報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「大宮へ向かう」

2023-12-24 20:48:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月8日09時15分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 平日なのでリサはいつも通り学校に行き、私と高橋、高野君は事務所にいた。

 愛原「また事故物件調査の依頼か……。最近多いなぁ……」
 パール「実際、先生方が『実は日本アンブレラの社宅でした』という事件を解決してから、多くなりましたね」
 愛原「だいぶ昔の話だで?この作品でも紹介していないくらい」
 高橋「先生、メタ発言はやめましょう」

 その時、正面玄関のインターホンが鳴らされた。
 パールが応答する。

 パール「はい。愛原学探偵事務所でございます」
 郵便局員「おはようございます。郵便です」
 パール「はい。今、参ります」
 愛原「おっ!絵恋からレターパックが来たみたいだぞ!」
 パール「御嬢様からの……。行って参ります」
 愛原「頼むぞ」

 当初は速達、書留で送るということだったが、レターパックの方が安いということが判明し、それに切り替えた。
 こうやって配達員に受領印を押す必要のある、レターパックプラスである。
 速達郵便と同じラインに乗せられ、簡易書留と似たようなサービスである為、かなり重宝する。

 パール「お待たせしました。やはり、御嬢様からのレターパックでした」

 

 パールは赤いレターパックを持ってきた。
 ついでに他の普通郵便物も受け取ったらしく、それも持って来る。

 愛原「確かに、我那覇絵恋からのレターパックだな。よし、開けるぞ」

 私はレターパックを開封した。
 リサ宛だが、彼女から、届いたら勝手に開けて良いとの了承を得ている。

 愛原「やっぱりブルマ入ってやがった。見え見えのオチになってしまった!」
 高橋「リサは要らねぇって言ったんですけどね……」

 

 沖縄中央学園は、元々ネイビーのブルマであり、廃止後も同じ色のジャージやクォーターパンツが使用されていたが、我那覇絵恋が転校後、『魔王軍沖縄支部』メンバーだけは、本校の東京中央学園に合わせて、緑色のブルマを穿いている。
 どうしてこれが許されているのかというと、実は沖縄中央学園では、校則に定められた体操服がそもそも無いからである。
 ブルマ廃止の際に、その口実として、体操服に関する規定そのものを廃止してしまったという経緯がある。
 今着用されているのは、あくまでも標準体操服であり、必ずそれを着用せよという校則があるわけではない。
 校則が無い以上、廃止されたブルマを穿いても良いということになり、『魔王軍沖縄支部』はそれを逆手に取ったのである。
 しかも、東京中央学園と違って、ブルマにラインや名前入りの刺繍まで入れる徹底ぶり。
 恐らく絵恋は、それを自慢したかったのかもしれない。

 愛原「あー、なるほど……。これは絵恋のブルマだ。普通は手に入らないものだろう?」
 高橋「そりゃそうっスよ」
 愛原「それを手に入れたんだから、絵恋の命令は本当だという新庄さんに対する圧でもあるわけだ」
 高橋「はあ……」

 レターパック内には手紙もあり、新庄さんに対する命令書とリサに対する挨拶が書かれていた。
 急いで鍵やブルマを送る必要があった為、ちゃんとした手紙は、寒中見舞いとして送ったという。
 寒中見舞いにしては、やや遅いような気もするのだが、年賀状を送って、寒中見舞いまで送るとは、何とも律儀な。
 これもリサに対する恋慕の気持ちから起こる行動なのだろうか。

 パール「あ、寒中見舞いありました」

 パールは普通郵便の束の中から、絵恋の寒中見舞いを見つけた。
 普通郵便といっても、あくまで受領印の要らない郵便物全体が1つに纏められているだけである。
 見ると、どうやら速達で送られてきたようである。
 つまり、レターパックを出した後、急いで寒中見舞いを作成し、郵便局に出したのだろう。
 消印はどちらも同じ日になっていた。

 愛原「じゃあ、寒中見舞いは直接リサに渡しといてくれ」
 パール「かしこまりました」
 高橋「エレベーターの鍵、ブルマの中に入れてやがりますよ?あの変態レズガキ」
 愛原「本当は、リサに取ってもらいたかったんだろうなぁ。だが、時間が無いので、俺が取らせてもらう」

 リサがそうしたように、絵恋もまたブルマをビニールパウチの中に入れている。
 開けると、微かに『女の匂い』がしたことから、着用済みなのは間違いない。
 リサはあくまでも、血肉は人間の女の方が良いというだけであって、けしてリサもまたLGBTのLというわけではない。

 愛原「よし。大宮駅に行こう」
 高橋「は、はい。すぐに準備します」

 高橋はアプリでタクシーを呼んだ。
 私は電話で、善場主任に報告。
 これからの予定を話した。
 さすがに、ブルマの事は話さなかったが。

 愛原「……というわけで、これから大宮に行く予定です」
 善場「かしこまりました。どうか、お気をつけください。“青いアンブレラ”が怪しい動きをしているとの情報があります」
 愛原「分かりました」

[同日09時50分 天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅→高崎線3001M列車1号車内]

 事務所からはタクシーで上野駅に向かった。
 東京駅にしなかったのは、上野駅から特急に乗ろうと思ったからである。
 交通費を自由に使えるという強みがあったというのも大きい。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。14番線に停車中の列車は、10時ちょうど発、特急“草津”1号、長野原草津口行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 とはいうものの、さすがにグリーン料金はもちろんのこと、指定席料金までは請求できないと思った。
 上野駅で自由席特急券だけ買って、それで後ろ2両の自由席に乗り込んだ。
 ド平日ということもあり、電車はそんなに混んでいない。
 ただ、指定席の方を見ると、そちらの方が乗客が多いように見えた。
 1人旅ならまだしも、グループや団体客などは事前に計画を立てているだろうから、列車も早めに指定席を押さえてしまうというのが多いのだろう。
 私と高橋は、空いている2人席を確保した。

 愛原「今日、新庄さんは出勤しているそうだ。客待ちをする場所は決まっているそうだから、そこに行ってみよう」
 高橋「張り込みっスね!何か、探偵っぽいっス!」
 愛原「オマエねー……」

 幸いなのは、埼玉県のタクシー会社は、都内のそれと違って流し営業を積極的には行わず、駅や病院などでのつけ待ちや無線・アプリ配車を主に行っていることである。
 なので新庄さんが普段客待ちをしているという場所に行けば、会える確率は高いと思った。
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“私立探偵 愛原学” 「月曜から仕事」 2

2023-12-24 15:54:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月6日15時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 リサ「ただいま」

 リサが学校から帰って来た。
 そして、そのまま事務所までやってくる。
 この寒い時期に、コートを着ていない以外は普通の女子高生である。
 但し、首にネックウォーマーは着けているが。

 愛原「お帰り。絵恋さんの件、どうだった?」
 リサ「わたしのブルマ、届いたって。でね、エレベーターの鍵なら持ってるんだってさ」
 愛原「え!?」
 リサ「エレンが自分のブルマと一緒に鍵を送るってさ」
 高橋「鍵以外は要らねーな」
 リサ「うん、それはわたしも断った。そしたら蓮華、半泣きしてたけど」
 愛原「あはは……」

 私はリサにホットコーヒーを入れてあげた。

 リサ「ありがとう。外は寒いねー。沖縄はコート要らないってさ」
 愛原「だろうなぁ。リサなら、ブレザーも要らんだろ」
 リサ「多分そうだね。でね、鍵は言われた通り、速達と書留で送るってさ」
 愛原「おおっ!それは助かる!ということは、一両日中に届きそうだな」

 リサみたいに学校から帰って来て、夕方前に郵便局に出してくれれば、明日か明後日には届くだろう。

 リサ「でも、問題が1つある」
 愛原「何だ?」
 リサ「埼玉の家って、エレンのお父さんの家なんだよ」
 愛原「それは知ってる。……ん?」

 ここで私は嫌な予感がした。
 そうだ。
 あの家の名義は、斉藤元社長になっている。
 しかし、あの家が売りに出されていると聞いたことはない。
 空き家にはなっているが、今でも斉藤元社長の持ち物件であることに変わりはない。
 しかし、絵恋の母親は、そんな元社長とは離婚してしまった。
 つまり、今あの家に自由に出入りできる立場ではないのだ。

 リサ「お母さんが離婚したもんだから、家の鍵が無いんだって」
 愛原「エレベーターの鍵はあるのに、家の鍵は無いのかよ……」

 私は呆れた。
 しかし、それにしても絵恋から送られてくるというその鍵が、本当にエレベーターの鍵なのか、確認しなくてはならない。
 その為には、三菱日立ホームエレベーターが設置されている所で確認しなくてはならない。
 だがあいにくと、都合良くホームエレベーターが設置されている所に知り合いはいない。
 斉藤家だけである。
 何とかして斉藤家に入り、エレベーターが操作できるか確認したいところだ。
 そのまま民宿さのやに持って行って、実は違いましたなんて事になったら、骨折り損のくたびれ儲けである。

 リサ「そこで、運転手さんの出番」
 愛原「運転手?」
 リサ「ほら、エレンのお父さんの運転手さん」
 愛原「ああ、新庄さんか!」

 斉藤元社長のお抱え運転手である。
 元はタクシーの運転手であったが、斉藤元社長にスカウトされて、お抱え運転手となっている。

 リサ「エレンの話だと、またタクシーの運転手さんに戻ったんだって」
 愛原「どこのタクシー会社だ?東京か?」
 リサ「ううん。埼玉の」
 高橋「あっ、そういや……!」

 高橋が何か思い出したようだ。

 愛原「何だ?」
 高橋「パールのヤツ、新しい情報を手に入れたと言ってました」
 愛原「何だって?」
 高橋「他のメイド仲間から聞いたみたいっス」
 愛原「パールは……買い物中か」
 高橋「もうすぐ帰って来ますよ。ちょっと事務所に寄るよう、LINEしておきます」

 高橋は自分のスマホを取り出した。

 高橋「……と、既にLINE来てました。埼玉のタクシー会社で、タクシーの運ちゃんやってるのは間違い無いみたいっス」

 新庄さんは60代になるはずだが、タクシー会社の場合、普通2種免許さえあれば、60代でも働けるからな……。
 元々タクシー運転手をやっていた新庄さんは、免許を持っていたというわけだ。

 愛原「そうか。……で、どうして新庄さんが出て来たんだっけ?」
 リサ「その運転手さんが家の鍵を持ってるんだって。執事さんの役割もやってたから」
 愛原「なるほど!」

 今ではアパートやマンションで言うところの、管理人みたいな立場か。
 それも、管理会社から派遣されるタイプではなく、オーナーに直接雇われるタイプの。
 でも、それに関して給料など出ているのだろうか?

 愛原「でもなぁ……。俺達、新庄さんは知ってるけど、急に行って、『家の鍵開けてくれ』って言っても、対応してくれるかな?」
 リサ「そこでエレンの出番。エレンのお母さんは、『もう離婚してるから』という理由で断るだろうけど、エレンにとっては、やっぱり実家だから。エレンが頼めば、開けてくれるみたいだよ」
 愛原「どうやって?」
 リサ「蓮華が手紙を書くのと、証拠の品を送るんだって。それを見せれば、運転手さんも信じてくれるってよ」
 愛原「ふーん……。まあ、とにかく今はエレンを信じよう」
 高橋「大丈夫っスかねぇ……」

 私は自分のスマホを取り出した。
 それで、善場主任に連絡を取る。

 善場「もしもし。善場です」
 愛原「あっ、善場主任。愛原です。お疲れさまです。今、お電話宜しいでしょうか?……はい、ありがとうございます」

 私は今のやり取りを主任に報告した。

 善場「かしこまりました。個人的には、もっとスピーディーにと思うところではございますが、所長方が一生懸命動いて下さっているのは理解できます。報告の件、承知しました。今後も経過の報告を、よろしくお願い致します」
 愛原「承知致しました」
 善場「あ、そうそう。1点連絡ですが……」
 愛原「はい」
 善場「現金やインゴットなどの貴重品以外は、証拠能力なしと判断されました。また、栗原家も、あれは『カジノを模したゲームセンターの景品である』との一点張りです」
 愛原「現金やインゴットは、証拠能力があるんですね?」
 善場「というか、ゲームセンターの景品で、札束やインゴットなんて明らかに不自然ですよね?何らかの余罪があると見て、追及することになりました。それ以外の宿泊券や旅行券などの物品につきましては、栗原家の主張通りと判断することになった次第です」
 愛原「その景品をゲットする為のゴールドコインを、私達は手に入れたわけですから……」
 善場「所有権は所長方ということになりますね。BSAAから返却され次第、そちらに引き渡しという形に致しますので、もう少々お待ちください」
 愛原「かしこまりました」

 私は電話を切った。

 愛原「もうすぐ金券は手に入るぞ!温泉旅行券とか、JTB旅行券とか!あと、デパートの商品券とかもあったな!」
 リサ「ブルマもだね」
 愛原「う、うん。そうだね。それはリサに上げる」
 リサ「あー……うん。ありがとう」

 旅行券や商品券の類については、まあ、景品と看做して良いだろう。
 しかし、いくら転売すれば高額商品になるとはいえ、ブルマ3色セットまで景品箱の中に入っていた理由については、謎のまま!

 ※作中の日付が1日ずれていたので、修正しました。
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