報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「一夜明けたペンション『いたち草』」

2025-02-03 15:18:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日07時00分 天候:晴 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』301号室]

 

 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。
 電波は入らないものの、それ以外の機能なら使える。
 私は手を伸ばしてアラームを止めた。
 隣のベッドではリサが寝ている。
 麻酔がよく効いているらしく、夜中に起き出すことは無かった。
 私は起き上がると、バスルームに向かった。
 最初に入室した205号室にはトイレと洗面所しか無かったが、それより豪華な301号室はバスルームがある。
 温泉に入ろうかとも思ったが、リサを1人にしておくのはどうかと思い、それは諦めた。
 ただ昨夜、執事が貸切風呂を解放してくれたので、昨夜はそこに入った。
 その前に入った大浴場をコンパクトにした感じで、家族風呂としてはちょうど良い感じであった。
 バスルームの洗面所で顔を洗ったり、トイレを済ませる。
 戻ると、リサはまだ寝ているが、寝返りを打ったりしているので、そろそろ目が覚めるだろう。

 愛原「リサ、そろそろ起きろ」

 私がリサの肩を布団の上から揺すった。

 リサ「ウ……」
 愛原「!?」
 リサ「ウガァァッ!!」

 リサは鬼形態のまま飛び起きた。
 が、すぐに赤い瞳を私の方に向けて剥いた牙を隠す。

 リサ「あ……先生」
 愛原「寝ぼけてるんじゃない!もう朝だぞ!」
 リサ「朝……?朝ぁっ!?」
 愛原「そうだよ。さすがに今日は天気がいい」

 私はシャッとカーテンを開けた。
 梅雨晴れの強い朝日が部屋に差し込んで来る。

 リサ「うお、眩しッ!」

 リサは昨日着てた服のまま寝ていた。
 まあ、脱がすわけにも行かなかったし……。

 愛原「お前も早く朝の支度をしろ。朝8時に朝食が来るから」
 リサ「はーい」

 リサはベッドから起き上がった。

 リサ「うわ、制服のまま!」
 愛原「しょうがないだろ。脱がすわけにはいかなかったし……」
 リサ「先生ならいいのに……。とはいえ、ちょっと臭っ」

 リサの体臭が強くなっていた。
 自分でも分かるほどに。
 昨夜、両親による自分の製造工程を観てオ○ニーしていたからだろう。

 愛原「シャワーでも浴びろよ。この部屋、シャワー付いてるから」
 リサ「ホントだ!部屋が違う!」
 愛原「昨夜の斉藤さんの部屋を使わせてもらうことになったんだよ。こっちの方が広いしな」
 リサ「ふーん……」

 リサは自分の荷物の中から替えの下着を取ると、臭う服を脱ぎ始めた。

 愛原「おいおい、バスルームの中で脱げよ」
 リサ「いいじゃない。わたし達、夫婦なんだから」
 愛原「オマエ、まだ17歳だろ」
 リサ「魂の年齢は五十ン歳」

 リサは結局、上のポロシャツだけ脱いだ。
 その下は白系のブラを着けている。

 リサ「あーあ。白だと汚れが目立つんだよねぇ……」

 リサはブツクサ言いながら、バスルームの中に入って行った。
 今着ていた下着は普通の4/3カップブラと、ショーツだったが、着替えとして持って行った下着は黒のカルバンクラインだった。
 バスルームの中からシャワーの音が聞こえた時、部屋の内線電話が鳴った。
 洋風のアンティークなデザインのダイヤル式電話である。
 なので着信音もジリジリベルである。

 愛原「はい、もしもし?」
 執事「おはようございます。フロントでございます。御朝食は予定通り、8時で宜しゅうございますか?」
 愛原「あ、はい。それでお願いします」
 執事「かしこまりました。それで御相談なのですが、チェックアウトの御予定は何時になさいますか?」
 愛原「そうだなぁ……。ここは10時だったよね?」
 執事「さようでございます」
 愛原「このペンションの最寄りの駅から、10時台の高崎方面の電車に乗りたいとは思っているよ」
 執事「かしこまりました。実は御主人様を警察署にお迎えに参るに当たり、ついでと言っては何ですが、愛原様方を駅までお送りできればと思いまして……」
 愛原「あ、そうなんだ」

 結局、オーナーは警察署に一晩泊められたらしい。

 執事「設備の不具合について、建築基準法とか、消防法とか、そういうことを警察は捜査したがっているようなので、その前にチェックアウトされることをオススメします」
 愛原「分かりました。では、是非車に乗せてください」
 執事「かしこまりました。では、後ほど御朝食をお持ち致します」
 愛原「宜しくお願いします」

 電話を切ってから、私は首を傾げた。
 このペンションのシェフでもあるオーナーは警察署に留置されているのに、朝食は誰が作ってくれるのだろうかと。

[同日08時00分 天候:晴 同ペンション301号室]

 リサは予想通り、カルバンクラインなら平気とばかり、その下着上下だけでバスルームから出て来た。
 そして、バッグの中から着替えのブラウスを取り出して着替えた。
 ポロシャツは1着しか持ってきていなかった為、着替えとしてのもう1着は半袖のブラウスだ。
 替えのスカートは無いのだが、仕方が無い。

 リサ「あーあ、スカート少しシワになってる」
 愛原「スカートの替えなら、家にあっただろう。それは後でクリーニングだな」
 リサ「うん」

 という会話をしていると、部屋のドアがノックされた。

 執事「失礼します。おはようございます。御朝食をお持ち致しました」

 ワゴンに乗せて、執事が朝食を運んで来る。

 

 オムレツとウィンナーと生野菜だった。
 他にロールパンが2つ。
 オーソドックスな朝食だった。
 聞くとこれは、執事が代わりに作ったものだという。

 執事「お飲み物は何になさいましょう?」
 愛原「コーヒーを」
 リサ「オレンジジュース」
 執事「かしこまりました」

 執事は、まるで車内販売のワゴンに乗っているようなポットからコーヒーを注いだ。
 オレンジジュースに至っては、ミニッツメイド。

 執事「それでは、ごゆっくりお過ごしください」
 愛原「ありがとう。……後で話、いいかな?」
 執事「は、かしこまりました」

 執事は頷くと、空になったワゴンを押して退室した。

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