[2月14日15:00.天候:雪 長野県北安曇郡白馬村 白馬八方バスターミナル]
係員:「それでは稲生様、来月の3月12日、こちらのバスターミナルより、10時40分発の便で羽田空港国際線ターミナルまで、大人3名様ですね」
稲生:「はい」
係員:「それでは大人3名様の運賃で……」
稲生はマリアの屋敷を出て、お使いに出ていた。
村の中心部にあるバスターミナル(観光案内所も兼ねている)に行き、そこでどうやら高速バスの乗車券を購入しているもようである。
稲生は財布の中から諭吉先生を取り出した。
お使いなので稲生のポケットマネーではなく、予め支給されたものであろう。
係員:「ありがとうございました」
稲生:「お世話さまでした」
バスターミナル内はスキーシーズンではあっても、平日真っ只中とあっては、週末や連休の賑わいはナリを潜めていた。
稲生:「ホテルの予約は完了したから、これでミッション終了か」
ダニエラ:「マリアンナ様の御所望の品は、こちらで確保致しました」
稲生:「ご苦労様。じゃあ、帰るとするか」
ダニエラはマリアの製作したメイド人形の1つで、何故か今は稲生専属メイド人形になっている。
マリアが命令したわけでもないのに、だ。
これは人形も感情を持つようになり、マリアの忖度を受けて自主的に稲生に付いたと思われるが……。
稲生:「僕の魔力を使うと、どうしても日本のタクシーみたいになっちゃうんだよなぁ……」
もちろん山奥の屋敷から村の中心部まで、徒歩で行けるはずがない。
車や専属の運転手は魔法で作り出したもの。
イリーナみたいな大魔道師(グランドマスター)なら高級車を1発で出すことができるが、マリアならロンドンタクシー、稲生だと日本の普通のタクシーが出て来る。
因みに少し頑張ってみたら最新年式のものを出すことができたが、それでも出て来たのはトヨタ・ジャパンタクシーという……。
村で目立つ高級外車より、タクシーの方が目立たなくて良いのだが。
稲生:「それでは屋敷に戻ってください」
運転手:「かしこまりました」
小雪が舞う中、車がハイブリットエンジンの音を立てながら走り出した。
傍目から見れば、待たせていたタクシーに乗り込む(見た目は)普通の青年とメイドさん……。
稲生:「メイド服が目立ってますよ!?」
ダニエラ:「? ですが、これが私達の制服でして……」
稲生:「いや、そりゃそうだけど!」
因みにダニエラが買い込んだのは、マリアの生理用品とかストッキングとか、要は稲生が思いっきり買いにくいものである。
稲生:「食料はいいの?」
ダニエラ:「はい。メイド長(ミカエラ)自ら既に買われたので」
稲生:「そうかい」
尚、基本的に稲生は1人で屋敷の外には出してもらえない。
真面目な性格の稲生にあっては有名無実化したものであるが、実はダンテ一門内には、師匠の弟子に対する取扱規定がある。
単なる指導要領が殆どで、しかも基本的には師匠の裁量に任せている部分が多い為、本当にただの要領だったりする。
問題なのは弟子を入門させた後、殆どの場合は師匠の家に住み込ませることになる。
当然ながらそれについても定められており、その中に、弟子を逃亡させてはならない旨の記載がある。
つまり、厳しい修行にギブアップして弟子が逃げ出すのを防止せよということだ。
イリーナ組の修行はそもそも門内一緩やかなものであり、そういう要素は全く無い。
それでも規定されている以上はイリーナも無視できず、一応の対策をしている感は出しておかなければならない。
そこで稲生には口頭で『勝手に1人で屋敷の外に出ないこと』『出る場合は必ず監視役を付けること』を申し付けた。
前者においては当初、屋内のみという狭い意味を課していたが、今では敷地内という広い意味に変更している。
敷地から出ない分には、屋外に1人で勝手に出ても構わないということだな(もっとも、魔道師が建てた屋敷である為、そもそも敷地の境界が曖昧だったりする)。
後者にあってはダニエラが自主的に手を挙げたので、それに任せている。
尚、イリーナやマリアが一緒である場合は該当しない。
但し、エレーナなどの組違いの者は非該当である。
そのような規定がある為、稲生は例え使い走りを頼まれても、まだ見習弟子の立場の為にダニエラが付いているというわけである。
ん?そのような面倒なことをしなくても、大魔道師であれば常に魔法で監視できるのではないかって?
それが出来たら、とある大魔法使いは弟子のミッキーマウスに申し付けた水汲みを最初から真面目にやらせていると思う。
[同日15:30.天候:雪 同村郊外 マリアの屋敷]
車は雪煙を上げながら、屋敷の正面玄関に停車した。
稲生:「こんな雪深い所でも、上手く走れるもんだね」
ダニエラ:「普通の自動車では、ここまで来ることはできません」
稲生:「それもそうか」
稲生は車を降りると、早速屋敷の中に入った。
ダニエラ:「それでは私は夕食の支度がございますので」
稲生:「ああ。これはマリアさんに渡してくる」
稲生はダニエラが買った物が入っているビニール袋を手にすると、マリアの部屋に向かった。
これがゲーム画面なら、画面左上に次にやることとして『マリアの部屋に向かう』と表示されていることだろう。
特に稲生がエンカウントするような敵もいないので、BGMは流れていないか、或いは静かなものが流れていると思われる。
ショパンの“幻想即興曲”なんかどうだろう。
え?とあるホラーゲームのBGMだって?これは失礼。
侵入者にとってはホラーチックな屋敷ではあるものの、関係者たる稲生が主人公とあっては、そのような雰囲気のBGMは似つかわしくない。
いや、曲自体は別にホラーではないのだから“幻想即興曲”でいいだろう。
“ハイケンスのセレナーデ”は軽快過ぎるぞ。
稲生:「マリアさん、ただいま帰りました」
部屋をノックする。
マリア:「いいよ、入って」
稲生:「失礼します」
稲生が中に入ると、マリアが新たな人形を作っているところだった。
フランス人形を作っているかのように見える。
稲生:「これが頼まれてたマリアさんの品です。ダニエラさんが代わりに購入してくれたので……」
マリア:「ああ、うん。ありがとう」
マリアはそれを受け取ると、自分の脇に置いた。
稲生:「あとは来月出発のバスの乗車券です。ホテルはもうネットで予約してありますので」
マリア:「分かった。後で師匠に伝えておく」
稲生:「お願いします。……今年は日本で行われるんですね」
マリア:「そういうことだな」
表向きには一期生達の年度末納会ということになっている。
参加対象者は一期生限定、つまり創始者ダンテの直弟子達のことだ。
イリーナやポーリン、アナスタシアやマルファなどがそれに当たる。
不定期に世界のどこかで、そういう盛大なパーティーが行われるらしい。
で、今回は日本とのこと。
ダンテがイギリスから商業便で羽田空港入りするので、国内拠点のイリーナ組としては真っ先に出迎えに行かなければならないということだ。
当然、マリアは二期生、稲生は三期生として付いて行くというわけである。
係員:「それでは稲生様、来月の3月12日、こちらのバスターミナルより、10時40分発の便で羽田空港国際線ターミナルまで、大人3名様ですね」
稲生:「はい」
係員:「それでは大人3名様の運賃で……」
稲生はマリアの屋敷を出て、お使いに出ていた。
村の中心部にあるバスターミナル(観光案内所も兼ねている)に行き、そこでどうやら高速バスの乗車券を購入しているもようである。
稲生は財布の中から諭吉先生を取り出した。
お使いなので稲生のポケットマネーではなく、予め支給されたものであろう。
係員:「ありがとうございました」
稲生:「お世話さまでした」
バスターミナル内はスキーシーズンではあっても、平日真っ只中とあっては、週末や連休の賑わいはナリを潜めていた。
稲生:「ホテルの予約は完了したから、これでミッション終了か」
ダニエラ:「マリアンナ様の御所望の品は、こちらで確保致しました」
稲生:「ご苦労様。じゃあ、帰るとするか」
ダニエラはマリアの製作したメイド人形の1つで、何故か今は稲生専属メイド人形になっている。
マリアが命令したわけでもないのに、だ。
これは人形も感情を持つようになり、マリアの忖度を受けて自主的に稲生に付いたと思われるが……。
稲生:「僕の魔力を使うと、どうしても日本のタクシーみたいになっちゃうんだよなぁ……」
もちろん山奥の屋敷から村の中心部まで、徒歩で行けるはずがない。
車や専属の運転手は魔法で作り出したもの。
イリーナみたいな大魔道師(グランドマスター)なら高級車を1発で出すことができるが、マリアならロンドンタクシー、稲生だと日本の普通のタクシーが出て来る。
因みに少し頑張ってみたら最新年式のものを出すことができたが、それでも出て来たのはトヨタ・ジャパンタクシーという……。
村で目立つ高級外車より、タクシーの方が目立たなくて良いのだが。
稲生:「それでは屋敷に戻ってください」
運転手:「かしこまりました」
小雪が舞う中、車がハイブリットエンジンの音を立てながら走り出した。
傍目から見れば、待たせていたタクシーに乗り込む(見た目は)普通の青年とメイドさん……。
稲生:「メイド服が目立ってますよ!?」
ダニエラ:「? ですが、これが私達の制服でして……」
稲生:「いや、そりゃそうだけど!」
因みにダニエラが買い込んだのは、マリアの生理用品とかストッキングとか、要は稲生が思いっきり買いにくいものである。
稲生:「食料はいいの?」
ダニエラ:「はい。メイド長(ミカエラ)自ら既に買われたので」
稲生:「そうかい」
尚、基本的に稲生は1人で屋敷の外には出してもらえない。
真面目な性格の稲生にあっては有名無実化したものであるが、実はダンテ一門内には、師匠の弟子に対する取扱規定がある。
単なる指導要領が殆どで、しかも基本的には師匠の裁量に任せている部分が多い為、本当にただの要領だったりする。
問題なのは弟子を入門させた後、殆どの場合は師匠の家に住み込ませることになる。
当然ながらそれについても定められており、その中に、弟子を逃亡させてはならない旨の記載がある。
つまり、厳しい修行にギブアップして弟子が逃げ出すのを防止せよということだ。
イリーナ組の修行はそもそも門内一緩やかなものであり、そういう要素は全く無い。
それでも規定されている以上はイリーナも無視できず、一応の対策をしている感は出しておかなければならない。
そこで稲生には口頭で『勝手に1人で屋敷の外に出ないこと』『出る場合は必ず監視役を付けること』を申し付けた。
前者においては当初、屋内のみという狭い意味を課していたが、今では敷地内という広い意味に変更している。
敷地から出ない分には、屋外に1人で勝手に出ても構わないということだな(もっとも、魔道師が建てた屋敷である為、そもそも敷地の境界が曖昧だったりする)。
後者にあってはダニエラが自主的に手を挙げたので、それに任せている。
尚、イリーナやマリアが一緒である場合は該当しない。
但し、エレーナなどの組違いの者は非該当である。
そのような規定がある為、稲生は例え使い走りを頼まれても、まだ見習弟子の立場の為にダニエラが付いているというわけである。
ん?そのような面倒なことをしなくても、大魔道師であれば常に魔法で監視できるのではないかって?
それが出来たら、とある大魔法使いは弟子のミッキーマウスに申し付けた水汲みを最初から真面目にやらせていると思う。
[同日15:30.天候:雪 同村郊外 マリアの屋敷]
車は雪煙を上げながら、屋敷の正面玄関に停車した。
稲生:「こんな雪深い所でも、上手く走れるもんだね」
ダニエラ:「普通の自動車では、ここまで来ることはできません」
稲生:「それもそうか」
稲生は車を降りると、早速屋敷の中に入った。
ダニエラ:「それでは私は夕食の支度がございますので」
稲生:「ああ。これはマリアさんに渡してくる」
稲生はダニエラが買った物が入っているビニール袋を手にすると、マリアの部屋に向かった。
これがゲーム画面なら、画面左上に次にやることとして『マリアの部屋に向かう』と表示されていることだろう。
特に稲生がエンカウントするような敵もいないので、BGMは流れていないか、或いは静かなものが流れていると思われる。
ショパンの“幻想即興曲”なんかどうだろう。
え?とあるホラーゲームのBGMだって?これは失礼。
侵入者にとってはホラーチックな屋敷ではあるものの、関係者たる稲生が主人公とあっては、そのような雰囲気のBGMは似つかわしくない。
いや、曲自体は別にホラーではないのだから“幻想即興曲”でいいだろう。
“ハイケンスのセレナーデ”は軽快過ぎるぞ。
稲生:「マリアさん、ただいま帰りました」
部屋をノックする。
マリア:「いいよ、入って」
稲生:「失礼します」
稲生が中に入ると、マリアが新たな人形を作っているところだった。
フランス人形を作っているかのように見える。
稲生:「これが頼まれてたマリアさんの品です。ダニエラさんが代わりに購入してくれたので……」
マリア:「ああ、うん。ありがとう」
マリアはそれを受け取ると、自分の脇に置いた。
稲生:「あとは来月出発のバスの乗車券です。ホテルはもうネットで予約してありますので」
マリア:「分かった。後で師匠に伝えておく」
稲生:「お願いします。……今年は日本で行われるんですね」
マリア:「そういうことだな」
表向きには一期生達の年度末納会ということになっている。
参加対象者は一期生限定、つまり創始者ダンテの直弟子達のことだ。
イリーナやポーリン、アナスタシアやマルファなどがそれに当たる。
不定期に世界のどこかで、そういう盛大なパーティーが行われるらしい。
で、今回は日本とのこと。
ダンテがイギリスから商業便で羽田空港入りするので、国内拠点のイリーナ組としては真っ先に出迎えに行かなければならないということだ。
当然、マリアは二期生、稲生は三期生として付いて行くというわけである。
それのオープニングが終わり、主人公が自分の家(全寮制のハイスクールに入学できるだけあって、富裕層の屋敷である)を探索した後、第2次世界大戦中のロンドンに迷い込んでしまい、そこで流れるBGMであります(家の中でも流れるシーンがある)。
マリアのモデルは“東方Project”のアリス・マーガトロイドでありますが、“クロックタワー3”の主人公アリッサも含まれています(それを全面的に出したのが、『対魔の者戦 北海道編』)。
クラシックは著作権切れが多いので、気軽にBGMに使えるというメリットが多いようです。