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『そこに言葉も浮かんでいた』(新日本出版社)『アゲイン アゲイン』(あかね書房)『わくわくもりのはいくえん はる おともだちできるかな』『みちのく山のゆなな』(国土社)『ファミリーマップ』、エンタメシリーズ『家守神』1~5巻、『おはようの声』幼年童話『ヘビくんブランコくん』『オンチの葉っぱららららら♪』、短編集『友だちの木』・歴史物語『アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士』他、好評発売中です。各種ご依頼は、左側のメッセージからお願いいたします。
短編小説集
都会のマンションに暮らす女性を描いた短編集。表題『繭の部屋』では、蚕が糸を吐き繭を作り出すように、主人公の女性は部屋の中で喜びや悲しみ、さまざまな思いを吐露し続けます。そのレトリックが鮮やかで、他の作品にもそれぞれの主人公もまあた繭の部屋にいるような、ダブルイメージのしかけに仕上がっています。
牧康子さんは、牧やすこさん。漢字の方は小説家としてのペンネーム、ひらがなのほうは俳号です。「童子」同人で、句会吟行などでたびたびごいっしょするのですが、(恋の句のやすこ)とも言われています。例えば今月号では、
散るのみの雲場の池の紅葉なり やすこ
という句を発表していますが、これ私が作ったとしたらふつうの情景としてしか読まれないところが、作者がやすこさんとなると、恋の終わりの句か? という読みができるというくらい。
『繭の部屋』の短編それぞれも、女性は恋をし、終わりが訪れるというものがほとんど。いや、全部? プラトニックな恋もあれば妻子のある男性との恋もあり、上質な短編集となっています。やすこさんは、長く某出版社で女性向けのインテリア雑誌の編集をされていた方。なので作品の中の部屋のリアリティはさすがです。読んでいておしゃれな部屋がくっきりと目に浮かんできました。どこか都会のマンションの一室で、息づいている物語です。
やすこさんのHPは、 牧康子の部屋 。本は注文となります。