報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「土曜日の仕事」 3

2023-12-19 20:31:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月4日12時30分 天候:晴 東京都港区新橋 都営バス新橋停留所→業10系統車内]

 昼食のラーメンを食べ終わった私達は、菊川の事務所兼自宅に帰ることにした。
 帰りはバス。
 もうやることは無いので、乗り換え無しでゆっくり帰っても構わない為。
 何より、電車より安い。
 寒風の中、バスを待っていると、パールからLINEがあった。
 残念ながらメイド仲間でも、家のエレベーターの事については分からないそうである。

 高橋「チッ、使えねーメイド達だなー」
 愛原「まあ、そう言うな。もしかしたら、運転手の新庄さんなら知ってるかもしれないな。ほら、斉藤元社長のお抱え運転手」

 新庄さんも、斉藤家で住み込みのお抱え運転手をしていた。
 また、運転業務が無い時は執事のような役割もしていたから、もしかしたら、斉藤家の機械関係なんかにも携わっていたかもしれない。

 高橋「ああ。……で、連絡先は?」
 愛原「……し、知らん」

 私はリサを見た。

 リサ「エレンしか知らないよー」

 リサも慌てて否定した。

 愛原「高橋、もう1度パールに聞いてみろ。もしかしたら、同じ使用人繫がりで、連絡網とかあるかもしれん」
 高橋「分かりました。聞いてみます」

 高橋は再びスマホで、パールにLINEを送った。
 そうしているうちに、バスがやってくる。
 新橋バス停が始発だから、ガラガラの空車状態でやってくる。

 愛原「大人3人で」
 運転手「はい。……どうぞ」
 愛原「ども」

 高橋とリサのバス代も払ってやる。
 どうせ、後でデイライトに諸経費の一部として請求するから構わない。
 バスに乗り込むと、1番後ろの席に3人並んで座った。
 本数の多い路線なだけに利用者も多く、見る見るうちに席が埋まって行く。
 この業10系統は、元は都電のバス代替路線だったのだそうだ。
 別に赤字だから廃止になったのではなく、ただ単に自動車交通の妨げになる上、併用軌道しか無いので、そのままバスに転換できるからだそうである。
 すると、この停留所も元は電停だったのだろうか?

〔「12時30分発、とうきょうスカイツリー駅前行き、発車致します」〕

 時間になり、バスはグライドスライドドアの前扉を閉めて走り出した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは銀座四丁目、勝鬨橋南詰、豊洲駅前経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。途中お降りの際は、お近くのボタンを押して、お知らせ願います。次は銀座西六丁目、銀座西六丁目でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は、本所吾妻橋で。日蓮正宗常泉寺と本行寺へおいでの方は、終点、とうきょうスカイツリー駅前でお降りになると便利です。次は、銀座西六丁目でございます〕

 愛原「あ……」

 その時、私はふと思い出した。

 高橋「どうしました?」

 愛原「そういえばこのバスに乗って帰る時、途中、銀座のどこからか、栗原姉妹が乗ってきたんだよ。仲の良い姉妹でさ。姉が鬼化したなんて知ったら、妹は悲しむだろうなって思ってさ」
 リサ「そんなの知らないよ。わたしがアイリを食い殺して……あっ!」
 愛原「今度は何だ?」
 リサ「わたし今、アイリを食い殺せばいいって思ったんだけど……。もしかしてそれ、あのセンパイもそう思ってたりして」
 愛原「……なるほど。帰ったらちょっと善場主任に相談してみよう」
 高橋「あと、今しがたパールからLINEが来ました」
 愛原「何だって?」
 高橋「パールはもちろん、メイドの誰一人、あの運転手の爺さんの連絡先は知らねぇそうです」
 愛原「マジか……」
 高橋「使えねーメイド達っスね」
 リサ「わたしがエレンに聞いてみようか?もしかしたら、エレンなら知ってるかもしれない」
 愛原「そ、そうだな。頼むぞ」
 リサ「うん、分かった」

 リサは自分のスマホを取り出した。
 それで今度は、我那覇絵恋にLINEを送ってみる。

 リサ「おー、すぐに返って来た」
 愛原「愛しのリサ様のLINEとあらばってか?で、何だって?」
 リサ「知ってるけど、条件があるんだって」
 愛原「条件?何だ?情報料寄こせってか?」
 リサ「うん、そう」
 高橋「金持ちの御嬢様が、随分とセコいな」
 愛原「今は違うからね。斉藤元社長も国外逃亡しちゃって、絵恋と母親も半ば逃げるように沖縄さ」

 絵恋の母親の実家が、沖縄県那覇市にあるという。
 離婚もしたので、それで絵恋も名字が変わったのである。
 幸い絵恋の母親の実家も、アパートやマンションの経営をしているということもあり、斉藤家ほどではないものの、比較的裕福な方ではあるという。
 いわゆる、『実家が太い』というヤツだな。
 2人はそんな実家が経営する、いくつかの物件の1つに住んでいるという。
 実家に転がり込まない理由は不明だが、恐らく何か事情があるのだろう。
 もちろん、赤の他人が立ち入って良い事ではない。

 リサ「わたしが今穿いてるブルマが欲しいんだって。そのまんま脱ぎたてのを、パウチして送って欲しいらしい」
 高橋「変態レズガキめ」
 愛原「そ、それで新庄さんの連絡先を教えてもらえるんだな?」
 リサ「うん。何なら、エレベーターの鍵が欲しいということも伝えてくれるって」
 愛原「それはお願いした方がいいな。後で、『旦那様方の許可無しに、鍵はお渡しできません』なんて言われる恐れがある」
 リサ「うん。エレンから言ってもらうようにすればいいね」
 愛原「で、どうするんだ?」
 リサ「先生の命令に従うよ」
 愛原「バスを降りるまで、考えさせてくれ」

 私は少し引っ張ることにした。
 そんなブルセラなことしなくても、他に方法があるかもしれない。

[同日13時32分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営バス菊川駅前バス停]

 新橋から凡そ1時間掛けて、菊川まで帰ってきた。
 乗り換え無しではあるが、やはり所要時間は乗り換えありの地下鉄に軍配が上がる。
 バスを降りてから、私はリサに言った。

 愛原「すまないが、リサのブルマ、使わせてくれないか?」
 リサ「うん、分かった。先生の命令なら何でも聞く」
 愛原「今、どんなブルマ穿いてるんだ?」
 リサ「紺色。ちょうど、学校で新しい紺色ブルマも買ったしね。少しサイズも小さくなってきたから、ちょうど良かったかも」

 リサは黒いスカートの下に、紺色のブルマを穿いているそうだ。
 捲って見せようとしてきたが、さすがに人通りの多い外はダメだ。
 私は慌てて制した。

 愛原「レターパックなら、速達も兼ねているので、早めに届くだろう。少し歩くが、このまま100円ローソンまで行くぞ」
 リサ「分かった」
 高橋「先生、ついでに明日の朝飯の材料、買ってくるように頼まれました」
 愛原「ちょうどいい。100円ローソンで見繕って来るぞ」

 夕食の材料はあるようだな。
 あー……冷凍庫とか見たら、確かに肉とか魚とかは入っていたな……。
コメント
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