[10月1日13:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
無事に帰所した私は、まずは昼食を取った。
高橋が弁当を作ってくれたので、それを食べる。
それからしばらくして午後になり、私は善場主任へ電話を掛けた。
善場主任に、私の推理を話してみた。
愛原:「伯父が開発した『枯れた苗を元に戻す薬』……つまり、死んだ植物……生物を生き返らせる薬……。それを日本アンブレラが欲しがったという事実……。盗まれた“トイレの花子さん”の遺骨……」
善場:「つまり、愛原公一名誉教授が何か知っているかもしれないというわけですね?」
愛原:「そうです。しかし、もしそうだとすると、伯父さんは……」
善場:「ええ。白井に与する犯罪者ということになりますね」
愛原:「で、ですが、これはあくまで私の推理で……」
善場:「分かっていますよ。少なくとも、遺骨と名誉教授の薬だけではまだ足りません。しかし、ある物を加えれば、遺骨からでも生き返らせることは可能でしょう」
愛原:「ある物?」
善場:「特異菌です。ルーマニアの山奥で発生したバイオハザード事件、そこでは1人のBOWが亡くなりました。名前をイーサン・ウィンターズと言います。彼は死ぬ間際まで、自分を人間だと信じていました。いえ、周囲も、ごく限られた一部の者以外は彼を人間だと信じて疑わなかったようです。しかし、彼は明らかに人間ではなかったのです」
愛原:「と、言いますと?」
善場:「一度死んだ人間が、全く生前の状態のまま生き返る。その生き返った人間は、人間だと言えるでしょうか?」
愛原:「えーと……」
善場:「私でさえ、一度は化け物にされた者です。しかし、死んではいませんよ。生きたまま、ちゃんと人間に戻れました。しかし、ウィンターズ氏の場合は違います」
愛原:「で、では……?」
善場:「今は特異菌があるので、遺骨からでも蘇生が可能なのかもしれません。愛原所長、確かめに行ってはもらえませんか?これは私からの依頼です」
愛原:「わ、分かりました!すぐに宮城に向かいます!」
善場:「明日でいいですよ」
愛原:「は!?」
善場:「今日はリサの誕生日を祝う日でしょう?それをすっぽかしては、新たなバイオハザードを生むことになります。それは何としてでも阻止しなければ、なりません」
愛原:「そ、それもそうですね」
善場:「それと、恐らくAkibaエージェンシーに遺骨捜索の依頼をしたのは、遺族でしょう。国際テロ組織ヴェルトロが事実上の犯行声明を出したことで、地元の警察では手に負えないと判断しましたから」
愛原:「そうなんですね」
善場:「明日の朝一番で結構ですので、お願いします」
愛原:「分かりました。リサも一緒でいいですか?」
善場:「いいでしょう。その方が自然でしょうから」
愛原:「分かりました」
私は電話を切った。
愛原:「高橋、明日朝一で伯父さんの所に行くぞ。公一伯父さんの所だ」
高橋:「あの名誉教授っスか?あの人、そんなに悪い人だったんスかね?」
愛原:「俺も信じたくない。だが、何らかの事情があるのかもしれない。それを調べに行きたいんだ」
高橋:「お供します!」
愛原:「リサも一緒に行くが、いいな?」
高橋:「先生の御意向でしたら……」
愛原:「善場主任にも、そうしろと言われたんだ。そこを自分に言い聞かせて納得してくれ」
高橋:「御命令とあらば……」
愛原:「とにかく、今日は予定通り、家でリサの誕生日パーティーだ。分かったな」
高橋:「うス」
私はパソコンのマウスを動かし、キーボードを叩いた。
愛原:「明日の新幹線の予約だ。それと、レンタカーだな。また、運転は頼むぞ」
高橋:「あ、はい。それは任せてください」
私はJR東日本のサイトにアクセスして、明日の新幹線を予約しようとした。
と、また事務所の電話が鳴る。
高橋:「ハイ、愛原学探偵事務所っス」
善場:「あ、善場です。愛原所長はもう新幹線を予約しましたか?」
高橋:「今やってるところだが?」
善場:「こちらから新幹線は手配するので、それは中止してもらってください」
高橋:「わ、分かった!先生!」
高橋はすぐに私にその旨伝えて来た。
今ちょうど空席照会をしているところであり、まだ予約はしていなかった。
愛原:「もしもし、お電話代わりました。何か事情が変わったんですか?」
善場:「そうです。作戦上、やはり今日中に宮城入りして頂きます。要は前泊ですね」
愛原:「前泊!」
善場:「新幹線のキップと、宿泊先のホテルの宿泊券はこちらでお送りします」
愛原:「レンタカーはどうしましょう?私の推理が正しければ、伯父の送り迎えには期待していけないでしょうし、タクシーを使うのも……」
善場:「それは所長の判断にお任せします。レンタカーの手配もお任せします。その費用については、後でこちらに請求して頂ければ、お支払いさせて頂きますので」
愛原:「リサには何と言えば……」
善場:「パーティーはできますよ。要は、その後で出発して頂ければ良いので」
愛原:「あ、そうなんですか」
善場:「つまり、夜の新幹線で出発して頂くということですね。バイク便でそちらに届けますので、しばらくお待ちください」
愛原:「わ、分かりました。つまり、デイライトさんでは、それくらいのことをする確信を得たのですね?」
善場:「内容については、今はお話しできませんが、つまりはそういうことです」
愛原:「分かりました。その御依頼、お引き受けしましょう」
善場:「御理解が早く、助かります。リサの方も説得をお願いします。場合によっては、リサの力に頼ることも想定できますので」
愛原:「分かりました」
伯父さん、何をやったんだよ。
ていうか、遺骨泥棒なんて……。
16時頃、バイク便が届いた。
その中には、夜の新幹線のキップと、仙台駅近くのホテルの宿泊券が入っていた。
どうやら、ガチのようだ。
もしも単なる調査であれば、当初の予定で良かっただろう。
しかし、ガチの作戦となると話は別になる。
私はスマホを取り出し、リサに大事な話があるから早めに帰るように伝えた。
無事に帰所した私は、まずは昼食を取った。
高橋が弁当を作ってくれたので、それを食べる。
それからしばらくして午後になり、私は善場主任へ電話を掛けた。
善場主任に、私の推理を話してみた。
愛原:「伯父が開発した『枯れた苗を元に戻す薬』……つまり、死んだ植物……生物を生き返らせる薬……。それを日本アンブレラが欲しがったという事実……。盗まれた“トイレの花子さん”の遺骨……」
善場:「つまり、愛原公一名誉教授が何か知っているかもしれないというわけですね?」
愛原:「そうです。しかし、もしそうだとすると、伯父さんは……」
善場:「ええ。白井に与する犯罪者ということになりますね」
愛原:「で、ですが、これはあくまで私の推理で……」
善場:「分かっていますよ。少なくとも、遺骨と名誉教授の薬だけではまだ足りません。しかし、ある物を加えれば、遺骨からでも生き返らせることは可能でしょう」
愛原:「ある物?」
善場:「特異菌です。ルーマニアの山奥で発生したバイオハザード事件、そこでは1人のBOWが亡くなりました。名前をイーサン・ウィンターズと言います。彼は死ぬ間際まで、自分を人間だと信じていました。いえ、周囲も、ごく限られた一部の者以外は彼を人間だと信じて疑わなかったようです。しかし、彼は明らかに人間ではなかったのです」
愛原:「と、言いますと?」
善場:「一度死んだ人間が、全く生前の状態のまま生き返る。その生き返った人間は、人間だと言えるでしょうか?」
愛原:「えーと……」
善場:「私でさえ、一度は化け物にされた者です。しかし、死んではいませんよ。生きたまま、ちゃんと人間に戻れました。しかし、ウィンターズ氏の場合は違います」
愛原:「で、では……?」
善場:「今は特異菌があるので、遺骨からでも蘇生が可能なのかもしれません。愛原所長、確かめに行ってはもらえませんか?これは私からの依頼です」
愛原:「わ、分かりました!すぐに宮城に向かいます!」
善場:「明日でいいですよ」
愛原:「は!?」
善場:「今日はリサの誕生日を祝う日でしょう?それをすっぽかしては、新たなバイオハザードを生むことになります。それは何としてでも阻止しなければ、なりません」
愛原:「そ、それもそうですね」
善場:「それと、恐らくAkibaエージェンシーに遺骨捜索の依頼をしたのは、遺族でしょう。国際テロ組織ヴェルトロが事実上の犯行声明を出したことで、地元の警察では手に負えないと判断しましたから」
愛原:「そうなんですね」
善場:「明日の朝一番で結構ですので、お願いします」
愛原:「分かりました。リサも一緒でいいですか?」
善場:「いいでしょう。その方が自然でしょうから」
愛原:「分かりました」
私は電話を切った。
愛原:「高橋、明日朝一で伯父さんの所に行くぞ。公一伯父さんの所だ」
高橋:「あの名誉教授っスか?あの人、そんなに悪い人だったんスかね?」
愛原:「俺も信じたくない。だが、何らかの事情があるのかもしれない。それを調べに行きたいんだ」
高橋:「お供します!」
愛原:「リサも一緒に行くが、いいな?」
高橋:「先生の御意向でしたら……」
愛原:「善場主任にも、そうしろと言われたんだ。そこを自分に言い聞かせて納得してくれ」
高橋:「御命令とあらば……」
愛原:「とにかく、今日は予定通り、家でリサの誕生日パーティーだ。分かったな」
高橋:「うス」
私はパソコンのマウスを動かし、キーボードを叩いた。
愛原:「明日の新幹線の予約だ。それと、レンタカーだな。また、運転は頼むぞ」
高橋:「あ、はい。それは任せてください」
私はJR東日本のサイトにアクセスして、明日の新幹線を予約しようとした。
と、また事務所の電話が鳴る。
高橋:「ハイ、愛原学探偵事務所っス」
善場:「あ、善場です。愛原所長はもう新幹線を予約しましたか?」
高橋:「今やってるところだが?」
善場:「こちらから新幹線は手配するので、それは中止してもらってください」
高橋:「わ、分かった!先生!」
高橋はすぐに私にその旨伝えて来た。
今ちょうど空席照会をしているところであり、まだ予約はしていなかった。
愛原:「もしもし、お電話代わりました。何か事情が変わったんですか?」
善場:「そうです。作戦上、やはり今日中に宮城入りして頂きます。要は前泊ですね」
愛原:「前泊!」
善場:「新幹線のキップと、宿泊先のホテルの宿泊券はこちらでお送りします」
愛原:「レンタカーはどうしましょう?私の推理が正しければ、伯父の送り迎えには期待していけないでしょうし、タクシーを使うのも……」
善場:「それは所長の判断にお任せします。レンタカーの手配もお任せします。その費用については、後でこちらに請求して頂ければ、お支払いさせて頂きますので」
愛原:「リサには何と言えば……」
善場:「パーティーはできますよ。要は、その後で出発して頂ければ良いので」
愛原:「あ、そうなんですか」
善場:「つまり、夜の新幹線で出発して頂くということですね。バイク便でそちらに届けますので、しばらくお待ちください」
愛原:「わ、分かりました。つまり、デイライトさんでは、それくらいのことをする確信を得たのですね?」
善場:「内容については、今はお話しできませんが、つまりはそういうことです」
愛原:「分かりました。その御依頼、お引き受けしましょう」
善場:「御理解が早く、助かります。リサの方も説得をお願いします。場合によっては、リサの力に頼ることも想定できますので」
愛原:「分かりました」
伯父さん、何をやったんだよ。
ていうか、遺骨泥棒なんて……。
16時頃、バイク便が届いた。
その中には、夜の新幹線のキップと、仙台駅近くのホテルの宿泊券が入っていた。
どうやら、ガチのようだ。
もしも単なる調査であれば、当初の予定で良かっただろう。
しかし、ガチの作戦となると話は別になる。
私はスマホを取り出し、リサに大事な話があるから早めに帰るように伝えた。