[1月20日16時12分 天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→都営新宿線1512T電車最後尾車内]
リサはレイチェルと別れた後、1人で都営地下鉄岩本町駅に向かった。
BSAAが指定するBOW(Bio Organic Weapon。『生物兵器』)のA級(上級)に分類されるリサは、BSAA支部からの監視対象となっている。
但し、あくまでも分類上というだけであって、実際は本部監視対象のS級(特級)の強さであるとされている。
現在S級に指定されているのは、イーサン・ウィンターズ(故人)のみ。
娘のローズマリー・ウィンターズは現在、2~3歳のヨチヨチ歩きの幼児ながら、既にリサと同じA級に指定されているという。
A級だと常に監視が付くものの、例外的に単独行動が認められることもある。
それがリサの場合は通学など、学校関係に限られているわけだ。
S級に指定されようものなら、一切の単独行動ができないVIP並みの待遇だ。
本部からの監視がしやすいよう、イーサン同様、ヨーロッパに移住させられるかもしれない。
それもまた、リサがあえてA級にされた理由かもしれない。
レイチェルはそこを怪しんで、『日本政府が核兵器を持てない代わりに、リサを抑止力に使いたいのでは?』と思っているようだが……。
〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
リサが最後尾の車両が来る位置で電車を待っていると、トンネルの向こうから、轟音と強風を伴って電車がやってきた。
車両は東京都交通局のもの。
〔4番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう、岩本町。秋葉原〕
都営地下鉄でありながら、終点が千葉県という変わった地下鉄。
どうしても、総武線と接続したかった結果なのだろう。
比較的新しい電車であった。
愛原に言わせると、初期車と比べて車内が明るく、座席も柔らかいのだという。
しかし、そんなに空席があるわけでもなかったので、リサはドアの前に立っていた。
〔4番線、ドアが閉まります〕
短い発車メロディの後で、車両のドアとホームドアが閉まる。
車両のドアチャイムは、JR東日本のそれと同じ。
尚、乗り入れて来る京王電車のドアチャイムはJR東海のそれと同じである。
ドアが閉まり切ると、車掌が運転士に発車合図のブザーを鳴らす。
すると、エアーの音がして、電車が走り出した。
〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕
都営地下鉄の車掌は、乗降扉を閉めても、乗務員室のドアは閉めない。
出発監視が終わってから、ドアを閉めるのである。
今はホームドアがあるので、見た目はそれほどでも無くなったが、ホームドアが無かった頃は、見ていて随分とアクロバティックな出発監視に見えたものである。
これは何も都営地下鉄に限ったことではなく、例えばワンマン化前の札幌市地下鉄の車掌も似たような出発監視をしていた。
リサはスマホで愛原とこれから帰宅する旨のやり取りをしながら、そんなことを思い出した。
愛原が地下鉄など電車に乗る度、鉄ヲタ知識を披露してくるので、リサもいい加減覚えてしまったのである。
男子高生A「……というわけで、学級閉鎖ってわけよ」
男子高生B「つったって、土日挟んだら意味ねーべや」
男子高生A「タイミング悪過ぎだよなぁ……」
近くの席に座る男子高生達が何か話している。
違う制服を着ているので、他校の生徒のようだ。
どうやら話しぶりからして、その学校、インフルエンザが流行して明日から学級閉鎖になるらしい。
ところがどっこい。
明日から土日なので、この時点で学級閉鎖と言われたところで、あんまり意味無いと話していたのであった。
少なくともこの2人の男子高生、リサと同じく黒いマスクをしつつも、特に咳き込んだりしている様子は無いので、感染者ではないようだ。
男子高生A「あれ?オメーんちも誰か感染者出なかったっけ?コロナ?」
男子高生B「ちげーし。ノロウィルスだよ。父親が飲み会でカキ食ったら、ノロウィルスになったみたいでさぁ……」
男子高生A「マジで?それヤベェじゃん。ノロって、寄生虫だっけ?アメーバー?」
男子高生B「知らねーよ」
そうこうしているうちに、電車は馬喰横山駅に到着する。
ウィルスの話で盛り上がっている男子高生達は、ここで降りて行った。
リサ(寄生虫かぁ……)
再び電車が走り出す。
〔この電車は、各駅停車、本八幡行きです。次は浜町、浜町。明治座前。お出口は、右側です〕
リサは左手の掌を見た。
そして、隠れてこっそり触手を少しだけ出してみる。
ちゃんと自分の意志通りに、掌から触手が出た。
最近は電撃が弱くなっている。
恐らく体内でウィルスや特異菌の比率が変わったか、また変化が起きているようである。
但し、見た目は何も変わらない。
Tウィルスに感染した蜘蛛を食べたことにより、体内にあったGウィルスと特異菌が何か動いたものと思われる。
そうしてリサの中で起きている変化というのが……。
リサ(電撃使いではなくなって、また前の寄生虫使いに戻ろうとしている……か。ふーむ……)
明日は土曜日である。
しかし、今週月曜日の大雪による臨時休校のせいで、土曜日が振り替え登校日となってしまった。
但し、遅れている授業を取り戻すだけなので、月曜日と同様、午後までマックス授業が行われるわけではなく、午前中だけである。
また、月曜日の分の食堂のフードロスを防止する為、学食も臨時営業される。
その後は、もう下校ということだ。
そして、明日はレイチェルは登校しない。
つまり、BSAAの監視が弱くなるということである。
いくら養成学校からの留学生とはいえ、BSAAに籍を置いている者が近くにいるというだけで、実質的にリサに対する監視が強化されたようなものだった。
それが若干弱まるということは……。
リサ(ちょっと……試してみるか)
リサはニヤリと笑った。
黒いマスクをしているので口元は見えなかったが、マスクの下は鋭い牙が覗いていたことだろう。
リサはレイチェルと別れた後、1人で都営地下鉄岩本町駅に向かった。
BSAAが指定するBOW(Bio Organic Weapon。『生物兵器』)のA級(上級)に分類されるリサは、BSAA支部からの監視対象となっている。
但し、あくまでも分類上というだけであって、実際は本部監視対象のS級(特級)の強さであるとされている。
現在S級に指定されているのは、イーサン・ウィンターズ(故人)のみ。
娘のローズマリー・ウィンターズは現在、2~3歳のヨチヨチ歩きの幼児ながら、既にリサと同じA級に指定されているという。
A級だと常に監視が付くものの、例外的に単独行動が認められることもある。
それがリサの場合は通学など、学校関係に限られているわけだ。
S級に指定されようものなら、一切の単独行動ができないVIP並みの待遇だ。
本部からの監視がしやすいよう、イーサン同様、ヨーロッパに移住させられるかもしれない。
それもまた、リサがあえてA級にされた理由かもしれない。
レイチェルはそこを怪しんで、『日本政府が核兵器を持てない代わりに、リサを抑止力に使いたいのでは?』と思っているようだが……。
〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
リサが最後尾の車両が来る位置で電車を待っていると、トンネルの向こうから、轟音と強風を伴って電車がやってきた。
車両は東京都交通局のもの。
〔4番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう、岩本町。秋葉原〕
都営地下鉄でありながら、終点が千葉県という変わった地下鉄。
どうしても、総武線と接続したかった結果なのだろう。
比較的新しい電車であった。
愛原に言わせると、初期車と比べて車内が明るく、座席も柔らかいのだという。
しかし、そんなに空席があるわけでもなかったので、リサはドアの前に立っていた。
〔4番線、ドアが閉まります〕
短い発車メロディの後で、車両のドアとホームドアが閉まる。
車両のドアチャイムは、JR東日本のそれと同じ。
尚、乗り入れて来る京王電車のドアチャイムはJR東海のそれと同じである。
ドアが閉まり切ると、車掌が運転士に発車合図のブザーを鳴らす。
すると、エアーの音がして、電車が走り出した。
〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕
都営地下鉄の車掌は、乗降扉を閉めても、乗務員室のドアは閉めない。
出発監視が終わってから、ドアを閉めるのである。
今はホームドアがあるので、見た目はそれほどでも無くなったが、ホームドアが無かった頃は、見ていて随分とアクロバティックな出発監視に見えたものである。
これは何も都営地下鉄に限ったことではなく、例えばワンマン化前の札幌市地下鉄の車掌も似たような出発監視をしていた。
リサはスマホで愛原とこれから帰宅する旨のやり取りをしながら、そんなことを思い出した。
愛原が地下鉄など電車に乗る度、鉄ヲタ知識を披露してくるので、リサもいい加減覚えてしまったのである。
男子高生A「……というわけで、学級閉鎖ってわけよ」
男子高生B「つったって、土日挟んだら意味ねーべや」
男子高生A「タイミング悪過ぎだよなぁ……」
近くの席に座る男子高生達が何か話している。
違う制服を着ているので、他校の生徒のようだ。
どうやら話しぶりからして、その学校、インフルエンザが流行して明日から学級閉鎖になるらしい。
ところがどっこい。
明日から土日なので、この時点で学級閉鎖と言われたところで、あんまり意味無いと話していたのであった。
少なくともこの2人の男子高生、リサと同じく黒いマスクをしつつも、特に咳き込んだりしている様子は無いので、感染者ではないようだ。
男子高生A「あれ?オメーんちも誰か感染者出なかったっけ?コロナ?」
男子高生B「ちげーし。ノロウィルスだよ。父親が飲み会でカキ食ったら、ノロウィルスになったみたいでさぁ……」
男子高生A「マジで?それヤベェじゃん。ノロって、寄生虫だっけ?アメーバー?」
男子高生B「知らねーよ」
そうこうしているうちに、電車は馬喰横山駅に到着する。
ウィルスの話で盛り上がっている男子高生達は、ここで降りて行った。
リサ(寄生虫かぁ……)
再び電車が走り出す。
〔この電車は、各駅停車、本八幡行きです。次は浜町、浜町。明治座前。お出口は、右側です〕
リサは左手の掌を見た。
そして、隠れてこっそり触手を少しだけ出してみる。
ちゃんと自分の意志通りに、掌から触手が出た。
最近は電撃が弱くなっている。
恐らく体内でウィルスや特異菌の比率が変わったか、また変化が起きているようである。
但し、見た目は何も変わらない。
Tウィルスに感染した蜘蛛を食べたことにより、体内にあったGウィルスと特異菌が何か動いたものと思われる。
そうしてリサの中で起きている変化というのが……。
リサ(電撃使いではなくなって、また前の寄生虫使いに戻ろうとしている……か。ふーむ……)
明日は土曜日である。
しかし、今週月曜日の大雪による臨時休校のせいで、土曜日が振り替え登校日となってしまった。
但し、遅れている授業を取り戻すだけなので、月曜日と同様、午後までマックス授業が行われるわけではなく、午前中だけである。
また、月曜日の分の食堂のフードロスを防止する為、学食も臨時営業される。
その後は、もう下校ということだ。
そして、明日はレイチェルは登校しない。
つまり、BSAAの監視が弱くなるということである。
いくら養成学校からの留学生とはいえ、BSAAに籍を置いている者が近くにいるというだけで、実質的にリサに対する監視が強化されたようなものだった。
それが若干弱まるということは……。
リサ(ちょっと……試してみるか)
リサはニヤリと笑った。
黒いマスクをしているので口元は見えなかったが、マスクの下は鋭い牙が覗いていたことだろう。