標高差も無く山頂まで僅か40分で登れてしまう備前楯山を取り上げたのは私にとって思い入れのある山だからです。
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H10・5/31
今回、備前楯山を選んだのは久し振りに白石さんに会いたくなったからだ。 風はあるが久し振りの好天に恵まれた。銀山平への林道に入ると庚申山に登った時に気付かないまま通り過ぎていた林道沿いに小・中学校跡、仕事を終え一日の疲れを癒したで有ろうコンクリートで造られた共同浴場、爆薬庫、苔むした石垣、各家々の敷地跡がそこここに残されているのが目に留まった。 活気に満ちていた当時の繁栄は鉱毒という二文字で終止符を打ち今、自然の中に静かに溶け込む姿が言い知れぬ寂しさを投げかけていた。変わらないのは岩盤の上を滑る様に流れ下る庚申川の水の色と言ったところか。
山頂直下まで35分、緑陰の山道は涼しく早くも蝉の声が聞こえる。 山頂から聞こえる賑やかな声を耳に一登りすると目の前がパッと開け足尾の町、日光方面が一望された。そこから狭い露岩を西にほんの僅か行った所が標柱の立つ備前楯山だった。
北側がスパッと切れ落ちているので眺めは素晴らしい。先ず正面に男体山、その下に袈裟丸連峰、庚申山とそれに続く鋸山、更に皇海山の尖った山容が木の一本一本確認できる近さで並んでいる。どれも登った山ばかりだ。今日はどの山も登山者で溢れている事だろう。
着いた時、混んでいた山頂も一人去り二人去り・・とうとう私達だけになった。静かになったそんな山頂で至福を貪るのも悪くない。 地図を取り出して一つ一つの山の同定を楽しんだ。 男体山の奥に見える大真名子と赤薙山、右に目を転ずれば夕日岳、反対側には遠く草木湖が光っている。足元には鉱毒の恐ろしさを剥き出しに赤茶けた山肌を露出する足尾の山並み
近年、緑を戻そうと植樹活動が盛んに行われる様になった。が、増え過ぎた鹿の食害によりイタチゴッコであると聞く。一旦、失った自然を取り戻すには気が遠くなる様な歳月が必要なのだろう。 足尾の町に双眼鏡を当てて見た。町のはずれに荒れるにまかせた精錬所の跡が痛ましく目に飛び込む。
備前楯山は人間の強欲の集結を嫌と言う程、見せ付け反省を促す山なのかもしれない。
かじか荘のスベスベとした湯でサッパリの雄さん、後方、庚申川の流れ
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鉱毒の犠牲になった町、足尾
白石さんへの手土産にと足尾の町に車を停めた。ヒッソリとしていて店らしきが見当たらない。通りがかったおばあさんに尋ねると「日曜は何処もお休みだからね、もしかしたら駅前の八百屋さんが合ているかもしれない」と教えてくれた・・・・・・・昭和の匂いを感じさせる鄙びた店だった。しかし一件しか開いていないとあって狭い店内は結構混んでいる。 「嘘でしょう!」 値段を見て驚いた、目が引っくり返るほど高いのだ。私達はスイカとリンゴを買い帰りは大通りを避けて小さな家が立ち並ぶ狭い路地を歩いた。
その路地のあちこちに数人の主婦が立ち話をしている光景あり、未だに使用されている共同水道(ポンプ)あり、玄関の戸が傾いた家ありと昭和初期の雰囲気が至る所に漂っている。そんな中、公共の施設だけがいやに立派に目立っていた。
(長くなりますので本日は此処までにします。よってコメント欄は閉じます)