2000年 歩行6:20 休憩2:20
昨夜の強風は低気圧を押し上げ天気は上々、山歩きに相応しい一日となった。未だ朝が早いので外気は身が縮みそうなほど冷たい。登山口は裏妙義の全貌が仰ぎ見られる長閑な山村「岩の平」だ。
6時半出発。民家を抜け畑の中を通り道が登りにかかると、そこはもう川の音と野鳥の囀りだけが支配する世界。一部観光化されてしまっている表妙義と比べて山の静けさが肌で感じられるのが嬉しい。
汗ばんだ体に僅かな冷たさを含んだ風を受けながら1時間45分ほど登り詰めると尾根のたわみ三方境に着いた。ここは厳しい取り締まりを行っていた松井田の関所を逃れ無宿者などが山越えした裏の道、今は四方から集まる登山者が腰を下ろす憩いの広場である。
私達は丁須の頭を背に谷急山へ歩を進めた。見下ろす谷は・・・ふと13年前の苦い思い出が蘇った。そう、そこは道を間違えて止む無く一夜を明かした場所である。今日は安全を心がけて嫌な思い出を塗り替えなくては。
途中、谷急山の一番端にある984m峰に登ると天辺のスペースは人一人がやっと。足元がスッポリ切れ落ちて高度感十分なピークだ。私達はこの名も無きピークをトンガリ山と呼んだ。(足元に烏帽子岩が覗く)
此処からの眺めも素晴らしかった。色合い、輝きで微妙に異なるこの色の重なりをキャンバスの上に表現するのは難しいし文字にするのも難しい。
トンガリ山からの眺望
トンガリ山を過ぎると登山道はいよいよ険しくなる。
谷の美しさに酔いのんびり鳥の鳴き声を聴きながら辿って来た今までの行程とは対照的に滑りやすい火山礫、アップダウンに緊張の糸は張りっ放しだ。
何とか前岩と言うピークに辿り着き休憩。谷急山が手の届く所までやってきた。しかし間に鋭いコルを隔てそう簡単に近づかせてはくれなそうだ。先ずは露出する根を手掛かりに急下降、下を見れば深い深い谷。相変わらず火山礫が滑りやすい。石がカラカラと音をたて谷底へ落ちていく。気が付けば私の体は慎重になり過ぎてカチカチになっていた。
コルに着くと左側足元にV字状の割れ目が不気味に口を開けていた。恐ろしい所へ来てしまったものである。(続きますのでコメント欄クローズ)
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