長年の夢だった巻機山、ようやく登る機会に恵まれた。
今日、明日共に天気は保証付きである。
二人共、忙しい登山は好きではないので避難小屋に1泊する事にした。
明日から3連休だが金曜日の今日はその影響もなく広い桜坂駐車場はまばらだった。
この分だと小屋はもしかして貸し切り? 何だか最高の登山になりそうな予感
滑りやすい赤土の道をひとしきり喘ぎ登れば疎らだったブナの木が何時しかブナ一色に変わった
時々立ち止まっては木漏れ日にきらめく緑に目をやると弛緩しかけた五感がムクムクと頭をもたげて来る様に思えてくる
パッと視界が開けると日差しは強いがようやく得られた爽やかな風が嬉しい五合目に到着
米子沢を流下する真っ白な滝に心が舞い上がった
視界は再び閉ざされ赤土の急登が始まった
耐えるしかない
ギンリョウソウが林床を飾っていたのはこの辺りだったろうか
余りの数の多さに仰天したものだ
そして11時半、六合目に到着した
休んだばかりだが通り過ぎるには惜しい展望台
米子沢とは尾根を挟んで左側に位置するヌクビ沢と割引沢の絶景を眺めながら此処で昼食とする事にした
偽巻機山
辛い登りに容赦はない
次第に小屋一泊の荷が肩に食い込んでくる
もう、全身汗まみれである
「上へ行けばニッコウキスゲの群落ですよ」
3名の通りすがりの若者が掛けてくれた言葉の何と嬉しかった事か
視界が開けたのはそれから間もなく
行く手に偽巻機が姿を現した
目指す本峰はこの山を超えた先
まだまだ遠い、ガンバレ
もう、さえぎる物はない
何時の間にか六合目で仰ぎ見た天狗岩が目の高さになっていた
暑い
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真上から照りつける太陽はジリジリと肌を刺す
天然の涼風が無かったらかなり辛い登りになった事だろう
何か所か進入禁止のロープが張られ笹を切り開いた登山道が出来ていたが滑ったりつまずいたり
これは結構、体力を消耗するものである
急坂のターンを繰り返すと前方に標識が見えた
八合目だ
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先ずは何もかも放り投げ丸太に身を預け暫く放心状態
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一息付いた所で周りを見渡せば何と
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その数といったら・・・
興奮が一気に高まった
ここからは傾斜も緩み偽巻機の頂(九合目)を踏めば小屋は目と鼻の先である
もう、時間は気にしないでノンビリノンビリ歩きたい
九合目から見る巻機山と稜線続きの牛が岳
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平成16年に建て替えられた避難小屋。トイレはバイオで臭いはない。
自転車は汚物を撹拌させる為の物で使用後、前に20回、後ろに10回こぐ
主人は九合目に向かって花の撮影に出かけた
私は二階の窓から暫く景色を楽しんだ後、水場方面へ撮影に行ってみる
未だ太陽は高いが八合目で擦れ違ったグループが最後の登山者の様でもう人影は何処にも無かった
水場周辺は今まで出会わなかったハクサンコザクラやタカネバラ、ショウジョウバカマ、イワイチョウが咲く静寂に満ちた原野である
陽が傾いて辺りは幽玄の世界へと変わっていく
西日を受けた草原が鮮やかに光り流れる雲が薄っすらと赤く染まる
やがて日没の時を迎え山は森閑と静まり返った
聞こえるのは雪渓から流れる水音と小鳥のサエズリだけである