報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「月曜日からの仕事」

2023-12-21 20:35:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月6日10時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 

 月曜日になり、私は高橋を伴って、新橋のデイライトさんの所へ書類を持って行った。

 愛原「こちらが、栃木の件やそれに関連して発生した経費の請求書です。宜しく御精査願います」
 善場「かしこまりました。受領させて頂きます。精査の結果、決定した金額を例の口座に振り込ませて頂きます」
 愛原「ありがとうございます」

 それから、打ち合わせに入る。
 あれから栃木県警やBSAAの方で大規模な山狩りをしたものの、鬼化した栗原蓮華を見つけることはできなかったという。

 善場「ただ……所長方もテレビなどで聞き及んでおられるかとは思いますが、事件は発生してしまいました」
 愛原「はい。それは知っています」

 昨日の日曜日の深夜、群馬県の山奥にあるスキーペンションにおいて、侵入した何者かに宿泊客やスタッフらが食い殺される事件が起きた。
 ニュースでは冬眠できなかった熊が侵入して……ということになっていたが……。

 愛原「群馬県の山奥のペンションの事件ですね?」
 善場「はい。さすが、愛原所長です」

 愛原「事件の舞台となった奥日光からは、国道120号線で繋がっています。蓮華も元は人間ですから、いくら鬼化したとはいえ、あまり何も無い、ましてや雪深い山道を進むのは酷でしょう。人目に付かないようにしつつ、しかし国道からはそんなに離れずに進んだのだろうと予想できます」
 善場「素晴らしい推理です。何か、根拠がありましたか?」
 愛原「実はこれ、蓮華自身が言ってたことなんです」
 善場「と、仰いますと?」
 愛原「蓮華が鬼化するだいぶ前、1人で日本版リサ・トレヴァーを退治したことがありました。リサ・トレヴァーの一部は、西日本に潜伏していましたから」
 善場「そうですね」
 愛原「その時、蓮華が言ってたんですよ。さっきの私の言葉」
 善場「なるほど。鬼化した場合、人間だった頃の記憶は殆ど失われると言います。但し、よほどインパクトのある言葉や、体で覚えた習慣などは身に付いたままであるとも言いますね。今は鬼狩りの剣士としての記憶は失われているようですが、しかし体では覚えているはずなので、いずれはまた剣を握るようになるかもしれませんね。つまりは、自分が鬼狩りをしていた時の作戦が記憶に残っていて、自分もそうしていると」
 愛原「はい、そうです」
 善場「ペンションが襲われた時、そこにあった金品も盗まれていました。だから当初、群馬県警では、人間の強盗でも押し入ったのかと思ったそうですが、しかし……」
 愛原「蓮華が人間だった頃の習慣で、金品に興味を示し、持ち去った可能性もあるわけですね」
 善場「そういうことです」
 愛原「すると今、蓮華は群馬県にいると?」
 善場「可能性はあります。今週は捜索範囲を群馬県、果ては隣県の長野県や山梨県にも広げて行う予定です」
 愛原「本当に大事になりましたな」
 善場「ですので栗原家、そして、栗原家に『化学肥料』を渡した愛原公一氏の罪は重いのです」
 愛原「本当に伯父さん、犯人の1人なんですか?」
 善場「実はここだけの話、栗原家の関係者が一斉に逮捕される予定です。もう、逮捕状は取りましたので。今は任意での事情聴取ですが、それ以降はもっと強めに事情聴取ができると思います。その時、愛原公一氏の名前が出て来るでしょう。デイライトとしては、その前に証拠を掴んでおきたいのです。今、鍵の方はどうなってますか?」
 愛原「今のところ、リサと我那覇絵恋がやり取りをしている最中です。絵恋はリサに情報を渡す見返りに、物品を要求してまして、それが届くかどうか……」

 その時、私のスマホにメール着信があった。

 愛原「ちょっとすいません」

 私はメールを確認した。
 それは日本郵便からのメールだった。
 どうやら無事に、リサのレターパックが我那覇家に届いたらしい。
 向こうに配達がされると、そのお知らせメールが届くサービスに登録したのだ。

 愛原「リサが送った情報料が、無事に絵恋の元に届いたようです。これを持って、絵恋がリサに情報を渡す手筈になっています。それがどのような形なのかは、まだ不明ですが……」
 善場「なるべく急いで頂きたいものですね」
 愛原「もちろん私も、リサにはそのように言っておきました。今、リサは学校で、絵恋もそうでしょうから、少しお待ちください」
 善場「かしこまりました。絵恋は沖縄の沖縄中央学園那覇高校に通っているのでしたね?」
 愛原「そうです。東京中央学園と違って、モノレールの沿線から離れているということもあり、スクールバスで通ってるのだとか」
 善場「なるほど。そうですか」

 そして、『魔王軍沖縄支部』を結成し、リサの力添えを得て、沖縄中央学園でもブルマが細々とではあるが、復活した。

 善場「何か動きがありましたら、また教えてください」
 愛原「承知しました。それと、1つ気になっていることがありまして……」
 善場「何でしょうか?」
 愛原「栗原蓮華の妹、栗原愛理のことです。今、東京中央学園中等部の3年生だと思いますが……。姉が鬼化してしまったので、さぞかしショックだろうと思います」
 善場「! なるほど。それはすっかり忘れておりました。すぐに保護するよう、警察に伝えておきます」
 愛原「主任?」
 善場「幸いリサは一人っ子ですし、遠い親戚の上野利恵氏も鬼化しているので、あまり警戒の必要は無かったのですが……。血の繋がった兄弟ほど、血肉が美味い人間はいないと、それまで人食いをしたことのあるBOWは言うそうです」
 愛原「ええっ!?」
 善場「今のところは栗原蓮華も都内には戻れないわけですし、人間だった頃の記憶が曖昧化していると思いますが、警戒するに越したことはないでしょう。万が一仮に鉢合わせした場合、蓮華は間違いなく愛理さんを食らおうとするでしょう。そして、身内の血肉を食らった鬼は間違いなく強化します。恐らく、リサよりも強くなるはずです。それだけは何とか避けないといけません」
 高橋「余計に化け物なるだけなんじゃねーの?」
 善場「そうかもしれません。Gウィルスはともかく、特異菌については、まだまだ研究段階で分からないことが多々あるのです。所長方も、十分にお気をつけください」
 愛原「承知しました」

 私達は一旦ここで解散となった。
 あとは午後、リサが学校から帰宅した時、絵恋がどういう動きをするのが教えてもらわなくてはならない。

 ※作中の日付が1日ずれていましたので、修正しました。
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“私立探偵 愛原学” 「土曜日の仕事」 4

2023-12-21 16:26:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月4日14時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング→2階事務所]

 少し歩いた所にある100円ローソンで買い物した後、私達は帰宅した。

 パール「お帰りなさいませ」

 と、出迎える所は、さすがは斉藤家のメイドである。

 愛原「買い物して来たぞ」
 パール「ありがとうございます。明日はマサとは違う卵料理を提供させて頂きます」
 愛原「それは助かるよ。今朝はベーコンエッグだったから、それとは違う目玉焼き料理をお願いしたいね」
 パール「かしこまりました」
 リサ「わたしはスクランブルエッグがいい」
 パール「スクランブルエッグですか?かしこまりました」

 食品関係はパールに渡す。
 それ以外の雑貨等については……。

 リサ「じゃあ、早速準備するね」

 リサはレジ袋から、レターパックを取り出した。

 

 対面での受け渡し後、受領印の必要なレターパックプラスである。
 これなら、我那覇絵恋に確実に届いたかどうかが分かる。
 リサはスカートの中に手を入れて、ブルマを脱ごうとした。

 愛原「先に連絡先を書いてからにした方がいいんじゃないのか?」
 リサ「それもそうだね」
 愛原「住所は分かるのか?」
 リサ「もちろん。年賀状も貰ったし」
 愛原「それもそうか」
 リサ「えーと……ペンは……」
 愛原「ほら」

 私はスーツのポケットから、ボールペンを渡した。
 リサはそれを受け取ると、ダイニングテーブルの上で、レターパックにペンを走らせた。

 高橋「先生。この後はどうされますか?」
 愛原「ちょっと下の事務所で仕事してる。明後日の月曜日、デイライトさんに提出する諸経費の請求書、作成しないとな」
 高橋「俺も手伝います」
 愛原「ありがとう。まあ、夕方までには終わるだろう。パール、夕食、高橋が手伝わなくても大丈夫かな?」
 パール「ええ、大丈夫ですよ」
 高橋「終わったら行くよ」
 パール「よろしく」
 リサ「先生、品名は『ブルマ』でいい?」
 愛原「いや、そこは『衣類』でボカしとけよ」
 リサ「分かった。……うーん……」

 リサは少し考えた。

 リサ「ついでに手紙書いてもいいかな?」
 愛原「いいんじゃない」

 かつて、レターパックがエクスパックであった頃、信書の同封は禁止されていた。
 これは、エクスパックがゆうパックと同様の『荷物』という扱いだったからである。
 もちろん、納品書や送り状などを添え状として同封するのはOKである。
 手紙がダメだったということだ。
 それがレターパックと変わった今、『郵便物』となった為、信書の同封が解禁された。

 リサ「便箋ある?」
 愛原「事務所にあるな。一緒に来るか?」
 リサ「行くー」
 高橋「お供します!」
 愛原「そんな、大げさな……」

 私達は階段を使って、3階から2階へと下りた。

 愛原「事務所も寒いな」
 高橋「すぐに暖房入れます」

 高橋は暖房の電源を入れた。
 私は事務所内のレターケースに入れていた新しい便箋をリサに渡した。

 愛原「これでいいか?」
 リサ「ありがとう!」

 リサは便箋を受け取ると、近くの机に座って手紙を書き始めた。

 高橋「コーヒー飲みますか?」
 愛原「そうだな。頼むよ」
 高橋「了解っス」

 高橋は給湯室に行った。

 高橋「リサも色々書くの好きっスね」
 愛原「オリジナルのリサ・トレヴァーもまた、よく日記を書いていたというからな。その遺伝子かもしれん」

 ネスカフェバリスタでコーヒーを入れてきた高橋。
 すぐにコーヒーが入るので、急な来客の時にでもすぐ出せるのが良い。
 但し、これを設置しているのは事務所のみ。
 上のダイニングは、普通のコーヒーメーカーである。
 上では急いでコーヒーを入れる必要が無い為。

 高橋「なるほど」
 リサ「よし、できた」

 リサはドヤ顔で手紙を見せた。

 愛原「怖い怖い!」

 そこには、リサがタイラントやゾンビを引き連れて勝どきをでも上げているイラストが描かれていた。
 タッチが不気味なんだが。

 リサ「画家の南原先生のマネしてみた」
 愛原「あの、劇画ホラー画家の南原氏ね……」

 以前、リサが絵のモデルを頼まれていたことがあった。

 愛原「こんな送っていいのかよ……」
 リサ「エレンなら喜ぶと思う」
 高橋「……だな」
 リサ「んしょっ!」

 リサはスカートの中に入れると、紺色のブルマを脱いだ。

 

 リサ「これを送ればOK!」
 愛原「そうだな」

 直に入れるのではなく、ビニール袋に入れて、それからレターパックに手紙と一緒に同封した。

 愛原「なるべく急いで教えてくれって書いといたか?」
 リサ「もちろん。先生の為に急げと。少しでも遅れたら絶交って書いといた」
 高橋「リサにゾッコンのレズガキからしてみたら、リサからの絶交宣言は死刑宣告も同じですぜ!ヒャッハッ!」
 愛原「何を面白がってんだw それより、早いとこポストに投函しないと。土曜日なら、夕方も集配しているはずだが……」
 高橋「おっ、そうっスね」
 愛原「この控えのシールを剥がして、ポストに入れるんだ」
 リサ「おっ、そうか!……ポストって、駅前にある?」
 愛原「そうだな……。高橋、リサに付いて行ってやれ」
 高橋「俺っスか?」
 愛原「あれだ。新大橋通りの住吉寄りに行くと、菊川郵便局あるだろ?」
 高橋「ありますね」
 愛原「多分、そこがここから1番近いポストだ。あそこなら、夕方でも回収やってると思う」
 高橋「了解です」
 リサ「わたし1人でも行けるよ?」
 愛原「ちょっとな……。また拉致でもされたら困る。俺は事務作業しないといけないし、パールは夕食の用意がある。高橋ならケンカも強いから、まあ、何とかなるだろう」
 高橋「任せてください!ハイエースの1台、2台くらい、俺がスクラップにしてやりますよ!」

 まあ、栗原家はもうやって来ないと思うがな。
 高橋とリサは、事務所を出て行った。

 愛原「ていうかあのレターパック、今日出して、沖縄にいつ着くんだ?」

 私は机のPCに向かうと、それで郵便局のサイトにアクセスした。
 それで『お届け日数』を確認すると、レターパックなら、東京から沖縄でも1日~2日で届くという。
 さすがは、速達郵便と同じラインで配達される郵便物である。

 愛原「なるべく急いでと言ったが、エレンのヤツ、どうやって教えてくれるんだろう?」

 普通にリサのブルマが届き次第、リサにLINEで教えるのだろうが……。
 それとも、リサがブルマを送ったのと同様、エレンもリサに何か送るのだろうか?
 リサが帰ってきたら確認してみよう。
 私はそう考えると、事務作業を始めた。
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