とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

「本の数だけ学校がある」出久根 達郎さん

2012-06-24 19:19:00 | 社会人大学
先週の社会人大学は、直木賞作家である出久根達郎さんだった。中学を卒業後、集団就職で上京し、月島の古書店に勤め、1973年に独立し、杉並区で古書店「芳雅堂」を営むかたわらで作家デビュー。1992年に『本のお口よごしですが』で講談社エッセイ賞。1993年に『佃島ふたり書房』で第108回直木賞という経歴の方である。

少年時代、移動図書館に父親が連れて行ってくれたのだが、一人で借りられるのが3冊までという事で、本が好きな父親は息子の名義で6冊借りていたという。その為、自分が好きな本を借りることのできない出久根少年は、架空名義でさらに3冊の本を借りて、漱石全集や江戸川乱歩全集を読んだという。このことから、本でいろんな事を学んだという。

その後、集団就職で東京・月島の本屋に就職が決まり上京したが、自分の勤め先が新刊書店ではなく、かびくさい15坪の店に上から下まで本が積んである古本屋であったので、「出世できるような店じゃないな」とがっくりしたという。しかし、それがかえって幸運だったという。ヒマだから、たくさん本を読める。新刊書店では忙しすぎて本を読む時間などない。たくさん本を読んで、古典の内容をつかみ古本屋の修行になったという事だ。古典の内容をつかむこつは、解説を読めばいいという。 また、索引を見れば、好きな項目から読むことが出来る。こういった経験から、勉強の方法を見つけていったというわけだ、

ほかには、ここだけの話として話された皇室の美智子様にまつわる話は興味深かった。もちろん、ここだけの話しなので詳しいことは書くわけに行かない。しかし、美智子様の人柄を知る上で、貴重な話を聞けたといえる。また、子供の頃読んだことのある「ノンちゃん雲にのる」という童話を、本を片付けるとき、ふと見つけて改めて読みふけったという話もおもしろかった。だいたい、本というものは本棚にしっかり片付けておくと、読まないものだという。何かの拍子に、片付けようとするとき読むものだというのは、わかるような気がする。自分の本棚を振り返ってみても、棚にある本を取り出して読もうとすることはまずない。もちろん一度は読んでいるのだが、二度目になるというのは、ごくまれである。何か調べたり、片付けようとした時、ふと気になって読み込んでしまうという事は良くある。あるいは、引越しで割れ物を片付けるのに古新聞に包んだりしているとき、その中の記事をふと読み込んでしまうという事もある。

講演終了後、出席者からの質問のなかに、本をどう読んだらいいかというのがあったが、出久根さんは最後から読むのがいいという。推理小説などは、犯人が直ぐわかってしまうが、犯人がわかっている上で最初から読んでいくとそのストーリーの展開がよくわかるのだという。実は、私も毎回ではないが、そんな読み方をする事がある。また、巻末の解説を先に読んだりして本の購入の判断にすることも多い。

また、選んだ本を見ると、その人の思想が見えるというのは興味深い話だ。たしかに、本の内容がそれを選んだ人の思想に基づいていることは間違いない。どんな本が好きなのかという事で、その人の思想を垣間見るというのは面白いが、逆にそう思って見られると怖いような気もする。他にも、古書店店主としての、いろんな面白そうな話が、まだまだあったようだったが時間がなくなってしまった。時間があれば、さらに本にまつわる面白い話を聞きたかったものだ。