梅さんのかわら版.umelog

笛吹川フルーツ公園の紅葉

"柿は女たちの生命の木”

2014-05-16 23:18:57 | 俳句&短歌

 

Photo 5月の句会の兼題に「柿の花」が出た。
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さんの生まれ育った家には、両手では抱えきれないほどの大きな柿の木が何本も植えられていた。
 
目の覚めるような柿若葉の中に花を見つけることは難しいが、散った花を見つけることはたやすい。
 
その時期になると庭中にぽろぽろと零れていて、散って初めて咲いていたことに気づくというような地味な花である。
 
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この兼題が出たあとジュンク堂書店に行く機会があり、柿に関する興味深い本を見つけてきた。柿好きで有名な俳人がいる。

“禅寺丸の実り訪(と)はなむ柿好きの坪内稔典霜月のなかば”

と歌人の今野寿美さんが歌にも詠んでいるように、その俳人とは坪内稔典さんだ。その稔典さんのエッセーをまとめたのが「柿日和」。
 
柿のことばかり書いてある。

「柿は多くは、娘が嫁に行くとき里からもっていったのだといふ。やがてその死んだ日、里からもっていった柿の木で焼いてもらふのである。柿の木の成長は、又自らの死の近づく事を意味してゐた。さうして村人には深い印象をあたへた木であった。」

これは有吉佐和子の小説「紀ノ川」の一節である。昔はどの家にも柿の木が植えられていたのは、こういった意味があったのだ、合点がいった。
自分が死んだら、自分がもっていった柿の木の枝で焼いてくれ…という”静かに生きて閑に死んでいった”昔の女性の生き方を象徴するような話で、切ない。柿は女たちの生命の木だったのである。
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こうして作ったume
さんの句は、二つの句会でそれぞれ特選を頂いた。柿の花は生家の思い出と共に忘れられない花である。