報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「地下カジノの戦利品」

2023-12-05 20:32:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月3日01時30分 天候:曇 栃木県日光市某所(奥日光) 地下2階カジノ]

 愛原「先に、他に何か無いか探してから行こうよ。これは多分、もうそこに入ったら引き返せないバターンだぞ」
 高橋「それもそうっスね。……お、バーがあるじゃないっスか。高そうな酒があったら、頂いて行っていいっスかね?」
 愛原「荷物になるだけだからやめろ」
 高橋「サーセン。じゃあ、ちょっと試飲だけ……」

 確かにバーカウンターの奥を見ると、高級洋酒なんかも見受けられる。
 だが、ここで勝手に持ち出しては火事場泥棒の悪名が付いてしまうことだろう。

 リサ「おー!鬼ころしもある!」
 愛原「カクテル用かもしれないな。今は飲むんじゃないぞ」
 リサ「分かってるよ。ここに来る時、さんざん無理やり飲まされたんだから」
 愛原「そ、そうなのか」

 恐らく、リサの力を封じる為だろう。
 栗原家にとっては、『鬼封じの酒』という異名もあるようだ。

 高橋「ヒューッ!このブランデー、美味いっスよ!」
 愛原「そ、そうか?じゃあ、俺も一口だけ試飲をば……」
 リサ「そんなことしてる場合じゃないでしょ。それより、ちょっとトイレ行ってくる」

 リサはカジノの奥にあるトイレを指さした。

 愛原「分かった。行ってこい」

 リサはトイレに向かった。
 その間、私と高橋はカウンターの奥にある酒を物色。

 高橋「マジで持って行きてー!」
 愛原「さすがに火事場泥棒は探偵のやることじゃないって」

 本当に緊急事態だったのか、まだ中身のあるシェーカーや、作りかけのマティーニが放置されている。
 カウンターの上には、飲みかけのグラスやつまみが放置されていた。

 愛原「たまには、こういうバーでゆっくり酒を飲んでもいいんだろうがな」
 高橋「今度、良さげなバーを探しておきますよ」
 愛原「ぼったくりバーはダメだぞ?」
 高橋「大丈夫っスよ。俺達にはボらせません。むしろ奢りにさせます」
 愛原「……何か、まるでその店を知ってそうな言い方だな?」
 高橋「い、いえ、何でも……」
 リサ「先生!」

 その時、リサが慌てて戻って来た。

 愛原「どうした?鬼狩り隊でもいたか?」
 リサ「違うよ!トイレのドアを開けるのにメダルがいるからちょうだい!」
 高橋「はあ?」
 愛原「そんなことがあるのか?」
 リサ「きっとあのゴールドコイン、トイレで使うんだよ!」
 愛原「有料トイレってことか?」
 高橋「随分高ェ有料トイレっスね」
 愛原「取りあえず行ってみよう」

 私達はトイレに行ってみた。
 当然ながら男女別になっているのだが、まず入口のドアを開けるのに、コインを投入しないといけないらしい。

 リサ「メダルを1枚入れないと開かないんだって」
 愛原「カジノ客以外にトイレを使わせない対策かな?高橋」
 高橋「うス」

 高橋は持っていたメダルから1枚、ドアノブ上の投入口に入れた。
 すると、ドアが開いた。
 カジノのトイレらしく、中はミラーがふんだんに使われていて、シックな雰囲気を出す為か、やや薄暗くなっている。
 但し、雰囲気が不気味にならないようにする為か、トイレ内にもジャズの音楽が流れていた。

 愛原「出る時は大丈夫かな?」
 高橋「内側にはコイン投入口が無いから大丈夫でしょう」
 リサ「先生!個室に入る時は3枚だって!」
 愛原「はあ!?」
 高橋「下痢ってる時はアウトなトイレっスね」
 愛原「そ、そうだな」

 私は一応、リサにメダルを10枚渡しておいた。
 まさかとは思うが、ウォシュレットやトイレットペーパー使用にまでそれが求められたら困るからだ。
 メダルは、まだ100枚以上ある。

 愛原「一応、男子トイレにも何か無いか調べてみよう」
 高橋「分かりました」
 愛原「リサ!俺達、隣の男子トイレにいるから!」
 リサ「分かったー。良かった。こっちは洋式」

 リサは喜んで個室の中に入っていった。
 案の定、出る時はメダルは要らないらしい。
 そして、隣の男子トイレ。
 雰囲気は女子トイレとだいたい同じ。
 違うのは個室の数が少なく、その分、小便器が設置されていること。

 高橋「先生w こっちの個室は、メダル無しで開きますよ?」
 愛原「本当だ。差別だな、こりゃ」

 不思議なのは、1番奥の個室だけメダルが10枚も必要なことだった。
 他の個室は普通の洋式トイレ。
 もちろん、ウォシュレット付き。
 となると、これは?

 高橋「VIP用トイレですかね?」
 愛原「だったら、VIPルーム内に無いか?」
 高橋「それもそうっスね」
 愛原「まだ、メダルは足りるか?」
 高橋「大丈夫っス」

 高橋はメダルを10枚投入した。
 そして、ドアが開く。
 すると、そこにあったのは金庫だった。
 いや、金庫というか……。

 高橋「何か、貴重品ボックスって感じっスね」
 愛原「それだ!」

 便器は無く、何故かそれがドンと置かれている。
 しかも、稼働しているようだ。

 愛原「ん?もしかして、ゴールドコインはここて使うのか?ほら、ここに『ゴールドコイン投入口』って書いてある」
 高橋「本当だ!」
 愛原「1枚だけで開く扉がある。ちょっと入れてみろ」
 高橋「はい」

 高橋はゴールドコインを1枚入れた。
 すると、蓋がパカッと開く。
 それぞれの大きさは、本当にスーパー銭湯とかに設置されている貴重品ボックスのようなものである。
 恐らくそういった物を用意して、改造したものなのだろう。

 愛原「これは……」

 中に入っていたのは、1台のスマホだった。
 しかも、見覚えがある。

 愛原「これはリサのスマホじゃないか!」
 高橋「ここにあったんスね!」
 愛原「なるほど。ここは圏外だ。こんな所に置かれてたら、いくらこっちが掛けても繋がるわけがないか」

 当然、私はリサのスマホを回収した。

 愛原「他にもあるかもしれんぞ。ゴールドコイン、全部使っちゃおう!」
 高橋「はい!」

 高橋は手持ちのゴールドコインをありったけ投入して、物が入っているボックスを根こそぎ開けていく。
 因みに物が入っているボックスは赤いランプが点いているので、それで分かる。

 高橋「先生。コイン2枚の所に鍵が入ってました!」
 愛原「どこの鍵が分からんが、ここに入っている以上、貴重な物だろう。頂いて行こう」
 高橋「はい!……で、コイン3枚の所には、温泉旅行券がありました」
 愛原「何故に温泉旅行?」
 高橋「コイン4枚の所は札束が入ってました」
 愛原「本当に貴重品入れじゃないのか?」
 高橋「頂いて行きます」
 愛原「おい!」
 高橋「コインを当てたのは俺っスよ?てことは、俺がもらっていいはずです」
 愛原「いや、しかしだな……」
 高橋「他のコインも入れてみます」
 愛原「あ、ああ」
 高橋「……今度はJTB旅行券が入ってました」
 愛原「一体、何なんだ、このボックスはァ!?」

 他にも開けてみたが、少なくともこの事件の真相に辿り着けるようなものは無かった。

 高橋「オラぁっ!インゴット発見!」
 愛原「ま、マジか……」

 最後に開けたところ、三菱マテリアルの社名が入ったインゴットが入っていた。

 愛原「証拠品だ、証拠品!後でデイライトに提出するんだ!」
 高橋「えー?賄賂渡したら捕まりますよ?」
 愛原「賄賂じゃねーって言ってだろ!さっさと行くぞ!」
 高橋「へーい……」

 私達は男子トイレから出た。
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“私立探偵 愛原学” 「真夜中の戦い」

2023-12-05 16:22:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月3日01時00時 天候:曇 栃木県日光市某所(奥日光界隈) 栗原家関連施設]

 私と高橋は無事、リサと合流することができた。
 リサの話では首を刎ねられたものの、噴き出した血が繋がっていた為、一命を取り留めたという。
 もしかしたら、酒呑童子もそうだったのかもしれない。
 ただ、彼(彼女?)は首を繋げる前にトドメを刺されてしまったようである。

 愛原「何だって!?リサの血が蓮華の中に!?」
 高橋「プライドもヘッタクレも無いっスね!」
 リサ「秘密の薬と混ぜていたけど、嫌な予感しかしない」
 愛原「だろうな!」

 と、この離れでも火災報知器からベルが鳴った。
 どうやら全館避難、この場合は全敷地内避難といったところか。
 その命令が防災センターから出たということだ。
 ベルが鳴り響くだけで、特に放送とかは無いが。

 愛原「しょうがない。ちょっとだけ様子を見に行ってやろう!」
 高橋「マジっスか!?さっさと逃げた方がいいんじゃないスか!?」
 愛原「いや、だって……」

 外から聞こえて来るヘリコプターの音。
 そして、時折聞こえて来る機銃掃射の音。
 これは外に出たらマズいということだ。

 愛原「他の出口から避難した方がいいだろう。リサ、知ってるか?」
 リサ「うん。地下1階か2階から出られるかもしれない」
 愛原「そりゃ良かった!案内してくれ!」
 リサ「うん!」

 リサは走り出したが、何故かよろけてしまう。

 愛原「どうした!?」
 リサ「血を流し過ぎたせいか、少し体の具合が……」
 愛原「なにぃっ!?」
 高橋「気絶すんなよ!運ぶの大変だから!」
 愛原「高橋」
 リサ「う、うん。頑張るね。こっち!こっちにエレベーターがある!」

 まだこの離れにまで火災の影響は無いようだが、あまりエレベーターは使いたくないなぁ……。
 しかし、他のルートをリサは知らないようだ。

 高橋「うわっ!すっげーレトロなエレベーター!」
 愛原「まるで日本橋高島屋のエレベーターだな」

 それでも確か高島屋のエレベーターは、扉の開閉とかは自動だったはずである。
 しかし、こちらは全てが手動。

 リサ「このレバーを操作するんだよ」
 愛原「どこまでレトロなんだ、ここは……」

 私は呆れた。

 高橋「扉閉めました。何階へ行きますか?」
 愛原「地下階しか行かないのか?」
 リサ「わたしが連れて行かれたのは地下3階だよ。でも、そこは大広間しか無かったね。センパイ達も、地下2階か1階かに行ったみたい」
 愛原「よし。それなら、まずは地下2階に行ってみよう」

 私はレバーを操作した。
 これってもしかして、ピッタリに位置を合わせないと扉が開かないというオチだろうか……。
 エレベーターが地下1階を通過し、地下2階に到達しようとした時だった。

 愛原「うわっ!」

 ドォーンとエレベーターに衝撃が走り、大きく揺れた。

 リサ「きゃっ!」
 愛原「な、何事だ!?」
 高橋「どうやらまたどっか爆発したみたいっスね!」

 幸い停電はしなかったが、それでもショックでエレベーターが止まってしまった。
 レバーを押しても引いても、うんともすんとも言わない。
 エレベーターに閉じ込められてしまった!?

 高橋「先生!ここ!このドア、少し隙間が開いてますよ!」
 愛原「何とかこじ開けられないか!?」
 高橋「やってみます!」

 高橋は持っていたバール(のようなもの)をドアの隙間に差し込んだ。
 更に大きな隙間ができた所に、リサが鬼形態に変化して、鬼の力で更にこじ開ける。
 内側の蛇腹鉄格子扉は開けることができたが、問題は外側の鉄扉。
 これがエレベーターが着床しないとロックが掛かる仕組みになっているようだ。
 これをこじ開けようというわけである。

 高橋「リサ、蹴破るぞ!」
 リサ「うん!」
 高橋「先生は離れててください」
 愛原「あ、ああ!分かった!」
 高橋「うらぁーっ!」
 リサ「うらーっ!」

 元不良の高橋と鬼娘リサの脚力により、エレベーターの鉄扉が向こう側へと落ちた。

 高橋「今です!」
 愛原「ありがとう!」

 地下2階もまた共用スペースになっているようだった。
 つまり、大広間が並んでいるように見える。

 高橋「先生、何かジャズっぽいのが聞こえてきますよ」
 愛原「本当だ。バーか何かあるのかな?」
 高橋「こんな和室テイストの雰囲気の中っスか?」
 愛原「ま、まあそうだな。ていうか、靴のまま上がってきて良かったのかな?」
 高橋「何を今さら……」
 愛原「ハハ、それもそうだな」

 引き戸式の木戸には、鍵が掛かっているが、これも高橋がバール(のようなもの)でこじ開けた。
 中に入ると……。

 愛原「何だ、ここは?」

 何と、中はカジノになっていた。
 しかし、避難した後なのか、中には誰もいない。

 愛原「ここは……違うか?」
 高橋「つーか、何でこんな所にカジノなんか?」
 愛原「地下にあるくらいだから、違法カジノだったりしてな。栗原家の闇を見つけたかもしれん」

 私は手持ちのデジカメを取り出すと、それで写真を撮った。
 後でどこかにリークしたなら、報奨金くらい貰えるかもしれない。

 愛原「とはいうものの、ここでは無いようだな」
 高橋「先生、あれを見てください」

 高橋が指さした所には、非常口誘導灯があった。

 高橋「あそこからでも、外に出られるんじゃないスかね?」
 愛原「ふーむ……。非常口誘導灯が付いているくらいだからな」

 私達はそこに駆け寄った。
 普段は施錠されているようである。

 愛原「てか、鍵が掛かってる!」
 高橋「これでこじ開けますか?」
 愛原「大丈夫か?今度は頑丈な鉄扉だぞ?」

 非常口のドアに使うくらいだから、炎が迫って来ても、密閉性・遮煙性・遮炎性が無ければならない。
 つまり、木製のドアではダメだということだ。

 リサ「これは?」

 非常口のドアの横には、バニーガールのマネキンが置かれている。
 そのマネキンはにこやかな顔で、両手にボードを持っていた。

 愛原「『↑VIPルーム↑ 入室ご希望の方は、メダル100枚をカジノガールに入れてください』だって!?」
 高橋「しゃあねぇ。ちょっくら稼いで来ますわ」
 愛原「お、おい!そんなことしてる場合じゃ……」
 高橋「リサ!落ちてるメダル、何枚か拾え!」
 リサ「わかった!」

 リサはメダルを5~6枚ほど拾い集めて来た。

 愛原「どうやって、メダルを増やすんだよ!?」

 カジノ内には誰もいない。
 無人でできるものと言ったら……。

 高橋「これっス!」
 愛原「スロットか!」

 幸いまだ停電はしていないので、スロットマシーンは稼働している。

 愛原「そう上手く行くのか?」
 高橋「古い機械っスからね。『目押し』ができればオッケーっス」
 愛原「簡単に言うなぁ……」

 高橋はメダルを入れてスロットを回した。
 すると、高橋はいとも簡単に絵柄を揃えてしまった。
 ジャラジャラとメダルが出て来る。
 そういうのがあるので、最近のパチンコ屋のスロットは、目押しが効かないようになっているわけである。

 高橋「超余裕っス!」
 愛原「さすがだな……」
 リサ「お兄ちゃん、このゴールドコインは何だろう?」

 高橋が稼いだメダルは最低条件の100枚を超えている。
 その中に、金ピカのメダルが何枚か入っていた。

 高橋「バカラ賭博用のメダルだったりしてな?」
 愛原「そうなのかぁ?」

 カジノの中でも最も多くの掛け金が飛び交うのが、バカラである。
 その為、カジノでバカラをしたければ、VIPルームに行けというのが相場である。
 とはいうものの、私はこのゴールドコインがそれ用だとは思わなかった。
 どこか、別の所で使うコインなのではないかと思った。
 それはどこだと思う?

 ➀やっぱりVIPルーム
 ②ブラックジャック
 ➂ポーカー
 ④トイレ
 ⑤バー
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