報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「再び埼玉へ」 2

2022-12-06 09:32:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月29日12:34.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔♪♪♪♪。「まもなく大宮、大宮です。お出口は、左側です。大宮から東北、上越、北陸新幹線、宇都宮線、高崎線普通列車、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。大宮の次は、熊谷に止まります。通過駅へお越しのお客様は……」〕

 今時珍しい、自動放送無しの特急列車である。

 愛原:「ここで乗り換えだ」
 リサ:「ん」

 電車が減速し、高崎線下り本線ホームに入線する。
 これが夕方の“スワローあかぎ”だと、副線の7番線に入線するが、昼間の“草津”は本線に入るようだ。

 愛原:「ゴミは捨てておこう」

 駅弁の空き箱などは、デッキのゴミ箱に捨てておく。
 そして電車が停車し、ドアチャイムは無く、ドアエンジンの『プシュー』という音でドアが開いた。

〔「大宮、大宮です。ご乗車ありがとうございます。8番線の電車は、特急“草津”3号、長野原草津口行きです。次は、熊谷に止まります」〕

 私達は冷房の利いた車内から、うだるような暑さのホームへと降りた。

 愛原:「今日も暑いな」
 リサ:「そうだね」
 愛原:「オマエ、暑いの平気か?」
 リサ:「うん。暑いのも寒いのも平気」
 愛原:「さすがはBOWだ」
 リサ:「ん。わたしはただの鬼じゃない」
 愛原:「そうだな。昼間の太陽の下でも、ガンガン活動できる鬼だ」

 エスカレーターを昇って、多くの利用客で賑わうコンコースに上がる。
 それから改札口を出て、東口に向かった。

[同日12:48.天候:晴 同区内 大宮駅東口バス停→国際興業バス大11系統車内]

 大宮駅東口を発着する国際興業バスは、基本的に駅前ロータリーの外側、大宮中央通り沿いから発車している。
 しかし、私達がこれから乗る大11系統だけはロータリー内から発車する。
 これは病院へのアクセスの為らしい。
 やってきたバスは、都営バスでも見られるごく普通の大型ノンステップバス。
 但し、埼玉では後ろのドアから乗る。
 乗り込んだ後で、後ろの2人席に座った。
 エンジンが掛かると、クーラーの吹き出し口から、強い風が吹いてきた。

 リサ:「涼し~」
 愛原:「暑いの、平気じゃなかったのか?」
 リサ:「涼しい方がいいに決まってるよ」
 愛原:「はは、そうか」

 そして、ドアチャイムと共に、引き戸式の中扉が閉まる。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕
〔「発車します。ご注意ください」〕

 バスは途中のタクシー乗り場を発着するタクシーを交わしながら、ロータリー内を進んだ。

〔♪♪♪♪。毎度、国際興業バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは、自治医大医療センター行きです。途中お降りのお客様は、お近くのブザーでお知らせ願います。次は大宮大門町、大宮大門町でございます〕

 愛原:「大学病院に連れて行かれたということは、高橋の奴、色々と調べられてるな」
 リサ:「そうなの?」
 愛原:「大学病院という所は、研究施設でもあるからね」
 リサ:「う……研究……」
 愛原:「俺達が行けるのは、病院の部分だけであって、研究施設のような所には行かないよ」
 リサ:「そうなんだ。このまま、わたしも研究施設に……なんてことはないよね?」
 愛原:「ないない。そういうことが目的なら、電車やバスでのんびり行かせるわけないだろ。それに、リサより先に善場主任がそうなってるさ。何せ、善場主任は昨夜からいるんだからね」
 リサ:「それもそうか」

 表向きは人間に戻れたことになっている善場主任だが、脅威的な回復力や身体能力は残っている。
 それが為、今でも観察や監視対象となっているのだとか。

[同日13:00.天候:晴 さいたま市大宮区天沼町 自治医科大学附属さいたま医療センター]

 大宮駅から殆ど一本道のような感じへ東へ進むと、高橋の入院している病院が見えて来た。
 他の行き先のバスは、1つ手前の『自治医大医療センター入口』で降りなければならないが、大11系統だと正面ロータリーまで乗り入れてくれる。
 実際、バスはロータリー入ってすぐの所にあるバス停に停車した。

 愛原:「なるほど。ここか」

 バスを降りる時……。

 愛原:「大人2人で」
 運転手:「はい、大人2人ですね。どうぞ」

 リサの分の運賃も払っておいた。

 リサ:「いいの?ありがとう」
 愛原:「連れて行ったのは俺だからな」

 病院の正面エントランスに入ると、消毒と検温がある。
 ……しまった!リサは元々体温が高いんだった!
 大丈夫かな……。

 係員:「36度ちょうどですね。どうぞ」

 私は普通の平熱だったが……。

 係員:「36度9分ですね。どうぞ」

 何とか大丈夫だった。

 善場:「愛原所長、お疲れ様です」

 ロビーには善場主任が待っていた。

 愛原:「主任、お疲れさまです」
 善場:「高橋助手の病状について、お知らせ致しますので、向こうで……」

 善場主任に促され、私達は1階にあるレストランへ入った。

 リサ:「食後のデザート~」

 リサはそこでオレンジジュースとケーキを注文した。
 私と主任はアイスコーヒー。

 愛原:「少しは遠慮しろよ」
 善場:「構いませんよ。昨夜にあっては、リサも協力者ですから」
 愛原:「は、はあ……。それで、高橋の方は……?」
 善場:「かなり衰弱しておりまして、まだ意識が戻っていない状態です。今のところ、ICU(集中治療室)にて治療中です。あの時、中から応答できたのが奇跡的なほどだそうで……」

 もう殆ど精神力だけで、最後の力を振り絞ったのかもしれない。

 愛原:「命の心配は無いのですね?」
 善場:「それは大丈夫です。取りあえず、意識だけ回復すれば、あとは……歳も若いですから」
 愛原:「なるほど。……パールの方はどうなんでしょう?」
 善場:「警察が取り調べをしていますが、あそこにいたメイド全員で高橋助手の監禁をしていたようです。パールは、はぐらかすばかりで、ロクに聴取に応じないとのことです」
 愛原:「とんでもない奴だ。他のメイドは?」
 善場:「互いに責任を擦り付け合っている状態ですね」

 女の友情の脆さよ!

 愛原:「斉藤元社長の指示とかはないのでしょうか?」
 善場:「私もそうだと思いますし、警察もそのように疑っているようです。しかし、メイド達は口を割りません」

 互いに責任を擦りつけ合うのだから、そのうち誰かが口を割ると信じよう。

 愛原:「八丈島の時のあいつの動きも、かなり怪しかったからなぁ……。あの時だったのか……」
 善場:「そういえば、あの時もメイド達の動きが怪しかったですね」
 愛原:「確かに……」

 特に、パールだ。
 多分、パールが主犯だろうな。

 愛原:「主任はこれからも、高橋の監視を?」
 善場:「いえ、さすがに引き継ぎます」
 愛原:「ですよね」

 たまに、リサよりも中身化け物的な部分を見せることがある善場主任だが、さすがに昨晩からの監視はキツいようである。

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