fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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『abさんご』ー黒田夏子

2013年08月13日 | 日記

 半年に一度、読んだ本の中から5冊程度をピックアップする方式をとっていますが、この『abさんご』、読んだけどたぶん年末の5冊には入れない。でも感想は書いておきたいと思いました。

 この作品が芥川賞を受賞したことは、うれしいことでした。作者の年齢がクローズアップされたことは別として、「生きているうちに見つけてくれてありがとう」という作者の言葉もすばらしいと思います。遅まきながら読んで、確かに評判通り読みにくい、でもとても心惹かれる作品でした。

 文春の選者の評を同時に読み、これだけの作家からこれだけの賛辞を引き出したことに感嘆。読みにくいけれど、意味がわからないというものでもなく、古いかというと新しい感じもする不思議な小説。それが魅力なのでしょう。白黒写真のような、と書いて、いや違うな、セピア色? いや、それとも違う。不思議な靄の向こうの世界・・・。

 これが縦書きで、たとえば「喪のためのくつ」と書かれているものを「黒靴」と普通の言葉で書かれていたら、つまらない物語なのか? というとそうでもないだろうと想像もできます。

 タイトルは結局どういう意味なのかは、最後までわかりませんでした。10年に1作くらいしか書かないということなので、次作は10年後? それともこれまで書いたものの中から出るのでしょうか? 

 でもどうして「おもしろい本」の中には入らないのでしょう。うーん。単純におもしろくない、というのとも違う。この歯切れの悪さ……。樋口一葉を読むと、「ああ、いいなあ」と思うけど、おもしろいとは思えない。実はそんなに好きではないというのと、ちょっとにているかもです。樋口一葉が好きな方は、『abさんご』が好きかもしれません。

   南瓜の花。南瓜の勢いだけがすごい。