報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「東方遊行抄」

2019-06-25 20:00:44 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月19日14:16.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 仙台市地下鉄仙台駅・東西線ホーム]

〔3番線に、荒井行き電車が到着します〕

 東北新幹線から仙台市地下鉄東西線に乗り換える稲生、マリア、ルーシー。
 どういうわけだか地下空間が苦手なルーシーは、脂汗を拭いながらそれでも地下深いホームまでやってきた。

 マリア:「ルーシー、本当に大丈夫?」
 ルーシー:「大丈夫……。こんなことで負けない……!」

 トラウマに立ち向かう根性はあるようだ。

 稲生:(地下鉄サリン事件で生き残った被害者のPTSDに似ている……)

 電車が轟音と風を伴ってトンネルの向こうからやってくる。
 1両16メートルの、それもたったの4両編成しか無い小さな地下鉄である。
 ホームに停車すると、ホームドアから開いていった。

〔仙台、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 ターミナル駅なので乗降客はそれなりに多い。
 先頭車に乗り込むと、3人は反対側のドアの前に立った。

 
(車内に掲げられた路線図。十字型の路線であるが、場合によってはこのようにX型に表示されることもある)

〔3番線から、荒井行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 短い発車サイン音が流れる。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 車内自動放送でドア閉め注意喚起放送が流れると、車両のドアとホームドアが閉まった。
 車両のドアは2点チャイムが4回も鳴る仕様である。
 駆け込み乗車による再開閉は無く、電車はすぐに走り出した。

〔次は宮城野通、宮城野通、ユアテック本社前でございます〕
〔The next stop is Miyagino-Dori station.〕

 稲生:「ルーシーさんは昔、日本に来たことありますか?」
 ルーシー:「いや、無い。今回が初めて。どうして?」
 稲生:「いえ、それならいいんです」
 マリア:「ルーシーがどうして地下鉄にトラウマがあるのか、気になるんでしょ?」
 稲生:「日本でも1995年にカルト教団による地下鉄テロがありました。どういうわけだか、日蓮正宗ではそいつらを折伏したという話は聞きません。“慧妙”のアポ無し折伏隊でさえ、彼らを避けている有り様です」
 マリア:「気に入らないとすぐテロする団体に、並みの人間が容易に近づくものじゃない。エレーナがマフィアと戦って勝てたのは魔道士だからで、普通なら惨殺死体でゴミ捨て場に捨てられるのがオチだよ」
 ルーシー:「後で話す。今は許して」
 稲生:「無理しなくていいですよ。話せる時に話してもらえたら」

[同日14:29.天候:晴 仙台市若林区荒井 地下鉄荒井駅]

 電車が郊外に向かう度に、車内は空いていった。
 最初は立っていた稲生達も、途中から座ったほどである。

〔「本日も仙台市地下鉄東西線をご利用頂きまして、ありがとうございました。まもなく終点、荒井、荒井です。お出口は、右側です。この電車は荒井駅到着後、回送電車となり、車庫へ引き上げます。引き続いてのご乗車はできませんので、ご注意ください」〕

 ワンマン運転なので運転士がマイクで放送している。
 ATO運転で常にハンドルを握っている必要は無いので、そういう余裕もあるのだろう。
 そして電車は、到着専用ホームに入線した。

〔荒井、荒井、大成ハウジング本店前。終点です。お出口は、右側です。お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意願います。本日も仙台市地下鉄をご利用頂きまして、ありがとうございました〕

 因みに仙台市地下鉄の車内自動放送を行っている声優は、東京メトロのそれと同一人物である。
 東京メトロよりもゆっくりとした喋り方をしているのは、やはり首都と地方都市の違いだろうか。

 稲生:「お疲れさまでした。電車を降りますよ」
 マリア:「ほら、頑張って」

 マリアがルーシーの手を取って、席を立たせる。
 閉扉と同じく、ドアチャイムを4回鳴らしながらドアが開いた。

〔荒井、荒井、終点です。1番線の電車は、回送電車です。ご乗車にならないよう、お願い致します〕

 

 電車を降りた乗客数は、僅かなものであった。
 それでも駅前は開発途上にあるから、開発が進めば乗客も増えるであろうと予想されているが……。

 稲生:「ここでバスに乗り換えますから、あとはもう地上です」
 マリア:「そういうことらしい。頑張って」
 ルーシー:「うん……」

 この駅はホームが地下1階という浅い所にある為、エスカレーターを上がればもう地上である。
 今日は天気が良いので、昼下がりの日差しがコンコース無いに降り注いでいた。
 ホームは地下だが、コンコースなどは全て地上にある。

 

 改札口を出る。

 稲生:「少し休みます?」
 マリア:「そうしよう。ルーシー、トイレに行っとく?」
 ルーシー:「そうする」

 バスに乗り換える前に、魔女2人は改札外のトイレに行くことにした。
 新しい駅で、利用者も少ない駅だからトイレも比較的きれいなはずである。

 稲生:(人間時代に、どういうトラウマを受けたかで全然違うなぁ。エレーナとリリィなんか、地下室に住んでるくらいだし)

[同日14:44.天候:晴 仙台市営バス15系統車内]

 仙台市営バスに乗り換えた3人。
 工場団地や産業道路を行くバスであるが、日曜日にそのような重要は少ないのか、乗客は稲生達以外に3人ほど乗っただけである。
 元々が利用者の少ない駅で、路線バスの利用者はもっと少ないだろう。
 タクシー乗り場のタクシーなど、運転手が談笑しているくらいであった。

〔「お待たせ致しました。14時44分発、鶴巻循環、発車致します」〕

 乗客がそれ以上増えることはなく、バスは時間になると中扉の引き戸を閉めて発車した。
 ルーシーがキャリーバッグを持っている為、車内真ん中の1人席に座っている。
 そこなら座席の横に置ける為。
 車椅子の旅客が来たら折り畳まれる席だ。
 大きなキャリーバッグを持っていると、ノンステップバスの方が乗り降りが楽である。

〔毎度、市営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは若林体育館前、宮城運輸支局前経由、鶴巻循環でございます。次は荒井六丁目、荒井六丁目でございます。……〕

 マリア:「あの悪魔も随分遠い所を指定したものだな」
 稲生:「ええ。よく見つけて来ましたね。でも、きっと誰かからの横流し品ですよ」
 ルーシー:「下級悪魔が、まともな物送り付けるわけないしね」
 稲生:「ルーシーさん、気分の方はどうですか?」
 ルーシー:「地上に出れば大丈夫。……このバス、地下トンネルを通ったりはしないよね?」
 稲生:「ああ、それは大丈夫です。普通のトンネルすら通りません」
 ルーシー:「それならいいけど……」

 バスは元々は田園地帯だった所を進む。
 今はマンション建設工事現場が並んでいる所である。
 完成すれば、もっと賑やかになるだろうか。
 
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“大魔道師の弟子” 「未知の花、魅知の旅」

2019-06-22 19:01:51 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月19日13:22.天候:晴 福島県福島市栄町 JR福島駅・新幹線ホーム]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、福島です。山形線、阿武隈急行線、福島交通飯坂線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。福島を出ますと“やまびこ”号は白石蔵王、“つばさ”号は米沢に止まります〕

 列車が山形新幹線との分割駅に接近する。
 線路配置の都合上、分割・併合を行う列車は、必ず福島駅14番線に到着することになっている。
 この下り列車はそれでいいのだが、上り列車も同じホームで行わなくてはならない為、実質的にこの駅が単線になってしまっている。
 また、上り列車においては下り副線ホームに停車する為、発車後は上り本線に入る為にポイントを渡らなくてはならない。
 これがダイヤ設定上のネックとなっているらしく、今後改善していく予定であるという。
 つまり、今は回送列車やダイヤ乱れなどの異常時を除いて使用されていない11番線が使用される可能性が出て来るということだ。
 尚、分割・併合を行わない列車は本線ホームに停車し、そもそも通過列車はホームすら無い通過線を高速で通過していくこととなる。
 2面2線のホームがあって、上りと下りのホームの間に通過線が2本あるのが福島駅なのである。
 大宮駅で言えば、臨時ホームの15番線と16番線ホームが無くて、そこが通過線みたいな感じだろうか。
 “やまびこ”“つばさ”137号は分割を行うので、ポイントを渡り、副線ホームの14番線に停車する。

〔ふくしま〜、福島です。ご乗車、ありがとうございました。……〕
〔「当駅で山形新幹線との切り離し作業を行います。6分停車致します。発車は13時38分です。発車までしばらくお待ちください」〕

 稲生:「連結を外す作業と、あとはこの間に後続の“はやぶさ”と“こまち”が高速で通過します」
 ルーシー:「見てみたい!」
 稲生:「連結外す方?通過する方?」
 ルーシー:「通過する方!」
 稲生:「さすがは分かってますねぇ。マリアさんも降りてみます?」
 マリア:「そうする。荷物見てて」
 ミク人形:「ラジャ!」
 ハク人形:「ラジャ!」

 3人の魔道師は列車を降りて、列車のいない13番線に向かった。
 とはいえ、稲生は切り離し作業の方も気になるようで……。

 稲生:(なるほど。ああやって外すのか……。今は自動解結装置があるからな……)

 などとのんびりよそ見していると……。

 ゴォッ!

 稲生:「おっ!」

 後続の“はやぶさ”と“こまち”が高速で通過していった。

 稲生:(この辺りも時速320キロか?いや、そこまでは出てないか?)

 それでもかなり速い速度で通過したことから……。

 ルーシー:「Amazing!!」
 稲生:「えっ!?」
 マリア:「ちょっ……ルーシー!はしゃぎ過ぎ……!(私も昔びっくりしたけどさ……)」

 ルーシーは2人の仲間をハグした。
 今や外国人観光客の目当ての中に、新幹線への乗車も含まれていることが多々あるという。
 そんなことをしているうちに、山形新幹線が発車していった。
 タイミングによっては、“はやぶさ”や“こまち”が通過すると同時に発車することがある。
 線形上、この2つの列車が線路を被ることは無いので、安全性は何も問題はない。
 因みに山形新幹線と東北新幹線、どちらが先に発車するかがネタになっていたのは“サザエさん”である。
 普通に考えれば、前にいる列車が先に発車すると分かりそうなものだが……。
 山形新幹線が発車すれば、今度は東北新幹線が発車する。
 3人は車内に戻った。

 稲生:「ルーシー、結構テンション高い人だったんだね」
 マリア:「他の魔女も基本そうだよ。ただ、他人を信用できないだけ」

 ということは、稲生も信用されるようになったということだろうか。

〔「お待たせ致しました。13時38分発、東北新幹線“やまびこ”137号、仙台行き、まもなく発車致します」〕

 発車の時間になると、ホームには発車メロディが流れ出した。
 “栄冠は君に輝く”である。
 作曲者が福島市出身とのことで、その縁で発車メロディに使われているという。
 因みに在来線ホームは“高原列車は行く”である。
 高原列車のモデルとなった私鉄、磐梯急行電鉄は、今や既に廃止になっている。
 非電化鉄道なのに、社名が電鉄……w
 いや、機関車に発電機が搭載されていて、それで自家発電を行って走行しているので電気鉄道なんだと当時の会社幹部は言い張ったらしいけどw
 普通は架線か第3軌条に電気が流れているから、電気鉄道なのである。
 正に、顕正会並みの苦しい言い逃れと言えよう。

 ルーシー:「勇太!帰りは“はやぶさ”に乗りたい!」
 稲生:「えっ、マジっスか……?」
 マリア:「ちょっと、ルーシー。帰りのプランはほぼ決定しているんだから、無理言うなっての。勇太が困ってるじゃない」
 稲生:(E5系を使用した“やまびこ”じゃ誤魔化せなかったか……)

[同日14:04.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JR仙台駅→地下鉄仙台駅]

 再び田んぼだらけの風景に、ようやく建物が見え始めてくる。
 町並みが見えて来ると比例して、列車は速度を落として行く。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。東北新幹線、盛岡、新青森方面、仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市営地下鉄南北線と仙台市営地下鉄東西線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 稲生:「無事に着きましたね」

 列車は市街地の中を時速70キロほどで走行している。

 ルーシー:「この町にも拠点としている魔女はいる?」
 稲生:「いや、いないんじゃないですか。何度もこの町には来ていますが、影も形も見たこと無いですから」
 マリア:「ルーシー、大戦前のイギリスじゃないんだからいないよ」
 ルーシー:「そう。何だかいそうな感じなんだけどねぇ……」
 稲生:「もしも僕の家族が埼玉に引っ越さなければ、僕達がここを拠点にしていたかもしれませんね」
 ルーシー:「そうなの?」
 稲生:「中学まで僕、仙台に住んでいましたから。父が本社の役員に抜擢されたんで、それで埼玉に引っ越したんです」

 最初は埼玉支社の支社長に。
 それで、さいたま市に家を建てた。
 宗一郎の会社では、支社長から常務執行役員になれるらしい。
 で、今現在は東京本社の専取締役。

 ルーシー:「ふーん……。確か、商社マンか。大変だね」
 稲生:「いえいえ。それじゃ、新幹線を降りたら地下鉄に乗り換えます」
 ルーシー:「え……?」

 それまでハイテンションだったルーシーの顔が、見る見るうちに青ざめていった。
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“大魔道師の弟子” 「やまびこ137号」

2019-06-22 13:57:53 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月19日11:55.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・東北新幹線ホーム]

〔23番線に停車中の電車は、12時ちょうど発、“やまびこ”137号、仙台行きと“つばさ”137号、山形・新庄行きです。グリーン車は9号車と11号車、自由席は1号車から5号車と16号車、17号車です。……〕

 東北新幹線ホームに上がると、既に23番線にはこれから乗車する列車が停車していた。
 しかしドアは閉まっており、まだ乗車できない。

〔「23番線に停車中の電車は只今、車内整備清掃を行っております。終了までしばらくお待ちください」〕

 この間、売店に行って駅弁などを購入する。

 稲生:「因みに車内販売のアイスもここで買える」
 ミク人形:「♪」
 ハク人形:「♪」
 ルーシー:「勇太、いつになったら乗れるの?」
 稲生:「あの信号が白に変わったら乗れますよ」
 ルーシー:「?」

 ホームに吊り下げられている白と赤の2灯式信号。
 確かに今は赤だ。
 で、それが白に変わる。

〔「23番線、お待たせ致しました。まもなくドアが開きます。乗車口までお進みください。……」〕

 旧国鉄時代から使用している信号なのか、同じものが東海道新幹線ホームにもあり、使用法は同じである。
 ドアが開いて、ホームで列を作っていた乗客達がぞろぞろと乗り込む。
 自由席は熾烈な席取り合戦だろうが、指定席の方は淡々としており、グリーン車に至っては【お察しください】。

〔「ご案内致します。この電車は12時ちょうど発車の東北新幹線“やまびこ”137号、仙台行きと山形新幹線“つばさ”137号、山形・新庄行きです。停車駅は上野、大宮、宇都宮、郡山、福島です。“やまびこ”号は福島を出ますと、白石蔵王、終点仙台の順に止まります。“つばさ”号は福島を出ますと、米沢、赤湯、かみのやま温泉、山形、天童、さくらんぼ東根、村山、大石田、終点新庄の順に止まります。……」〕

 指定された3人席に座る。

 稲生:「お腹空きましたねー」

 通路側に座った稲生はテーブルを出して、その上に買った駅弁とお茶を置いた。
 マリアの人形達は荷棚の上に乗せられると、買ってもらったアイスを口にする。
 因みにメーカーは東京めいらくのスジャータである。
 新幹線で買えるアイスと言えばこれ。
 釈尊が悟りを開く前に乳粥を御供養した少女の名前から取ったのは明白である。
 概ね仏教界では好意的に捉えられており、日蓮正宗でも釈尊のことを説明される時、たまに登場したりする。
 多分、それと合わせて御供養の大事さを伝える時に登場させていたと思う(主に“妙教”辺り)。

 ルーシー:「“こだま”が止まってる」
 稲生:「ああ。すぐ隣は東海道新幹線ホームです。元々、14番線・15番線ホームも東北新幹線ホームとして使われるところだったんですが、東海道新幹線の本数が逼迫したので、そちらに転用したとか……」

 旧国鉄時代の話である。
 今の分割されたJRでは、絶対にそんなことはない。
 もちろん、旧国鉄時代の話なので、民営化後に14番線と15番線が東北新幹線に戻されるということも無かった。
 そうこうしているうちに北陸新幹線の建設が進み、今度はJR東日本側のホームが足りなくなった為、増設したというわけだ。
 しわ寄せを食らったのは、1番丸の内側にいた中央線だったりする。

 稲生:「じゃあ、いただきまーす」

 稲生は主に牛肉の詰まった駅弁を購入していた。
 それはマリアも同じ。
 ルーシーはどちらかというと魚の方が多く入ったものを買っていた。

〔「お待たせ致しました。12時ちょうど発、東北新幹線“やまびこ”137号、仙台行きと山形新幹線“つばさ”137号、山形・新庄行き、まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 発車の時刻が迫る。
 東海道新幹線では発車メロディが流れるが、東北新幹線では未だにベルである。

〔23番線から、“やまびこ”137号、仙台行きと“つばさ”137号、山形・新庄行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色いブロックまで、お下がりください〕
〔「23番線、まもなくドアが閉まります。お見送りのお客様、お下がりください。ドアが閉まります」〕

 東海道新幹線では重低音響くブザーだが、東北新幹線では甲高い客終合図のブザーが響く。
 旧型のE2系のドアはガラガラ、ガッチャン!と随分賑やかな閉まり方をする。
 そして車内に在来線のものとはまた違うインバータの音を響かせて、列車は定刻通りに発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は1号車から10号車が東北新幹線“やまびこ”号、仙台行き。11号車から17号車が山形新幹線“つばさ”号、山形・新庄行きです。途中、福島で切り離しを致しますので、お乗り間違えの無いよう、ご注意ください。次は、上野です。……〕

 稲生:「大宮駅までは徐行運転ですけど、そこを過ぎたら最高速度で走りますから」
 ルーシー:「何キロ?」
 稲生:「“やまびこ”だと時速275キロです」

 だいぶ速くなった。
 まだE1系やE4系が現役だった頃は時速240キロの世界だったのだが。
 鈍重な2階建て車両を排除したら、“やまびこ”でさえ、かつての“はやて”の最高速度と同じになった。

 ルーシー:「275……。うっ……頭が……!JRA……メインレース……3連単2-7-5……」
 稲生:「! ちょっと藤谷班長に電話して来ます!」
 マリア:「なに?!ルーシーも競馬の予想するの!?」

 藤谷は全く予想だにしていなかった番号だったらしいが、後でしっかり取れたとホクホク顔で電話してきたことから、ルーシーの予知能力も大したものだったのだろう。
 もちろん、分け前はしっかり頂いた稲生であった。
 尚、折伏中のケンショーレンジャー、ケンショーブルーは再び大ハズレして石化していたという。

 マリア:「ユーロスターには乗ったの?」
 ルーシー:「まだ。というか、まだ高速列車にすら乗ってない」
 マリア:「ルーシーのダディ、鉄道員だったのに?」
 ルーシー:「鉄道員は鉄道員でも、地下鉄職員だったから……」
 マリア:「そうなの!」
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“大魔道師の弟子” 「ターミナル駅からターミナル駅へ」

2019-06-21 18:57:45 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月19日11:26.天候:晴 東京都新宿区新宿 JR新宿駅・中央快速線ホーム]

〔まもなく8番線に、青梅特快、東京行きが参ります。危ないですから、黄色いブロックの内側までお下がりください。次は、四ツ谷に止まります〕

 バスタ新宿をあとにした稲生達は、今度こそ東京駅に向かうべく、中央快速線上りのホームに移動した。
 新宿駅は魔界王国アルカディアの王都アルカディアシティで言えば、インフェルノタウンという地区に当たり、日本の東京と同様、南北に走る山手線や東西に走る中央線に相当する高架鉄道も存在する。
 前者は環状線と称し、後者は全く同じ名前、中央線と称する。

〔「8番線には青梅特快、東京行きが参ります。四ツ谷、御茶ノ水、神田、終点東京の順に止まります。黄色い線の外側には出ないでください」〕

 やってきた電車は埼京線とは色違いの車両。
 オレンジバーミリオンという色合いの帯を巻いている。

〔しんじゅく〜、新宿〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、四ツ谷に止まります〕

 魔界高速電鉄の中央線もなかなか賑わう路線であるが、JRの比ではない。
 何故ならJR中央線は現段階で10両編成、しかも将来的にはグリーン車2両を増結して12両編成での運転が予定されている。
 それに対し、魔界高速電鉄では6両前後。
 しかも、快速運転すらしていない。
 たまに元JR西日本の207系が7両編成(4両編成+3両編成)でやってくる。
 モハ40系も運転されている鉄道会社で、どうして207系がいるのか不思議である。
 2005年から運転されているらしいが……。
 もちろん、233系はまだ向こうの鉄道会社に1両たりとも引き取られていないので、この電車は幽霊ではない。
 中央線で最も混雑する区間を利用する3人の魔道士。
 二等辺三角形の吊り革を掴んだり、その隣の手すりを掴んだり……。

〔8番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 賑やかな発車メロディの後でドアが閉まり、電車が発車した。
 ホームドアが無いと、その分のブランクが無い為、すぐに発車する。

〔この電車は中央線、青梅特快、東京行きです。停車駅は四ツ谷、御茶ノ水、神田、終点東京です。次は、四ツ谷です。……〕
〔This is the Cyuo line,special rapid service train for Tokyo.The next station is Yotsuya...〕

 マリア:「四ツ谷……四谷怪談……」
 稲生:「よく知ってますねぇ。『お岩稲荷』という神社があって、それを物語っているんですよ」
 マリア:「復讐……チェックメイト……」
 稲生:「勘弁してください」

 と、田宮伊右衛門が言ったかどうか……。

[同日11:40.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔まもなく終点、東京、東京。お出口は、左側です。新幹線、山手線、京浜東北線、上野東京ライン、東海道線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 神田駅から先は新幹線と並行して走る。
 それを期待してか、そちら向きに立っていた稲生達。

 稲生:「1番丸の内寄りに止まる中央線と、八重洲寄りに止まる新幹線ですから、乗り換えが少し大変かもしれませんね。もっとも、地下ホームから乗り換えるよりはマシですが」

 新宿駅から乗車した為、実質的には普通の快速と変わらない青梅特快は、東京駅の1番丸の内寄りの1番線に入線した。
 この駅でもまだホームドアは無い。

〔とうきょう〜、東京〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 中央線ホームは他の在来線ホームと比べて、ワンフロア高い位置にある。
 電車を降りると、3人はエスカレーターに移動した。
 そのエスカレーターはコンコースに下りる為のもので、直接他のホームに行くわけではない。
 なので途中、3番線を見ることになるが、そこは通過するだけ。
 2番線が3番線の上にあり、エスカレーターはホームの中央にある。
 だから、エスカレーターは3番線を掠める。
 ……文字にしたり言葉で言っても分かりにくいと思うので、どういうことかは直接現地にて確認して頂きたい。

 稲生:「新幹線改札口は向こうです。付いて来てください。人が多いから気をつけて」

 稲生はマリアの手は握るが、ルーシーの手は掴まない。
 当たり前だ。
 そんなことしたら、マリアにブン殴られるに決まってる。

 ルーシー:「このキップでそのまま通れるの?」
 稲生:「そうです」

 今やキップは買い方によっては、乗車券と指定席特急券が1枚に纏められる。
 既に乗車券(東京都区内)としては、新宿駅から使用開始済み。
 あとは新幹線乗換改札口を利用して、新幹線指定席特急券として使用開始すれば良い。
 乗車券の『東京都区内』と『東京山手線内』の違いは、まあ文字を見れば分かるだろう。
 東京23区内全てのJR駅で乗降できるのが前者、山手線とその内側のJR駅しか乗降できないのが後者だ。
 何を以って分けられるかというと距離である。
 距離が長ければ前者、短ければ後者だ。
 随分雑な説明をしたが、JR東日本の公式サイトや市販の時刻表にはちゃんと説明されているし、ウィキペディアにも書かれていたと思うので、気になる方は参照を。
 多分、日本人でも鉄道に興味の無い方は分からないだろう。
 ましてや、外国人はもっと分からないと思う。
 今回は新宿駅から乗車したから、前者でも後者でも問題は無いというだけだ。

 稲生:「あそこがJR東日本新幹線の改札口です。それでは、キップの御用意を」
 ルーシー:「お昼に出発するみたいだけど、ランチは?」
 稲生:「大丈夫。東北新幹線にも駅弁はあります」
 ルーシー:「なるほど」
 稲生:「但し、車内販売は山形新幹線側にしかありません」
 ミク人形:「ちっ!」
 ハク人形:「ちっ!」

 JR東日本でも車内販売は縮小傾向にある。
 山形新幹線だけ車内販売があるのは、仙台止まりの東北新幹線と比べて乗車時間が長いからだろうか。
 在来線改札口より一回り大きな新幹線改札口を通ると、稲生達は晴れて東北新幹線の旅客となる。

 稲生:「えーと……23番線ですね」

 そして、エスカレーターでホームへと上がった。
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“大魔道師の弟子” 「東京電車特定区間→東京山手線内」

2019-06-21 13:40:15 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月19日10:22.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の1番線の電車は、10時22分発、各駅停車、新宿行きです〕

 今日は新幹線に乗って仙台に向かう予定である。
 自宅から徒歩圏内で最寄り駅の北与野駅にやってきた稲生、マリア、ルーシー。

 稲生:「ああ、ギリギリ見えますね。富士山」
 ルーシー:「ほんと?!」

 北与野駅のホーム階南西からは、天気が良く、空気が澄んでいると富士山が見えることがある。

 稲生:「今日は少しカラッとしているので見えるんですね」

 早速ルーシーはその風景を写真に収めた。

 稲生:「ここから見えるのは山梨側の富士山です。あの向こう側に大石寺があるというわけですね」

 その為、大石寺がどの方向にあるのか分かりやすい位置でもある。

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが参ります。危ないですから、黄色いブロックの内側までお下がりください。次は、与野本町に止まります〕

 上り電車の接近放送が流れる。

 マリア:「? 勇太、大宮駅はこっちじゃない?」
 稲生:「いや、ちょっと寄りたい所があるんですよ。新幹線の時間には十分間に合いますから」
 マリア:「?」
 稲生:「ほら、ルーシー達の帰国が分かった以上、僕達も屋敷へ戻る計画をしませんと」
 マリア:「ああ、そうか。それとこれと何の関係が?」
 稲生:「行けば分かります」

 やってきた電車はE233系。
 埼京線のコーポレートカラーであるモスグリーンの帯を巻いた車両である。

〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます。次は、与野本町に止まります〕

 電車はガラ空きの状態でやってきた。
 先頭車に乗り込むと、これまたモスグリーンの霜降り柄の目立つシートに腰掛ける。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 発車メロディが数秒だけ鳴って、あとはすぐにドアが閉まる。
 この駅は停車時分の余裕が無いのだろう。
 すぐに走り出すと、横から東北新幹線が追い抜いて来た。
 3人の着席位置は新幹線の方を向く側であり、車内も空いているので新幹線がよく見えた。
 当然のことながら、向こうの方が速い。

〔次は与野本町、与野本町。お出口は、右側です〕
〔The next station is Yono-Honmachi.The doors on the right side will open.〕

 稲生:「仮に新幹線のダイヤが乱れて、渋滞が発生したりすると、更に減速したり、最悪停車することがあるんですよ。そういう時、いつも抜かれている埼京線がここぞとばかりに追い抜くわけです」
 マリア:「この電車で終点まで乗って行くとしたら、あのバスターミナルまで行くってことか?」
 稲生:「その通りです」
 マリア:「なるほど。今回の帰りはバスになるのか」
 稲生:「先生が御一緒だとそういうわけにはいきませんが、今回も先生はお忙しいようですので」
 マリア:「あの師匠が忙しい時、本当に何かが起こるんだよな……」
 稲生:「イルミナティカードを発行させる側の人なだけに、余計に怖いんですよねぇ……」
 マリア:「来月、どこかでまた大きな地震でもあるんじゃない?」
 稲生:「日本は地震国ですから、震度4くらいまでは全然平気なんですけどね、それ以上強いのが来ると厄介ですねぇ……」
 ルーシー:(震度4で平気なの!?)

 震度2で大地震扱いされるイギリス。

[同日11:01.天候:晴 東京都新宿区新宿 JR新宿駅→バスタ新宿]

〔まもなく終点、新宿、新宿。お出口は、右側です。山手線、中央快速線、中央・総武線、京王線、小田急線、地下鉄丸ノ内線、都営地下鉄新宿線と都営地下鉄大江戸線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 西武新宿線が案内に入っていないのは、他の新宿駅と繋がっていない為。
 住所も西武新宿駅だけ歌舞伎町になっている。
 新宿駅構内の複雑なポイントを通過する為、電車は減速してホームに進入した。
 ポイント通過による速度制限もあるだろうが、そもそもホームの北部方が狭い上に乗客が押し寄せている為でもあろう。
 で、ホームドアは無い。
 規格がそれぞれ違う電車が発着する上、そもそも新宿駅は魔改造中だからホームドアが設置できないのだ。

〔しんじゅく〜、新宿〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 電車が到着してドアが開くと、稲生達は他の乗客に混じって電車を降りた。
 その足でバスタ新宿に向かう。

 ルーシー:「戻るのに高速バスを使うことが多いの?」
 マリア:「そうだね。別に経費をケチられているわけではないんだけど、そもそも勇太の趣味だし、確かに乗り換え無しで帰れるんで、便利っちゃー便利なんだよね」
 ルーシー:「ふーん……」
 マリア:「まあ、そもそも新幹線でさえ、途中で乗り換えないといけないし、慌てて帰る必要も無いから」
 ルーシー:「そうなの」

 途中にトイレがあって、バスタ新宿の女子トイレはよく混むので、むしろ駅のトイレを使う方が良いということもマリアは知っている。

 ルーシー:「今から乗るわけじゃないよね?」
 マリア:「そりゃそうでしょ」

 新南口改札を出て、すぐにバスタ新宿がある。
 こちらは日曜日ということもあってか、待合室が混雑していた。

 マリア:「昼間でさえこのザマだ。夜行便が発車する時間帯は、もっとカオスだよ」
 ルーシー:「夜行列車は無いの?」
 マリア:「殆ど無い。あったら多分、勇太はそれを狙うはず」

 夜行快速すら絶滅寸前なのである。
 臨時列車扱いだから、廃止もクソも無く、“ムーンライトえちご”並みにしれっと無くなっていたりする。
 勇太は自動券売機の方に行くと、慣れた手つきで操作した。

 稲生:「夜行便で帰りますよ」
 マリア:「ああ、やっぱり」
 稲生:「キップは僕が預かっておきますね」
 マリア:「そうして」
 ルーシー:「東京ディズニーリゾート行きのバスも出てるんだ」
 稲生:「そうですね。JRバスが運行しているヤツです。確かここ最近、2階建てバスを導入したとか……」
 ルーシー:「へえ……」
 稲生:「そう言えばディズニーリゾートには行ってませんね」
 マリア:「行く気が無いというか……。殆どの場合、魔道士は悪役扱いだし」
 ルーシー:「教会の息が掛かってるから、当然と言えば当然だけどね」
 マリア:「師匠なんか行ったら、キャストだと思われるぞ」
 稲生:「た、確かに……」

 というわけでイリーナ、ローブのフードをやめて帽子に変え、髪型もストレートから三つ編みにしてみたことがある。
 そしたら、今度はジブリになってしまった。

 ルーシー:「うちの先生は、どちらかというとミヤザキ監督のアニメに出て来る魔法使いっぽいんだけど……」
 マリア:「歳を取ると、ディズニーかジブリのどっちかになるわけか……」
 稲生:(男の僕はどっちになるんだろう……?)

 別にムリしてどちらかに属する必要は無いと思われるが。
コメント (2)
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