報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原の転院」

2021-11-12 19:58:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月23日10:00.天候:曇 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センター地下医療施設]

 今朝の朝食はスプーンとフォークで食事ができた。
 筋力は少しずつ戻りつつある。
 早いとこ、手足の感覚を取り戻して、ちゃんとした固形食が食べたいものだ。
 もっとも、今日からスプーンとフォークが使えるようになったわけだし、消化器系などの病気で療養しているわけではないので、スプーンとフォークで完結できる固形食なら食べれるだろう。
 事実、今朝の朝食は、普通の食パン(マーマレード付き)とコーンスープ、カットフルーツにヨーグルトが出された。
 その後はここを出る為に、医師の診察を受ける。
 筋力以外は、特に異常は無かった。
 移動も今は車椅子となっている。
 ここに来たばっかりの時は、ベッドで移動する有り様だったというのに。

 善場:「おはようございます、愛原所長。お体の具合は如何ですか?」
 愛原:「とてもいいです。ただ、今だに筋力が戻ってなくて……」
 善場:「新たな転院先が見つかりましたので、今から移動します」
 愛原:「もう準備はできてますよ?それで、高橋達は?」
 善場:「もうすぐここに……」
 高橋:「先生ぇぇぇぇっ!!」
 リサ:「先生ぇぇぇぇっ!!」

 ん?おかしいな?
 BOWが1人増えてね?

 高橋:「御無事で良かったっス!」
 リサ:「先生!会いたかったよォ!!」

 リサは隠すことなく、第一形態になっていた。
 高橋は凄まじい迫力だったので、BOWに見えてしまったようだ。

 愛原:「あ、ありがとう……」
 高橋:「先生、俺が車椅子押します!」
 リサ:「先生、私が先生を担いであげるねぇ!」
 高橋:「だったら俺はおんぶだ!」
 リサ:「私はお姫様抱っこ!」
 愛原:「あー、もううるせぇ!」
 善場:「静かにしなさい!」
 高橋:「サーセン……」
 リサ:「はぁい……」
 愛原:「夢じゃない……んだな?」
 善場:「現実で間違いないですよ」
 愛原:「先生、ガチのリアルです!」
 リサ:「そう!ざっつらいと!」
 善場:「すぐに退所の手続きをしますので、所長は車椅子へ」
 高橋:「先生、俺が肩貸します!」
 リサ:「じゃあ私、胸貸します」
 高橋:「無ェ胸貸せねーだろ!w」
 リサ:「じゃあ、触手貸す!」
 愛原:「肩だけでいいから」

 私は高橋に肩を貸してもらい、ベッドから車椅子へと移動した。

 リサ:「これでも少し大きくなったのに……ブツブツ……」
 愛原:「確かに少し大きくなったな」
 リサ:「そうなの!ブラのサイズが合わなくなったから、先生が入院している間に買い替えたんだよ!」

 リサは制服を着ていたが、まだ9月ということもあり、夏服だった。
 リサはブラウスの第2ボタンも外して、私にブラを見せようとした。

 善場:「はしたないからやめなさい」
 リサ:「……はーい」

 さすがのリサも、『先輩』リサ・トレヴァーの指示には従わざるを得ない。

 愛原:「サイズ、Aカップだっただろ?Bになったってことか?」
 リサ:「そう!これでも少しずつ大きくなってるからね!」

 たった1ヶ月の間だけなのだが、背も心なしか伸びているような気がする。

 愛原:「そうか……」
 善場:「愛原所長、これを……」
 愛原:「何だい?」
 善場:「サングラスです。所長、外に出るのも1ヶ月ぶりですよね?恐らく、目も紫外線慣れしていないと思うので……」
 愛原:「なるほど、そうか」

 私はサングラスを掛けた。

 高橋:「先生!ダンディっスよ!」
 リサ:「まるで、先生がボスみたい」
 愛原:「そ、そうなのか……」

 仕事でサングラスを掛けないわけではない。
 ただ、ここ最近は掛けることはないな。
 さすがに、松田優作みたいな恰好はしないよ?
 こうして、私は暫くぶりに地上に出た。

 愛原:「うおっ、まぶしっ!」

 外は曇っていたのだが、それでもサングラス越しに紫外線を感じると、私は目を細めた。

 リサ:「どう?私の気持ち、少しは分かる?私は地下の研究所に何年も閉じ込められていたんだよ?」
 愛原:「そ、そうだよな!大変だったな」
 善場:「もしも悪さをしたりしたら、また薄暗い地下研究所に逆戻りだからね?」
 リサ:「わ、分かった。いいコにする……」

 地上の駐車場では、1台のミニバンが停車していた。
 善場主任の部下と思しき人がハッチを開けて、中からスロープを引き出す。
 いわゆる、ユニバーサルデザインタクシーになっていた。
 私は部下の人に車に乗せてもらった。
 このままで、車椅子はベルトに固定される。

 善場:「荷物は横に乗せてください」
 高橋:「分かった」

 高橋とリサはリアシートに座る。
 部下の人はスロープを収納すると、ハッチを閉めた。

 愛原:「どこの病院に転院するんですか?」
 善場:「八王子の病院です」
 愛原:「八王子。さすがに、都心ではないか……」
 善場:「そうですね。BSAAなどがうるさいもので……。しかしリハビリが終われば、もう口出しはさせませんから、そのまま帰宅できるはずですよ」
 愛原:「なるほど」

 車が出発した。
 やはりというべきか、出る時は守衛所のある正門から出る。
 そこから退構手続きをして、ようやく外に出ることとなる。

 愛原:「俺が夢の中を駆けずり回っている間、何か進展はあったのか?」
 高橋:「まあ、そうっスね。色々とありました」
 愛原:「色々とあった?」
 高橋:「そうっスね。まず、斉藤社長が書類送検されました」
 愛原:「書類送検!?」
 善場:「リサの寄生虫を勝手に採取し、それを新薬開発に使っていたことを突き止めました。本当はこのまま逮捕して起訴処分としたかったのですが、まあ、向こうも狡猾なもので、腕の立つ弁護士を用意しましてですね……。まあ、結局は書類送検に収まったというわけです」
 高橋:「先生、斉藤社長んちの1階のトイレのことですよ」
 愛原:「ああ!」
 善場:「結局は愛原所長達の画像で、何とかなりました。あとは証拠隠滅に協力した工事会社を、家宅捜索したりしましてですね……」

 工事会社も、とんだとばっちりだっただろう。

 リサ:「新しい薬ができる前に、善場さん達がサイトーのお父さんを捕まえたから」

 新しい薬ができて、それが出回ってウハウハしたら逮捕だったのだろう。
 警察によってはわざとそこまで泳がせて逮捕するところまでやるだろうが、善場主任達の機関ではそこまではしなかったようだ。
 本当に斉藤社長を社会的に抹殺したいわけではないようだ。

 愛原:「あとは?」
 リサ:「『12番』が新しくできたことが分かった」
 愛原:「『12番』?」
 善場:「私の後釜です。私が『0番』になったことで、『12番』は欠番になったはずですが、白井は新たに造ったようです」
 愛原:「新たに造るなよぉぉぉ!そう簡単に造るなよぉぉ!」
 善場:「ただ、詳細は分かりません。もしかすると、それまでのリサ・トレヴァーですら無いのかもしれません」
 愛原:「エブリンみたいに、特異菌?」
 善場:「かもしれませんね。ただ1つ、明らかなことが……」
 愛原:「何ですか?」
 リサ:「“花子さん”の遺骨が盗まれた」
 愛原:「はい!?」
 リサ:「花子さんの名前、斉藤早苗さんって言うの?そのお墓が暴かれて、骨壺が盗まれていたんだって」
 愛原:「はあぁ!?」

 な、何てことを……!

 善場:「暴かれた墓石の前には、ヴェルトロのロゴマークの書かれた布が落ちていたことから、白井がヴェルトロに依頼して墓暴きをした可能性が高いと見ています。時系列的に、その後に『新12番』の存在が噂されたことから、その遺骨を材料に、何らかの方法で造ったものと思われます」
 愛原:「それって、リサより強いのでしょうか?」
 善場:「分かりません。今のところ、詳細は何も分かっておりませんので」

 私が意識を失っている間に、白井が逮捕されるか射殺されていれば万々歳だったのだが、世の中そんなに甘く無いようだ。
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“私立探偵 愛原学” 「探偵の目覚め」

2021-11-11 19:50:18 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月20日17:02.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センター地下医療施設]

 愛原:「…………」

 ここはどこだ……?
 まだ……夢の続きなのだろうか……?
 私は周りを見渡した。
 どうやら、病院らしい。
 しかし、どうしてここにいるのか分からない。
 あれか?
 やはり私は空襲の爆発に巻き込まれて、その後、病院に搬送されたのだろうか。
 しかし、その割には設備は近代的なものだが……。

 看護師:「失礼します」

 そこへ、女性の看護師が入って来た。

 看護師:「意識が戻られましたね。すぐに、先生が来ますから」
 愛原:「ここはどこなんです?」
 看護師:「『藤野の地下』と言えば、分かりますか?」
 愛原:「藤野の地下……えっ!?」

 私はすぐに国家公務員特別研修センターの地下研究施設のことを思い出した。
 私がそう言うと、看護師は大きく頷いた。

 看護師:「そうです」
 愛原:「どうして私はここに……?」
 看護師:「それは……」
 医師:「失礼します」

 そこへ、白衣を着た男性医師が入って来た。

 医師:「愛原学さん。意識が戻りましたね。ご家族や関係者への連絡は、こちらでしますので、愛原さんはしばらく安静にしてください」
 愛原:「私は今、どういう状態なのでしょう?何だか……体がよく、動かないのですが……」
 医師:「ええ。1ヶ月も意識が無い状態でしたから、筋肉の機能が衰えているのでしょう。復帰の為には、リハビリが必要です」
 愛原:「い、1ヶ月!?」
 医師:「はい。愛原さんは8月20日、東京で起きたバイオテロに巻き込まれ、まるっと1ヶ月、意識不明だったのです。そして今、意識を取り戻されたのです」
 愛原:「あ、あの……それって、清住白河駅の……?」
 医師:「そうです」
 愛原:「都内で起きたバイオテロに巻き込まれて、どうして私はここに?都内の病院じゃ、ダメだったんですか?」
 医師:「最初は都内の大学病院に搬送されました。しかし、愛原さんには高濃度のTウィルスが注入されたことが分かり、最終的にはここの施設に移されたのです」
 愛原:「しかし、私はTウィルスに対する抗体を持っているはずですが……」
 医師:「その抗体の力をも上回る高濃度です。もしも抗体が無かったら、愛原さんはいわゆるゾンビにはならず、そのまま死亡していたと思われます」
 愛原:「それで、今の私の状態は……?」
 医師:「高濃度のワクチンを投与しまして、今は体内のウィルスは死滅している状態です。ただ、その副反応として、筋力の低下などを起こしているわけです。この後、検査などを行いますので、よろしくお願いします」
 愛原:「あ、はい。お願いします。あの……よく都合良く、高濃度のワクチンなんて用意できましたね?」
 医師:「日本アンブレラの開発したBOWリサ・トレヴァー『2番』。彼女からワクチンの材料を抽出しました。それから精製したものです」
 愛原:「リサが!」

 段々と思い出して来た。
 私は都営大江戸線の終電車内で、白い仮面を着けた少女に襲われた。
 恐らく、リサ・トレヴァーの亜種だろう。
 どうやらこの時に、高濃度のTウィルスを注入されたようだ。
 リサ・トレヴァーやネメシスなど、BOWから直接ウィルスを注入されてしまえば、例え抗体を持っていたとしても感染・発症してしまう。
 だが、『2番』のリサは本種である為、そこからワクチンを作ることは可能だ。
 なるほど。
 リサのおかげで助かったのか。

[同日20:00.天候:不明 同施設]

 脳の検査が大掛かりだったような気がする。
 Tウィルスは脳も侵食し、ここがやられると完全にゾンビになる。

 検査技師:「うーむ……。検査の結果、脳に異常は見当たらずです」
 医師:「よし。それでは愛原さん、ご苦労さまでした。明日も頑張りましょう」
 愛原:「はい」

 私はベッドに乗せられたまま、検査室をあとにした。
 そして最初に目が覚めた病室へと戻される。
 そこは、総合病院の個室のような雰囲気だった。
 といっても、応接セットとかまで付いている高い個室というわけではなく、大部屋をコンパクトに個室にしただけといった感じの部屋。

 看護師:「愛原さん、連絡が付きまして、23日に面会に来られるようですよ」
 愛原:「そうですか」
 看護師:「その前に、デイライトの職員さんが面会に来られると思いますが……」
 愛原:「善場主任ですね。分かります」

 随分と寝たわけであるから、眠くないはずなのだが、それでもまだ頭がボーッとする。
 まあ、質問されれば何とか答えられる感じの意識レベルといったところか。
 寝る前に注射を打たれた。

 看護師:「少し、眠くなりますよ」
 愛原:「…………」

 なるほど……。
 確かに……眠くなる……な……。

[9月21日10:00.天候:不明 同施設]

 朝の7時に看護師に起こされると、まず検温をされた。
 体温は平熱である。
 それから、まだ筋力が衰えて、ろくに物も掴むことができなくなっていた私は、朝食は点滴で取ることになった。
 恐らく、こういった食事とかのリハビリもこれから行うことになるのだろう。
 しかし……それくらいだったら、もう普通の病院に移っても良いのではないだろうか?

 善場:「失礼します」

 私が検査室から出て病室に戻ると、善場主任が訪ねて来た。

 善場:「御無事で何よりです」
 愛原:「善場主任……」
 善場:「体内のTウィルスは死滅したようですが、ワクチン投与前に体内のあちこちがやられたようですね」
 愛原:「あー、そういうことか」

 新型コロナウィルスだって、ウィルスに痛めつけられた肺は、例えウィルスがいなくなったとしても、しばらく傷ついたままだから後遺症として残るのだろう。
 私の体もTウィルスに痛めつけられたというわけか。
 筋力が衰えたのはワクチンの副反応だというが、Tウィルスの後遺症も否定できないそうだ。

 愛原:「リサからワクチンを作ったそうですね。リサに感謝しないといけない」
 善場:「これもまた、我々がBSAAにリサの助命を願い出た理由の1つでもあります。『0番』たる私でも代行できたのでしょうが、しかし私の場合はもう既に人間に戻っているということもあって、弱いワクチンしか作れないでしょう」

 BSAAは、とにかくBOWの存在自体を認めない主義である。
 にもかかわらず、今年2月のルーマニアで起きたバイオハザード事件において、BSAA本部がBOWを作戦に投入していた疑いが持たれている。

 愛原:「私はいつまで、ここにいるのでしょう?リハビリだけでいいなら、普通の病院でもいいはずですが……」
 善場:「今、ブルーアンブレラが国内でリサ・トレヴァー亜種の掃討作戦と、白井伝三郎の追討作戦を行っておりますので、それが終了するまでは……といったところですね」
 愛原:「え?でも、ブルーアンブレラは国内での活動が認められていないんじゃ?」

 すると善場主任は、溜め息をついた。

 善場:「米国からの圧力に、政府は屈したのですよ。BSAA極東支部が中国にあるのは御存知ですね?日本地区本部は日本国内にありますが、BSAA極東支部が中国にあるのを警戒した米国政府が、なるべくブルーアンブレラを使うように迫ったようです。今、米中関係は緊張状態にありますので……」

 なるほど。
 確かに、ブルーアンブレラが中国に支部があるという話は聞いたことがない。
 しかし、BSAA極東支部には中国人民解放軍からの出向者や退役者も多く所属しているという。
 米国政府は、それを警戒したようである。

 愛原:「政治的な理由ですか。それなら、高野君も無罪放免に……」
 善場:「は?できるわけないでしょ?彼女は東京拘置所を脱獄したんですよ?お忘れですか?」
 愛原:「あ、ハイ。すいません……」

 いつもポーカーフェイスの善場主任が、この時ばかりは表情を変えた。
 よほど高野君のことが嫌いなんだな。

 善場:「とはいえ、状況は刻一刻と変わりますから、それによっては早めに移れるかもしれません」
 愛原:「そうなってほしいものですね。何しろここ、地下施設だから外が全く見えないもので」
 善場:「ですよね。私からも、上申はしてみます」
 愛原:「ありがとうございます。是非、お願いします」
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“私立探偵 愛原学” 「タイムスリップ?」

2021-11-11 14:59:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明 時刻不明 天候:不明 場所:不明(東京中央学園上野高校旧校舎?)]

 エレベーターのドアをこじ開けると、そこはトイレだった。

 愛原:「???」

 それも、随分と古めかしいトイレだ。
 水洗式ではない。
 私が一歩外に出ると、ドアが勝手に閉まった。
 振り返ると、私がいたのは個室だったようだ。
 ドアを開けると、汲み取り式の和式便器があるだけで、エレベーターは全く無い。
 一体、どうなってるんだ?
 窓の外を見ると、あちこちで火災が起きているのが分かった。
 それも、時折爆発音がする。
 それはガス爆発とかではなく、爆弾が爆発する音だった。
 そして、上空からはプロペラ機の轟音。

 愛原:「な、何だ?!空爆か!?」

 しかし、BSAAがプロペラ機を持っているとは聞いたことがない。
 オスプレイみたいなのが欧州本部や北米支部に配備されたみたいな話は聞いたことがあるが。

 愛原:「って、あれ!B29じゃん!?」

 第2次世界大戦中、米軍に配備された『超空の要塞』。
 当時の日本国を次々と焼け野原にしていったことが有名だ。
 ということは……。

 愛原:「って、それなに!?大戦中の日本に来たってこと!?」

 私は何が何だか分からなかった。
 とにかく、トイレの外に出た。
 それはどうやら学校であるらしかった。
 木造校舎ならではの木張りの廊下が続いている。
 って、木造なんて、燃える一択だろうが!

 愛原:「ん!?」

 すると、廊下の向こうから誰かが走って来るのが分かった。
 それも、1人や2人ではない。
 5~6人くらいの男子学生だった。
 大戦中よろしく、学生服ではなく、国民服のような服を着て、帽子を被っている。

 愛原:「キミ達……」

 何やら必死だ。
 私が声を掛けるが、彼らは私のことなど、まるで見えないかのようにすり抜けた。
 ……ん?すり抜けた!?
 そうなのだ。
 1人とは明らかにぶつかった感じなのに、そんな感触など全く無く、すり抜けて行ったのである。

 愛原:「どこへ行くんだ?」

 私は彼らの後を追いかけた。
 彼らは、とある教室に入った。
 そこで私は気づいた。
 ここは、東京中央学園上野高校の旧校舎なのではないかと。
 もちろん当時は旧学制なので、旧制中学が何かか?
 確か、大戦中は軍需工場の一部になったり、末期には野戦病院として使用されていたと聞いたことがあるが……。

 愛原:「防空壕か!?」

 珍しいことに、空き教室の中には防空壕があった。
 彼らはここに避難するようである。
 と、近くで爆発が起こった。
 爆弾が落ちたようだ。
 後者の外にある植木が燃え上がる。

 愛原:「おい、私も入れてくれよ!?」

 私は彼らに言ったが、彼らは私の存在自体に気づいていないかのようだった。
 1人の肩を叩こうとしたが、すり抜けてしまった。
 やはりだ。
 ここでは、私は幽霊のようなものなのだ。
 これは一体、どういうことなんだ???
 私が首を傾げながら彼らの様子を見た。
 防空壕はかなり小さく、15歳程度の少年達が5~6人入っただけですぐ満員になるほどであった。

 愛原:「ん!?」

 跳ね上げ式の扉を閉めた直後、外が騒がしくなった。
 どうやら、他にも避難者がいるようだ。

 愛原:「え!?」

 だが、それは数えるほどではなかった。
 20~30人もの少年少女達が教室に駆け込んできたのである。
 女子生徒はモンペ姿だったし、男子生徒は国民服を着ていた。
 どうやら、学内に併設された軍需工場か何かで作業をしていたようである。
 しかし、どうしてここに避難して来たんだ?
 外の方がまだ広い防空壕とかあるだろうが。

 愛原:「あっ!?」

 窓の外を見て、その理由が分かった。
 学校には不釣り合いな工場らしき建物がすぐ近くにあるのだが、そこが火災を起こしていた。
 どうやら、避難する間も無く、爆弾の直撃を受けたようである。
 ここに来たのは、その生き残り達か。
 彼らもまた、私の存在に気づいていない。
 彼らの話を聞いてみると、工場に爆弾が直接落ちたことで、防空壕への避難経路が経たれてしまった。
 また、それでも辛うじて防空壕へは辿り着けたが、そこに爆弾が直接落ちてしまっては、一たまりも無かったようだ。
 そこで途方に暮れていると、学校の教室に臨時で掘られた防空壕があると誰かが言い出し、それを目指して避難してきたようである。
 しかし、それを言い出したのは先ほどの男子生徒達か?
 彼らが入ったことで、もうここは満員のはずだが、他には無いのか?
 ……無いのだろうな。
 あれば、誰かがそこへ行こうとするだろう。
 先に入った少年達は、頑なに扉を開けようとしなかった。
 私はどうやら幽体のようだが、避難しなくても大丈夫かな?

 と!

 愛原:「うっ!?」

 ついに爆弾がここにも落ちた。
 ヤベェと思った時には、私も爆風に浚われ、教室の壁に叩きつけられた。

 愛原:「でも、生きてる……。ううっ!」

 まあ、幽体のようだからな。
 しかし、周りの生徒達は……とてもグロテスクな状態なので言えない。
 まあ、体のパーツがバラバラなったとだけ言っておこう。
 もしかして、東京中央学園の怪談話のルーツは、ここから来てるんじゃないのか?
 こんなに冷静に分析できるのは、霧生市のバイオハザードを体験してしまったからか、それとも私が幽体だからなのか……。

 男子生徒:「うう……」

 教室に火が点いて、メラメラ燃え出した。
 と、そこへ先に逃げ込んだ男子生徒の1人が、跳ね上げ式の扉を開けて這い出て来た。

 男子生徒:「いてて……。死ぬかと思った……」

 爆風の直撃を避けられたこともあってか、彼らは無事だったようだ。

 男子生徒:「か、火事だ……!」

 男子生徒は自分だけ防空壕から出ると、這うように教室から出て行った。

 愛原:「おいおいおい!一緒に行かんのか!?」

 私は防空壕の中を覗いて見た。
 死んでいるのかどうか分からないが、意識が無いようだ。
 さすがに衝撃とかはあっただろうから、気絶したのかも。
 って、いやいやいや!逃げないと焼け死ぬぞ!

 愛原:「おい、待て!!」

 私が木造のせいで火の回りが早い校舎の中を、少年の後を追って行った。
 そして、何とか彼に追い付き、彼の肩を掴んだ。
 そう、今度は掴めた!

 少年A:「!!!」

 少年は驚いてこちらを振り向いた。
 私が開口一番に聞いたのは、何故かこれだった。

 愛原:「キミ、名前は!?」

 思えば、何でそんなことを聞いたのだろう?
 しかし、少年は私の気迫に圧倒されてか、こう答えたのである。

 少年A:「斉藤秀平……」
 愛原:「なにっ!?」
 少年B:「ま、待て……!斉藤、キサマ……!!」
 斉藤秀平:「う、うわっ!あぁ……!」

 そこへ先ほどの教室から、別の少年がやってきた。
 しかし、今の斉藤少年がほぼ無傷なのに対し、こちらは明らかにケガをしている。
 頭から、手足から血を流していた。
 その様子を見た斉藤少年は、慌てて逃げ出した。

 愛原:「キミ、名前は!?」
 少年B:「白井伝平……」

 突然、目の前が明るくなった。
 また爆弾が落ちたのだろうか?
 とにかく、私は光に包まれた。
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“私立探偵 愛原学” 「夢に閉じ込められた愛原」

2021-11-09 19:51:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明 天候:風雨 場所:不明だが、何かの大型船内]

 こ、ここはどこだ……?
 船の中……?
 船は大きく揺れている。
 薄暗い船室だ。
 とにかく、外に出なければ……。
 私は起き上がると、部屋のドアを開けようとした。
 だが、開かない。
 どうやら、4桁のナンバーロック式の鍵になっていて、番号を合わせないと開かないようだ。
 ドアノブの下には、メモ書きが貼られていた。

 『大石寺の番地』

 愛原:「な、何だこりゃ……?」

 その時、丸窓の外からバシャーッという水の音がした。
 まるで、外からバケツ一杯の水を思いっ切りブッ掛けられたかのようだ。
 外は嵐だった。
 それで船が大きく揺れているのだ。
 小型船なら、ひとたまりも無い中をこの大型船は航行を続けている。
 船室にいた方が安全なのかもしれないし、実は甲板で既に避難が開始されているのかもしれない。
 とにかく、船員を捕まえて何が起きているのか聞いた方がいいだろう。
 私は船室内を探し回った。
 どうして私はここにいるだろう?
 それ以前に、ここは私の船室なのだろうか?
 テーブルの下に散乱した書類には、『夏期講習のお知らせ』とか書いてあった。
 そして、そこには大石寺の住所が。

 愛原:「富士宮市上条2057か。これだ!」

 私は4桁のシリンダーを回した。
 すると、カチッという開錠音が聞こえた。

 愛原:「よし!」

 私がドアを開けた時だった。

 乗客A:「火事だ!爆発だ!」
 乗客B:「逃げろーっ!」

 船室前の廊下が大騒ぎになっていた。
 乗客と思しき人達が何人も、私の前を右から左へと走って行く。
 そして、ボンッという音と共に、右側の廊下の奥で爆発が起き、そこから炎が見えた。
 火事か?!
 こりゃまずい!
 私も他の乗客と共に、左方向へと逃げた。

 ゾンビA:「アァア……!」
 ゾンビB:「ウゥウ……!」

 途中の船室のドアから、それを開けてゾンビ化した乗客達が襲って来る。
 バイオハザードが起きていたのか!?
 私はゾンビ達の攻撃を交わした。
 ゾンビ達は足を引きずったり、酔っ払いの千鳥足のような感じで私を追って来る。
 もちろん、そんな足取りでは速く追い掛けることはできない。
 私は彼らを振り切ると、廊下の角を曲がった。

 愛原:「あっ!?」

 しかし、そこは行き止まりになっていた。
 厳密に言えば行き止まりではないのだが、エレベーターがあった。
 豪華客船よろしく、シックな装飾が施されたドアがある。
 今、船内は非常事態だろうに、エレベーターなんて動いているのだろうか。
 私が呼び出しボタンを押すと、ランプが点いた。
 しかし、すぐにドアは開かない。

 ゾンビA:「アァア……!」
 ゾンビB:「ウゥウ……!」
 ゾンビC:「ゥアアッ……!」

 ゾンビ達は動きは遅いながらも、私を追いかけて来た。
 しかも、何か増えている。
 更に言えば、今の私は丸腰だ。
 とてもじゃないが、今の状態ではゾンビと戦えそうにない。
 早く……!早く来てくれ!
 エレベーターにはインジゲーターが無いので、カゴが今どこにいるのかは分からない。
 ボタンを押したらランプが点いたので、動いてはいるようだが……。

 チーン!

 おおっ、やった!
 ようやくやってきたのか、古めかしいチンベルが鳴ってドアが開いた。
 まるで、仏壇の鈴のような音色だ。
 幸いエレベーターには、誰も乗っていなかった。
 どこへ行けばいいのか分からないが、上に行けばいいだろうか?
 どっちみち、船橋(ブリッジ)とかは上にあるだろうし、船が沈没する時、船底から水が溜まる。
 うん、上に行くのがいいだろう。
 私は最上階のボタンを押した。

 愛原:「!?」

 そして、『閉』のボタンを押そうとした時、ゾンビ達の集団の先頭に目をやった。
 そこで私は固まった。
 先頭にいたのは……。

 愛原ゾンビ:「アァア……!」

 え……?何で……?
 何で私がいるの……?
 え?ドッペルゲンガー???
 そ、それとも、私のそっくりさん?

 ブーッ!

 まるで私の予想がハズレであるかのように、ブザーが鳴ってドアが閉まった。
 ドアが閉まると同時に、ゾンビ達が外側のドアに辿り着き、バンバン叩いて喚いている。
 しかし、エレベーターが上に動くと、そんな喚き声も聞こえなくなっていった。
 よし、何とかこれで逃げ切ったぞ。
 問題は上に着いてからだ。
 上が安心安全であることの保証なんて、どこにも無いからな。
 案外、下よりも危険だったりして。
 そんなことを考えていた時だった。

 ドォーン!

 愛原:「うわっ!?」

 突然、何かが爆発するような音がして、エレベーターが大きく揺れた。
 しかもその衝撃でエレベーターが止まってしまった。
 お、おい!冗談じゃないぞ!こんな所で止まるなんて!
 私が非常ボタンを押しても、何の反応も無い。
 『開』のボタンや他の階のボタンを押しても、うんともすんとも言わない。
 そうこうしているうちに、もう一度爆発が起きた。

 愛原:「わあっ!?」

 そして、その爆発の衝撃のせいか、今度はカゴ内が停電してしまった。
 次に、今度はエレベーターが下に落ちて行く。

 愛原:「や、やばい!!」

 これはロープが切れたか何かして、最下部まで落下するパターンだ!
 私はジャンプして、落下の衝撃に備えた。
 そして、ジャンプした瞬間、エレベーターは最下部まで落ちた。
 た、助かったか……?

 愛原:「お、これは?」

 落ちた時のショックのせいか、ドアが少しだけ開いた。
 その隙間から、明かりが漏れてくる。
 だが、ただの明かりではないようだ。
 オレンジ色の光だが、何となく熱くて焦げ臭い。
 そうだった!
 船内は火事を起こしているのだった。
 船底に落ちたのかもしれないが、急いで脱出しないと、ここで焼け死んでしまう。
 私はドアをこじ開けた。

 愛原:「ん!?」

 だが、おかしいことに気づいた。
 エレベーターのドアは内側(カゴ側)と外側(フロア側)に分かれている。
 で、どちらも引き戸のはずだ。
 内側のドアは確かに両開きの引き戸だったが、外側のドアは更に外側に開けるタイプのドアだったのだ。
 こ、これはあれだろうか?
 最下層のフロアどころか、更に下の機械室まで落ちたということなのだろうか?
 その割には何だか古めかしい木製のドアだ。
 私がそれを開けると、とんでもない光景が広がっていた。
 それは……。
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“愛原リサの日常” 「都心のバイオハザード」

2021-11-09 11:07:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月20日01:30.天候:晴 東京都江東区白河 地下鉄清澄白河駅]

 まだテレビクルーは到着していないが、たまたまテレビ局の記者が駅にいた為、その記者は手持ちのスマホで動画撮影をしながらリポートをしている。

 テレビ記者:「私は今、地下鉄の清澄白河駅前にいます。私は、たまたま都営地下鉄大江戸線の最終電車で帰宅したところです。私は先頭車に乗っていたのですが、最後尾の車両で、乗客達が暴れ出し、駅員達に襲い掛かったというのです。その様子は、さながら○×県霧生市等で起こったバイオハザード事件に酷似していることから、車内にゾンビウィルスが撒かれたものと思われます。今、駅は完全に閉鎖され、警視庁の機動隊が辺りを封鎖しており……」
 機動隊員A:「はい、危ないから下がって!」
 軌道隊員B:「封鎖域を拡大します!離れてください!」
 テレビ記者:「えー、たった今、封鎖区域が拡大されました。警察の話によりますと、まもなく現場にはBSAA、国連組織の1つであります対バイオテロ特殊部隊が到着する見込みです。対バイオテロ組織としましては、民間レベルでは最大の組織“ブルーアンブレラ”が存在しますが、日本国内での活動が認められていない為、BSAAのみとなります。この為……あっ、えー!御覧頂けますでしょうか?駅のシャッターが一部開けられ、そこから突入した機動隊員に護衛されながら、救急隊員が出てきました。どうやら、まだ中に生存者がいたもようです。ここから生存者の様子は分かりませんが、ストレッチャーに乗せて救急隊員が駅構内から出てくる様子は分かります。今のところ生死は分かりませんが、駅構内に取り残されていたと思われる人が救助されたもようです。……あっ、現場にヘリコプターが到着しました!どうやら、BSAAが到着したもようです!BSAA極東支部日本地区本部の部隊と思われます。ヘリで現場に到着し、そこからロープを使って次々と降下して来ます」

[同日03:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション→愛原学探偵事務所]

 リサは高橋と一緒にマンションを出ると、まずは事務所に向かった。
 事務所の駐車場に止めてある車を使う為だ。
 高橋が運転席に乗り込み、車を出そうとした時だった。

 リサ:「あっ!鬼斬りの栗原センパイ!」
 高橋:「なにっ!?」
 リサ:「栗原センパイ!」

 リサが声を掛けると、栗原蓮華が駆け寄ってきた。

 蓮華:「やっぱり愛原先生に何かあったの!?」
 リサ:「やっぱりって……」
 高橋:「何か知ってるみてぇだな?先生がバイオテロに巻き込まれて、意識不明の重体だ。これから、病院に向かうところだ」
 蓮華:「やっぱり、あの鬼が……」
 高橋:「知ってるんだったら、善場の姉ちゃんに話してやれ」
 リサ:「善場さんも病院に行くから、一緒に行こう!」
 蓮華:「分かった」

 蓮華は高橋にスライドドアを開けてもらい、そこからリアシートに乗り込んだ。
 そして、やっと病院に向けて出発する。

 リサ:「一体、何があったの?」
 蓮華:「森下駅の近くで鬼を発見したので、斬り捨てた。だけど、その鬼は453番で、私達の捜している鬼じゃなかった」
 高橋:「オマエの言う『鬼』とは、リサ・トレヴァーのことだな。そいつが現れたのか?」
 蓮華:「ええ」
 リサ:「453番ってことは、完全に亜種だね。ただ単にウィルスばら撒くことしか能の無いヤツ」

 亜種には3ケタの番号を付けるようである。

 高橋:「そいつが先生の電車を襲った犯人か!?」
 蓮華:「分からないけど、鬼なんてそうそういないはずだからね」
 リサ:「だけど、亜種とかは誰かの命令が無いとウィルスをばら撒いたりしないはずだよ。誰が命令したんだろう?」
 高橋:「白井とか、ヴェルトロの奴らか?」
 リサ:「……なるほど」

 リサの発言からして、『最も危険な12人の巫女たち』の1人であるリサは、命令無しでウィルスをばら撒くことができるということになる。
 が、愛原の手前、そのようなことはしないだけのことだ。
 但し、学校では【お察しください】。

 蓮華:「愛原先生はどこの病院なの?」
 高橋:「豊洲の病院だってよ。いくら現場が江東区で、搬送先も江東区内とはいえ、ちょっと遠いぜ」
 蓮華:「江東区は東京23区でも大きい方だからね」
 リサ:「でも、バス1本で行ける」
 蓮華:「ああ。とうきょうスカイツリー駅前から出てる都バスか。だったら、私もお見舞いに行けるかも」

 業10系統のこと。
 蓮華の家の最寄り駅の本所吾妻橋駅の近くを通り、菊川駅前を通り、豊洲駅前を通って、終点の新橋へ至る。

 高橋:「今はコロナで、面会が制限されてるだろ」
 蓮華:「そうかぁ……」

 テレビでは特番で清澄白河駅でのもようを中継で放送しているが、走行中はカーナビ画面に切り替わるので、音声だけである。
 どうやら、BSAAが突入し、構内を徘徊しているゾンビ達の掃討作戦を行っているもようだ。
 今は粗方倒し、取り残された生存者がいないかを確認しているらしい。

 高橋:「駅の方はBSAAに任しときゃいいだろ。俺達は先生の心配だ」
 リサ:「そうだね。……センパイが捜してるリサ・トレヴァーって、あれ?親戚の強い人がやられたっていう……」
 蓮華:「そう。何だか、おかしいことになっててね。最も危険な鬼の生き残りは、あなた1人だけのはずでしょう?」
 リサ:「そうだけど……。強いて言えば、善場さんもそうだけど、あの人は人間に戻ったからなぁ……」
 蓮華:「もう1人いるらしいのよ」
 リサ:「ええっ?」
 高橋:「あぁ!?何だ?『13番』でもいるのか?」
 蓮華:「番号までは分かんないけどね」
 リサ:「でも、そんな話は聞いたことがある。私はそれが『0番』だと思ってたんだけど……」
 高橋:「俺達、最初そう思ってたんだよな。だけど実際フタ開けてみたら、その『0番』は善場の姉ちゃんだったっていうオチだった」
 リサ:「一体、どういうことなんだろうね?」
 高橋:「もしかしたら、姉ちゃんに聞けば何か分かるかもな」

 高橋は車を豊洲に向けて走らせた。
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