」
私はそこで目が覚めた。
目の前に広がるのは、暗闇。
そして、後頭部を中心に激しい痛みを感じた。
こ、これは一体……?
夢だったのか?
段々はっきりと目が暗闇に慣れてくると、確かにそこには私の部屋の風景が広がっていた。
それにしても、頭が痛い。
何だこれは?
と、とにかく、頭痛薬を飲んでおこう。
確か薬は、リビングに薬箱があり、そこにロキソニンを入れていたのを思い出した。
私は痛む頭を抑えながら、まずはトイレに向かった。
それから、エレベーターに向かう。
リサを起こさないように、こっそりエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターの中は照明が煌々と輝いているので、思わず目が眩む。
それで3階に下り、高橋とパールの部屋の前を通った。
おせっせした後なのか、それとも今日は乗らないのか、特に2人の部屋からはそういった物音は聞こえてこない。
薬箱を開けると、果たしてそこにロキソニンはあった。
冷蔵庫にあるミネラルウォーターでロキソニンを飲むと、これで一安心したのか、また眠気が襲って来た。
私はまたエレベーターに乗り込み、4階に戻って自分の部屋に入った。
そしてまた寝入ったのであるが、また変な夢を見てしまった。
今度は高橋とゾンビ無双している夢だったので、こちらは特段気にする必要は無いだろう。
要はつまり、今夜は深い眠りに就けなかったということだ。